ひとまず、捕らえた三人から事情を聞くことにし、それぞれにと尋問中。 三人が三人ともだんまりを決め込んでいたが。 アニシナさんがすぐさまに侵入者を捕らえた。 と、どこからか聞きつけたらしく、 「わたくしの発明品で口を割らせてみせますっ!」 といって、オレたちが止めるのも聞かずに一人連れて行ったけど。 ……気の毒に…つれてかれた人…… 残りの二人のうち、一人は、アンリが調べてみる、といい。 オレはグウェンダルたちが取り調べる残りの一人を尋問する部屋にと入れてもらう。
さすがというか、何というか、男性はとにかくずっと黙秘を続けているらしく。 グウェンダル達も手をこまねいているらしい。 何か力づくで…という雰囲気、というかオーラを発し始めたのをみて。 ふと思いつき、そんなグウェンダルを片手で制する。 ここはやっぱり定番で。 テレビとかでよくやっている行動をしてみようと思い立ち、取調官を変わってもらう。 テレビのようにべらべらと話す…という都合のいいことはないだろうけど。 だけど少しは心に響けば何か情報がとれるはずだ。 やっぱり取り調べでの犯人の説得。 といえば家族、または両親の話がセオリーだし。 あと、当人のオーラが物語っている事実らしき物事を突きつけてみたりとか。 何しろ人の発しているオーラ…というか気は口ほどにモノをいう。 といっても過言ではない。 特に命令したであろう人物のその命令などに不信感をもっていればなおさらに。 悪いこと…と知りながら、命令だから。 と行動する。 かなしいまでの人間の性…というか仕事上の性……上のものには逆らえない。 という体質を浮き彫りにとさせている。 本人たちもおかしい命令だ。 とわかっていながらも、家族のこともあり、断れない。 まあ、気持ちはわからなくもないけれど、その結果。 たとえば全員が失業…ということにでもなったらどうするんだろう? そんなことが起こらないようにするのもオレの役目だけど。
「彼ら、本当に竜王の石については知らないみたいだよ?」 オレの得意とするオーラ判別方法。 それと大概その人の目をみれば、嘘をついているかどうかはわかる。 そんなオレの言葉に。 「しかし…彼らが知らない。というだけかもしれません」 「あの男なら部下に情報を与えず何をやってもおかしくないっ!」 「ヴォルフッ!」 戸惑い気味に答えてくるギュンターに、憮然として言い放っているヴォルフラム。 そして、そんなヴォルフラムを制しているコンラッド。 ひとまず彼らはしばらくのあいだ、拘束するとして。 それぞれが集まり、一つの部屋にと移動してそんな会話をしているオレたちだけど。 「私は念のために城内の警備を増やす。賊がまだ他にもいるかもしれんからな」 つったったままで憮然としてそんなことをいってきているグウェンダルの姿。 「それか。問答無用で侵入者を駆除させるように。城そのものに命ずる。って手もあるよ?」 にこやかに、さらり、ととんでもないことをいってくるアンリ。 「アンリ……。それはお願いだからやめといてくれ…」 自分が住んでいる城がそれこそ恐怖の館になるのだけは御免こうむりたいぞ? 「とにかく。彼らのチームからは。 あのシュトッフェルとかいう人のことくらいしか聞き出せなかったし。 後は他のチームのメンバーが滞在していた…という町にいって聞き込みでもしたら。 もしかしたら何かわかるかもしれないね」 襲撃者の証言によれば、何でも三・四チームに分かれて行動しており。 自分たちの隊以外に与えられた命令は知らない。とか。 この城に進入してきたのは、そのうちのうちの一つのチームで。 つまり、残り後数チームがいるらしい。 チーム編成としては大概、六・七人から成り立っているらしく。 オレたちが捕らえた人数は三人。 いつの間にかアンリが他の残りのメンバーも捕らえていたらしく、 只今彼らも監視下にとおかれている今の現状。 「確かに。その方法も一つの手ですが……まさか陛下!?自ら調査にいかれるつもりでは!?」 ギュンターが、はた、と気づいたようにいってくるけど。 「何いってんの?聞き込みとかは捜査の基本だよ? それに何でオレを狙ったか、という肝心な部分が聞き出せてないし」 彼らがいうには、オレをさらってでもオレと二人…つまり、 『魔王陛下と二人っきりで話しがしたいから、つれてこい』 という命令をうけたからとか何とか。 それっておかしいじゃん。 話があるのならばオレはいつでも受けて立つのに。 「いけませんっ!」 「おまえは自分の立場を考えろっ!あのシュトッフェルはそんなに甘い男ではないぞ!?」 ギュンターとヴォルフラムの声が同時に発せられる。 けど。 「でもオレ、じっとしてなんていられないし。事態を解決するのはオレの役目…だろ? ダメっていっても絶対っ!に!一人ででもてくからなっ!」 しかも、自分がらみだ。 というのだからオレとしてはひく気も譲る気もない。 「ユーリは言い出したら聞かないよ。きちんと調べる。というのは僕も賛成だしね。それに……」 ? 最後のほうの声は聞き取れなかったけど。 「しかし…猊下…」 アンリのそんな言葉にグウェンダルが何やらいってくる。 そんな彼の言葉に。 「じゃ。言い方をかえるよ?もしここで、ダメっていったとして。 ユーリに無意識のうちにひとりで空間移動されて外に調べに行かれるのと。 それとも僕達が一緒にいってきちんと調べるのと。どっちがいい? 二つに一つだよ?ユーリは言い出したら聞かないからねぇ」 『―――・・・・・・・・』 いや、無意識に移動って…… だからオレにそんなことができるはずがないってば。 アンリの言葉にしばしオレを含めた全員が無言になり。 そして。 「…仕方ありませんね。しかし陛下。決して我々のそばから離れないでくださいよ?」 コンラッドがため息まじりに沈黙を破っていってくる。 「一人で行かれるよりは…まし…か」 グウェンダルまでもが、何かそんなことをつぶやいてため息をついているけど。 いや、だからぁ。 そんなことオレにできるはずがないってば。 「ユーリがいくなら僕もいくっ!おまえは目を離すと何をしでかすかわからないからなっ!」 ヴォルフラムまでもが何やらいってくるけども。 「わたくしも……」 「フォンクライスト卿は残ってて。そのほかの対策や対応をお願いしたいんだ」 ギュンターの言葉をさえぎってアンリが何やらいっている。 「…ま。いっか。よ〜し!そうときまれば!さっそく町にいって聞き込み捜査開始だ!」 ムキになって訂正しても、どうも聞き入れられそうにないし。 それどころか、逆にやっぱりオレは連れて行かれない。 とでもなったら大事だ。 男たちの話によると、 王都から少し離れた場所にと位置しているとある町にと、別の別働隊が滞在している。 という情報までは聞き出せている。 他には数日以上馬でかかる町にもいるらしい。 とか正確な場所までは彼らも一箇所しか知らない。 とのこと。 ひとまず、唯一判っているという近場のその町にといって聞き込み開始することにと話がまとまり。 最小限…らしい、それでも十数人はいるであろう兵士達とともに。 王城から王都にでて、さらに王都から外にでて問題の町にと向かってゆくことに――
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