「何もの!?」 「わっ!?」 何やら槍というかナタらしきものを持った数名の女の人たちが、オレに向かって刃をつきつけてくる。 そして。 「ここは神聖なる眞王廟。一般のものが立ち入ることが許されていない奥の中庭! 眞王廟には許可なき男は立ちいることは断じて許されていない!!」 そんなことをいってくるけど。 「え!?オレが男ってわかるの!?」 思わず心の中で小躍り。 だっていつも女の子に間違われてるし…… 「やはりか!!たて!妙なまねはするな!池からでろ!こともあろうに……」 何やらいいかけつつ、武器をきつけてくる。 「あ。はいはい 」 とりあえず、敵意がないことは伝えないと。 両手を挙げて歯向かう気がないとを示して立ち上がる。 ばさっ。 何かが頭から立ち上がると同時に落ちてくる。 どうやら水草を頭にとかぶっていたらしい。 と。 何やらピタリ、と動きをとめ、膝まづいている武器を構えていた女の人たち。 「……?あの?」 思わず問いかけるオレに。 次の瞬間。 「きゃ〜!!ユリティウス陛下よ!!」 「あの顔、あの瞳間違いないわ!!」 「きゃぁぁ!!猊下はよくいらしてくださるけど陛下ははじめてよ!!」 何やらキャ〜キャ〜と騒いでいる女の人たちの姿が。 いや、騒がれるのはちょぴっと…いや、かなりうれしいけど。 「…えっと。もしかしてオレってもててる?彼女いない暦十五年。初めての経験?」 キャ〜キャ〜いわれ、ちょぴっと気分がよくなってくる。 生まれてこのかた女の子に、こういう歓声の声を上げられたことはない。 ……別の意味での歓声はあったけど。 女の格好が似合うとか。 かわいい。 とかで…… 女の人たちの歓声にとまじり、オレにと先ほどまで刃をつきつけていた女の人たちが。 なぜか水…というか池の中にと入ったままだ、というのに膝をつき、 その中のオレの目の前にいる金髪の女の人が、 「失礼いたしました。陛下とは存じませんで。ご無礼をお許しください 」 といいつつ、頭をさげてくるし。 「あ、いいって。いいって。だって君たちはお仕事を果たしてただけだもん。 普通誰だっていきなり池の中に人がいたら怪しむし 」 怪しまないほうがどうかしてる。 「だから謝らなくていいよ。おこってないし 」 そんなオレの言葉に、瞳を潤まし、頬を染め、 「何とおやさしいお言葉。さすがは誕生する前より眞王陛下に選ばれていたお方だけのことはある 」 とかいってくる。 ? 「えっと。…とにかく、君たちも濡れちゃうし?たとうよ?ね? 君たちも池の中にはいっちゃってるし……」 彼女たちまでオレと一緒に只今池の中に入っている現状だ。 そんなオレの言葉に。 「何と慈悲深い……」 口々にそんなことをいっている女の人。 というか、何か何で感激してるオーラだしてるわけ? ねえ? 「…えっとぉ。濡れたら風邪ひくよ?風邪でも引いたら大変だよ?早く乾かさないと。 タオル、タオルって…オレのも濡れてるからダメか 」 持っていたタオルは池の水をしっかり吸ってすでにぐっしょりと濡れてるし。 オレを取り囲んでいた女の人たちに立つようにと促すと。 なぜか遠慮しつつも立ち上がる女の人たち。 どうやら、見た目女兵士さんたちらしい。
「えっと?それでここって? オレ今度はどこに出てきたのか教えてくれたら大変にありがたいんだけど?」 いまだに周りでは、キャ〜キャ〜と騒いでいる女の人たちの歓声が。 何か数が増えてない? と。 「ユーリ!!お前というやつは!また誰にでも愛想よくして!」 何やら聞き覚えのある声が。 ふとそちらに視線を向ければ、何やら見慣れた三人つれの姿が。 例のごとくというか何というか。 ヴォルフラム・コンラッド、そしてギュンターの三人の姿が視界にと入ってくる。 「あれ?皆?どうしたの?