コズミック・サブリナル ~第20話~
「あっれ~。アンジェリーク。もしかして、今王立研究院からの戻り?」
手にした紙をながめつつ、歩いていると道の先からよく見知った声がコレットの耳にと届きゆく。
「あ、レイチェル。うん。今アルフォンシアの様子みてきたの。レイチェルは?」
道の先から歩いてきたのは。
コレットと同じ女王候補として選ばれた、もう一人の神獣を見れる存在。
レイチェル=ハート。その当人。
そんなコレットの言葉に、髪をふぁさっとかきあげつつ。
「私はもう朝方、ルーティスの様子を見に行って、
それから、それに基づいた必要な育成の力を導き出して、
今守護聖さまのところに育成のお願いにいった帰りよ。
帰りにルーティスにもう一回会いにいって明日の傾向と対策を練っておこうとおもってね。
まさか、アンジェリーク。あなた、もしかしてまだ守護聖様のところにいってないの?
本当にトロイわねぇ。もうお昼すぎてるわよ?」
そう、確かにレイチェルのいうとおり。
すでに、朝一で研究院にとおもむき。
育成すべきアルフォンシアの様子を見に行き。
ついつい、あまりのかわいらしさに。長居してしまった、という経緯があるのだが。
「う~ん、えっとね。レイチェル。私ね。アルフォンシアに芸を教えたらね!
あの子、すっごいかいこいわよ!
数回教えただけでもうお手とお座りができるようになってるの!」
いいつつ、目をきらきらとさせてそんなことをいっているコレット。
そして。
「お手。っていったら、あのかわいい手を私に差し出してくれるんだもん。
もう、かわいくって、かわいくって!」
「ずっるぅぅぅぅぃ!私もルーティスに芸を覚えさしてやってもらおっと!」
…どこか、というか完全に『育成』がずれているような気がするのだが。
だがまあしかし、気持ち的にはわからなくもないが。
「とりあえず、今からジュリアス様のところにいって。
それから少しほど力を貸してもらいにオスカーさまのところにいって。
あと最後にもう一回アルフォンシアに会いに行くつもりよ。私は。
トロクても、私は私のペースでのんびりやるんだもん。」
そういって、にっこりと微笑むコレット。
コレットの感覚的には。
アルフォンシアの芸がきちんとできたから、
よくできたご褒美に、いつもよりも多めの力を守護聖様がたに頼んで注いでもらいましょうっとv
そんな感覚でいるのだが。
― すでに、どこか目的がかなり変わってしまっているコレットの姿がそこにはある。
そもそもは、アルフォンシアに芸を仕込み始めたのがそもそもの発端。
公園で芸をしている犬などをみて。
もしかしたら、アルフォンシアもできる?
と思い、やってみたところ。
まあ、物覚えがいいこと、いいこと。
しかも、普通の動物とは異なり、聖獣であるアルフォンシアは食べ物を受け付けない。
食べ物の代わりに。
とコレットが考え付いたのが、
今アルフォンシアにと注いでもらっている、守護聖様方のサクリア、そのもの。
「そう、がんばってよね。まがりなりにもこのレイチェル様と同じ候補なんだから。
って、私もルーティスに芸しこんでみよっとv」
いいつつ、足取りも軽く、そのまま二人軽く挨拶をかわし。
コレットは聖殿に、レイチェルは王立研究院にと足を運んでゆく。
「いったい何なんだろうねぇ。あれ。」
「データ不足だからオレにもわかんねぇょ。」
いいつつもカチャカチャと何やらいじりながら、問いかけてくるマルセルの言葉に。
軽く返事を返しているゼフェル。
そう、何もわからない。
そもそもは。
「そもそも、女王試験ったって、陛下の力はまったく衰えてないもんな。
― 陛下はあの物体というか球体を【卵】とおっしゃった。ってコレットがいってたよ?」
そういいつつ、窓際に座り、足をぷらぷらとさせているのは、風の守護聖たるランディ。
「卵かぁ。いったい何の卵なのかなぁ?」
カチャカチャ…
いらいら。
細かい作業に集中したいのに。
どうしてこうして。
どうして、自分の部屋にこの二人がやってきているのか。
ひくひくと思わずこめかみが痙攣するが。
今怒鳴っては今作っている装置の手元が狂ってしまう。
そんなことをおもいつつ、ただひたすらに手元の装置の完成にむけ、手を動かしているゼフェル。
「でも、間をおかずまた女王試験を行うことになる、というのも。
世の中、何があるかわからないものだよね。」
「そうだな。あの光球体が何なのか、かなり気になるけど。
陛下やロザリアは教えてくれないしな。」
机に向かい、その手を細かく動かし、小さな機械音をさせているゼフェルの部屋の中。
そんな会話をしているランディとマルセル。
「よっし。ここをこうして…」
とりあえず、文句をいうのはこれを完成させてからだな。
そんなことをおもいつつ。
とにかく、ただひたすらに手を動かしているゼフェル。
やがて。
カチャリ。
小さな音とともに。
「よっし!できた!」
今完成したばかりの小さな、手のひらサイズの小型の装置を机の上におきつつ。
とりあえずかるく背伸びをし。
そして。
「てめぇら!話するのはいいけど!
人が作業している前で、しかも目の前をうろうろしつつ、そんな話をするんじゃねぇぇぇ!」
バン!!!!!
とりあえず、完成してしまえばこっちのもの。
そう叫びつつ、机を思いっきりたたくゼフェル。
「あ、できたの?ゼフィル。さっすが。」
「さすが器用さを司る鋼の守護聖だな。」
そんな彼-ゼフェルの言葉にきょとんと互いに目を丸く一瞬したものの。
だけども、完成した、机の上にある装置にと目をとめ。
二人してそんなことをいっているこのマルセルとランディ。
「……まったく。とりあえずようやく完成したぜ。これで…」
ここ最近、聖地でちょっと変わったうわさが起こっている。
それは、森の湖に正体不明の何かがいきなり出現する。
というもの。
それが何なのか、いまだに解明はされてはいない。
ただいえることは、それを見た人々の意見がすべて異なっている、ということと。
一部の者たちは一斉に光の玉、すなわち、【人魂だ】といっているものたちも少なくはない。
当然。
何事もに興味を示すお年頃でもあるこの若い守護聖たちも、そんな噂を知らないはずもなく。
とりあえずその正体を突き止めて、騒動になってはならないから、くれぐれも内密に。
という指示がジュリアスからあったものの。
逆にそれを解決して、ジュリアスの鼻を明かしたい。
そんな思いから、彼らは…というかゼフェルは。
ここ数日、とある装置の開発に取り込んでいたのだが……
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