「…リッッ!ユーリ!!」
揺さぶられて目をあける。
目をあけた視界に映ったのは、空が何だか夕焼け模様。
そして、ぼんやりとする思考の中。
「お〜い!大丈夫かぁ!?」
などと上のほうから声がしてきている。
「…あれ?」
「あ?気がついた?ユーリ?」
づけばそこはいつもの通いなれた道の下にと流れている川の川辺。
オレの横ではアンリが何やらオレをみていってきている。
どうやらアンリはオレをゆさぶっていたようだ。
……ユメ?
「ユメだったの?つ〜か長いユメ…しかもやけにリアルだし……」
いいつつ、視界をめぐらせる。
かるく周囲を見渡しても、やっぱりここはいつもの下校の道の景色だし。
すべて覚えているユメ。
というのも珍しい。
しかも、ユメの中でユメなら早くさめてくれ。
とか願っている…という夢も。
どうせユメならやっぱり勇者とかのほうがよかったのになぁ…
とか思ったりもするが。
「何かすげえ夢をみてたみたい……」
いってからだを起こすが。
キラッ。
……え?
胸元で光る何か。
そして。
「夢じゃないよ?」
「……え?」
キラリ、と光る何かをみれば、左胸の辺りにあちらでもらったブローチと。
そしてまた、首にはあちらの世界でコンラッドからもらったペンダントの魔石が。
ブローチはつけていないとあいつがうるさいのでずっとつけてたのは事実だけど……
「…って!?夢じゃない!?」
夢だとしたら、なぜにここまで物質証拠があるのやら……
「一旦こっちにもどってきたんだよ。って?お〜い?ユーリ?聞いてるぅ?」
アンリがにこやかにいってくるけど。
「って現実ぅぅぅぅぅ!?」
今さらながらにようやく理解し思わず叫ぶ。
「お〜い?兄ちゃんたち?大丈夫なのかぁ?」
何やら上のほうから声がしてくる。
「あ。大丈夫です。怪我とかもないですから。
  ほら。ユーリ。とりあえず、川からあがろ?それと…君ん家いって…服かわかしてもい〜い?」
そういえば、いわれて気づいたのだが、オレもアンリもびしょぬれだ。
確か…そうだ。
アンリにオレはあっちでアンリに突き飛ばされて…そして…
「って!何も突き落とすことはないじゃん!?」
「てっとり早いし」
「―――・・・・・・・」
もはや開いた口がふさがらない。
というか、あれが現実…というその事実がオレの思考を混乱させる。
普通は目がさめたら、やっぱり夢でした。
というのが普通じゃないの?
ねえ?
……夢じゃない…ということは……
何ともファンタジー的でSF小説すらもびっくりな出来事がオレの身に降りかかっている。
ということになる。
……つうか…普通、普通のしがない高校一年生が一国の王様なんかになるわけが……
しかも…肩書きが魔王……あぅ……
そんな会話をしつつも、とりあえず少し離れた場所にとある階段から上にと上がる。
みれば、ちょっとばかりの野次馬さんたちが集まってきてたようだけど。
オレたちが落ちて…というか、つまり川に突き落とされてから時間的にはまったくたっていないらしい。
オレとアンリが無事なのをみて。
「まったく。ここの川、やっぱり行政にいって柵必要よねぇ」
「大丈夫かい?君たち?」
口々にそんなことをいっている大人たち。
「は…はぁ……」
「ご心配おかけしました。このとおり僕達は大丈夫ですから」
そんな人々をアンリがにこやかにうまくさばしてくれる。

