「……うっ……」 「……リっ!ユーリ!!」 名前を呼ばれて目を開く。 思いっきり気づけば大の字になって横たわっているオレ。 というか何で青空?? 確かさっきまで夕暮れ時じゃなかったっけ? そんな疑問を抱きつつ、ふと横を見れば見慣れた眼鏡君の姿が。 「アンリ?…オレたちいったい?」 ふと気づけば体の下の地面は本当の土で。 辺りを見ても見慣れた景色も建造物すらも見当たらない。 ……というか、オレたちどこまで流されちゃったわけ? 何か異様に空気が澄んでいる。 いったい、大気汚染や異常気象。 オゾン層破壊はどこにいった?というような感じを受けるのはオレの気のせいだろうか? 「よかった。ユーリ。怪我はない?」 ほっと胸をなでおろしているアンリの姿。 「なあ?オレたち?」 首を傾げつつ問いかける。 立ち上がったその目に見えるのは……何で山? どこまでも続く青空に視界の先にはご近所では絶対に見ないはずの連なった山々の姿が。 「……アルプス?」 思わず口に出た言葉はそのまま。 よくテレビや雑誌で見る山並みによく似ている。 「・・・・・・・・?」 「……何でまだユーリは16にも18にもなってないのに早すぎる……」 横では何やらアンリがぶつぶつつぶやいているけど。 ?? そりゃオレはまだ、16の誕生日は産まれは夏らしいので迎えてないけど。 「ここどこ?」 立ち上がる俺の言葉に、何やらアンリはいまだにぶつぶつとつぶやいたまま。 何か早すぎるだのどうだのいってるけど。 何はともあれ。 もしかしたらオレたちはどっかに川から引っ張り上げられてつれてこられたのかもしれないし。 はたまた夢を見ているのかもしれないし。 「あっ!人が!!」 ふと気がついたら、何か視界の先の道にと人が歩いている。 「!?ユーリ!?まっ!!」 何やらアンリがあわてて止めてくるけど。 って…… ?? この人の格好…何? 姿も何か変だし? まるでどこかの外国舞台の漫画に出てくるような…アニメや絵の中でしか見たことないような…… ロングエプロンドレスを着こなしているし。 …えっと…外国人?なのかな? 何か手には果物らしきものをもってるけど?? と。 「〜!!!!!」 何やら女性がオレをみて叫んでいる。 ……何語? 英語…じゃないし? 「馬鹿っ!ユーリ!何で声をかけっ!!」 アンリがあわてた様子で駆け寄って叫んでくるけど。 そして、その女性は叫びつつも何や走っていってるし。 すぐさま、その女性の叫びを合図にしたかのように、 少し先にと見えるメルヘンチックな石作りの家々から人々が次々と飛び出してくる。 ……手にはなぜかクワやスキをもってるし。 しかも、全員がコスプレぇぇ!? えっと…… 「あ。そ〜か。ここってテーマパーク?オレたちどっかのテーマパークに打ち捨てられたの?」 アンリに聞くが、ただただアンリは額に手をやりため息をつくばかり。 『・・・・・!?』『魔族が二人も!?』 『・・・・・!!!!?』『何でこんな場所に!?』 『・・っ!!』『不吉な!!』 ??? オレには彼らが何を言っているのかわからないが。 だがしかし、どうやらアンリにはわかっているのか大きくため息ひとつ。 そして。 「ユーリ?僕のそば…後ろから離れるなよ?」 何やらいつになく真剣な顔でオレにといってくる。 そして。 『・・・・・・・・・・・・・・・』『黒髪・黒眼が魔族…というのは、そちらの偏見。というかこの世界、まだ間違った知識が根深いのか……』 何やら村人たちにと向かっていっているアンリだし。 えっと…ロシア語? それとも? だぁぁ!! アンリはほとんど全ヵ国の言葉が話せるからわかんねぇぇ〜!! 『・・・・・・・・・』『いっときますけど僕らは魔族…とは一概にはいえませんよ?』 両親がそうであるのはおいていて。 アンリが何やらぽつり、と最後の言葉はオレにもわかる言葉でつぶやいてるけど。
