とりあえず、オレはウェラー卿とかいう人の後ろに。
アンリは兵士の後ろにのってどこかに移動する。
なぜかアンリを乗せることになった兵士がものすっごく緊張しているように見えるけど。
一体全体何がどうなっているのやら。
人の後ろで馬にまたがるのは久しぶりだ。
そんな久しぶりの馬の乗り心地にゆられつつ。
パカラッパカラ。
と馬はスムーズに進められてゆく。

「とりあえず。まずいっとくけどユーリ。ここは日本でも。僕達が住んでいた地球ではないんだ」
「……は?」
馬上にてアンリの言葉に思わず間の抜けた声をだす。
「いやぁ…いやだなぁ。アンリ。あ。わかった!アンリもこのアトラクションに一枚かんでるんだな!?」
そんなオレの言葉に。
「陛下。申し訳ありませんがここはテーマパークでもアトラクションでもありませんよ?」
オレの前で言ってくるウェラー卿。
「ウェラー卿のいうとおり。
  第一、日本にこんなに広い自然がある場所。本当にあるとおもう?しかもこんな景色の?」
「・・・・・・・・・・」
ウェラー卿という人とアンリに交互にいわれ、思わずだまりこむ。
いやでも、もしかしたら北のほうにいけばあるかもしんないけど…広い自然は。
だけど……あの山々はないよな……
何かみたこともない植物とかも生えてるし……
わかった。
これ夢だ。
ということはとにかく目が覚めるのを待つのみだ。
「いっとくけど夢でも何でもないよ?ここは君の産まれた星だよ。ユーリ。いやユリティウス」
いや、そりゃオレの本名はそのユリ何とかってややこしい名前らしいけど……って?
「・・・・は?」
おもわず目が点となるのは仕方ないとおもう。
今…アンリ何ていった?
「…オレの産まれた?」
オレってたしかどこかの外国で産まれたんじゃなかったっけ?
どこだったかは聞き忘れてるけど。
「本来ならば君はここで家族と共にすごすはずだったんだけど……
  あろうことか君の命を狙うものがでてきてね。
  で、眞王エドワードは僕がいる星に君を送ることを決めたんだ」
「?・・しん・・・おう?」
何か聞いたことのない名前がでてきたぞ?
「陛下。眞王とは我等魔族の初代王です。
 陛下の御魂は大変に貴重だから。というので今から十八年前。
 陛下の母君であらせられますソフィア様とともに。
 俺はまだ赤ん坊だった陛下をお守りしつつ、地球へと出向きました。」
何やら振り向きつつそんなことをいってくるけど。
「……っていうかさぁ。十八年前…って計算あわないんじゃ?オレ今年で十六だよ?」
そんなオレの至極当然の突っ込みに。
「そうでもないよ?ユーリ?君の体はこちらで産まれた。
  …そうだね。こちらで産まれたウェラー卿をみてわかるとおり、
  こちらの世界の魔族はその成長スピードは地球人とはまったく異なる。
  それゆえに、ユーリの母親でもあるソフィアさんが人間と同じペースで成長するように、
  まだ赤ん坊だった君を特殊クリスタルに封印して。
  その体の組織細胞などに特殊な術。というか、封印をほどこしてね。
  で、君の肉体が普通の地球人のそれと同じペースで成長するようにしたんだよ。
  ……ただし、十六まで。たしかクリスタルに入ってたのが二年ちょい…だったんじゃなかったっけ?
  最も、僕はその途中で今の村田健、として産まれるべくボブの元を離れたから知らないけど」
「……いや、二年ちょいっ…って……」
何かだんだんとファンタジーじみてきたぞ……
「まあソフィアさんは天空人だったからねぇ。そんなことくらい朝飯前に……」
「ちょっとまて!アンリ!?何だよ!?その天空人ってドラクエか!?」
馬上で言い合うオレたちとは対象的に。
「?ドラクエ?…ああ。あれですか。でもでてきましたっけ?そういうの?」
とかいってるウェラー卿。
「あのエニックスのRPGのドラクエとは違うってば。ってウェラー卿は知ってても1か2くらいだろうし。
  シリーズが違うって。いろいろとあれシリーズに分かれてるからねぇ。
  とりあえず、ここでの天空人っていうのは、創世神に仕えていた、とされる人々のこと。
  種族に関係なく敬われてる存在ではあるけどね。
  ま、ユーリはその天空人とここの世界の魔族……
  正確にいえば、先々代魔王との間に産まれた子供なんだよ。」
「……どっかの小説じゃあるまいし…何かリアルな夢……」
そんなアンリの言葉に思わず頭を抱えるオレ。
だってそうじゃないか。
天空人っていったらドラクエの天空シリーズだろ?