何かここ、さっき男子禁制とかきいたけど?」 オレのそんな言葉に。 「許可さえとれば入れるんですよ 」 いって笑っているコンラッド。 眞王廟…って、アンリがたびたびいってたところだよな? たしか…… なるほど。 だからアンリはちょくちょくこれてたわけか。 「でもオレ、許可とってないよ?というか、ここどこ?今回はオレどこに呼ばれて出てきたの? 何か魔族の国の中ではあるらしいけど。眞王廟…とかも聞いたけど?」 とりあえず、たぶんおそらくは女兵士さんたちと、コンラッド達を見比べつつ問いかける。 「ここは初代魔王を祭っている眞王廟です 」 「陛下。いつまでも水の中にいないで。こちらに 」 うやうやしくお辞儀をしていってくる女性に、 池のそばでバスタオルらしきものをもって言ってくるギュンター。 「あ。うん。きみたちも早く濡れた服を乾かさないと。風邪ひいちゃうよ?大丈夫?」 そんなオレの問いかけに。 「何とおやさしいお言葉。我々は大丈夫です 」 何やらまたまたふかぶかとお辞儀をしてくる女の人たちだし。 えっとぉ? だから、水からあがらないと…… 「キャ〜!!ギュンター様よ!ヴォルフラム様にコンラート様だわっ!」 何やら黄色い女の人たちの声が。 どうやら三人とももてるらしい。 そりゃ、オレよりは彼らのほうがモテルのは確実だ。 だのに。 「水に濡れた陛下も素敵!!」 「水にと濡れた御髪の黒がとても映えますわ!!」 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・ …え…えっと…何といっていいものか…… 何やら違う世界に行きかけている女の子の姿も見え隠れしているし…
オレが池からでると、すかさずギュンターがバスタオルをかけてくれる。 「あ、ありがと 」 オレの言葉ににっこりとするギュンター。 そしてタオルで体を包んだまま。 「眞王廟…って、アンリがよく出かけている眞王エドワードとかいう人の魂がいるっていう?」 「お前なぁ。みだりに名前を言うな。まったく 」 オレの問いかけに、何やら文句を言ってくるヴォルフラムだし。 「だって名前は大切だよ?」 オレの言葉に。 「そうなんですけどね。…おや?今回はユニフォームですか? ということは野球の練習中でしたか?それはすみませんでした 」 オレの服をみていってくるコンラッド。 「今日の練習はもうおわってたよ。後片付けをしてたとこ。 川で石にけつまづいてこけちゃって。 川の中で尻餅ついてたらいきなりこっちにひっぱられたの。 どうでもいいけど、人がいるときに引っ張るのはやめてほしいなぁ〜…とか。 今のところ、アンリのおかげでどうにかなってるけど。 今回みたいに、くるぶし辺りまでしかない水のとこで人が消えたら変だし 」 「そんな状況で呼ばれたんですか?」 「そ 」 そんな会話をするオレとコンラッドに。 「そもそも!だ!ユーリはこちらの国のこの国の王なのだから。 いちいち異世界に送り返さなければいいんだ!」 腕を組んでそんなことをいってくるヴォルフラム。 いや、それも困るんだけど…… オレが消えたら、あちらでは神隠しだの何だのと、大騒動間違いなしだ。 親父が魔族だと知られたら、それこそさらに。 「それが眞王陛下のご意思なのですよ」 何やらゆっくりと建物の奥から、 十歳前後の女の子がヴォルフラムの言葉に答えるかのように、ゆっくりとこちらにと歩いてくる。 周りの女の人たちがその子に向かって頭を下げていることから、たぶんえらい人だろう。 まだ子供なのに。 白に少し青みがかった長い髪。 吸い込まれそうな紫の瞳。 アメジスト色だ。 「これは…あなたが託宣の間をお出になられるとはめずらしい」 少女をみてそんなことをいいつつ、手をかしているギュンター。 えっと? 「…?