「だぁ〜〜!!何で気づかないの!?」
思わずそこにあるクッションらしきものに八つ当たり。
オレとアンリはとある一室にと通される。
部屋の中にはテーブルの上に何か青くほのおに光る石らしきものがおいてある。
ちなみにサイズは一抱えはありそ〜だ。

先ほどシュトッフェルと、
どうやら彼の側近であるらしい、レイヴン、という人がやってきて少し話をしたのだが。
相手は一方的に、
コンラッド達の過去を知らないオレが、彼らをそばにおいて国政を行うのはおかしい。
だから国のことをよくわかっている自分に任すべきだ。
とかいってきた。
というか!
「そもそも!国の主役は国民だろ!?」
そんなオレの叫びに以外な顔をして、そして深いため息をつき。
「どうやら陛下はまだ混乱しているようだから日を改めて……」
とかいって、ご丁寧に鍵までかけていった。
ちなみに窓にも鉄格子……
やっぱり近くでみると、シュトッフェルにまとわり付いている『怨嗟』の気は途方もないもので。
しかも別の何かまがまがしいオーラが彼の体を覆っている。
普通あそこまでの『もの』に取り憑かれていたら、いくら何でも自覚症状…くらいあるだろうに。

「よっぽど鈍感だね〜。あのシュトッフェルとかいう人……」
アンリもまたため息ましま゛りにいってるけど。
どうやらアンリ曰く、コンラッド達は無事らしい。
…どうやって調べたのかはわかんないけど。
ま、アンリだし……
あまりに強い負のオーラに当てられて気持ちが悪くなったものの。
部屋の中にあった石にと触れていると何か落ち着いてくる。
「……とりあえず…どうする?」
にこやかに話しかけてくるアンリに対し。
「どうするも何も……。シュトッフェルがあの調子じゃあ話し合いどころじゃないし……」
何か彼が影響を受けているものすごい負の気が、
どうもシュトッフェルを使っているようにも感じられる。
破壊と混乱。
恐怖と絶望。
周囲をそんな状態にとあの『気』はしようとしているようにと感じられる。
そんなことは絶対にさせないけど。
お祓いでもしたら違うのかもしれないけど。
あれはかなり根強そうだ。
「とりあえず……あのまま。って訳にはいかないし?
  アンリ。手伝って。できるかどうかわかんないけど。
  一番影響を与えている『負の気』をここから追い出すことができれば……」
オレのそんな言葉に。
「そうくるとおもった。でもとりあえずここから出ない?
  どうもユーリ。具合悪そうだし?負のオーラにどうもあてられているようだしね」
いって、すくっと立ち上がり、オレの額にと手をあててくる。
「やっぱり。あてられて熱まででてきてるよ……
  とにかく。ウェラー卿たちと合流して一度ここからでるよ?」
どうりで……
アンリの言葉にようやく、体がずっとけだるい訳がわかったオレって一体……
熱あるの気がつかなかったし……
どうにもあまりに悪いオーラ、というか『気』にあてられて、熱まで出てきてしまったらしい。
ガチャガチャ…
ガチャ。
携帯式裁縫セット。
その中からアンリが何か針を取り出し、扉の鍵穴に差し込んでガチャガチャすると、
何やらすんなりと鍵はあっさりと開いているが。
どうやらここでは複雑な鍵の構造などは開発されていないのかもしれない。
よく空き巣とか、ピッキング被害…多発しないものだ。
そんなことを思っていると。
「さ。いこっ」
「あ。うん」
とりあえず、そのままアンリに促され外にとでる。
城のいたるところにいる兵士たちをかわしつつ、コンラッド達がいる。
とアンリがいった場所にと進んでゆく。

コンラッド達は地下にいるらしく、地下室への入り口を探して城の中をうろつくことしばし。
「陛下っ!?」
「ユーリ!?」
ばったりと出会いがしらにコンラッドとヴォルフラムと遭遇する。
どうやら彼らは自力で地下から出てきたらしい。
「コンラッド!ヴォルフ!よかった!怪我は……」
オレの問いかけに。
「それはこちらの台詞です。…うん?陛下、何か顔色が……」
いってオレの額にと手を当ててくるコンラッド。
「って!?熱があるじゃないですか!陛下っ!」
何か叫んでくるけど。
「この城にまとわりついているよくない『気』にあてられちゃったみたいでね。
  とりあえず、一度ここから離れようよ?」
そんなアンリの言葉をうけ。
「猊下もご無事のようですね。確かに。とにかく陛下を休ませないと……」
何かオレを抜きにして勝手に話を進めてるし……
「あのねっ!というか、まだシュトッフェルと話が……」
くらっ。
……あれ?
何か頭がくらっとして、まるでふわふわと体が浮く感覚にと囚われる。
……ヤバ……熱…上がってきてるよ〜……
「ユーリッ!」
「陛下っ!」
「興奮するから〜……」
何か口々にいっている三人の声をききつつ。
オレは何でか意識を失ってゆく。
…どうやら完璧に熱…あがったらしい……あぅ……


