「しっかし…この国の人々も我々と変わりませんな。王もあなたのような人ですし」
「ただ種族っていうか成長速度とかが違うだけだと思いますよ?
  感情面とか、そういった類はまったく同じですし。
  まあ、何か俺もまだ見た目と年齢の落差がよくわかってないんですけどねぇ……」

対談もどうにか無事に終わり、その後で食事会。
オレの考えを伝えるとカヴァルケード王は快く同意してくれ、
新たな世界の為に、その第一歩に協力いたしましょう。
といって和平同盟を了解してくれて。
後日、正式な調印式なるものをすることに。
オレが一応用意していた気持ちほどのお茶菓子にはなぜかかなり驚いていたが。
中に入っている品質を保つための袋は絶対に食べないでください。
というと、そんなものがあるのですか?
と逆に切り返され。
オレの代わりにアンリが答えてくれてたり。

「この世界の魔族は成長速度がゆっくりだからねぇ。
  そもそもここの魔族は、大地を見守る種族ってことでそうしたんだし。
  皆、風火水土を任せた創主たちが反乱企ててからは特にね。
  魔族、引いては魔王の存在って彼らの復活を止める、というか。
  あのままの状態で復活するのを阻止するためのようなものだしねぇ。
  まったく、いくら生命体の負の力に左右されたからってさ。
  この星そのものがなくなればいい、なんて彼らは思ってたからねぇ。
  ま、一種の彼らも被害者…といえばそれまでだけど、力が力だからねぇ……」
?????
何かよくわからないことをしみじみといっているアンリ。
「何かよく意味がわからないんだけど?アンリ?というか、その創主って?」
たまによく聞く言葉だけど??
オレの素直で率直な質問に。
「ユーリは逆に知らないほうがいいよ。
  下手したら、今の彼らはユーリの『力』を取り込もうとしてるからね。
  まったく、懲りない…というか、何というか…心がというか精神が弱い…というか……」
??
「それは創主が万が一に復活したら、魔王を取り込もうとしている、ということなのですか?
  かつて自分たちを封じた力を持つであろう魔王を?」
そんなアンリにと質問しているヒスクライフさん。
「というか。正確にいえば、『シル』の力を、だけどね。創世神の」
「なるほど、創世神…シルケーブルですか……」
「そ。かの力を手にいれたら、もう向かうところ敵なしだからね」
「――最近、『箱』の噂を耳によくしますが……」
「いつの世もあの力を誤解して自らの欲望をかなえようとする人間がいるんだよねぇ。
  まったく嘆かわしいことに」
「それは同じ人間として耳が痛いですな。…事実であるがゆえに」
アンリの言葉に苦笑いをしてそんなことをいっている国王様。
え…えっと?
シルって?何?
そうせい…神?
ってそれ何?
つうか、箱ってなによ!?
箱って!?
何やら何かわけのわからない会話で盛り上がっているアンリや国王様たち。
横ではコンラッドたちがその会話をきき、何やら深刻そうな顔をしているし。
だから、何なの?
オレには意味がさっぱりだ。
何か一人浮いてるよなぁ…オレ。
とりあえず。
「あ、そうだ。そういえばベアトリス。
  この前言ってたビーズ細工の簡単作成セットもってきたから。後で渡すね。
  日本語は読めなくても図で説明してあるから大丈夫だとおもうんだけど」
同じく、話についてこれずに一人浮いているベアトリスにと話しかける。
「本当!?お兄ちゃん!?」
オレと同じく。
話についていけずに浮いていたベアトリスは、オレの言葉を聞いて目をきらきらと輝かせてくる。
「陛下。そう簡単に物を贈ったりするのはどうかと思うのですが……」
そういや、前何かそんなことをいってたっけ?
うかつに物をもらったりするな…とか、何とか。
「何で?だって前ベアトリス興味あるようだったし。それにさ。
  別に高価なものとかじゃないよ。五百円程度だし」
今この場で席についているのは、オレとアンリとカヴァルケードの国王様と。
あとはヒスクライフさんたち親子の六人。
後ろで控えていたギュンターが何やらいってくるので答えておく。
コンラッドもまた、後ろで控えている状態だ。
「?えん?というのはわかりかねますが?」
オレの言葉に首をかしげるギュンターに。
「いいじゃん。別に。ベアトリスだってほしそうだし。
  それにあれってハマったらいろいろと応用できるしね。
  小さいころから興味あることはいろいろと経験しておいたほうがいいよ。
  まあ、そのモノにもよるけど。別に危ない遊びってわけでもないし」
そんなオレの言葉に。
「確かに幼いときの経験は後々役にはたちますが……」
「どうせオレがもってたって。同じことだし。後でもっていくね」
「わ〜い!ついでに作り方も教えてね!おに〜ちゃん!」
「これ。ベアトリス……」
そんなベアトリスに横からベアトリスのお母さんが声をかけているけど。
「陛下は誰にでもお優しいですからねぇ」
いって苦笑しているコンラッド。
そんなオレの横のほうでは、
いまだに意味不明な会話で盛り上がっているアンリとヒスクライフさんや、カヴァルケード国王たち。
…だからぁ。
箱ってなに??
ねえ??


