ぐだっ…… 「陛下?大丈夫ですか?」 「…大丈夫じゃない……。ってだから陛下って呼ぶなって。名づけ親」 すべての行事が終わったのは何と、どっぷりと日もくれてから。 昼ごはんすらも食べていない。 大衆の中を兵士たちにと囲まれて城にと入り。 それが終わったら今度は各主要人物との謁見、という名の顔合わせ…… みなさんまあ美形なこと、美形なこと…… それでもまだまだ面会は全員が終わったわけではないらしい。 …も、簡便してよ〜…… で、とりあえず。 本日の即位式が終わり、オレは部屋にともどってそのままベットの中にとうずもれる。 アンリは何か用事がある、とかいって眞王廟にと出かけていったし。 明日も朝から面接があるとか何とか…お…王様って忙しいのね…… 「とりあえず何かお食べになりますか?」 コンラッドがオレにと聞いてくるけど。 「……その前に風呂にいくわ……」 すでに時間は夜の十時を回っている。 本来ならば。 いつもはご飯をたべて風呂にもはいってのんびりとテレビでもみているか。 はたまた、宿題をしている時間だ。 「それでもってご飯を食べてからねるっ!…何かつかれたし……」 オレの言葉に笑いながら。 「了解しました。それではそのように手配いたします」 いって何やら侍女らしき人に言付けているコンラッドの姿があったりするけど。 アクリにはまだ詳しくあの滝もどきの出来事の事実関係は聞き出せてないけど。 まあ、それは明日にでも聞くとして。 そのまま、ともかく今は風呂に入ってとにかくゆっくりと体を休めたい。
風呂からでてもどったら食事の用意が部屋の中において出来ており。 それを口にといれて、侍女らしき人を下がらせて。 今日のところはもう寝ることに。 …目が覚めたら今度こそ、ユメオチでした。 っていう冗談だったらいいのになぁ…といまだに思いつつ。
エンギワル〜!!! 何とも嫌な声で目がさめる。 「…やっぱりユメオチじゃないし……」 目が覚めるたびに思うこと。 思わず周囲を見渡し脱力。 そういえば…オレ、昨日…魔王として即位しちゃったんだっけ? …何か実感が……ないんですけど? 「おはようございます。陛下。お目覚めいかがですか?」 そういいつつ、扉をノックして入ってくるコンラッド。 「だからそう陛下ってよぶなって。…あれ?アンリは?」 いつもなら、いつのまにかもどってきているはずのアンリの姿が見えないし。 「ああ。猊下でしたら陛下の即位を期に陛下のお部屋のお隣を使っていただくことになりまして」 なぬ? 「なので今日からこのお部屋は陛下お一人でご使用されることになります」 コンラッドがにこやかにそういってくる。 って聞いてないよ!? 「おっはよ〜!!ユーリ!おきたかな?王様気分はどう?」 そんな会話をしていると、何やら元気な声とともに、アンリが部屋にと入ってくる。 「あのなぁ〜……」 あきらかにアンリのやつは楽しんでいる。 よ〜し! 「ちょうどいい。アンリも早トレ付き合え」 「でぇ〜!?」 アンリ、走るの苦手だしね。 オレの声にあからさまに動揺の声を上げているアンリ。 「オレで遊んでいる罰だ」 「そりゃないよ。ユーリ。別に遊んでなんかないってば。 そうだ。かわりといっては何だけどこの城の抜け道教えるからさぁ」 「ちょっとまってください!猊下!!」 アンリの声に面白いまでにあわてているコンラッド。 「あ。それいいかも。こっそりと抜け出せるのならそれに越したことは……」 それこそ、何か上様っ!っていう感じだし。 「陛下!!」 オレの言葉に何とかオレを思いとどまらせようとしているコンラッドが叫んでくる。 朝から元気がいいことだ。 「じゃ。決まりだね。あ、そうだ。ユーリ。 どうせ早朝トレーニングするにしても服がないだろ?昨日のうちに町で買ってきておいたよ?」 いってアンリが袋包みにはいったものをポン、と投げ渡してくる。 「買ってきた…ってお金は?」 