コズミック・サブリナル   ~第23話~

「いったい…」
「まさか……。陛下がこの宇宙を救われてまだそんなに時間的にはたってませんし。
  何かあるんでしょうか?」
いつもの休日。
日曜日。
聖地は土曜日、日曜日を一応は休日と定めている。
それは、聖地で働く人々などに休息を与えるために。
もっとも外界といえど、
聖地以外の場所でも大概は日曜日は休日となっている企業などが通常であるが。
先ほどまでこの場にいた、占い師のメル。
彼の様子がおかしいことに首を傾げつつも、
そんなことをいっている、この聖地においては珍しい行商を行っているこの男性。
といっても、彼は女王の意向をうけて、この聖地にとやってきているのだが。
「う~ん、あの子、小さくても火竜族だからね…それに…」
ここ最近の何となく感じるあの不思議な感覚。
あれに関係があるのかもね。
などとそんなことを思っている夢の守護聖たるオリヴィエ。
彼とてこの宇宙を支える一つの力を司っているその一人。
当然、そのあたりの異変には感づいていてもおかしくはない。


…ま、まあ、オリヴィエも勘はするどいほうだからね。
そんなことを思いつつ、そんな様子をじっと視ている一人の女性。
女性、といっても少女、といったほうがいいかもしれないが。
すでに、時は満ちている。
カタン。
そんなことを思いつつ座っていた椅子から立ち上がる。
自分が見つめる世界はここだけではない。
ここは、すべてを視通せる場所。
聖地のとある場所より、彼女自身しか入ることができない聖なる空間。
この場所がなくなること、それすなわち。
このすべての宇宙空間が消滅することを意味している。
「ま、そろそろね。」
さらり。
その身長よりも長い金色の髪がさらりとなびく。
そして。
そのままその場から瞬時にと掻き消えてゆく一人の少女の姿――

この姿そのものを見知っているものは…ほとんど……いない……





「呼んでる。」
二人同時にその声を聞きつける。
「どうして!?」
「きちんとさっきもいったのに!?」
まさか、ここ、聖地ででまで…しかも、いつもよりその気配は強い。
「とにかく、いきましょ!」
「ええ、あの子のところに!」
それは自分たちが育成する聖獣の声。
その声をききつけ。
あわてて部屋をそのままに、外に出てゆく女王候補でもある二人の姿が。



森の湖。
ここは、神秘なる空間。
この湖は別名、恋人たちの湖。
ともいわれているが。
そしてまた、ここは確かに神秘的な力が満ち溢れている、そんな空間。
そこに明らかに、いるはずのない気配というか存在が二つ。
『きゅぅぅぅぅぅぅぅぅ』
『うきゅぅぅぅぅぅ』
何かを訴えかけているそんな様子。
だけども。
「何?何がいいたいの?」
「どうしたの?ルーティス?毎日会いにいってるのに?」
二人には彼らが何を言いたいのかが理解できない。
だがしかし、確かに何かを訴えかけてきている。
こんなとき、言葉がわかれば。
二人の脳裏に同じことが浮かぶが。
こうして、姿を見せている。
ということは、その力が多少なりとも暴走している、ということ。
虚無にできた球体に満ちたサクリアがどんな働きをするのか。
それは自分たちにはわからない。
だがしかし、宇宙を安定させているほどのその力。
それによって神秘的な力が働いても、何もおかしいことはない。
ましてや…


ガサリ。
ふと、茂みが成る音にと気づき。
コレットとレイチェルが振り返るその先にいるのは。
占いの館のメルとそして感性の教官であるセイラン、そして、精神の教官であるヴィクトール。
そんな彼ら三人の姿。
「「メルさん、セイラン様ヴィクトール様?!」」
二人が驚愕の声を発すると同時に。
湖の上にと浮かぶようにして出現していた彼女たちの聖獣の幻は、
一瞬のうちにと掻き消えてゆく。

「…いったい?」
確かに、そこに何かがいた。
というのは感じることはできたが。
それが何なのかはわからない。
そして、その疑問は当然のことながらその場にいる女王候補たちにと向けられてゆく。




「陛下、陛下!?」
おかしい。
確かにこの聖殿の中におられるはずなのに。
ときどきこうしてその姿を見つけられないことがある。
そう、先刻まで確かに謁見室にといたはずなのに、にもかかわらず、である。
ぱたぱたぱた。
姿の見えないアンジェリークを探して走り回るロザリア。
確かに感じた。
この聖地に。
あの地というか新宇宙。
あそことここはかけ離れている、にもかかわらずに。
どうしてあの二つの意思の気配がこの聖地にて感じられるのか。
「あら、ロザリア。」
そんなロザリアの耳にと入ってくる、探していたその当人の声が届いてくる。
「陛下!そこにいらっしゃったのですか!実は!」
少しばかり息を切らせて説明しようとしてくる、
そんな女王補佐官でありそしてまた自分の親友でもあるロザリアの言葉に。
「まあまあ、落ち着いて。ロザリア。…あれは当然の結果よ。時が満ちたのよ。
  二人もそろそろその『力』に気づくはずよ。ふふふv」
にっこりとそんなロザリアに微笑みかけるアンジェリーク。
「いったい?」
いまだに理解できずに首をかしげるロザリアに。
そっとその手を自分の口元にと軽くあて。
「つまりは、もうすぐ新たな宇宙が誕生する、というわけv
  さあ、忙しくなるわよ~。うふふふふv
  すぐに守護聖全員を招集できるように準備はしておいてね。
  彼女たち、アンジェリークとレイチェルが必要な『力』に気づいたら。
  もう時は動き出すまでに満ちているからねv」
自分と同じ名前の女王候補。
そんなことを思いつつ、
にっこりと口元に手を軽く当て微笑む代256代女王にして、この新たな世界の初代女王。
アンジェリーク=リモージュの姿が、ここ、聖地の女王の聖殿で見受けられてゆく。


                                -第24話へー


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