『って、やっぱり陛下ご本人!?』 …あ゛。 なんか案内してくれた女の子の兵士さん達が何か叫んで固まってる。 「一人ならそれもしたけどね〜……あ」 そんな会話をしていると、トイレからでてくる人影二つ。 「おに〜ちゃん!」 「スピカ。大丈夫だった?」 かけよってスピカを抱きとめる。 スピカはといえばキョロキョロとオレの周りにいる人達をみて、そして。 「あ!コンラッドさんにウルリーケさんだ!っておに〜ちゃん。連絡とれたの?」 コンラッドとウルリーケの姿をみてとり、オレにと聞いてくる。 一方で、 「…あ、あの?これはいったい……」 何か戸惑っているティアラさん。 「あ。ありがとうございました。ティアラさん。スピカ、言葉がつうじなかったから大変だったんじゃぁ?」 ひとまずティアラさんにお礼をいいつつペコリと頭を下げてといかける。 「それは身ぶり手ぶりでどうにか…それより…って、ウルリーケ様!?どうしてこんなところに!?」 ウルリーケに気づいて何か叫んでいるティアラさんだし。 「…もしかしてもしかしなくてもスピカちゃん?」 スピカの姿をみて戸惑いつつもオレにと聞いてくるコンラッド。 「そ。だから一人じゃなかったし。スピカを連れての移動なんてもし何かあったら大変じゃん? スピカと一緒に崖からおちちゃって。気づいたらこっちに来てたらしくてさ〜。いや〜。まいったよ」 コンラッドに説明しつつ、 「スピカは初めてだよね?直接あうのは。 彼がウェラー・コンラート。そして彼女がウルリーケだよ」 手で指し示しながらひとまずスピカにと説明する。 そんなオレの言葉に目をきらきと輝かせ、 「いつもお兄ちゃんからお話は色々きいてます!はじめまして!渋谷星花ですっ!」 元気よく挨拶しているスピカの姿。 コンラッドとは言葉は通じるしね。 「たしか…あなたは五十年前に結婚して巫女をやめられたティアラ?どうしてここに?」 オレの横ではティアラさんに問いかけているウルリーケの姿。 「ええ!?ティアラさんってここに勤めてたの!?」 おもわずびっくり。 世の中、何がどうどこでつながっているかわかんないものだ。 「彼女は以前、ここで巫女をしておりまして。…陛下はどうして彼女と? それに、その女の子…以前、陛下に写真というもので見せていただいた妹さんに似てますけど……」 オレに説明しつつ戸惑いながらも問いかけてくるウルリーケ。 「へい…って…ええ!?」 あ…… 何かティアラさん、固まっちゃったし…… 説明してなかったもんな〜。 というか説明のしようがなかったんだけど。 「こっちに来たときにここがどこか教えてもらったんだよ。 どこに移動したのかオレ、皆目不明だったし。親切にもふもとの村まで送ってくれたんだ。 このティアラさんの家族。あと。そ。こっちは妹のスピカ。 今回、なんか一緒にきちゃったみたい。あはは」 そんなオレの言葉に、 「陛下の妹御!?」 「きゃ〜!どうりでかわいいっ!」 「あら?でも陛下は一人っ子のはずじゃぁ?」 何やら口ぐちにいっている巫女さん達や兵士さん達。 「陛下の養父母の娘さんですよ。たしか今は十歳のはずですけど。 あ、まだそれとも九歳ですかね。陛下の住まわれている日本の冬生まれですし」 そんな彼女達にと説明しているコンラッド。 「?おに〜ちゃん。コンラッドさん。言葉つうじるときとわかんないときがある。 おに〜ちゃんも。他の人達、なんていってるの?何お話してるの?」 そんなオレ達の会話をききつつも不安そうに訴えかけてくるスピカ。 オレ的には常に日本語で話しているつもりなんだけど。 どうやらそれぞれに言葉を変えて話しているようだ。 う〜む。 謎だ。 「あ。そうだ。ウルリーケ。ウルリーケって蓄積言語とかいうやつの引き出しってできる? スピカ、こっちの言葉が通じなくて……アンリがいうには前世はこっちにいたらしいから。 オレのときと同じようにしたら言葉が通じるようになるとおもうんだけど?」 オレのときはアーダルベルトがそれをやったらしいが。 フットボールよろしく頭をがしっとつかまれて。 そんなオレの言葉に、 「え?それより陛下の御翼を取り外して差し上げたほうが早いかと。 陛下や猊下の翼には特別な力が宿っていますから。 身につけていれば言葉を理解することも可能なはずですし。一種のお守りにもなりますし」 ・・・・・・・・・・は? 「何それ!?お守り云々はアンリから聞いたけど、それは初耳だよ!?」 あれって簡易的に持ち主を守る力が働くとかいうお守りになるんじゃなかったの? それ以外にも用途があったわけ?! 驚くオレに苦笑しつつも、 「以前。というかこの前、陛下からいただきました羽がありますから。