オレたち、確かここの通貨もってないはずだけど? お金使うようなこともなかったし…… 「五百年前のへそくりがまだ眞王廟の中に残ってたからね。 それを古物店に一部もっていって換金したんだよ」 さらり。 というアンリだけど。 「「…いやあの…へそくりって……」」 オレと同じ考えにいたったのかコンラッドもオレと異口同音にといってくる。 「面白いものだよねぇ。だぁれも気づかなかったみたいだね。 まあ、あそこ限られた人しかいくら入れない、といってもさぁ。 僕のヘソクリ。エドの棺の後ろにとあるよろいにと隠してたんだけど」 いや、棺の後ろのよろいにって…… んなとこに隠すか?普通…… そんなアンリの言葉に。 「……猊下?そんなことをなされてたんですか?」 何やら脱力しきったコンラッドの声が。 「五百年前は僕は女の子だったしね。へそくりは女の甲斐性だし」 「……おふくろと同じようなことを……」 どうりでアンリはおふくろと話しが合うはずだ。 まあ、普通はお墓の中にヘソクリを隠すつわものがいる…とは思わないよなぁ…… 昔のエジプトとか、貴族のお墓に埋葬する…というんならともかくとして。 「まあその中にはここの世界の一般的な市民の普段着とかが入ってるから。 あとは髪を隠すのに必要なフードとかも入ってるから。 とりあえず僕朝のお祈りしてくるから、んじゃ、いってらっしゃ〜い」 そう言い放ち、部屋をでてゆくアンリ。 何かいいように言いくるめられたような気もしなくもないが。 とりあえず。 「とりあえず早朝トレーニングといきますか!」 何しろここにきてからずっとばたばたしてほとんどトレーニングなんてしてないし。 野球少年にとっては日ごろのトレーニングは欠かせない日課である。
とりあえず、城の中庭などをかるくランニング。 でもってストレッチに素振り……バットがないので訓練用の剣にて代用。 そして軽くラジオ体操。 「……何をやっておられるんですか?陛下?」 中庭でコンラッドと共にラジオ体操をしていると、ギュンターがオレを見つけて声をかけてくる。 「何って…ラジオ体操」 オレの言葉に。 「ギュンター。これは陛下の育った国の体を鍛える体操のひとつだよ」 いや、それはちょっと言い方が違うんじゃあ…… 基本的にラジオ体操は健康を維持する体操なんだし。 そんなコンラッドの言葉に。 「何と!さすが陛下です!このような朝早くからご自身を鍛えられるとは!」 一人、感激モードに突入してしまっているギュンター。 彼も朝から元気だなぁ…… よくここまで朝から元気になれるものだ。 とあるいみ関心してしまう。 「ギュンターもやってみる?」 「わたくしがですか!?」 オレの言葉に驚いて自分で自分を指差しているギュンター。 「そりゃいい。ギュンター。やってみないか? 俺がいないときなんか、陛下お一人でラジオ体操をされるのもさみしいだろう?」 コンラッドの言葉に。 「わたくしなどに、そのような高貴な動作ができるかどうか……」 「高貴って……これ、日本の子供たちの必須科目だよ?」 ただし、夏休みに限り。 そんな会話をしつつ、ギュンターに基本的なことをおしえていく。 教えながらかる〜くラジオ体操で体をならす。 これって本気でやったらかなり汗かいていい運動になるけど…そこまで本気にはやらないしね。 普通は…… 「これは!何と奥が深い!」 教えているとギュンターが何やら感激していたりするけども。 だから、ただのラジオ体操だってば…… とりあえず、ギュンターをも含めて、かるくラジオ体操をすませ。 それから朝のランニングへと。
一通り、朝のトレーニングを済ませ、風呂にと入り。 それから朝食が済んでから十時からまたまた謁見…… ……どうでもいいけど、皆さん全員美形でしかもややこしい名前の人ばかり。 はっきりいって舌をかみそうだし、いちいち全員覚えられそうにない。 三時すぎごろにようやく本日の謁見がおわり、ひとまず部屋にと移動する。 この後は勉強らしいけど。 でもその前に……