とりあえず、食事会も終わり、ひとまずお開き。
ということになり。
それぞれに分かれて彼らもまた、あてがわれている部屋にと移動する。
ヒスクライフさんたちカヴァルケード王様一行は数日この国を観光し、それから国にともどるとか。
調印式は今回は彼らがわざわざ来てくれたので、今度はこちらからいく。
といったところ。
なぜかしばらくギュンターなどが考えなおすようにといってきたり。
しかも、なぜかカヴァルケード国王まで。
何でも国王がいうには、かの国にも魔族に偏見をもっている人間というか国民は多いらしい。
だからこそ、そういう偏見をなくすためにも行くことに意味があるい必要がある。
と言ってどうにか説得すると。
何と立派なお考え。さすが陛下です!
とかいってギュンターなどには泣かれる始末……
お〜い…ギュンター…
カヴァルケード国王もその言葉になぜか驚きを隠せなかったけど。
オレ、別におかしいことはいってない…ハズだけどな??
ヒスクライフさんなどは、そんなオレの言葉になぜかものすごく感心してたけど。
とりあえず。
約束どおり、ベアトリスにと持ってきていたビーズの細工セットをもって彼女達の部屋にといき。
しばし、夜も更けるまで細工の作り方の指導をし。
ついでにオレもまだこの国のことをよく知らないので、
見送りがてらにヒスクライフさんたちと行動を共にすることに。
あまり大人数では人々を驚かせる。
というのもあり。
兵士は遠くからとか、前後についてオレたちの護衛。

「…何だかなぁ…見張られているようで落ち着かない……」
そんなオレの言葉に。
「なるほど。ユーリ殿は本当に守られるのになれておりませんなぁ。
  ですが王たるもの。守られることになれないと勤まりませんぞ?」
そんなオレのつぶやきに、にこやかにいってくるカヴァルケード王。
「でも。こんな厳重な警戒なんて映画の中でしか見たことないですし……」
「陛下。ほら、リラックス。リラックス」
とりあえず、市場やそして商店街。
後はオレがまだ知らなかった近場の観光名所数箇所。
それらを案内…というか、オレも一緒に案内されながら、国内視察を行ってゆく。

そして……


「…つかれた〜…」
「お疲れさま」
思わずベットにと倒れ付す。
無事にカヴァルケード国王一行は帰路にとついた。
行きも帰りも念のために護衛船を出している。
少なくとも、『魔族』の船がついている。
というのがあれば、海賊の残党や他の海賊も手を出してはこないらしい。
海路をきちんと確実に安全に確保するため、眞魔国とカヴァルケード国共同で海賊を駆除する。
というか捕らえるということも了解された。
ベットにと倒れ付すオレにといってくるコンラッド。
「何かさぁ?すっごい緊張した。特に初日」
「でもユーリはよくやりましたよ」
いってお茶を入れてくれるコンラッド。
やっぱり日本茶は落ち着くよな。
「きちんと出来てたのかなぁ?」
終わってみれば反省点ばかり。
「ま、用はなれですよ。なれ。
  でもまさか、カヴァルケードと和平を結べるとは思いませんでしたけどね。さすがですね」
「あの国王様がいい人だったからだよ」
何でもこちらの国との話し合いには、臣下の一部のものが反対していたらしいが。
なぜか、ヒスクライフさんから借りていたビーズ細工を見せて気をかえさせたとか。
この世界、というか人間の国ではガラスは大変に貴重らしく。
又、ガラスのクズでそんなものを作る…など思ってもみなかったらしい。
細工の細かさに感心して、話し合いに全員賛成させた、とか何とか……
あ、あのぉ?
あれってものすごぉ〜く簡単な細工モノなんですけど?
ここでも日本とこちらの意識の差がかなりあり、思わずびっくりではあったが。
「でもとりあえず、初の外交は終了?…何か外交って疲れるね……」
「まあ、そうでしょうね」
いいつつも。
「さ。どうなさいます?このままお休みになられますか?それとも?」
そういってコンラッドが問いかけてくるけど。
「とりあえず風呂にと入ってから、それから寝るよ。…アンリは?」
そういえば、アンリの姿を見てないぞ?
「ああ。猊下ならば、眞王廟にいっておられます。何でも眞王陛下に報告するとかで」
話を聞けば、何でも初代国王である眞王陛下エドワードというひとは。
死んで魂になってまで、この国を守り、そしてときにはアドバイスをもしているらしい。
…死んでまで働かされているなんて気の毒に……
というのがオレの素直な感想だが。
ひとまず、外交後の処理をあらかたすませてから、あちらにもどるということで話は決まり。
調印式があるらしいこちらの来月のその人体に、アンリが再びこちっちにと移動してきてくれるらしい。
そのときこそは、今度は失敗しないようにしないとな…
そんな会話をコンラッドとしつつも、お風呂に入ってベットにとはいる。
さすがにヴォルフラムも憑かれているのか、別の部屋でぐっすりとか。
ならば今日はゆっくりと寝られるでしょう。

「おやすみなさ〜い」
小さなことかもしれないけども。
オレにとっては大きな一歩だ。
きっと出来る。
いや、やってみせる。
人間と魔族、そしてそのほかの種族との共存した世界。
無意味な戦いのない世界を……
時間はまだまだあるんだから。
そんなことを思いつつ。
オレはそのまま睡魔にと襲われてゆく。

新王即位。
数ヵ月後。
初の人間の国との和平友好条約を設立、完成。
その噂はなぜかあっという間に国内、といわず他国にも伝わっていったらしい……

数日後。
オレとアンリは一度、あちらにと…つまりは日本にともどってゆく。
…ずっとまだこちらにいるわけにはいかないしね。
……学校あるし……

                   ―Next Misson End Go To Next……

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