そんなオレの叫びをまったく無視し。 「兄上。この襲撃は我々の土地に対する宣戦布告の理由になりますか?」 「……まあ、理由のいったんにはな」 って…だからちょっとまてぃ! オレを無視して話しているヴォルフラムとグウェンダル。 宣戦布告だって!? 昔のヨーロッパとか戦国時代によく聞かれていたであろう言葉を耳にして、思わず絶句する。 「宣戦布告だって!?こっちから戦争をしかけようってのか!? 冗談じゃない!どうかしてる!戦争で傷つくのは国民。何の罪もない人々なんだぞ!?」 そんな叫ぶオレの言葉をまったく無視してるし。 ……こいつらは…… 「……もう少し、多角的に考えろ。ヴォルフラム。正規軍の兵士が一人としてくわわってないんだ。 この襲撃を主たる理由にすればやつらは村をひとつ切り捨てるだけで逃れられる。 必要なのは確実性だ」 「ではやつらがこの国の辺境を思うままにするまで指をくわえてみていろ。というのですか!?」 だから何でそうなるんだよ!? っ! 「おまえら、聞けぇ〜!!専守攻防ってしってるか!?とにかく守るだけって意味だよ!! 自分から戦ったりはしないって意味だよ!現代日本は平和主義なんだ! 戦争放棄してるんだ!二度と国土が焼け野原になって。 若い命が自らが弾丸の変わりになって飛行機ごと突進していく。 そんな悲惨なことを二度としないためにもなっ! 生まれはオレはあんたたちがいうように、こっちなのかもしれないけど! 十五の今日まで日本で育ったんだ!!オレも戦争は反対だ! 反対どころか大反対だ!!」 オレの言葉になぜか数名の兵士たちがざわめく。 二度とあんなことは…などといっているけど。 「そりゃ確かに!だからといって地球で戦争がなくなっているわけじゃないよ! いつ、罪のない人の命が狙われるかもわかんねぇテロとかもあるしな! だけど!それでも必ず誰かがそれを止めようと動いている!! 世界のほとんどの人が大半以上の人が平和になるように祈ってるさ!」 とにかく大声で、彼らの耳にもとどくように、とにかく叫ぶ。 「なのに!おまえらの話はどうよ!? もっと確実に戦争ができるようになるまでわざとだまってみてるだとぉ!?」 「――…わめくな…」 オレの言葉をうけて、顔をしかめてグウェンダルがいってくるけど。 やだね。 オレは口から先に生まれたともいわれてるし。 トルコ行進曲ってあだ名もある。 「話し合え!とにかく話し合いをしろってんだ! あんたの国の国民がうちの農地を燃やしました。 どうしてくれます?どう保障してくれます?うちとしては絶対に戦争は避けたい。 以後こういうことのないように国内で対処してもらえますか?ってね!! とにかく解決めざしてとことん話し合いをしろってんだ!!」 「わめくな!異界人!」 「いいや!わめくね!わめかしてもらうね! 産まれはどうあれ、オレは二十歳までは日本人なの! 成人するまでは日本国籍があんの!いや、成人してからも一生あるの! 平和に関しちゃ今の日本のほうがこの国より優秀だと思ってるから、 やめろって言われてもいいつづけるね!! 戦争反対!絶対反対!一生反対!死んでも反対!」 「では一度死ぬか!?」 「やなこった!!」 よっし。 クールで人のことなど眉にも唾にもかけないグウェンダルを巻き込んだ。 とにかく、オレとしてはひく気はない。 たとえどのようにすごまれたり、脅されたり、挙句にたとえ剣の切っ先を突きつけられたとしても。 「王になる気もないのであろう?お前は?しかもまだ未成年のくせに。 ならばわが国のことに口を出すな! 私にはこの国を守る義務があり、責任があり、国益を考える義務がある。 お前は日本だかいう場所のご大層な倫理と生ぬるい手段で自分の育った国を守るがいい。 だが我々には我々の。魔族には魔族のやりかたがある」 「だったら…だったら!オレがかえてやるよ!!その間違った魔族のやり方っつうのをな!! オレが一からかえてやるっ!!この空は汚れてないじゃないか! この大地は毒されてもないし森は乱されてもいない。こんなに綺麗な自然なのにっ! なのに、だけど、おかしいだろ!?そんな考えの世界!! お前ら綺麗でかっこいいけど!性格にかなり問題あり!! 人権差別とか危険な風習とか!特権階級意識とか!戦争好きとか! だからってもう片方の人間側が平和主義かっていうととんでもない! 人間同士なのに魔族の土地に住んでいるから襲っていいって何!? そんな馬鹿な話ある!? 戦争するのに神様が力をかしてくれるってそんな物騒な信仰あり!? というか、そもそも創世神の教えはそうじゃないだろうがっ!!」 ……って?あれ? シル…何? 自分で自分が何をいっているのかが、ふとわからないけど。 「陛下」 陛下なんて呼ぶのは三兄弟ではコンラッドだけ。 コンラッドの虚を疲れたようなトパーズ・アイ。 「そもそも何でこの星があるのか!それを考えてもわかるだろうがっ!」 いや、だから、オレ何いってんの? 何となくだけど…でも判る。 不思議なことに。 「この地はかつてそんな馬鹿げた戦いによる戦争のせいで星そのものどころか! 銀河空間までもが一度死んだんだろうが!!この星も例外じゃなかっただろうが! せっかく、ここまで命あふれる星になったんだろ!?なってるんだろ!? また同じ過ちを繰り返そうとしてどうするんだよっ! 人間たちも間違っている。だからって魔族側まで間違えてどうするんだよっ! 自分たちだけでも正しい道をいくのが義務ってもんじゃないのか!? 戦争するのは間違ってるっ!!」 自分でも意味不明なことをところどころにいっている。 だけども大まかはそのとおりに違いないはずだ。 というのは確信がもてる。 …なぜか。 「王様が戦争なんてダメだっていえば国民はそれに従うんだろ?」 「陛下っ!」 オレの低いつぶやきに、コンラッドが小さく叫んでくる。 だけど、もうオレもとまれない。 そしてなぜか。 「あ。やっぱり」 などといっているアンリの声が聞こえている。 「……オレが魔王になってやる……」 低く、低い声でさらにつぶやき。 そして次には大声でどなる。 「オレが眞魔国国王になってやらぁ!で一からかえてやるっ!!」 オレがサインを出さないと、ゲームはずっと始まらない。 「やっぱり。こうなると思った。……ま。ユーリの性格だしねぇ」 のんびりと悟ったようなアンリが何やら後ろのほうでいっている。 オレの叫びになぜか一瞬が固まり。 そして。
ドッン!!