あの子、えらい人?」 とりあえず、コンラッドにと聞いてみる。 ……何かでも、あの子のオーラの…あの感じ… …何か懐かしいような感じがするのは…オレの気のせい…かな? 「この眞王廟の最高位。賜詞巫女のウルリーケです」 げんしみこ? 「ええ!?あんなに小さいのに!?」 おもわずびっくり。 だって最高位…って!? 小さなころから大切な役目をおってるなんて…まるでドラクエのフォズ大神官並みかもしんない。 「ようこそ。ユーリ陛下。お初にお目にかかります。 わたくしはこの眞王廟をあずかります。賜詞巫女のウルリーケです」 彼女は、ゆっくりとオレの前にまでやってきて、そういいつつ、ふかぶかとお辞儀をしてくる。 「あ。どうも。これはご親切に」 オレもつられて頭をさげる。 「まあ!本当に神秘的な黒い髪に黒い瞳! リア…でなかった猊下よりも陛下のほうが更に純粋なる黒なのですね!」 瞳をきらきらさせ、胸の前にと手をくんで、オレをみていってくる。 「って?…だから日本じゃ当たり前……」 何かこの反応…こっちにくるたびにこれじゃ…つかれてきたぞ? そんなことをいって、オレの髪にと触れようとしたのか、ウルリーケが手を伸ばしてくるが。 「ええい!賜詞巫女とはいえかるがるしく僕の婚約者に触れるな!!」 いってヴォルフラムがオレの前にと立ちふさがり、ウルリーケとの間でとおせんぼ。 「ってまだそれいってんの!?だから、オレから断ったらプライドが傷つくっていうんだったらさぁ。 お前から断ればすむことじゃん?平手うちが求婚の合図だなんて知らなかったんだしさぁ。オレ。 それにオレ、結婚するならかわいい女の子がいいなぁ〜」 本音だし。 つうか、男はないでしょ? 男は。 オレも男なんだしさ。 結婚っていうものは、男女のペアで子供をつくり、子孫をつなげていく行為だし。 そりゃ、まあ中にはそれとは違うひとたちもいるのも知ってるけど。 子供ができない人たちとか、性別と心が違ちゃっててどうしようもなく悩んでいる人とか。 男と男、女と女。 そういう組み合わせもあるのも知ってはいる。 だけどオレ的にはやっぱり女の子がいいし。 一応、オレ、これでも男だしね。 そんなオレの言葉に。 「何が女の子なものか!見かけはこうでもウルリーケはとうに八百歳をとうにこえている!」 「は・・・八百さぃぃ〜!?」 驚くオレに、にっこりと微笑むウルリーケ。 「見た目、オレの妹と同じ歳なのに……。あれ?でも魔族の年齢って?? 確か方程式は見た目×五で計算するんじゃぁ?あれ?それでも五十歳?」 オレが首をかしげていると。 「ウルリーケは特殊なんです。だからこそ賜詞巫女に選ばれているんですよ」 戸惑うオレにと説明してくるコンラッド。 しっかし……何か懐かしく感じるオーラの持ち主だよなぁ?この子? 「……はぁ…ツェリ様といい…魔族の年齢ってわかんない……」 しみじみというオレに。 「成長に関しては人それぞれですけどね」 そういって笑っているコンラッドだし。 そんな会話をしている最中。 と。 ざばっ!! ん?? 何やら水の音が後ろから聞こえ。 そして。 「ってぇぇ!?今回はここ!?って!?ああ!?ウリちゃん!?」 ……いや、ウリちゃん…って…… 何やら聞き覚えのある声とともに、見慣れた人物が池の中から立ち上がっているけども。 「アンリ!?」 『猊下!?』 『きゃ〜!!猊下よ!猊下!!きゃ〜!きゃ〜!!』 オレとコンラッド達の声が重なり。 そしてまたまたヒートアップしている女の子たちの声が。 そして、そちらをふりむき。 「まあ!リアもきたんですのね!って今はリアではなかったんですよね。ごめんなさい。」 「別にいいよ。」 何やら親しげなウルリーケとアンリの姿が。 ???
戻る →BACK・・・ →NEXT・・・
|