「何で!?いや、何でそんな噂になってるの!?でなくてなってるんですか!? そんなことするはずないじゃん!?じゃなくてないじゃないですか!? というか、同じ大地に生きるものどうしで、滅ぼすだの何だの!?」 かなりうろたえ、逆の意味でパニックのオレに。 「陛下は人は殺せませんよ」 「逆にこいつは誰でも助けるぞ。それがたとえ本当の敵だとしても。無茶してでもな」 戸惑う俺にといってくるギュンターとヴォルフラム。 「ま、人の噂ってそんなものなんだろうねぇ」 などと、のんきなことをいっているアンリ。 「だから何でそんな噂がひろまってるの!?本当に!? うわぁ!?オレとしては皆が仲良く平和に暮らせる世界がいいのにぃ!?」 一人パニくっているオレをみつつ。 「……何か我々のイメージしていた双黒の魔王のイメージと…本当にあらゆる意味で違いますな…… というか、魔王のイメージとはまったく……」 何やら苦笑まじりにオレをみてそんなことをいいつつも。 「とにかく、我々としても早まらないでよかった。というところですかな? ムダな血を流すところでした。お許しくだされ」 そんなことをいってくる国王様。 「え?いや?あのそういわれましても……許すも何も、そもそも何もなかったですし…… それにオレ一人ででもそちらに出向いていって仲良くしましょうって。 話し合おうと本気で考えて計画してましたし、戦争なんて絶対に人としてだめですし。 ただ国民が互いに悲しい思いをするだけで何も生み出しませんからって。そう話し合おうかと……」 そんなオレの言葉に。 「お〜ま〜え〜は!まだそんな計画をっもていたのか!?」 「ヴォルフ。陛下はカヴァルケード国王様からの拝謁の打診があった時点で。 その計画はひとまず取りやめにしてるはずだよ?」 叫ぶヴォルフを冷静に苦笑まじりにたしなめているコンラッド。 ま、確かにその通りではあるけどさ。 「そもそも!おまえには魔王としての自覚がだなぁ!!」 「今はそんなことより。彼らを先に部屋にと案内するのが先じゃないのかなぁ?ね? こんな庭先で話すより。ね?」 いってアンリがウィンク一つ。 「……何か臣下の方のほうがしっかりしてます?」 思わず何やらつぶやく国王に。 「というかユーリは。僕もですけどこの国で育ってないですからね。 異世界育ちですし。僕の場合は、今まで生まれ変わった時や、魂だけの状態のとき。 それらすべての記憶を持って生まれ変わってますから、この国のこととかも判ってますけど。 ユーリは…彼はそうではないですから」 そんな国王にと何やら説明しているアンリ。 「…異世界?」 「ええ。彼も僕も今は地球って呼ばれている別の惑星。つまり異世界に住んでいるんですよ。 こっちに用事があるときに移動してきているんです。 何しろユーリの封印すら解けてない状態ですからね。彼まだ十六にも満たないですし」 「?封印とは?」 「ユーリの肉体には彼の母親であるソフィアさんが、特殊な術を施してあるんですよ。 地球は人間が主に生活してますかね。魔族も神族もみな同じように成長しますから。 当然、人も同じように成長しますし。それゆえうに、それにあわせて、今の彼の体は。 人間のそれとまったく変わりなく成長するように術がかかっているんですよ。 成長速度だけでなく、肉体的な面でも。術が解けるのが十六を迎えてから、十八になるまで。 もっともあちらの時間率で封印をかけてますから、こちらの時間率では一概にいえませんし。 あちらでそのときを迎えないかぎりは、こちらでいくら時間がたとうとも関係ないんですけどね」 「ソフィア…?って…では…やはり?」 何やら国王様や、ヒスクライフさん、そしてアンリで話し込んでいる。 ?? 「なるほど。ではやはり。十八年前に死亡した。というのはデマだったのですな。 なるほど。かの天空人の御子ならば、平和主義者なのもうなづける」 いって、何やらアンリの言葉に納得してかうなづいている国王様たち。 ?? いや…あのぉ? ヒスクライフさんたちもオレの母さんって人を知ってるんだろうか?? 「普段はこうでも。こいつは強大な力を秘めているがな……」 などと、なぜか珍しくため息まじりにグウェンダルがつぶやいているけど。 「まあ、火と水。さらには風を同時に操り。 あまつさえあのようなものを作り出しましたからねぇ。ユーリ殿は」 何やら思い出したようにそんなことを言っているヒスクライフさん。 ?? 同時に操った…って、誰が? 何を??
