「よくわかったね。オレがここにいるの。というか笑ってるだろ?」 オレの言葉に。 「陛下のことならわかりますよ。でもどうして笑っている。って判るんですか?」 にこやかに、涼しい笑みでいってくるコンラッドの姿。 「コンラッドがどんな表情をしているのかオレは見なくてもちゃんと判んの」 いいつつ、船を岸にとつける。 そんなオレにコンラッドが微笑みながらバスタオルをかけてくる。 「やりましたね。というかよく見つけられましたね」 「まあね。どうよ?一応王様の剣という魔剣。何かムンクの叫びの顔がついてるし」 いって鞘に収めていた剣をすらり、と引き抜く。 こいつとかたら、剣として構える分には軽いのに。 普通に鞘に入れて持つとずっしりと重い。 「すばらしい」 オレの方をみてそんなことをいってくるけど。 「そう?すばらしいかなぁ?これ?おもいっきりムンクの叫び。しかも何かうなってるし? あ、大仏と同じところにほくろ発見」 月明かりの下でみればよく判る。 小粒納豆くらいの黒い石が顔の中央というか額部分にとぽつり、とある。 「いえ。剣でなくて、あなたがです」 「オレ?」 「そう。ユーリが」 そんな歯のうくような台詞をさらり、といわれても。 だってコンラッドだって、ルッテンベルグの獅子って言われてたような人なんだろう? コンラッドのほうがよっぽどすばらしいよ。 そのまま、照れを隠すために、魔剣でかるく素振りをしてみる。 素振りの音が風を切る音でなく顔から出ている呻きなのが気になるが。 「とりあえず…泉はもう大丈夫…になったのかなぁ?あとこれ本当に使えるか。なんだけどさ。 交渉事に使うにしても、多分力を少しでも見せないと納得してもらえないだろうしなぁ〜……」 そんなオレの言葉に。 「そういえば。それをどうするつもりなんですか?」 「ん?だって。オレってどうみても王様ってイメージでもないから、絶対に。 だから戦争仕掛けてきそうだ、っていう国の王様に謁見願っても申し込んでもシカトされると思うし。 あまりいい作戦とはいえないけど、これって伝説になっている剣なんだろ? だったらそれもって話し合いたい、っていえば相手も応じるかなぁ?とおもって」 オレの言葉に。 「…話し合いのために…ですか?」 少し驚いたようなコンラッドの顔。 「そ。だってオレ王様らしいことな〜んもしてないし。当然国民にも皆にもそう思われてないだろうし。 だけど、一応役に立たない王でも戦争だけは何としても止めないと。 国民を守るのって王様の義務じゃん?でもそれは力づくで…だけでなく。 きっとこれもそのために今の時期に見つかったのかなぁ〜…って」 オレの言葉に次の言葉を何というか待っている様子のコンラッド。 「人質とかで平和に。というのはオレの中では許せないし。 いいことでないのかもしれないけど、いい方法じゃないとはおもうけど。 もし話し合いの場でこの剣のことをいわれたら、ならそちらにこれをお預けします。 とかいえば戦争は避けられるかなぁ?って」 オレの言葉に。 「…ユーリ。まさか…相手に渡すために取りにきたとか!?」 「そう」 ずごがしゃんっ!! ……ん? 何か後ろのほうでこける音が。 「でもそのためにはこれがどんな力をもっているか、知っとかないとね。何か呻いてばかりだし。 本当にそういう交渉に使っても大丈夫かどうかを」 そんなオレの言葉に。 「…ユーリ。それ一応眞魔国の宝なんですけど……」 「だからだよ。それくらいのものじゃないと相手も話にのってこないっしょ? 話をきけば、これってオレ…つまりは魔王にしか扱えないんでしょ? だったら保管を他国がしても問題ないし。 誰も使えないし、触れなければ悪用されることもないしね。 だからって、国においてたら、それこそ、伝説の魔剣よりも強い力を!!とかいって。 さらに周辺諸国の国々が躍起になってひどいことになるのは将来的に目に見えてるし」 「……あなたという人は……国宝をそういうことに使おう。なんて考えてるなんて初めてききましたよ」 ため息つきつも、コンラッドの笑みはさわやかだ。 「国宝っていっても、だったら、だからこそ国を守るために使われるのは本望だよ」 『う〜……』 何か文句を言うように剣はうなってるけど。 「問題はこれがどんな力をもっているか。なんだよなぁ。力によっては逆に相手国に預けて。 それでそっちで発動でもしたら、それこそ国際問題だし。 そういうヤバイのだったらこれは完全に誰の手にも触れられないように火山にでも封印しとかないとなぁ」 『ん〜!!!』 何か持っている剣がカタカタと震えてうなっているけど。 「……だから、今まで誰にもお考えを話さなかったのですか?」 「だって、反対されるのは目にみえてるし。特にグウェンダルはオレに対して、何というかこう…… 王であることに何か不満があるみたいなときがあるし…… というか、何か遠ざけたいような感じうけるし……」 そんなオレの言葉に。 「グウェンは不満なんてもってませんよ。むしろ逆に気にしている。といってもいいでしょう。 何しろ彼もユーリが赤ん坊のときおしめを変えたりしてますからねぇ」 …何!? 「彼の中ではユーリはまだあのときと同じなのでしょう。だから危険から遠ざけたいんですよ。 それに彼は小さくてかわいいものを愛してますからねぇ。 赤ん坊のときのユーリを彼が抱いていて、彼の不機嫌な顔をみて泣き喚いたときのあのうろたえようは。 見ていてとても面白かったですよ?といってもあなたは覚えてないでしょうけどね」 空を見上げてそんなことを笑いながらいっているコンラッド。 「うぇ〜!?オレ、グウェンダルにおしめをかえてもらったことがあるの!?」 初耳だ。 「ええ。でも手元がおぼつかなくて。よくソフィア様に笑われてましたよ」 「……何か知らないほうがよかったかも……」 思わずこめかみをおさえてしまう。 オレの左手の中で、何か訴えうるようにとうなっているメルギフ、もといモルギフの姿。 「ま、彼は小さくてかわいいものを愛してますからね。基本的に。 子猫とかリスとか。地球でよくみたハムスターとかね」 「うそっ!?」 ……あの無表情グウェンダルにそんな一面が!? 人間って見た目ではわからない。 というのは正にこのこと。 「とりあえうず、このままでは風でも引いてしまいかねません。一度宿にもどりましょう」 「了解。」 コンラッドに促され、剣を持って山道を下ってゆく。 少し離れた場所でヨザックらしい人物がひっくり返ってるけど。 けつまづいてコケでもしたのかな??
とりあえず、魔剣をもって宿にとコンラッドと共にもどってゆく。
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