「ふわぁぁ〜……」 「あ。おはよう。ユーリ」 「よくねてたな。まったくのんきなやつだ」 結局のところ。 明け方近くまで侵入者の捜索隊に参加したものの。 結構うまく隠れているらしく、なかなか尻尾をつかませない。 アンリが大地と城そのものにも協力させようか? とかいってきたけど、それは即却下。 何しろ話をきけば、 『城が意思をもって、侵入者を壁の中に塗りこめる』 …とからしいし。 そんなのはいくら何でもみたくない。 というか自分の住んでいるところでそんなことがあってほしくないし。 とりあえず、時間が時間になってきたので休むことも肝心だ。 とベットに押し込まれ……気が付いたら、一・二・三でもはや熟睡モードに。 我ながら情けない。 みればすでに服を着替え終わっているアンリとヴォルフラムの姿が。 「えっと…今何時?」 いいつつ腕の時計をみてみると。 すでに時刻は十時をかるく回っていたりする。 「え!?もうこんな時間!?」 驚くオレに。 「まあ。疲れてたんだろうけどね。それに僕が一服もったのもあるし♪」 「…い、一服って……」 「お茶の中に睡眠効果のあるエキスをちょっとね♪」 がくっ。 思わず気分的にも、現実的にもがくり、となってしまう。 「まあ。猊下のいうとおり。おまえが倒れては元もこもないからな」 いって、アンリが入れたのか、それとも自分で注いだのか。 ともかく、手にしているコップの中のお茶を飲み干しているヴォルフラム。 どうやらヴォルフラムも又、日本茶をかなり気に入ったらしく。 ほぼ毎日、オレがこちらに来ていないときですらのんでいるらしい。 まあ、確かに。 お茶には気分を落ち着かせる効果はあるけどね…… そんな会話をしていると。 「失礼します。陛下。お目覚めのようですね」 いって、扉をあけて入ってくるコンラッド。 「どうだった?」 そんなコンラッドに向かって聞き返しているアンリ。 「それが……」 何やら難しい顔をしているし。 「?侵入者以外にも何かあったの?」 オーラが何かそんな感じのことを示すかのように戸惑ってるし。 そんなオレの問いかけに。 「昨夜の騒ぎの最中に、宝物庫に押し入ったやっがいたんだ」 憮然として答えてくるヴォルフラム。 そんなヴォルフラムに続いて。 「多分。ユーリも戴冠式のときに使っただろうから覚えてるだろうけど。 あのときに使った王冠の中央部分の石がなくなったらしくてね。今はそれもあって大騒動中」 とりあえず詳しく簡単に説明してくるアンリの姿。 「…な、なくなたって……あれが?石だけ?…それっておかしくない?」 普通だったら、盗むんだったら王冠ごといくだろう。 そんなオレの至極最もな問いかけに。 「何がおかしいものか。あの石は『竜王の石』といって魔王の象徴。ともいわれてるんだぞ?!」 そんなオレの言葉に突っ込みをいれてくるヴォルフラム。 いや、そういわれても…… 魔王の象徴? 何で? というか、オレそんなこと聞いたことすらもないんだけど?? 「でもさ?中央の石だけなくなったんだろ?」 普通なら、王冠ごと盗むのだったら盗むだろうに。 だってあれってかなり重かったし……多分純金が使われてるぞ…あれは…… そ〜いえば、この世界での金の価値ってどれくらいなのかオレまだ知らないや…… 何はともあれ。 「…よっし!その事件。オレが解決してみせるっ!」 「はあ!?」 オレのそんな言葉に目を丸くしてくるヴォルフラムに。 「あ。懐かしいなぁ。警察ごっこかぁ。うん。いいかも」 アンリがにこやかにいって同意してくる。 「…そういえば。お二方ともよくそういう昔をしていたらしいですね」 何か聞いたことでも思い出したのか、笑いをこらえつつもいってくるコンラッド。 多分、十年前に再び地球にきた、というときにおふくろか、おやじからでもきいたんだろう。 「アンリ。紙ある?紙?捜査本部の間をつくらないと」 「オッケー。ユーリ。でも、その前に」 にっこりといわれ。 「何?」 「服。着替えてね」 「……あ゛」 アンリの言葉に思わず目を点にする。 そ〜いえば、オレはまだ寝巻きのままだった……
