「ならもっとしゃきっとしろ。この国はおまえの肩にかかってるんだからな!」 「未熟ながらがんばりますってば。それに。ヴォルフラム達。 回りの人がしっかりサポートしてくれるから。オレはただひたすらに前に進むっきゃないし。 又、それがあるから目標を目指して突き進めるんだし」 それがたとえ困難な道だとしても…だ。 カヴァルケードと和平条約を結んでこちらではもう一月を過ぎている。 町の露店や店などにも人間の国の品々。 というものが増え始めて結構いい状態だ。 今後も一応根気よく、他の国にも親書をおくったりして人と魔族との壁をなくすため。 ギュンターやアンリにも協力してもらいつつ、努力している事柄は続けてゆくつもりだけど。 アンリ曰く、普通は魔族からの手紙…といったら、すぐに開封すらもされずに破棄されるらしい。 かといって白鳩便で届けるとしたら逆に鳩の命が危険にさらされる。 それをアンリにいったらいい方法がある。 というので手紙を送るのはアンリに任せているのが現状だけど。 どのように届けているのかは教えても教えてくれないが…… 結構魔族と人間の溝は根深いらしい。 今度オレ自身が各国に出向くことを提案してみようかな? などともおもっているけど。 そんなことをおもいつつ、返事を返すそんなオレの言葉に。 「まったく。おまえときたら。前代未聞のへなちょこだからな」 「……わるかったな」 そんな会話をしていると。 ドンッ! 突如として何かが爆発する音が聞こえてくる。 見れば町外れのほうから白っぽい煙がたちのぼっている。 まさか、コンラッド達に何か? 「おいっ!ユーリ!」 ヴォルフラムが止めようとしてか声をかけてくるけど。 オレの体は条件反射でそちらにとかけてゆく。
ざっ! 路地を回り込み、角を曲がる。 そこには、数名の男たち…しかも黒尽くめの男たちと、そして剣を抜き放っているコンラッドと。 そしてなぜか杖を手にしているアンリの姿が。 「おまえら!?よってたかって一体何してるんだよ!?」 おもいっきり多勢に無勢。 アンリとコンラッド二人に対して五人はないだろ? 五人は…… まあ、コンラッドの剣の腕があればどうってことがない。 ともいえるのかもしれないけど。 でもさ…… 「って!ユーリ!後ろっ!」 …え? ガッ!! アンリの言葉と同時に振り向くと、一人の男が屋根から飛び降りてきて、 オレに対して剣をむけてこようとする。 が。 「ぐぎゃっ!?」 なんでか屋根の上から石が落ちてきて男はその石の直撃をうけて小さく叫んで気絶する。 「…え、えっと…運がないひと……」 思わずつぶやくオレの言葉と同時。 「何できたんだよ!?ユーリ!!」 そんなことをいってくるアンリの姿が。 「だって。オレだけじっとしとく。というわけにはいかないだろ!?」 「陛下!猊下!今は言い争っているときでは!」 コンラッドが声にあせりをにじませ何かいってくる。 と。 ボウンッ! 何やらお庭番や忍びのものが使いそうな煙球を投げてくる別の黒づくめ達。 それとともに煙にまぎれて、ばさばさと何かが飛んでくる音が聞こえてくる。 「まさかシルに危害を加えようとしている奴らに協力なんてしないよね?」 ガララッ…… ? アンリが煙が充満している最中、何やら空をみて言い放つと同時。 何かが、バラバラと落ちてくる。 思わず落ちてきたそれを拾ってみてみると…… 「って…ほねぇぇ〜〜!?」 何だってこんなものが!? どう見てもそれは骨以外の何物でもないし…… 「馬鹿な!?骨飛族が自ら分解するなど!?」 何か上のほう。 つまりは屋根のほうからそんな驚愕した男の声がしてくるけど。 「散っ!」 アンリの言葉と同時。 ざっと風が巻き起こり、上空へと吹き上がり、周囲に満ちていた煙は瞬く間に四散する。 それと同時に何かが上のほうから落ちてくる音。 「…コッヒー?…何で?」 視界が開け、その目にうつるものは、忍者スタイルの男たちを巻き込んで、 何やら地面に転がっているコッヒーの姿と。 煙の帯のようなものにがんじがらめにされて動けなくなっている忍者もどきさんたちの姿が。 「……え、えっとぉ……」 何といっていいものか。 戸惑いの声を上げる俺の横にといつのまにかやってきていたアンリが。 「はい。捕獲完了」 とかいっているけど。 いや…捕獲って…… と。 「ユーリ!おまえというやつは!一人でどんどん走っていくなっ!」 