ひとまずスピカちゃんの首にかけますよ。ペンダントにしていますから」 いって首から羽のついている…というか水晶の中に羽が二枚。 金と銀の羽が入っている水晶付きペンダントを取り外し、スピカの首にとかけているコンラッド。 以前、コンラッドが大シマロンにしばらく滞在するといったときにお守り代わりに渡したやつだ。 また今度、アンリに頼んで羽をもらってお守り変わりのペンダントをつくっておこう。 コンラッドがスピカの首に皮の紐のそれをかけると同時。 「あ。すごい!おに〜ちゃん!みんなの言葉がわかるよ!すっご〜い!」 何か一人はしゃいでいるスピカの姿が。 …本当にどうやら翻訳機能もついているらしい。 「さすが陛下。その御翼にも聖なる力が宿っておられるのですわね」 などと感心している巫女さん達の姿もみてとれる。 …オレだって知らなかったぞ? …今度、英語をきくときに出してみるかなぁ?翼…… 「…だから。オレ、こんな効果があるなんてしらなかったってば……」 アンリも教えてくれなかったし。 というか知っててだまってた可能性大。 おもわずぼやいてしまうのは仕方ない。 絶対に。 「何はともあれ。言葉が通じるようになって何よりですわ。
はじめまして。わたくしはここ、眞王廟を預かります賜詞巫女のウルリーケともうします。
スピカさんのことはよく陛下からお話をうかがっておりましたわ」 いってにこりとスピカに話しかけているウルリーケに、 「あ…あの?もしかしなくても…本当にユーリ君…でなかった。その…魔王陛下ご本人なんですか?」 戸惑いつつもコンラッドに聞いているティアラさん。 「ええ。あ。そういえばお礼がまだでしたね。陛下を保護してくださったようでありがとうございます。 今回はどうも陛下ご自身の御力でこちらに来られたらしく。
我々が来訪をつかむのが遅れまして。出迎えもできませんで……」 いいつつティアラさんにお礼をいって頭をさげているコンラッド。 どうやらコンラッドとティアラさんは顔見知りらしい。 …世間ってせまい…… 「オレもまさか眞魔国に来てるなんておもわなかったし。ティアラさん達に出会って状況把握できたけど」 「そういえば、噂では魔王陛下はソフィア様譲りの女の子と見まごう容姿の持ち主だって…… てっきり陛下にあこがれて髪を染めているんだとばかり……」 何やらティアラさんはぶつぶつとつぶやいている。 スピカはといえば女の人達に囲まれて質問攻めにとあっている。 …というかおもちゃ状態? う〜ん…… 「最近は陛下や猊下にあこがれて髪を染めたりする人も増えていますから。 でも本当にお二人を保護していただいたそうで。ありがとうございました」 「あ…いえ。私のほうこそ。その魔王様と知らずにご無礼の数々を……」 何か二人してそんな会話をしているコンラッドとティアラさん。 どちらかといえばオレ達のほうがティアラさん達に迷惑をかけたんだけど? そ〜いえば…… 「でもよくオレがここにいるのわかったね。ニルファから連絡があったにしろさ。 一応、髪をターバンで隠して簡単な変装をしてるのに。それにここの眞王廟とても広いのに」 ふと思い問いかける。 しかも服はローブで隠しているので一見したところ、見たことがない服をきている。 とは判らないはずだ。 「ですから。わたくしも捜索していたのですわ。…陛下の御力を感じることができますし。 とりあえずこんなところでずっと立ち話は何ですのでひとまず部屋にとまいりましょう」 そういって何か促してくるウルリーケだけど。 「あ。それはまって」 「?陛下?」 とりあえず形式はきちんと通さねば。 「オレ。だって今。参拝客として記入してはいってきてるんだよ? それにまだ順番待ちで番号呼ばれてないし。いきなりいなくなったら他の人も変におもうんじゃ?」 