「これはご親切に…ってじゃねえぞ!?まだ話はおわってないぞ!?
  戦争なんて絶対に認めないからな!!魔王として!!」
オレの言葉に。
「知ったような口をきくな。話し合いに応じるような相手ならば素人にいわれなくてもそうしている」
ぎろり、とにらまれて言い返される。
「断られたの?まあそうだよねぇ。
本心や内心はともあれ、グウエェンダルはいつも怒っているように見えるし。
  言い方も、あんた、という人をしらない人にとっては高飛車に何かいっている。
  と捕らえるのは確実だし。旗からみて、あんたが偉そうに、しかも高飛車に話し合おう。
  っていっても、普通恐くてイヤだとおもうよ?人ってまず第一印象で決めるからねぇ」
しかも、それが人間たちが恐怖しているらしい、という魔族ならばなおさらだ。
オレの言葉に目に見えてグウエェンダルがいらいらとし始める。
普通、誰だって落書きとか素人に注意とか意見されれば頭にくる。
それが正しければなおさらに。
「その点オレだったら向こうも話を聞いてくれるかもしんない。
  だってグウェンダルたち他の魔族の皆さんと比べてもオレ迫力まったくないし。
  どこにでもいそうな平凡な人間だしさ。
  オレが王ですっていったら人間の警戒なんてなくなるよ。間違いなく」
そんなオレの言葉に。
「平凡な人間だって!?ユーリがか!?」
「陛下は魔族です!魔族の中でも高貴なる黒を御身に宿され、高貴なる血を引くお方です!」
「お前をそんなところにいかせられるわけないだろうが!!
  仮にもお前は魔王陛下だろうが!!コンラート!!」
なぜか、グウェンダルにまで非難され。
そして。
「私は他にやることがある。あとはまかせた」
とかいって、部屋から出ようとするし。
何か手をせわしなく動かしている。
あれって…癖なのかな?
それか、手話でオレには判らないことを他の皆に伝えようとしているのか。
「こらまて!まだ話は終わってないぞ!?」
オレがグウェンダルの後ろを追いかけようとすると、ギュンターとヴォルフラムに背中をつかまれる。
「だぁ〜!!はなせ!」
「落ち着け!ユーリ!」
「陛下!落ち着いてください!」
「ん?」
オレを必死で押しとどめるヴォルフラムとギュンターとは対照的に。
ふとコンラッドがグウェンダルが向かっている扉にと目をやって何やらつぶやいている。
と。
「グウェン!!また新しい道具を開発しました!ぜひに実験体になりなさい!」
……何だか見たことのない女の人がグウェンダルの前にそんなことをいいつつ立ちふさがってるし。
…誰??
「何ですか?あなた方は。騒ぐのでしたら外でお願いいたします。ほこりがたちます」
そういってくる女の人の前でグウェンダルは固まってるし。
しかも何かものすごい負の…恐怖したときなどに出るオーラを全身から噴出している。
??
その赤い髪の女の人は、ふとこちらにと視線をむけ。
「あら?もしかしてそちらでヴォルフラムとギュンターが押しとどめているのは。
  その黒い髪と瞳から我らが敬愛する陛下ではありませんか?一体どうなさったというのです?」
そういってくるし。
「アニシナこそどうしたんですか?」
状況がわからず、とりあえず、二人に手を放されて開放されたのにもかかわらず、立ち尽くすオレ。
そんなオレのの前にきて、アナシナと呼ばれた女性に聞いているコンラッド。
「わたくしは新しい魔道装置が完成しましたので。
  ぜひグウェンダルに実験台になってもらおうと思いまして」
「私はいま忙しい!!」
そのまま、ダッシュで何だか逃げ出そうとしているグウェンダルだが。
「逃がしませんことよ」
そんなグウェンダルの首ねっこをつかんでいるアニシナ、という女性。
えっとぉ??
何といっていいものやら。
「陛下は今、グウェンダルとカヴァルケードのことで話し合っていたんですよ」
そんな固まるオレにと助け舟を出してきてくれるコンラッド。
「あ!そうだ!グウェンダル!まだ話はおわってないぞ!戦争なんて絶対にダメだからな!!」
そんなオレの言葉に。
「戦争ですって!?……どういうことですの?」
グウェンダルとオレたちを見比べて問いかけてくるアニシナ…さん。
その隙に手が緩んだらしく、ダッシュで逃げていっているグウェンダルの姿が。
…何かものすごい必死さがにじみ出てるんですけど??
「と、とりあえず。ここでは何ですから」
そういうギュンターに。
「まさかユーリ!?彼女に話すつもりか!?」
なぜか顔色を変えてオレにいってくるヴォルフラム。
「え?だってさ。いい意見聞けるかもしれないじゃない?」
「やめとけ!!」
なぜか、珍しくヴォルフラムが顔色を変えていってくるけど。
とりあえず、部屋をかえ、彼女にと説明して意見を聞こう。
というオレに、なぜかヴォルフラムとコンラッドまでもが乗り気でなかったり……