すでにグウェンダルは独自の捜査をしているらしい。 昨夜のオレの部屋への侵入者事件と、何らかの関連性をみているようだ。 ともかく。 捜査の基本その一。 聞き込み、および現場検証。 そして犯人のものとおもわれる遺留品や指紋。 そして足跡などの採取。 この世界においては、いまだに指紋照合うんぬん、というのはいまだに普及してないらしいけど。 結構便利らしいけど。 指紋照合…… 科学捜査はとりあえず、そういうのが得意なアンリに任せ。 他の隊は周辺の聞き込み。 そしてオレを含めたギュンターやヴォルフラムはとりあえず現場検証を開始する。 他にもなくなっているものがない。 とも限らない。 ガサガサと、宝物庫の中を捜索していると。 くいっ、くいっ。 ……? 何やら袖をひっぱる感触が。 ……ん? ふと、その感触に横をみてみれば、何やら鞘に収められ、鎖で厳重に固定されている…… ……メルギブ……でなかった、モルギフがオレの服の袖を加えてひっぱっている。 「……何?」 『あ〜う〜……』 何か訴えてきているし。 「悪いけど。かまっている暇はないんだ」 多分、外にだせ、とかもっとかまえ。 とかいっているんだろう。 『う〜……』 「だからぁ。今はそれどころじゃんいん゛ってば。この中かに宝石が盗まれたんだぞ?」 ここから出せ。 連れ出せ。 といっているのが感覚的にも判るので、とりあえず言い聞かす。 『えぅ〜?』 「そ。宝石。他にもとられたものがないか調べないといけないの」 『う〜…だ〜…そっち〜……』 うめきつつも、何かオレの服をつかんでは、目線と口元を何やら交互に向けている。 よくよくみれば、その視線は出入り口のほうを指し示している。 「…ん?おまえもしかして……何かみたのか?!」 『あ〜』 オレの言葉ににっと笑う。 どうみても、『ムンクの叫び』の顔以外の何ものでもないモルギフの顔だけど。 「こいつ何か知ってるぞ!?」 オレの言葉に、ヴォルフ・アンリ・コンラッドがかけよってくる。 「なるほど。確かに。モルギフはずっとこの中にいたわけだから。 不振人物とか見てるのかもね。そうなの?」 アンリの問いかけに、こくこくとうなづいているモルギフの姿が。 「そうと判れば……」 することは、一つしかないでしょう。 警察犬改め、警察剣での捜査をするっきゃないでしょう。 うん。 とりあえず、モルギフを宝物庫から持ち出し、調査を開始することに。
鞘に収めたままのモルギフを目の前に掲げ、モルギフの示す方向にと進んでゆく。 きちんと方向をいってくる。 ということはこいつ剣なのに、鼻があってかなりきくのかもしれない。 まあこの世界は剣と魔法の国。 しかもこいつは魔剣だし。 何があっても不思議じゃないか? 何か天井付近に人の気配がしなくもないけど、とりあえず、石を探すのが先決だ。 モルギフをもって、そのまま、アンリたちとともに城の中を進んでゆく。 「気づいてる?二人とも?」 オレの後ろについてきているアンリがコンラッドとヴォルフラムにと何やらといかけている。 「ええ」 「二人…いや、三人か?」 「とりあえず。注意して進もう。外にでたら……」 何やら三人でそんな会話をしているし。 しばらく進んでゆくと、何やら小さな扉の前にとたどり着く。 モルギフがやけに、ここ、ここ、といっている。 「こんなところに?」 ここって確か…厨房じゃなかったっけ? 「ここは…厨房か?」 「何でこんなところに?」 オレと同じ考えに陥ったらしいヴォルフラムやコンラッドもまた同じことをつぶやいてるけど。 「とにかく。はいってみようよ。」 いいつつ、アンリが扉にと手をかけてそのまま扉を開いてゆく。
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