コズミック・サブリナル ~第25話~
「虚無に、力が満ちたようだね。…さて、これからどうなるのか。…って…え!?」
力を送り、思わず目を見開くオリヴィエ。
守護聖だからこそ、わかること。
球体の空間が、喜びに震えている。
「レイチェル。」
「ええ。…これは!?」
二人の視界に映ったものは。
自分たちが育成していた空間が…もとい、それぞれの聖獣が大きく伸びをし。
それでいて、思いっきり背筋を伸ばし。
次の瞬間には。
ぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!
まるですぐそばで見ているかのごとくに、二人の脳裏に届いてくるその映像。
聖獣である、アルフォンシアとルーティス。
その二匹が、光の中で、成長を遂げ。
それとともに、球体にとまばゆいばかりに、それでいてやさしく包み込むまでの光が満ち溢れる。
ピッ。
ピピピピピッ!
「…こ、これは!?」
思わず驚愕の声を上げるエルンスト。
「何々!?いったい、何が起こってるの!?」
自分が送った力で、いったい全体何が起こったのか、オリヴィエですら理解不能。
「すざましいまでの、数値の変動です…こ、これは!?」
モニータといわず、すべての機械類に示される、目覚しく変動してゆくその数値。
そして。
次の瞬間。
カッ!!!
まばゆいばかりの光が。
球体の内部を完全にと埋め尽くし。
そして。
今まで何もないただの虚無の空間であったはずのそこに。
無数に輝く、光の姿がひしめきあってゆく様が見て取れる。
思わず、数値と、そして、画面を何度も見直し呆然としつつ。
「こ…これは…宇宙が発生しました…」
しばしただ呆然と、画面上にとめまぐるしく変化してゆく数値を眺めつつ。
つぶやくエルンストの姿がそこにあったりするのだが。
宇宙誕生。
だがしかし、宇宙の誕生というものは。
いわば、ビックバン。
強大なる力の爆発により、その余波で発生する。
そう、科学的には思われている。
だがしかし。
まさか…
まさか、守護聖…つまりは、サクリアの力が満ちたときに。
それが発生するなど、今まで、そんなことは聞いたことがない。
王立研究院の資料にすら、そんなものは存在しない。
…事実は、面白いから、という理由で。
【アンジェリーク】が、そのあたりの資料を見えなくしているだけなのであったが。
ここ、聖地。
あまり知られてはいないが。
この地を作り出したものは、彼女自身といっても過言でないがゆえに。
この地は、ほとんど、彼女…今では、代々の女王の力によって、支えられているのだが。
それゆえに、その気になれば、どうとでもなる空間。
それが、この聖地。
まあ、それをいうなら、この世界そものが彼女にとってはそうなのであるが。
だが、それも限られた世界…彼女が任されている。
というか、許可を得て守っている範囲のみ。
もし、彼女がその役目がつらくなると、問答無用で。
この世界にあまたとある、星雲世界、あまたの銀河等は、
一瞬のうちに、この世界もろともに掻き消える。
それが、約束であるがゆえに。
「すごい…」
「…まさか、そんな、予想はしてたけど、これって!」
そんなことをいいつつ、はしゃいでいる、コレットとレイチェル。
彼女たちには、わが身のことのように、身近にそれ・・・新たな宇宙の誕生が感じられた。
ゆえに。
その興奮もほかの人の比ではない。
宇宙誕生。
それは、まるで御伽噺というか、実際にこうして自分たちが育成した結果。
新たな宇宙が誕生するなど。
常識的に考えても、そんなことが思いつくはずもなく。
まあ、レイチェルに関しては、様々な資料参考等と、他にも研究などにより。
新たな宇宙の可能性、という視野ももってはいたものの。
だがしかし、このように実際におこってみるのと理論上の想像とでは、まったく話が別物である。
二人の女王候補と。
そして。
その場に居合わせた者たちと。
しばし、王立研究院の内部と、それと、はたとわれに戻り伝達にと走る研究員の姿により。
しばし、聖地はにぎやかにとなってゆく。
それは、守護聖たちにとっても、衝撃的な事実。
まさか、自分たちの目には。
虚無に漂う、光の球。
としかみえなかったそれが。
まさか、それから、宇宙が新たに誕生するなどとは。
「ねえねえねえねえ!ゼフェル!きいた!」
いきなり、窓から、身を乗り出すようにして話しかけてくるそんなマルセルの言葉に。
「…って、てめぇ!時間を考えろっ!
つうか!何、他人の家の庭の木にのぼって、テラスからはいりこんでんだよぉぉ!?」
ゼフェルが思わず叫ぶのも道理。
彼らが報告を受けたのは、すでに執務時間も終わった時間帯。
帰り際、研究院にとよったマルセルが耳にしたのは。
女王候補たちが育成していた、謎の球体。
それから、新たな宇宙が誕生した、というもの。
興奮さめやらず、彼が研究員よりも早くに守護聖全員に伝えた、というのもあるにしろ。
いまだ興奮さめやらないマルセルはといえば。
なぜか、夜になって、ゼフェルの私邸にと、足をむけ。
正面玄関が閉まっているがゆえに。
いつもやっている…というか、守護聖がそういったことをするのはどうか。
という、のもあるのだが…
とにかく、いつもやっているとおりに。
庭の木から、ゼフェルの部屋にと降り立っていたりするマルセルの姿。
当然、ゼフェルが叫ぶのも、これはこれで道理が立っていたりするのは当然なのだが。
「いいじゃない。あのね。あのね!カティス様がね!新しい宇宙の誕生を祝して。
カティス様の家で、ちょっとしたパーティーやらないかって。話がでたんだけど…」
キラン。
いきなり、部屋の中に入ってきたマルセルにとりあえず怒鳴っておいて。
だがしかし。
次にマルセルが発した言葉に、思わず目を輝かす。
「なにぃぃぃ!?そんな面白そうなこと、もっと早くいえよな!
まってろ!今すぐに用意してやるからな!」
ドタン!
バタン!
ドタドタドタ…
そう言い放つが否や。
そのまま、騒がしくも、出かける用意を始めていたりするゼフェル。
そんなゼフェルをみつつ。
「…変なの。今日はあまり怒られないや。ま、いっか。」
いつもは、しばらく、このようにして入ってきたときには。
多少怒られたりするのだが。
何でも、窓際に、機械を置いている場合が多々とあるから、とかいって。
それ以外は…まあ、彼的には、オッケーなのである。
自分の性格が性格であるがゆえか。
しばし、出かける用意をしてゆく鋼の守護聖、ゼフェルの姿が。
彼の私邸の彼の部屋にて見受けられてゆく。
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