コズミック・サブリナル ~第21話~
すでに、女王試験が始まって、もはや十数日が過ぎている。
二人の女王候補たちは、本当によくやっている。
どうしてサクリアを注ぐのか。
それの根本的な理由を聞かされてない、というのにもかかわらず。
何でも、育成をし、それが本当に【聖獣】の望みであったときには。
本当に聖獣たちがうれしそうな表情をする。
というので、それ見たさに二人はさらに育成をがんばっているらしいのだが。
「とにかく、光の玉がよく目撃される森の湖にこれを仕掛けて。
そうしたら、こっちのモニターで分析結果と画像が送られてくるって仕組みさ。
これで少しはジュリアスのやろうの鼻をあかせられるぞ。」
いいつつ、にやりと笑っているゼフェル。
この機械を作り上げたそもそもの理由はそこにある。
彼がもっとも苦手とする、光の守護聖ジュリアス。
守護聖の中ではリーダー的な存在であり、また一番の古株の守護聖でもある。
その彼が今は大切な時期だから、あまり騒がないように。と指示を出したことは。
逆に彼ら、というか彼のようにその追求したい好奇心に火をつける結果に成り果てている。
そのあたり、少しばかり融通が利かない、というか。
幼いころ、五歳から守護聖として存在しているジュリアスにとって、
そんな反抗心など想像すらもつかないのかもしれないが…
「幽霊…のわけはないもんね。
アンジェ…でなかった。陛下の力でこの聖地は守られてるもん。」
いるだけで感じる。
満ち溢れたまでの宇宙に満ちた女王陛下のその力。
「だけど、面白くなってきやがったじゃねぇか。こんな騒ぎなんてめったとねぇもんな。」
いって、にやりと笑みを浮かべるゼフィルに。
「あったら困るよ。とにかく、原因を解明しないと。
それでなくても今は意味がわからないけど、一応は、女王試験の真っ最中なんだから。」
いって、ゼフィルが示したモニターを見つめているランディ。
彼らの目的は、ただひとつ。
ゼフェルが作った装置をもっとも【光の玉】の目撃が多い場所にと設置し。
離れた場所で、それらの分析と、そして、その映像を記録、モニターする。
というもの。
そして、自分たちだけで解明し、ほかの守護聖たちなどを驚かせたい。
そんな思いから。
だがしかし、光の玉の目撃情報は。
いつもなぜかあいまいで。
毎日、というわけではない。
彼らはその因果関係にと気づいてはいない。
光の玉が出現するとき、二人の女王候補たちがどのような行動をとっているか。
という、その根本的な事実を。
「―…そろそろ、時が近づいてるわね。」
見れば、そろそろ、力が満ち溢れる。
だがしかし、二人の候補たちは、数値の上だけに基づき行動を起こしている。
一番大切なのは何よりも、この光の球体の意思である、聖獣-アルフォーティス。
彼の言葉をその心で感じなければいけないのに。
今までは、確かに、研究院から出された数値と、そして、
レイチェルが独自に自分で開発した、【望みの力の位置関係ソフト】。
それに基づき出た
すべての力が均等に。
後は…
「で?どうする?私から彼女たちに説明する?それとも?」
答えはわかっている。
わかってはいるが、確認するのもまた優しさゆえに。
「キュゥゥ…」
女王候補たちにはこの聖獣は二匹に見えているものの。
基本的にはこの精神生命体の存在はひとつ。
精神生命体ゆえに、それぞれに見るのもによって姿は異なる。
そしてまた。
括弧たる確定した精神。
というのも、まだ生まれたばかりのこの生命は持ち合わせてはいない。
すべてにおいて二面性。
いや、ほかの面もあるにはあるが、今目立っているのは二つの形。
リモージュの言葉にそれらが返事を返してくる。
「―…そう。わかったわ。気づくまで、心行くまで、やりなさい。
―…あなたたちが選んだ少女たちですものね。」
そういいつつ、自愛の笑みを浮かべるリモージュ。
そう。
選んだのは、ほかでもない。
自分でもあるのだが、それとと同時に、そしてまた、彼が選んだのもまた事実。
だからこそ、自分はあまり手を出さない。
これは新たな時代を迎えるための第一歩。
今回は特別な状況であったがゆえに自分は表に出てきたが。
本来は、この宇宙に生きるものたちが自分たちで道を切り開いてゆく。
それが本来あるべき姿。
- 女王としてならば力を貸すことはできるものの。
だがしかし、【
それをすれば、すくなからず宇宙のどこかにゆがみとひずみが生じる。
それもまた、決まりごと。
そして-『彼女』も、元をただせば、その歪みとひずみ、その犠牲者にほかならない。
そう思えばこそ……
笑みを浮かべるリモージュのその言葉に。
光の球体そのもの、つまりはその精神生命体の形をとっている、聖獣は。
次なる段階に向けて。
リモージュが開いた、特殊な空間を通じ。
彼らの願いを自分たちの世界をゆだねる相手にと送り届けてゆく。
すでに、時は…満ちているのだからして………
「そろそろ、僕たちの出番のようだね。」
報告が、先ほど、正式に、彼らの元にと届いてきた。
「僕、きちんとできるでしょうか?」
どきどきする。
自分たちがどういった役目で、彼女たちをどう導くためにと呼ばれたのか。
理解したのはつい先日。
「確かに、かなりの大役だが。われらの手に新たな時代がかかっているからな。」
まさか、宇宙を統べる、そしてまた安定させるための女王としての力。
それらの向上のためにと必要な役割。
それに自分たちが選ばれた、というのは。
大変名誉でありながら、それでいてかなりのブレッシャーがかかるのもまた事実。
「ま、なるようにしかならないよ。
とにかく、自分らしく、感性のおもむくままに、彼女たちを導けばいいんじゃない?
今から使命感でガチガチになってもどうにもならないよ?」
そんな青年-セイランのその言葉に。
思わず顔を見合わせる、頬に傷のある軍服をきている男性-ヴィクトールと。
きらびやか、といえるような、服をみにつけ、緑のショールを巻いている一人の少年-ティムカ。
ティムカとヴィクトールは顔を見合わせ。
「ま、確かにそうだな。」
「それもそうですね。」
いいつつ、二人して苦笑する。
うわさにしか聞いたことがなかった。
表にでてこない、なぞの天才芸術家。
だが、世間のうわさ、というのはあてにならないものだな。
そんなことをヴィクトールは思いつつ。
軍人、皇太子、芸術家。
はっきりいって何の共通点もないこの三人で、女王候補を導くことなどできるのだろうか?
などと危惧を抱いていたヴィクトールのそんな想いは。
彼はとりあえずひとまずおいておくことにし。
「来るべき日のためにわれらも準備を始めるとするか。― もう、日はあまりないからな。」
そういいつつ、にこやかに微笑むヴィクトールのその言葉に。
「そうだね。」
「そうですね。」
いって、残りの二人もそんな彼の言葉に同意を示す。
時は、確実に、それでいて。
次なる、というかそもそも本来の目的のための試験。
それに向かって、着々と進んでゆく……
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