兵士たちが固まったすきをつき、捕らえられていた今回の襲撃の首謀者。 とグウェンダルたちがいっていた人物が、一気にオレにととびかかってくる。 そして。 「動くなっ!!」 気づけばオレは押し倒されていて、喉には男の手がかかっている。 「誰もうごくなよ!?動いたらこいつの命はないっ!」 「っ!!しまった!!」 コンラッドが小さく舌打ちして叫んで動こうとするが。 男の手がオレの首にとかかる。 「お前も無駄な抵抗はするなよ?」 「――わかりました」 というか、こういう場合は確か素直に従いすきをみて逃げ出す。 というのが常識だ。 伊達にいろいろとテレビなどで状況打破のための対策を見ているわけではない。 というかよくやってるし…… 「ちっ!」 誰かがオレにもわかるほどに舌打ちしてるけど。 …誰だろう? 「というかさぁ。知らないなんて恐いよねぇ」 しみじみと、まったく動揺していないアンリの声。 …アンリ……そりゃないよ。 一応オレ今ピンチだと思うんだけど? 「それとも。偉大なる魔王陛下様にこんな口はきけねえのかな?オレたちみたいな下っ端が。 あんたが本当に魔王っていうんなら、こんなに簡単でいいのかよ? オレみたいな一介の兵卒が」 いいつつ首を羽交い絞めにしたまま立たされる。 「どっかに拉致しようとしてるのに。お前ら、呪文の欠片でもはいてみろ。 俺も死ぬかもしんねえがこいつも命を落とす!どっちが先かなんてためすなよ? これでも二十六年あまりも兵隊だったんだ」 オレを羽交い絞めにしたままで、じりじりと魔族たちからあとずさる。 呪文ってはくものなの? 何かオレもどこかずれてるところで驚いてるようなきがする…… こんな状況なのに、なぜかまったく命の危険を感じないのは…何でだろ??? 「死に掛けたふりしてきいてりゃあ。目の前のガキが魔王だっていうじゃねえか。 しかも、剣も術もてんでダメらしい。そんな魔王が本当にいいのかよ?」 「…しょうがねぇじゃん」 オレの言葉に。 「まあどっちらしろ。この世に二つと生まれない、といわれている双黒だ。 そっちにももう一人いるがな。双黒のやつは。 たとえお前が王様じゃなくても人財産稼げる。 お前さん自分じゃあしってるのかい? 髪や瞳の黒いもんを手にいれれば不老不死の力を得るって。 いくらでも金を積むやつがいるのさ!」 ……というか、この世界ってそんなことになってんの? とにかくどうにかして逃げないと…… と。 「うわっ!?」 なぜか一瞬男の手が緩む。 何かふらついてるし。 …えっと? と。 ガサッ! 次の瞬間、というか同時に後ろの茂みが揺れる音。 そして、次の瞬間。 オレは小さな何かに弾き飛ばされる。 「てめえっ!!」 弾き飛ばされ、起き上がろうとするオレの目にとはいったのは。 見覚えのある金髪の少年、ブランドン。 その彼が思いっきり男になぐられ弾き飛ばされている。 「ブ…ブランドン!?」 「縛」 オレの言葉と、近づいてくるアンリの声が重なる。 「なっ!?うごけ!?うごけない!? くそ!?何だっていきなり足元がぬかるみやがった!?それにあのガキっ!!」 みれば、なぜか男の足元はひじの辺りまで地面の中にすっぽりと埋まってるし。 そりゃ、さっきまで雨ふってたし。 ふと後ろをみれば、なぜかオレの後ろにはグウェンダルが。 何かちょうど支えてくれるような形になってるし。 だけども、今はそれよりも。 オレは、オレを弾き飛ばしてくれた小さな恩人の姿が目にはいり、あわててかけよる。 頭から血が流れているのが見て取れる。 金の髪が赤くそまってゆく。
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