「お久しぶりですわ。陛下。戴冠式以来ですわね。
  といってもわたくしは十貴族の末席におりましたので陛下はしらないでしょうけど。
  フォンカーベルニコフ・アニシナといいます」
いって、オレたちが座っているテーブるの魔でたったまま自己紹介をしてくるアニシナさん。
その燃えるような赤い髪が何とも印象深い。
そして。
「お話はよ〜くわかりました。男のくだらない理由で戦争などを始められては。
  困るのは女や子供です。このわたくしが人肌ぬぎましょう!!」
説明を聞き終わり、そんなことをいってくる。
「え!?本当に!?」
もしかして、この人、何かいい案とか対策とかもってるの!?
期待をこめたオレの言葉に。
「やめとけ!!ユーリ!!」
何か強い口調で席を立ち上がりつつもいってくるヴォルフラム。
…何で?
「ええ。用は人間たちをこちらにこさせないようにすればいいのです。
  ちょうどわたくしの発明品の試作品があります。
  わたくしの魔道装置をもってすればたやすいことです!」
……えと?
……まどう…そうち?
オレが首をかしげていると。
何でかヴォルフラムとコンラッドは額に手をあてて、ため息をついてるし…?

「お目にかけましょう!略して魔道扇風機!」
何やら大きな布がかけられたものが運ばれてくる。
布をのけたそこには、何やらプロペラがついている巨大な物体が。
「これで風を起こすことによって、強力な風で人も馬も馬からさえも近づけませんわ!!」
などといってるし。
「あ。なるほど。つまり大型台風中継のニュースキャスターみたいになるんだ」
そういえば、日本にも人工的に台風並みの風を起こす装置はあるけど……
風圧や風力などの威力を調べるための。
でもここって電気…確かないんだったよな?
確か……
ならどうやってうごかすんだろう?
みたところ、何か巨大な扇風機にみえなくもないそれ。
「ギュンター。陛下の望みをかなえてさしあげなさい!」
いってギュンターを指名しているアナシンさん。
「陛下のためになるのでしたら」
いってギュンターは席をたちあがり。
そして。
「そのレバーをもって魔力を集中してレバーをまわすのです」
……つまり、それって人力ってことじゃぁ……
魔力とは関係ないと思うなぁ……オレ……
ギュンターはといえば、何やらかなり重いらしく、力をかなり入れてレバーをまわそうとしている。
ゆっくりと、レバーがまわされるのと同時。
ちょうど心地いい風がプロペラより送られてくる。
そよ風程度の風力だ。
そして。
「ぜいぜい……」
すぐに体力がつきたらしく、何かそのままレバーに体を預けてぜいぜいと息をきらしてるギュンターの姿。
……ま、こんな大きなレバーをまわすのだけでもかなりの体力は使うよね…どう考えても……
「まったく。これくらいで何です!まったくこれだから男は軟弱だ。というんです!
  あなたがしっかりと魔力を提供しないと風が強くならないじゃないですか!!」
そんなギュンターにといっているアナシナさん。
そういう問題じゃないとおもうけど…
だって、ギュンターもう百歳こえてるんだしさぁ。
年齢的ならば、もう立派なおじいちゃんなんだし。
「え。えっと。まあいい風だったよ?」
アニシナさんに怒鳴られているギュンターに、とりあえずねぎらいの言葉をかける。
そして。
いまだにぜいぜい言っているギュンターをみながらも、こちらにと視線をむけ。
「仕方ないですわね。それじゃあコンラート」
「いやぁ。オレ魔力の欠片もないから」
アニシナさんに指名され、即座にそういっているコンラッド。
「どちらかというと、それって魔力より体力なんじゃあ……」
オレの至極最もなつぶやきは何のその。
「動力提供者がこれでは足止めにすらなりませんわね。ならば!!こちらを!魔道地震発生器!
  この上で飛び跳ねることによって大地に振動を起こして地震を起こすという。
  あ、ダイエット効果もありますのよ?敵も味方もこれで動けませんわ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・も、もしかしてこの人って…よくある俗にいう、『発明家』さん?
しかも、あんまり役に立たないものをよくつくる。
…いや、『発明』というのはそんなものが積み重なって出来ていくわけだけど……
「いや、それだとこちらも大変だし……」
オレの言葉に。
「そうですか?ならば他には……」
などといって、いろいろとみせてくれるけど。
どれも実用して戦争をとめられるとは思えない品々ばかり。

仕方ないので、丁寧に断って部屋にともどってゆくことに……

「……アニシナさんの発明っていつもあんななの?」
「ええ。大体昔から実験台はグウェンダルです。」
にこやかにオレの質問に答えてくれるコンラッド。
って……
「グウェンダルも苦労してるんだ……」
そういえば、戴冠式のとき、アニシナさんの名前を聞いてグウェンダルが何か恐怖してたっけ?
それで彼女の名前を聞いただけで、彼は恐怖を抱くわけだ。
これでひとつ納得。
そんな会話をしつつ、残っていた書類を片付けてながらふと外をみると。
何やら馬を従えた兵士たちの姿が。
「…あれは?」
「グウェンダルの兵でしょう。今回の一件でいろいろとうごいてますからね」
兵士たちをみて質問するオレにそういってくるコンラッド。
「……戦争…本当に可能性があるんだ……」
だけども…オレとしては……
「よっし!!」
意地を張っている場合じゃない。
この場合、たよりになる意見をもっているのは、おそらく――



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