『・・・・・。・・・・・?』 『ともかく。僕としてもどうしてこっちに呼ばれたのかわかりませんし。いっときますけど彼に手出ししようとしたらこの僕の名前にかけて多少手荒なこともしかねませんよ?』 『・・・・・・・・・・・!!』『魔族が何を!!』
何やら村人たちとアンリが言い合ってるし。 つうか、まったくオレには理解不能な言葉で。 何かさらに村人たちが殺気立ってるようなんですけど? 「……あ、あのぉ?とりあえず、確かに入場料を払ってないであろうことは認めますけど。 あ、でも今オレ四千円しかもってないんですけど、たりますか?」 とりあえずごそごそとサイフを取り出そうとすると。 オレが動くと何やら余計に殺気立っているテーマパークの人々。 でもこの人たち…やっぱり普通の人間だよなぁ? 何でこんなに殺気立ってるの? 何かオレたちみておびえてるようだし?? と。 パカラッパカラッ!! 何やらオレの一番スキな時代劇のオープニングよろしく村人約の人々の後ろから、 馬に乗った一人の男がやってくる。 その人物を垣間見て。 「なっ!?フォングランツ卿アーダルベルト!?」 何やらアンリが叫んでるけど。 えっと…アンリの知り合い? 村人役の人たちのその男性は何やら言うと、おとなしくなる村人役の人々。 どうやら責任者の人なのかな? 「なあ?アンリ?あの人責任者の人?というか、ほかの人と違うけど……」 何が違うって、そう、まとっている気というかオーラが。 オレってなんでか人の生命エネルギーみたいなものを見る力が昔からあるみたいだし。 おかげでかなり助かってたりするのもあるけど。 オレはそれらをオーラって呼んでるけどね。 まあ、それはそれとして。 「あのぉ〜?すいません。オレたち気づいたらここに来てたらしくて……」 「よせっ!ユーリ!そいつは!!」 アンリが止めてくるけど。 「?何いってるんだ?ともかく勝手にこのテーマパークに入ってきたのはオレたちなんだし。事情を説明して……」 オレとアンリが話していると。 『・・・・・・・・・?』『言葉が話せない…となるとこっちか?』 オレをみて、何やらいいつつ馬から降りてくるその男性。 そしてそのまま、あろうことかオレの頭をアメフトのボールよろしくにぎってくるし。 ちょっとまて!オレの頭はボールじゃない!! 「「なっ!?まさかやめっ!!」」 なにやらアンリが叫んでるけど。 どうみても、一見アメフトやっているような金髪でトルキッシュブルーのその瞳の男性はオレの頭をぐっとつかむ。 と。 っ!! 「いっ!!」 握られた五本の指の箇所から一気に痛みが襲ってきて思わず小さく声を上げる。 痛みというよりは衝撃に近いけど。 そのままあまりの痛みにその場にとうずくまる。 「ユーリ!!!」 アンリの声とともに、 ワーン。 と今までわからなかった周囲から聞こえていた人々の言葉がツンとした痛みとともに、脳裏にと入ってくる。 アンリが村人役の人々にいってくれたのかな? おそらく、たぶんアンリが村人役の人々に日本語で話してくれるように頼んだんだろう。 「どうだ?言葉がわかるようになったか?一見女のお坊ちゃん」 むかっ! 「女っていうなぁ〜!! そりゃオレはソフィア母さん譲りというか瓜二つの顔らしいけど!オレはこれでも男なの!!」 ――ソフィア? ざわっ。 何かオレの言葉と同時に村人役の一部が母さんの名前に反応してるけど。 ――と。 「ユーリ!!何かおかしいところはない!?たとえば覚えのない記憶でてきてたりしない!?」 アンリが顔色を変えてがしっと肩をつかみつつ聞いてくる。 ?? 