そんな会話をしつつも…ひとまず、挨拶はその辺りにし。 彼らにはそれぞれ、あてがった部屋にと向かってもらうことに。
そして、あけて翌朝。 彼らにも一晩ゆっくりと体を休めてもらう目的で、正式な対面の場は次の日。 ということに話はまとまったのだけど。 そして…今に至る。
「あれ?あ。おはようございます!ヒスクライフさん!それにえっと、カヴァルケード国王様!!」 朝のロードワーク中に廊下を歩く彼らの姿をみつけ、かけよってぺこりと頭をさげて挨拶をする。 国王様の名前も聞いたけど…何かややこしくて間違えそうなので。 国王様。と呼んだほうが失礼がないだろう。 …名前間違ったりでもしたら大変だしさ…… そんなオレの姿をみて、なぜか一瞬顔を見合わせ。 そして。 「?何をなさっているのですか?その…魔王殿?」 「あのぉ?その呼び方やめてほしいんですけど? 何かオレって自分でも思うけど王ってイメージでもないし。ユーリって呼んでください。 だってオレまだまだ仮免すらももらえないようなかけだしよりも前ですから」 苦笑しつつ、返事をかえす。 相手は大国の王様だ。 オレなんかに敬語なんか使わせてはそれこそ何か心苦しい。 いや、そうでなくても他の人でも心苦しいのに。 「ユーリ殿?もしかして早くからトレーニングですかな?みたところ?」 そんなオレにと国王である父親の横で聞いてくるヒスクライフさん。 「ええ。昔から朝には走ることにしてるんです。でも一人では走らせてもらえないんですけどね……」 いって、ちらり、と横のコンラッドをみるオレに。 「当たり前です!」 即答してくるコンラッド。 「でもさぁ。日本というか地元ではいっつも一人だよ?」 そんなオレのもっともな意見に。 「あちらの世界は基本的に平和ですし。何よりも日本は治安はいいですからね。 それに陛下の御身に危険がないですし。通り魔とかが出たら別ですけど。 そもそも、陛下が一国の王だ。というのを知っているのすら、関係者……というか。 陛下の養父母殿とそのご家族。そして猊下にあちらの地球の魔王殿。 などといったごく限られたものだけですので。ご身分で危険が及ぶ、ということもありませんし」 コンラッドがそんなことをいってくる。 「う〜…。あとそれに、日本では黒瞳・黒髪は当たり前だから?」 「そうです!ですが、こちらは違います。いくら王城内といえども油断は禁物です。 そ・れ・に!陛下は油断していたら、無意識にいったいどこに瞬間的に移動されることか……」 「…いや、それだから、自覚ないんだけど??本当にオレ、自分で移動なんてしてるの? でもさぁ。息苦しいんだよ?いつも護衛ついてたらさぁ?何か悪いようでさぁ。 コンラッドだって忙しいだろうにさ。それに兵士の皆さんとかも。 オレなんかの為にって…いっつも何か内心謝ってる状態なんだよ?」 「陛下ぁ。いい加減に守られることになれてください。我慢してください」 「無理」 コンラッドの言葉にきっぱりと即答する。 だってさ。 オレって皆に守られるようなご大層な人間じゃないし。 そんなオレとコンラッドの会話に。 「それではお言葉に甘えさせていただきましょう。 ユーリ殿はどうもこういった生活になれてないようですな? お育ちになった場所ではどうだったのですか?」 笑いながら聞いてくる国王様。 「どうって。普通ですよ? だってオレ、この前こっちに呼ばれるまで自分が実は王になるべき人物だったとか。 実の両親のこととか、なんにもしりませんでしたし。 ずっと両親は外国人で赤ん坊のときに死んだ。としか聞かされてなかったですし。 またそういわれてましたし。この十五年間」 あと数ヶ月で十六年目に突入だが。 オレの言葉に。 