コンコン。 「は〜い。あれ?ユーリ?」 部屋にともどり、アンリに部屋にと移動する。 何やらアンリの部屋の机の上には山ほどの本が積まれている。 「どうしたの?」 オレの姿をみて問いかけてくるアンリ。 「あの子供たちのところにいきたいんだけど……抜け道ってあるの?というか、いく方法ある?」 オレの言葉にしばし、なぜか目をぱちくりさせたあと爆笑し。 「オッケー。いいよ。 あ、でもウェラー卿くらいはつれていかないと。二人でいったら大騒動になるよ?」 いってしばし考え。 「いや。そうでもないか。道の場所にもよるか」 とかいいながら、何やらにやり、と笑みを浮かべるアンリ。 この笑みはイタズラを思いついたときによくアンリが浮かべる笑みだ。 「でも書置きはしといてね?」 「オレここの文字なんてかけないよ?」 「日本語でいいんだよ。ウェラー卿はよめるしさ」 いいつつ、にんまりと笑みをうかべ。 「んじゃ、その子供たちとの用事がおわったら一度あっちにもどる?」 にっこりと、アンリはオレにそういって微笑みかけてくる。 「って!!?もどれるんかい!?」 おもわず突っ込みをしてしまう。 「そりゃ当然。ついでに村まで一気に移動するよ?」 「…いや、当然って…一気に移動って……」 いともあっさりとアンリは肯定してくるし。 もう、何に対して突っ込みをいれていいものやら。 思わずそんなアンリの言葉に脱力してしまう。
とりあえず。 子供たちのことも気になるし。 もどれるのなら、あちらもあちらで気がかりだ。 もうかなり前のようなことのような気がするけど。 確かオレたちは川におちてこちらの世界に流されたはずだし。 …あの時間、結構通行人とかいたからなぁ…… アンリが資料室から借りていた…とかいう本をすべて戻し。 それが終わってアンリとこっそりと計画始動。 まだまだいろいろとやることはあるらしいけど。 一応基本的な重要なことはやり終えたはずだしね。
子供たちとの約束を果たしにいってきます。ついでにあちらに一度もどります。 何かあったら呼んでください。渋谷有利。
と。 アンリの意見を取り入れて、資料室の中で紙にと書置きし、 ぺたり。 と張り紙をしておく。 コンラッドがみれば、読めるだろう。 日本語で書いてあっても。 そして、そのまま、オレとアンリは子供たちのいる村にと移動する。 アンリが示した資料庫からの抜け道をとおり、城の外にでたところで、そのまま空間移動。 というか瞬間的にと移動する。 アンリがいっていた、ルーラもどきらしいけど。 一度でもいったことがある場所ならば移動は簡単らしい。 …やっぱりドラクエのルーラ並みかも……
子供たちに約束したとおり、 野球の基本をおしえるためにと村にとやってきたオレたちをみて。 なぜか大人たちはオレとアンリの二人だけが村にやってきたのにかなり驚いてたけど。 驚くポイントはそこではないようなきがするんだけどなぁ? オレたち二人だけなんですか!? とかいってたし。 というか、いきなり空から降ってきた…という点を普通おどろくんじゃないのかなぁ?? 何はともあれ。 子供たちにと約束していたとおり。 彼らにと野球の手ほどきをかねて、しばらく一緒にと遊ぶことしばし。
そして―――
「で?どうやってもどるの?」 「こうやって♪」 「うわっ!?」 子供たちと別れ、そして村の地価くにある小さな湖。 そこにと移動したオレとアンリ。 いきなりアンリはオレをその湖の中にと突き飛ばしてくるし。 ってこのまま湖にオレおっこちる!? が。 しかし、なぜか一瞬。 視界が暗くなり。 そんなに深い湖ではないはずなのに何やら強い力にひっぱられるかのように吸い込まれる。 確か…確か、この世界に来たときは…確か川から… ってアンリぃぃ!! いくら何でも突き落とすことはないだろ! 突き落とすことはぁぁ!! オレの叫びはどこにやら。 そのまま、オレはそのまま流れに飲み込まれてゆく。
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