「……あれ?」
まず目に入ったのは見知らぬ天井。
ふと横を見ればヴォルフラムが椅子にと腰掛けたまま眠っている。
……えと?
「あ。ユーリ。気がついたようだね」
カチャリ。
扉が開く音がして、アンリが部屋にと入ってくる。
「??ここは?」
どうもシュピッツヴェーグ城内でも、血盟城でもないらしいけど。
「シュピッツヴェーグ領内の中にとあるある宿屋だよ。
  今の状態で血盟城に戻りでもしたら、フォンクライスト卿が暴走しかねないしね。
  …ユーリが病気になった!っていって」
「……いえてる……」
アンリの言葉に思わず納得。
「うん。熱は下がってるね。やっぱり『気』にあてられてたみたいだね」
オレの額に手をあてて、そういってくるアンリだけど。
と。
カチャリ。
「猊下。ちょっと……。あ、陛下。もう大丈夫なんですか?」
何やら深刻そうな顔をしてアンリを手招きし、
そしてオレがおきているのをみてほっとした表情を浮かべているコンラッド。
「ユーリが具合が悪くなったのは。あの場所を取り巻くよくない『気』の影響だし。
  ――それで?あ、ユーリ。ちょっとごめん」
いって何やらコンラッドと共に部屋の外に出てゆくアンリの姿が。
??
一体何だっていうんだろう?
そんなことを思いつつ。
何となく無意識に、おそらく部屋の飾りなのであろう。
小さな水晶にと手をふれる。
――と。
何やら水晶がほのかに光、そこにコンラッドとアンリの姿が映し出される。
??
何で?
そう疑問には思うが、何かまだ頭がぼ〜としてきちんと思考力が働かない。

「…あた〜…やっぱり出した?」
「…ええ。ヨザックが城にて内情を探っていたのもあり、陛下が捕らえられた。
  というのを連絡したようですし」
「まあ、自力で脱出できる。…とは踏んでいても。
  フォンシュピッツヴェーグ卿シュトッフェルのほうは……」
「ええ。どうやらすでに戦いの用意をしていたらしく……」
「本気であの力に踊らされてるね。――で?フォンヴォルテール卿は?」
「今また。民に不安を与えるわけにはいきません。
  かといって、シュトッフェルの行動を見過ごすわけにも……
  それで、軍を率いて鎮圧に出向いたようです」
「道は僕がつなげるよ。誰にも迷惑゛かかからない場所のほいがいいし。
  ――…ユーリにはだまっとこうね?」
「当たり前ですっ!陛下のことです。ご自分で出向かれる。というのは目に見えていますっ!
  まだ体調が思わしくないようなのに、無理をされては……」

…ちょっとまてぃっ!
水晶にそんな二人の会話が映し出され、オレはあわてて飛び起きる。
冗談じゃない。
誰一人として傷ついたりしたりするのは許さないっ!
戦争なんてもってのほか。
戦いなんて絶対にダメだ。
――アオッ!
パシッ!
なぜか馬が必要。
と直感的に浮かび、アオを思い浮かべる。
そして……
「……あれ?」
ふと気がつくと、何でか外にでているオレ。
そして目の前には見慣れた馬が。
なぜかヴォルフたちの馬まで一緒にいるけど。
どうやらここは宿に備えついている馬屋みたいだ。
つまりはやっぱり宿の外らしい。
いったいいつの間にオレは外に出たんだろう?
しかもなんでか靴はそのまま横にある。
靴だけもって履かずにでたんだろうか?
そうは思うが、だけども。
「そうだ!戦いを止めないと!」
判っているのは唯一つ。
戦いが始まろうとしている…ということだける
そのままアオを連れ出し騎乗して、
とにかく直感が告げる方向にと馬を走らせてゆく。



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