それと同時にヴォルフラムが何やら叫びながら建物の角を曲がってこちらにと走ってきている。 そういえば、ここにくる途中ではぐれてたっけ? 「陛下……。ヴォルフと待っていてください。といいましたのに……」 コンラッドがいまだに警戒を解かずにオレの方に近づいてきながら何かいってくるけど。 「だってさ。じっとしてなんかいられないし」 『――――はぁ〜……』 オレの即答になぜか、ヴォルフラム・アンリ・コンラッドの盛大なため息が重なっている。 別にため息をつかれるようなことはしてない…とおもうんだけどな? 「……ま。とりあえず。一人逃げちゃったようだけど。この町に潜んでいたのは彼らみたいだね」 アンリが話題を変えるつもりか、はたまた天然か。 とにかく身動きが取れなくなっている黒尽くめの男たちをみてそんなことをいっているけど。 …一体アンリのやつ…今…何やったんだ? 「今何やったの?」 そんな問いかけにアンリはただただにこやかにと笑うばかり。 オレが聞いてもアンリは笑うばかりで答えてくれないし…… 何はともあれ。 ひとまず、今捉えた人たちから事情を聞くことに……
彼らから事情を聞きだすと。 やはり彼らもシュトッフェルの命令で騒ぎを起こしてオレを城の外にとおびき出し。 そして外にでたところで誘拐してでも連れて来い。 と命令された。 ということが判明。 …ほんと、あのシュトッフェルって人…何かんがえてるんだろ??
「だからって!何で直接話しを聞きにいく必要があるんだ!?」 なぜかオレの胸元をつかんでいってきているヴォルフラム。 目の前では、先ほどアンリたちを襲撃しようとしていた男たちがロープで縛られ大人しくなっている。 「だってさ。このままじゃ…埒が明かないよ?」 二度あることは三度ある。 ということわざもある。 ここははっきりと相手と話し合う必要性がかなり大きい。 そんなオレの言葉に。 「しかし……」 何やら戸惑い顔のコンラッド。 「とにかくっ!話をきちんとしてみたら問題ないとおもうし。 で?そのシュトッフェルとかいう人はどこにいるの?」 捕らえた一人にと話しかける。 そんなオレの問いかけにしばらく戸惑いつつ。 「シュトッフェル様は城に……」 それだけいって口をつぐむ黒尽くめの忍者もどきさん。 ……? 城? ってことはツェリ様の実家? 地図で見た限り確かずいぶんと離れてたよな? 「案内してくれるよね?」 にっこり微笑み、ぽん、と男の肩にと手をおくと。 ふっと頭の中に見たこともない景色が浮かび上がる。 ……? 「――ふぅ。どうやら説得は無駄みたいだね。 ユーリはほっといたらどうも一人ででも移動しかねないし」 ? アンリがオレの後ろで大きくため息をつきながらそんなことをいってくる。 そして。 「あくまでも話を聞くだけだからね?」 『猊下!?』 アンリの言葉にコンラッドとヴォルフラムが非難の声を上げてくる。 「そりゃ、話し合いは基本中の基本だし」 そんなオレの言葉をうけて。 「とりあえず。昔とそうは変わっていないだろうし。念のために一人案内人をつれていって。 その人のイメージを利用して移動したほうがよさそうだね。 他の者は余った彼らを連行しておいて」 いつのまにかやってきていた兵士達にとそんな指示を出しているアンリだけど。 「しかし!猊下!危険すぎますっ!」 コンラッドが顔色を変えてアンリにと訴えている。 「でもさ?ユーリのやつ無意識にシュピッツヴェーグ城の映像。 この男たちから読み取っちゃってるみたいだしさ?反対し続けていたら、それこそ。 ユーリに一人で移動されてしまう。というのことも否めないよ?」 ??? アンリの説明にオレの頭の中ではハテナマークがとびかうが。 「それは……」 「しかし……」 アンリの言葉に何か戸惑いの声を上げているヴォルフラムとコンラッド。 ど〜いう意味だろ? 「ま。何にしてもユーリが意見を曲げる。とは絶対に思えないし? それにちょっと気になることもあるしね。話を聞きにいくだけなら問題ないとおもうよ?」 アンリの言葉に。 「しかし…相手はあのシュトッフェ。です。何をしてくるか……」 そんなことをいっているコンラッド。 「と・に・か・くっ!話を聞いて見なきゃ、何事もはじまらないんだってば!!」 ふっ…… オレの叫びと同時。 なぜか一瞬視界が真っ白になってしまう。 ……あれ??
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