「ルッテンベルグの獅子……か」 ベッドに横たわり、思わずつぶやく。 ヨザックが隊長。 といっていた、ということは、それなり、というかかなりの役職についていただろうに。 今はオレの護衛役。 何かものすごぉ〜く悪いことをしているようだ。 「どこで聞いた?ずいぶんと昔のことを。コンラートは確かに昔。そう呼ばれていたがな。 当時はもう少し髪が長かったからな。ちなみにルッテンベルグはあいつの生まれた土地の名だ」 オレのつぶやきが聞こえたのか、答えてくるヴォルフラム。 「ちょっとね。…そういえば。ずっと聞こうとおもってたんだけど…… フォン何たらって十貴族とかいうのにつくんだろ?」 オレの問いかけに。 「それがとうした?」 「いや。オレがこっちに初めてきたときに、何オレの命を狙っていたらしい人の名前が。 フォングランツ・アーダルベルトとかいってたから。 アンリに聞いても知ってるみたいなんだけど教えてくれないんだよね。 何かまた、今世でもまたあいつに心を乱されて悩むことはないって。いって」 そんなオレの言葉に。 「……あいつは僕達を裏切った。あいつは元グランツ領の跡取り息子で。 その婚約者がフォンウィンコット卿スザナ・ジュリアといったんだが。 あいつはジュリアが死んでからすぐに国を捨てた。魔族に復讐するために。 …もっとも、その婚約…というのは家が勝手にまとめたもので。 母上はその婚約をはきしてウェラー卿と。とか言い出してたがな。 だが当時の状況はそう甘いものではなかった。 たしかにコンラートの腕はそのときすでに眞魔国位置と呼ばれていたが、あいつの父親は…… それに、よからぬ進言をシュトッフェルにしたやつがいたからな。あいつは出征を余儀なくされた。 …奇跡的にもどったとき、すでにジュリアは死んでいたからな。 しばらくして先々代の王がソフィア様を伴って国にともどってきた。 何があったかはわからないけど、生きる望みを失っていたようになっていたコンラートは。 お前が生まれてその気力を取り戻したようだったがな。もどってきて一時姿を消してはいたが……」 「…そうなの?」 何か今のコンラッドからは想像すら出来ない過去だ。 「ジュリアはコンラートにとって、とても大切な人だったんだ。何ものにもかえがたい……」 いって、しばし遠くを見つめているヴォルフラム。 そして。 「そんなことより。ユーリ?猊下のいってた言葉の意味はなんだ?」 何やら話題を変えたいのか、オレにと問いかけてくるけど。 「さあ?オレの産まれる前。つまり前世で何かあったらしいんだよねぇ。 オレ、アンリみたいに覚えてないし。アンリは覚えてないほうがいいっていうし」 「ユーリの魂の元の持ち主か」 「そ。こっちの人だった。というのは間違いないらしくてさ。 聞き出したところによると産まれつき目の見えない女の人。だったんだって」 「……何?」 「アーダルベルトがオレの蓄積言語?ってやつを引き出して。 そのとき、その彼女の能力も一緒に出てきたみたいで。 面白いことに彫ってある文字とかに触れたら頭に文字が浮かんで意味が理解できるけどね。 でも文字の読み書きが出来ないから意味ないけど。意味がわかっても」 そんなオレの言葉に、なぜか。 「ちょっとまて!?それってまさか!?」 なぜか、立ち上がり、叫ぶようにしていっているヴォルフラム。 ?? はじかれたように立ち上がっているけど。 一体? そして。 「まさか…そんな……いや、でも…もしそうだとしたら……」 何か目を見開きつつ、何やら一人ぶつぶつとつぶやいてるし。 何だっていうんだろう? と。 「ちょっと聞いてくださいよ。坊ちゃん方」 カチャリ。 と扉が開かれる。 そして、入ってくるなりオレたちをみて。 「?閣下?どうかされたんですか?」 立ち上がっているヴォルフラムに聞いてるし。 「?ヨザック?老人施設にいったんじゃあ?」 オレの言葉に、にかっと笑い。 何やら手にしている紙をひらひらと卓上に手の平で叩きつける。 「行こうとしましたけども。けど俺ちょっとだけ頭をつかってまず役所で施設入所者を調べたのよ」 「へぇ。ここってそんなことができるんだ。 日本だとプライベート問題うんぬんで。他人には情報なんかなかなか教えてくれないけど」 オレの言葉に、腕をくんで。 「とにかく。ついてみて空だったら骨折り損でしょ? そしたら、予想通り。祭りの期間中は年寄り全員帰省中らしいです。 事前にわかって本当によかったですよ。で、何の気なくもらったこのチラシなんですけど」 みれば、黄色に赤い文字で大きく一行。 小さく三行。 もっと細かく、二・三行。 中央には肩を組んで太陽を指差す少年たちが、ヘタウマたっちで描かれている。 「だからぁ。オレにはこっちの文字は読めないんだってば。まだ」 オレの言葉にヴォルフラムがそれを覗き込み。 「何何?急募!命の最後に立ち会う仕事。死を目前にした同年代の少年を励ましてみませんか? 十代の容姿端麗な少年を求む。剣持参大歓迎。 賃金破格。面接随時……細かい文字の部分は僕にも読めない」 そういってその紙を覗き込んでいるけど。 「?」 ヨザックが何かをたくらんでいる的なオーラを発してるし。 アンリに言われ、日々努力していた結果。 大分誰ふりかまわず人のオーラをうけて、気分゛か悪くなるようにことはなくなっている。 こちらの空気を吸ったために、オレの中の力が安定してきているとかで、出来ることらしい。 よくわかんないけど。 「人間どもの筆記体は崩し方が変だ。美しさとか流麗さをまったく考慮していない。 我々の文字とは芸術性が違いすぎる」 などといっているし。 「はは。達筆すぎても読めないけどね……」 いい例。 日本の書道文字。 どうみても、ミミズがはっているようにしか見えないし。 しかも、そういったものがすばらしい、ともてはやされているしなぁ。 そんなヴォルフラムの言葉に思わず乾いた笑いをあげて少し突っ込みをいれつつ。 そして。 「けど。どういう仕事だよ?命の最後に立ち会うって? そんなの医者か看護師しか…それとか消防隊員とか?でも資格もいるし。 それってもしかして葬儀屋さんとか?あれ、でもあれはなくなった後だよな?」 オレのつぶやきに。 「何にしろ、人間の考えることや文化はわからない」 掃き捨てるようにいっているヴォルフラム。 いや、というか。 異世界、というか異文化、というのもは大概に判らない。 とおもうんですけど? いまだにオレがこちらの世界の常識とかがわからないように。 「異文化って判らないことだらけだもんねぇ。あのピッカリ君の挨拶みたいにさ」 オレの言葉に。 「アレは…印象深すぎる……」 オレの言葉に思い出したのか、少し汗を流していっているヴォルフラムの姿。 あれはかなり強烈だ。 そんなオレたちの会話をききつつも。 「モノはためしだ。この面接、うけてみましょうや」 などといってくるヨザック。 「?誰が?」 オレの素朴な問いかけに。 「ユーリにきまってるだろ?」 「ええ!?オレが!?無理だって!オレ容姿に自身ないし!?女顔だし!?」 そんなオレの言葉に。 『容姿なら絶対に大丈夫』 ヴォルフラムとヨザックの二人して異口同音にといってくる。 …でも女顔なんだよ? 黙ってたら女の子に間違われるんだよ? そんなオレの思いは何のその。 結局。 とりあえず、ダメ元で面接を受けてみることに。
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