「ソフィア様が陛下をクリスタルに封じて術をかけている間のことは。 陛下は覚えてらっしゃいませんからねぇ。あの約二年半の間の期間は」 「オレ的には、本当にクリスタルなんかに閉じ込められてたの? というその事実のほうが衝撃的だったよ……。あと自分が魔王、と呼ばれたりさ。 だって普通は勇者をやりたいもんじゃない?魔王はないじゃん。 魔王は。勇者は人々のため、正義のため!っていうイメージだけど。 魔王っていったら逆だし。…ま、まあ魔王になってやるっ! って宣言しちゃったのは事実だけどさ。…つい、もののはずみでだけど。 とにかく、一から自分たちが優越主義?っていうの。 そういう概念を変えてって、それとか偏見差別もってるのも変えてって。とかしてこうと。 誰も何もいわない、というのがそもそもおかしいしねぇ。 誰もいわないならオレがするしかないじゃんってことで。 種族関係なく皆が平和に平等に暮らせる国にしていく。 それが誰もが願うことじゃん?どこまで出来るかわかんないけど、やる。 と決めた以上、小さいことからでもやってくしかないんだし」 そんなオレのつぶやきに。 「陛下ならきっと出来ますよ」 そんなオレたちの会話をききつつ。 「本当にかわってますな。貴殿は」 などとなぜか感心したような声を出してくる国王様。 「?そうですか?でも皆が仲良く、種族関係なく仲良くしたい。と思ってるのって当たり前なことでしょ?」 きょん、としつつ言うオレに。 「それはそうかもしれませんが……。ですが皆そんなことは無理。とあきらめてますからな」 などといってくる国王様だし。 「無理ってあきらめたら終わりですって。だって強固な壁も一滴の水滴で崩れるっていいますし。 誰かが、でなくてまずは自分から行動しないと。 といっても、オレはまだまだ何も出来てない、というか出来ませんけどね。 けどいつかは絶対に、差別なく暮らせる世界の実現めざしてがんばろう、と思ってますし。 カヴァルケード国王もそうなんじゃないですか? 王様って何よりも民の…国民の平和と安心。安らぎを提供する立場なんですし?」 「それは……」 ? オレの至極当たり前な問いかけに、なぜか言葉に詰まっている国王様。 「?オレ何か変なこといいました?ところで?お二人は朝はやくからどちらに?」 首をかしげつつも、ふと疑問に思ったことを問いかける。 「いや。すこしばかり城内を見て回ろうかと」 「あ、だったらオレも一緒にいいですか?いまだにオレこの城の中よくわかんないですし……」 「へ〜い〜か〜。陛下には朝のお仕事があります。彼らには案内のものをすぐに手配いたします」 「…ええ!?まさかまた!?あの書類の山のこと!?あの山みるのはイヤだよぉ!?」 「それもお仕事です」 「……あぅ……」 そんな会話をしつつも、コンラッドが近くの兵士を呼び寄せ何か言付けている。 それをうけて走ってゆく兵士の姿。 「とりあえず。そういうとですので。お二方ともしばしお部屋でお待ちいただけると幸いです。 すぐに案内のものを部屋にと向かわせますので」 いって、コンラッドが二人に対してお辞儀をし。 「さ。陛下。朝トレ終わったら、朝ご飯の後にお仕事と勉強ですよ?」 「だぁぁ!昼から謁見というか対談なのにぃぃ!?」 「だからです。さ、いきますよ」 「……しくしく……。えっと、すいません…それでは後で……」 何やら目を丸くしている二人をそのままに。 とりあえず、早朝トレーニングの続きを再開する。 何やら後ろのほうでは。
「…あらゆる意味で素直で本当に純粋な少年だな。あの彼は……」 「ですねぇ。」 そんな会話をしている二人の姿が。 …どういう意味だろ??
戻る →BACK・・・ →NEXT・・・
|