オレより前の番号札の人もまだ呼ばれていなかったはずである。 それなのにオレだけ特別、というのは後味もわるいし納得もいかない。 「へ〜い〜か〜。そういう問題ですか? そもそも陛下が一般の人々の受付から入った…というのですら驚愕ですのに。 どうしていつもの場所からはいられなかったのですか?」 なぜか深くため息をつきながらもオレにといってくるコンラッド。 「だっていつもはいってた入口の場所ってわからないし。 そもそもやってきた道がいつもと違うんだし場所なんて判らないよ」 そもそも、方向音痴のものにそんなことを求める、というのが間違っているる 変に動いてそれこそ森の中で迷いかねない。 「「・・・・・・・・・・・・・・は〜……」」 コンラッドの言葉に即答するオレに、なぜかコンラッドやウルリーケを含めた数名がため息をつく。 「…広い、ですけどね。…たしかに……」 ぽつり、とつぶやいているウルリーケ。 「それにさ。何か名前と番号札でたぶん、きちんと入った人がどうなったか管理してるんでしょ?」 「それはそうですけど……」 番号札は一種の入場券のようなもので帰り際に返す品のはず。 「だったらさぁ。やっぱり。きちんと番号札をもらっている以上。その通りにしないと。 一人だけ特別扱いって他の人にも示しがつかないし」 「「そういう問題ではないとおもうのですけど……」」 何か巫女さん達から戸惑いの声があがっている。 「・・・・つまり。陛下としては一般の参拝客として入ってきたからには。
参拝客と同じように形式にのっとって対応して。 それからあらたに入りなおす…ということですか?」 額に手をあててため息まじりにいってくるコンラッド。 「だってさ。いきなりきえたらおかしいじゃん?オレ以外にもたくさんいたんだしさ」 『・・・・・・・はぁ〜……』 オレの至極もっと意見に、なぜかオレとスピカ以外全員がため息。 オレ、何かおかしいこといってる? 別にいってないとおもうけど? 「それはこちらで何とかします。 人々の前でそれこそ。陛下がいらしている。と判ればパニックは必然ですし。 …陛下のことを見知っているのは何も我々だけではないんですよ?
いつ他の人に判明するやもしれません」 いって深いため息をつき、 「ティアラ。陛下と今日、お話した人々はあなた達が一番多いかしら?」 視線をティアラさんにと変えて問いかけているウルリーケ。 「それは何とも…陛下は私達家族と同じ宿をとられましたし…… 今朝がた。陛下に娘の病気を治していただいたんです。 ……どうりで盟約の言葉もなしに水を創りだしたり熱を下げたりできましたわけですね……」 ウルリーケの問いかけに戸惑い気味にこたえているティアラさん。 どうりで、ってどういう意味? 癒しの力をもってる人ならば熱を下げたりは簡単にできるんじゃぁ? 「…それ。宿の人もしっていますの?」 「水、云々までは話してはいませんけど。癒しの御力のことはおそらくは会話から察しているかと…… 何があったか詳しくは夫にのみ話してはいますけど……」 「ではひとまずは安心ですね」 …? 安心って何が? 何か二人して話しているウルリーケとティアラさん。 ?? 「ひとまず。陛下。番号札をお渡し願います。あとはこちらで何とかします。 ティアラ。あなたは家族を連れて奥へ。挨拶に来た、という形をとらせていただきます。 お子様達から話しが広まったら大騒動ですし」 何やらテキパキと指示を出しているウルリーケ。 「え?あ。はい。私の番号札はこちらです」 そんなウルリーケにと番号札を手渡しているティアラさん。 それを衛兵らしき女の人に私、ウルリーケが何か指示をしてるけど。 「?これを渡すの?」 オレの持っているやつはといえば、緑の札に魔族文字で127、と書かれている。 よくわからないけど言われたとおりにそれを手渡すと、 ウルリーケの指示をうけて、別の衛兵さん達が走ってゆく。 いったいどうする気なんだろう? 何か一人特別扱いってものすっごく悪いような気がするんですけど… 「さ。陛下。そしてスピカちゃんはこちらへ」 何か有無をいわさないウルリーケの口調。 結局のところ仕方ないのでそのままウルリーケにとついてゆくことに……
戻る →BACK・・・ →NEXT・・・
|