とりあえず、集まっていた人々には大丈夫だから。
と告げて、ひとまずはアンリと一緒にオレの家にと移動する。


「まあ!?ゆ〜ちゃん!?けんちゃん!?どうしたの!?びしょぬれじゃない!?」
オレとアンリをみて義母さん…つまりは、お袋がいってくる。
「ちょっと二人で川におちちゃって」
あっけらかんというアンリの言葉に。
「まあ!?怪我は!?怪我はないの!?二人とも!?」
アンリの言葉にパタパタとオレをさわって怪我の有無を確かめてくる。
そして。
「あら?ゆ〜ちゃん?これどうしたの?
  それにこれって…コンラッドさんがもってたネックレスと同じじゃあ?」
オレの首にかけられているネックレスに気づいて問いかけてくるおふくろの姿。
そして、ブローチに気づいて。
「ゆ〜ちゃん、こんなのもってなかったわよね?」
などといってるし。
そりゃ、もってたはずはありません。
「あ。それですか?ユーリがウェラー卿からもらったんですよ。
  ブローチのほうはウェラー卿の弟から。
  ちょっと早いけどユーリや僕らあっちの世界に呼ばれちゃったもので」
にこやかに、タオルを受け取りつつもアンリがおふくろにとこたえている。
って直球ですか!?
そんなアンリの説明に。
「ええ!?そうなの!?まだはやいんじゃあ?
  あ。じゃあもしかしてゆ〜ちゃん。魔王様に就任したの!?」
ずごげっ!!
思わず前のめりにとこけてしまう。
ってちょっとまてぃ!
今…おふくろ何ていったぁ!?
「ええ。まだ早いですけど。即位しましたよ?」
「まあ!じゃあゆ〜ちゃん!羽は!?羽は元にもどってないの!?
  あの綺麗な銀色の翼は!?魔王になったんだったら羽が復活したんじゃあ!?」
目をきらきらさせて、オレをみていってくるし……
いやあの……つぅか……
「…いや。ちょっとまって…って!?何だよ!?それ!?羽って!?
  というか!何で魔王なんて言葉がでてくるの!?」
オレのしごく最もな驚きと戸惑いの質問まじりの問いかけに。
「あら。だってゆ〜ちゃん。しんまこく。とかいう国の次の王様になる人物だってきいてたし。
  その国って魔族の国だから、魔王様だってゆ〜ちゃんのお母さんからきちんときいてたもの」
いや、オレは知らなかったぞ?
おふくろ………
にっこりと、微笑みながら何でもないように、さらっと爆弾発言をしてくるこの育ての母……
「ゆ〜ちゃんを預かるって決まったときに聞いてたのよ。
  で?ゆ〜ちゃん?羽は!?羽は元通りに復活したの!?みせてみせて!!」
そんなことをいってくるし。
「というか!んな羽なんてないってば!!!それより、おふくろたち知ってたの!?」
「ママ。でしょ?ゆ〜ちゃん?知ってたわよ?それが何か?」
……脱力……
そ〜だ。
こういう人だった。
この育ての母親って……
「とりあえずジェニファーさん。お風呂お借りできますか?」
そんな会話をまったく気にもとめずにアンリがいつものようにいってるし。
「いいわよ。でも、きゃぁ!!今日はゆ〜ちゃんのお祝いね!!
  でも羽が復活しなかったなんてちょっとママとしては残念。
  始めにゆ〜ちゃんにであったときなんか、かわいい銀色の翼が生えてたのに。
  クリスタルから出てきたゆ〜ちゃん、そのときに羽がなくなってたのよねぇ。
  ママかなり残念だったんだから。しかもゆ〜ちゃん、男の子になってたし。
  初めてソフィアさんに抱かれたゆ〜ちゃんとであったときは、ゆ〜ちゃん。
  男の子でも女の子でもなかったし、羽があったから、ママ天使!とおもっちゃったもの」
何やらものすっごく残念そうにいっているこの育ての母親……
自称。
浜辺のジェニファー。
茶色っぽい栗色の髪に茶色い瞳。
オレの育ての親の一人。
名前を渋谷美子。
……つうか……何か変なことをいっているような……
……ま、深くは聞かないことにしよ。
君子危うきに近寄らず。
という言葉がこのおふくろにはしっくりとくるし。
下手にきいて、それこそまたまた女装でもして写真をとろう!
とでもなったら大事だ。

結局のところ……

どうやら、オレは本当にあちらの世界でうまれ。
しかも、魔王、となるべく決まっていた人物らしい……
十五年生きていて驚愕の事実……

…とりあえず、あちらはあちら。
こちらはこちらでオレに出来ることをしよう。

…だって、こうなったらそれっきゃないでしょ?


                      ―Fast Misson End Go To Next……

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