「……お、覚えのない記憶って……」 いったいアンリのこのうろたえようは?? 「――フォングランツ卿!何てことを!彼にかつての彼女の記憶まで取り戻させるつもりなの!?」 何かアメフトマッチョの男性にアンリはくってかかってるし…… 「?何のことだ?お前はこちらの言葉をはじめから話せたようだが?」 「下手に蓄積言語をひき出すな!といってるんだ!下手したら力が暴走するきっかけにもなるんだぞ!?」 ――いや、意味のわかんないことをオレそっちのけで話されても…… 「アンリ?とりあえず。あのぉ?このテーマパークの責任者の人ですよね?ここってロシア村ですか? 北東にあるとかいう?アンリと知り合いということは彼は一度ここにきたことがあるんですか? あの、とりあえず電話かしてもらえませんかねぇ?」 そんなオレの言葉に。 「知り合い?いや、まったくこいつは知らんな。というか何だ?そのテ何とかっていうのは? しかし……今度の魔王はただの馬鹿か?わからないことばかりいってるが……?」 ムカッ! 何かこいつ人のことを鼻にもかけてない? しかも初対面の人に向かって馬鹿はないだろう。 馬鹿は。 というか人を楽しませるはずのテーマパークの関係者がそんな口をきいていかがなものか。 「初対面の傷つきやすい少年に向かって馬鹿とは何だ!?馬鹿とは! というか、人を楽しませるテーマパークの関係者がそんな口をきいていいのか!? そりゃ、入場料はたぶん払ってないだろうけど!!」 オレの悪い癖が頭をもたげる。 幼稚園のころからそうなのだが、 脳みその決算処理能力がオーバーになって、赤いランプが点滅すると恐ろしい勢いで話し始める。 きっとしゃべることで時間をかせいでいるのね。 などと三年生のときの音楽教師はそう関心し、ついたあだ名は『トルコ行進曲』。 ちなみに、後にも先にもそう呼んだのはその女の先生だけで、 後は『口から先に生まれた女顔のユーリ』とかいうあだ名で通っていたが。 「まあ確かに中堅どころの県立高校在籍で。 その中でも誰かにねたまれるほどの飛びぬけた成績ってわけでもないよ! 帰国子女だって言い張ってはいるけど産まれはどっかの海外らしいけど。 両親が今の育ての親と一緒に生後半年ばかりボストンに住んでただけだし! だからって馬鹿はないだろう!馬鹿は!!」 アンリのようにすべての教科がほぼ満点のやつは本当の天才かもしれないけど。 だが彼にしても本人曰く、今までも記憶のたまもの、とか何とかいってるし。 「こう見えてもオレの両親はどっかのいいところの家柄だったらしいんだぞ!? それに育ててくれた今の養父母の父親はエリート銀行家で、 血のつながりはないけど家族に違いない義兄貴は現役で一ツ橋だぞ!!」 何でもオレの本名は本当の両親の家系に仕えていた人がつけてくれたらしい。 六つか七つのときに合ってるらしいけど。 オレはなぜかそのときの記憶はない。 というか、『家系に使えていた人』ということからも推測できるけど。 おそらくかなりやんごとなき家柄なんだろうなぁ? というのはいくらオレでもわかるし。 たぶん、オレの引き取り手がいなかった。 というか血縁者がいない。 とかいう理由ももしかしたら財産がらみの何かがあったのかもしれないけど。 でも今のオレはそのユリティ何とかっていう人物でなくあくまでも渋谷有利だし。 「ちなみにおふくろはフェリス出だ!!」 とりあえず家族自慢で勝負に出るが。 「…あたぁ〜……」 横ではアンリがつぶやきつつ顔を手で覆っている姿が見て取れる。 「フェ?何だ?どっかの田舎貴族か?」 くそ〜。 学問問題は効果なしか。
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