あ、でもいきなり村人が全滅したり、奴隷にされたりしないだけましか?
…ん?いや、ちょっとまて。
……い…今アンリ…気になる言葉をいったような……
「まあ本来ならユーリが十八になったらその血の記憶と。
  ソフィアさんの封印も解けてすべて思い出してるだろうから。
  ユーリも戸惑うことなんてなかったんだろうけどね。
  ま、あのボブですら魔王やってるんだし、気にしなくてもいいんじゃない?ちょっと時期が早いけどさ」
そんなアンリの言葉に続き。
「申し訳ありません。もうアレから十八年はたってるからって…押し切られまして……
  っていうかいっても聞きませんし…あの人は……」
オレの前で困ったようにといってくるウェラー卿。
「?いやあの?え、えっと?ウェラー卿コンラッド…じゃない、コンラートさん?それって?」
オレが問いかけると。
「ああ。英語に慣れてるでしょうから。コンラッドでかまいませんよ。呼び捨てで。
  知人の中にはそう呼ぶ人もいますし」
「んじゃあ。え〜と?コンラッド?…とりあえず今アンリがいったことって?本当なの?
  それにあんた本当にオレの名付け親?」
とりあえずいろいろ聞きすぎて頭の中がごっちゃごちゃ。
まずは一つ一つ整理していくっきゃないでしょう。
「――そうですね。すべて本当。事実ですよ。本当に陛下はソフィア様に生き写しですね」
「――・・・・・」
オレが母さん似…というのがわかる、ということは。
絵でかオレも見たことがないオレの実の母を知ってるってこと?
あと昔ちょっと、なぜか水の中に姿みたりとかした母さんを。
「ま。ユーリ。まだとうぶんかかりそうなんだし。あまり一気に話してたら…つかれるよ?」
アンリの言葉に。
そういや、オレあまりに話しすぎてのどかわいてきたかも……
太陽はサンサンと照りつけてるし。
あ゛〜!せめて雨がほしい!あめ!
川の水でぬれたままで気持ちわるいしなぁ……
乾いてはいるけどさ。
雨に濡れるのと川に落ちて濡れるのとでは、はっきりいって気分的にかなり違う。
そんなことを思いつつ。
「あ〜…そういや喉かわいたかも…雨降らないかなぁ……」
ぽつり、とつぶやくオレの言葉に。
「陛下。そう都合よく……」
どじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
ウェラー卿が何やら言いかけたその刹那。
にわかに空が曇り、面白いまでの突然の大雨が。
「ラッキー!」
などといいつつ、思わず一人ガッツポーズをするオレとは対照的に。
「……またやってるし……」
などといいつつなぜか頭を抱えているアンリ。
そして。
「ユーリ?で?雨のせいで馬がぬかるみに足をとられたらどうするの?」
「……え?」
雨に濡れて喜ぶオレとは対照的なアンリの言葉に思わず考える。
そういえば、今オレたちは馬上の人なわけで……
「ああ!やっぱり雨は今降らなくていい!!」
不吉な可能性を思いつき、無駄だとわおっているのにあわてて空に向かって手を振ってみる。
と。
カラッ。
「…あれ?今の通り雨だったみたいだなぁ。偶然ってよくあるなぁ〜」
ずるっ。
先ほどの雨の気配すら微塵も見せない突如として晴れ渡ったそれを眺めてつぶやくオレの言葉に
なぜかアンリは馬から落ちそうになってるし……
「ああ!?大丈夫でございますか!?猊下!?」
そんなアンリの前で馬をさばしていた兵士があわててアンリを引き止めてるけど…
だから。
…猊下ってなに?
