コズミック・サブリナル   ~第14話~

ドン!
「いったぁぁぁい。」
思わず何かにぶつかった。
ついつい、手にした紙ばかりをみていたところ。
そのまま頭を抑えて立ち止まる。
………え?
「…あ…あれ?ここ…どこ?」
見れば、見慣れた景色などどこにもない。
あるのは、立ち並ぶ崩れかけたような柱の数々。
「…もしかして…私…迷った?」
たらり。
思わず額に冷や汗が流れ落ちる。
周りを見渡しても、聖殿どころか何もみえなく。
ただ、そこにあるのは、森が広がるのみ。
どうやら、育成をどうするか。
などと考えている間に栗色の髪の少女、コレットはね森の中にと入り込み。
複雑な道を偶然にもつきすすみつつ。
かなりの森の奥深くまでとやってきていたりするのであるが。
「…どうしよう?私もしかして…聖地でまよっちゃった?」
思わず呆然とつぶやくコレット。
空を見上げようにも周りに生い茂る森の木々で、完全にはわからない。
本来、というか普通の少女ならばそこで、迷ったことに気づき、パニックになるであろうが。
「…ま。いっか。どうにかなる。うん!えっと…まず、方向を確かめるのに…っとv」
いいつつ、がさがさと、そこにある木々をしっかりとじっと見つめるコレット。
「まさか、こんなところで子供のころに培った経験が生きるとはねぇ。」
などといいつつ。
木の左右の枝ぶりに、どちらに葉が覆く茂っているか。
がさがさと、しかも、当然低い木などあるはずもないがゆえに。
そのままの格好。
つまりはスカートのままで木登りを始めていたりするコレット。
「懐かしいなぁ。よく子供のころこうして木に登ってあそんだっけ。」
などといいつつ。
そして。
ふと。
「そういえば。枝ぶりを調べるのもやるとして。
  どうせだったらてっぺんまで上って。今自分がどこにいるのか確認しよっと。」
いいつつ。
とりあえず、左右というか木に成る枝ぶりの葉の茂り方を確かめつつ。
そのまま、ほどよい形の枝をみつけては、ひょいひょいと上に、上にと上ってゆくコレット。
彼女はよく子供のころ、こうして木登りなどをしていたのである。
ガサガサガサ。
木の葉のこすれる音が静かな森の一角にと響き渡る。
やがて。
「うわぁぁぁぁぁ!」
思わず感嘆の声をあげる。
木の頂上付近。
そこから周りを見渡せば。
視界に映るのは、左右に広がる緑の海と。
そして、その先に。
真っ白い建物などが具間みえる。
「…ずいぶんと奥まできてたんだ。私。」
そんなことをつぶやきつつ。
「でも、景色きれいだし。しばらくこのままみていよっと。」
何事も楽しむ精神を忘れない。
というのが、このコレットのいいところではあるのだが……

アンジェリーク=コレット。
見た目はほのぼのとした温和なタイプのように見える少女ではあるが。
実はかなり活発な女の子なのであった。



「あ~。しかしまさか守護聖になって三度も女王試験を経験することになりますとはねぇ~。
  人生、何があるかわかりませんねぇ~。」
いいつつ。
ずずっ。
何か異様に似合っている。
焼き物のコップを手にしてお茶を飲んでいるのは、頭にターバンを巻いている一人の男性。
「ふふん。でもいったいあの球体って何なのさ?ルヴァなら何か気づいてるんじゃなぁぃ?」
そんなことをいいつつ。
こちらは小指を少したてて、紅茶カップを手にしている金色の髪の男性。
その前髪の部分を染めていたりはするのだが。
「クラヴィス様やカティス様は何か知っているようですが。この私にも教えてはくださらないのですよ。
  『…時が満ちればおのずからわかる』といわれまして…」
いいつつ、こちらもまた、その手にしているティーカップに。
なぜかミントティーを入れ飲みつつそんなことをいっているのは水色の髪の男性。
「そうだ♪カティスを酔わせてから聞き出す。という手はどぉぅ?」
そんな彼の言葉に。
「…オリヴィエ。あのカティス様にのみ比べでかなうのですか?」
「…そういえば以前オリヴィエはカティスと飲み比べして。ものの見事に敗退してましたねぇ。」
まだ、マルセルが守護聖としてこの聖地にやってくる前。
まだ、カティスが緑の守護聖であったあの当時。
そんなことをしていたりした、緑の守護聖カティスと夢の守護聖オリヴィエ。
そんなオリヴィエの言葉にすかさずに問いかけているのは、水の守護聖たるリュミエール。
彼らは今。
それぞれに集まり、今回始まった新たな女王試験の意味を話し合っているまっさい中。
何しろ女王であるリモージュも補佐官であるロザリアも。
この試験の意味を正式には守護聖たちには話してはいない。
それゆえに、好奇心が高まるのは仕方のないことなのかもしれないが。
「でも、しっかし。陛下が即位してから退屈はしないなわよね。
  何かまた楽しくなってくるような予感がしてるのよね。私は♪」
楽しそうにそういうオリヴィエの言葉に。
「まあ、確かにそうかもしれませんねぇ。」
「…よいことならいいのですが…」
すこし顔を曇らせて言い放つそんなリュミエールの言葉に。
「心配症だねぇ。相変わらずリュミちゃんは。」
そんな会話をしているこの三人。
この三人、共通点がないようで、よくこうしてお茶会を開いているのである。
そんな会話をしている守護聖三人の姿が。
ここ、聖地の中にと存在する、公園の中にあるカフェテラスにて。
しばし、見受けられてゆく。


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