「…そうですか。では竜王の石は見つからなかったのですね」 グウェンダルはともかくとして。 ギュンター達の指示のもと、シュピッツヴェーグ城内を組まなく探索したところ。 結局、石は発見できなかったらしい。 シュトッフェル本人も『石なんて知らない。』の一点張り。 見つかった物といえば、オレに対してするつもりだったらしい洗脳計画書… おいおい…… ギュンター達がもどってきてから、とりあえず、眞王廟に行けば何かわかるかもしれない。 というので、グウェンダルやギュンターを伴って。 オレとアンリとコンラッドとヴォルフラム。 そしてギュンターとグウェンダル。 この六名で眞王廟にとやってきているのだが。 託宣の間のある奥の中庭。 部屋から出てきたウルリーケにひとまず事情説明。 大体の事情を説明し終わったころ。 ふと。 「そういえば……。血盟城の娘からこれを陛下にと。言付かっておりましたわ」 ふとウルリーケが何か思い出したように、 服の袖口のすそから何かを取り出しオレにと差し出してくる。 「?これは?」 「何でも宝物庫に落ちてたとか……」 差し出されているそれは何か巻物のよ~だ。 「何だろ?」 それを受け取り、とにかく気になるのであけてみる。 …何か文字が書かれているけど。 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 オレがそれを見ていると、覗き込んできたヴォルフラムがなぜか無言になって固まっている。 ……? 「…?何てかいてあるの?」 「どれどれ?…げっ!?」 「…あたぁ~…。やってくれるな……」 「母上ぇ~……」 ギュンターに問いかけると、それを見てなぜかギュンターまで固まってしまい。 グウェンダルとコンラッドにいたっては深くため息をついて何やらうなっていたりする。 ??? 「??皆?」 額や顔に全員手を当てている状態に成り果ててるし。 一体全体どうした、というんだろ? そんなオレの問いかけに。 「?えっと…すこしいいですか?」 ウルリーケも疑問に思ったのか、オレのもっているそれを覗き込んできて… なぜかそれを見てウルリーケの目までが点にと成り果てる。 「…宝石の借用書だってさ…それ……」 アンリが深い、深いため息とともにオレにいってくるけど。 「ふ~ん。……って!?宝石借用書ぉぉ~!?」 アンリの言葉に思わずオレの叫びがこだまする。
『親愛なる陛下へ。しばらく竜王の石をお借りしたしますわ♡ツェリ♡』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 コンラッドにその文章を読んでもらい、オレの目もまた点に…… 「女王陛下…まったく……」 深いため息まじりのギュンターのつぶやき。 「…というか。それじゃ、シュトッフェルは石の紛失事件とは関係なかったわけだ」 「みたいだね~。でもしっかし…ツェリさん…やってくれるよね……」 オレとアンリの声は、ただただむなしく風にと溶けてゆく。 何はともあれ。 「とにかく。これで万事解決。ってことだよね?」 石は盗まれたのでも何でもなく、どうもツェリ様が持っていっちゃってるらしいし…… シュトッフェルもオレを幽閉して洗脳しようとしていたたくらみが表に露見して。 今は領地で謹慎中だし。 そんなオレの言葉に。 「そういう問題か?」 何かそんなことをいってくるヴォルフラム。 「ま。終わりよければ全てよし。ってことわざもあるけど。…ねぇ~……」 アンリが何かため息をつきながらそんなことをいってるけど。 「そ。そういうこと」 何しろ、今回の一件では、誰も深刻な怪我などはしてないし。 又、盗難、と思われていた石はツェリ様が借用中、とわかった以上。 これ以上騒ぐ必要性もないわけだ。 「そうさ本部はめでたく解散。ってところかな?」 オレとアンリのそんな会話に。 「さすがに陛下にリア…でなかった。猊下ですわっ!わたくし、一生ついていきますわっ!」 オレとアンリの手をとって、何かそんなことをいってくるウルリーケ。 「ああ!?だから!かるがるしくユーリに触れるなっ! それに!ユーリ!誰にかれにもいい顔をするんじゃないっ!」 いって、ヴォルフラムがオレをウルリーケから引き剥がし。 何かこづいてくるけど。 「あのな~…って。うわっと!?」 その弾みに思わずよろけ。 そのまま、背後にある小さな噴水の中にと落ちそうになってしまう。 「うわっ!?ととっ!!」 ばっしゃぁぁ~~んっ!! ……そのままものの見事にバランスを崩してオレはそのまま水の中へ。 ……と? そんなに深いはずはないのに、何でか体ごと噴水の底にある水流の中にと飲み込まれてしまう。 って!? もしかしてこれって…!? エドさんが作り出しているいつものお帰りコースの道ぃぃ!? …もうちょっと、アンリのよ~に楽に道を作ってくれないかなぁ~…… いつもコレじゃぁ、下手をしたら水を飲んでおぼれるぞ……息…出来ないし…… 噴水の池の底に出来ていたブラックホールのようなものに吸い込まれ。 そのままオレの体は流されてゆく……
――ざばっ! 「っ!ぷはっ!!」 ……って?あれ?ここは? 見れば、そこはいつもの見慣れた景色。 ちょっぴり川辺のグランドよりは下流に流されている場所らしく、少し先には鉄橋なども見えている。 「いっつもエドさんって唐突だなぁ……って、ああっ!?」 そんなことを思っていると、ふとあることに気づいて思わず叫んでしまう。 辺りには人の気配は誰もいない。 「ユニフォーム!あっちにおいてきてるままだよ!?」 オレの今来ている服はあちらでの普段着となっている例の制服もどきだ。 明日も学校がある。 というのに。 しかく来週は初の公式戦だ。 数すくない練習用のユニフォームだというのに……
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