というか、よくあることじゃん。
いきなり雨がふっていきなりやむ。なんてさ。
「……今のってもしかして……」
なぜか目を見開いてつぶやくようにいっているウェラー卿に。
「…ユーリィ〜……」
情けない声をだしてじと目でオレをにらんでくるアンリの姿。
だから、今のってただの通り雨じゃん?
何であきれたような視線をアンリから投げかけられないといけないのやら。
「とりあえず……。まあもう少し辛抱してください。陛下」
苦笑まじりの声でオレにといってくるウェラー卿。
「えっと。コンラッドさんでしたっけ?」
「コンラッド。と呼びすてでいいですってば」
「んじゃあ。コンラッド。いったいオレたちどこに向かってるの?」
至極最もなオレの質問に。
「最終的には血盟城だろうね。その前におそらく中継場所によるだろうね。
  まちがいなくユーリを迎えに来てるのはウェラー卿とこのほか二人。ということはまずないだろうし」
いや、その物騒な名前のお城は何ですか?
というか中継場所って?
そんなオレにと返事をしてくるアンリの言葉。
「…迎えにって?」
何かものすっごく不安が増してきたんですけど?
さっきの言葉といい……
「ま。てっとり早くいえばユーリはウェラー卿たちの国。つまりは魔族達の国王になるべき人物なんだよ」
「――はいっ!?」
思わず目が点。
「この国の国王は世襲制ではなくて。その魂の資質によって決まるんだけどね。
  まあ僕やユーリみたいにあらかじめ決まった運命をもっている、という存在はあまりいないけど。
  君の父上が昔眞王エドのお告げをうけて王位を辞退して。
  その王位は別の人に継がれてたんだけどね。
  さっきもいったけどユーリの母君に出会い旅に出るため、だったんだけどさ。」
いいつつ、にっこりと笑みを浮かべ。
「その本質からいったら君の前世…つまりあの彼女が適任だったんだけど。
  何より彼女は目が見えなかったしね。それに当時の状況ではその後の戦乱のこともあって。
  で、生まれ変わった君がその次の王。ときまったんだよ。
  ちなみにそろそろ時期ではあるころだからね」

「だからぁ。アンリ。いい加減にそのオレの前世だっていうヒトの名前を教えてくれても……
  ん?ってちょっとまて!?ってことは何か!?
  もしかしてオレって国王…しかも魔王になれっていわれてるってことか!?」
オレの少ない脳みそにようやく何やら話しの筋が通ってきだしたようだ。
って!?
自分でいってて驚いてるんだけど…オレ……
「いいじゃん。あのボブですら魔王やってるんだし」
「兄貴に後継せまりまくってるけどね。…ってそういう問題!?」
あ。
何か頭がいたくなってきた……
よりによって魔王!?
勇者とかでなくて!?
「魔王っていっても君の思うとおりにすればいいんだよ。
  っていうかさ。ユーリなら絶対にこの星を平和に導けるだろうしね」
「・・・・・・・?」
何やら意味深な言葉を言っているアンリだけど。
「あのぉ?閣下?いったい陛下たちは何を話されて…?」
そんなオレたちの会話をききつつも、後ろから併走している兵士の一人が何やら聞いている。
「日本語はお前たちにはわからなくても無理はない。あ、そろそろ村が見えてきましたよ?陛下。
  あの村を越えたその二つ先の村に俺たちの陣営があります。
  きっとみんな陛下に一刻も早くあいたがっていると思いますよ」
いや…だからぁ……
ずっとオレたち日本語で話してるじゃん!?
「ま、覚悟をきめようよ。ユーリ」
・・・・・・・
あ・・・あはは・・・
「というか…まじでオレの父親って魔王だったのか?」
アンリ…冗談いってるんじゃないんだろうか?
乾いた笑いをあげることができずに、思わずつぶやくオレに。
「そうだよ?」
ずばっといってくるアンリだし。
これが夢ならば何か悪趣味。
ましてや現実だったらもっと非現実的だ。
いやまあ…育ての養父が魔族。というのも一般からすれば非現実だけど…さぁ?
でもこれは……はぁぁ〜……
できれば夢であってほしい。
というか夢オチ希望。

そんな会話をしつつも。
やがてオレたちはコンラッドが示したと思われる村にとたどり着き。
やがて一軒の家の前にとたどりつく……

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