コズミック・サブリナル   ~第10話~

コンコンコン。
扉をノックする音がする。
「あ、は~い!」
その声にあわてて、返事をすると。
「アンジェリーク、いつまで寝てるの!?」
扉を勢いよくあけ、入ってくる金色の髪の少女の姿が。
「あ、レイチェル。おきてるってば。」
というより、健やかに寝付かれない、といったほうが正解かもしれない。
何しろベットから布団から何から何までふかふかで。
いつも自分が寝ていた少し固いようなベットではない。
まあ、それでも、どうにか寝なければ、と自分にと言い聞かせ。
そしてようやく目をつむり…気づいたときにはすでに朝。
目がさめるといつもと違う部屋の様子に思わず驚いたが。
だがしばらくすると今自分は聖地にやってきていることを思い出し。
服を着替え、しばし、ぼうっとしつつ、ベットに腰掛けていたコレット。
そしてそんな中で、レイチェルの声がそんなコレットの耳にと聞こえてくる。
カチャ。
その声とともに、部屋の扉があき。
…そ~いえば、扉に昨日、鍵…かけてなかった……私…
そのことに思い当たり思わず一瞬赤面するが。
まあ、ここ聖地にて『何か』がある、ということがまず絶対にないのではあるが。
「遅いから迎えにきたんだよ。」
いいつつ、扉から入ってくるレイチェルのその声に。
「迎え?」
何かあったっけ?
などと首をかしげているコレットであるが。
しばし考え。
「あ゛、あ゛あ゛あ゛!今日は王立研究院にいく日!?」
ようやくそのことに思い当たり、思わず叫ぶ。
そんなコレットをみつつ。
「…しっかりしてよね。アンジェリーク。
  まったくどうしてあんたみたいなとろい子が、女王候補に選ばれたんだか。」
そんなコレットをみつつあきれた声をだし。
「ほら、とっとと用意してよね。ロザリア様たちだってまってるんだから。」
そういいつつ、コレットを促すレイチェル。
「あ、うん。すぐに用意する…って。」
いいつつ、あわてて、用意をはじめ…
「って、きゃぁぁぁぁぁ!!」
ドザササササッ…
シィィン…
「…あんたって…見た目もぼやんとしてるけど…本気でどじね…」
目の前で何もないところで躓いて、そのまま本棚にとよりかかり。
おもいっきり本を頭からかぶってこけているコレットをみて、
ため息まじりにつぶやいているレイチェルではあるが。
「うっうっ。ひど~い。レイチェル…」
パサパサパサ。
とりあえず、どうにか起き上がり。
体にとかぶさっている本を横にのけつつ、涙交じりにつぶやくコレット。
「ああもう!これは私が片付けてあげるから。あんたははやく用意。オッケ~?」
「あ、うん。」
コレットがそのまま丁寧に落ちている本を整頓し、本棚に戻そうと強いるのをみて、
そんなコレットがもっている本を取り上げそういっているレイチェル。
いくらなんでもロザリア様たちをあまり待たせるわけにはいかないし。
などと心の奥では思いつつ。

コレットが用意する間、さすが天才少女、と名高いだけのことはあり、その片付け方も超一流。
てきぱきと崩れた本棚だけではなく、部屋全体を片付けてゆくレイチェル。
「レイチェル…すごい…」
用意を終え、出かける準備をしたコレットが思わず関心した声を漏らす。
そんなコレットのその言葉に。
「あのねぇ。こんなの常識でしょうが。
  まったく、仮にも私と同じ女王候補なら、もっとしゃっきりしてよね。」
いいつつも、きっちりと部屋をきれいにと片付け。
「ほら、とにかくいくわよ。」
「あ、うん!」
そのまま用意のできたコレットをつれ、外にと出てゆくレイチェルの姿が、
ここ、女王候補寮にて見受けられていたりする。



「どうかしたのですか?エルンスト?」
いつになくどこか不機嫌そうな彼にむかって語りかけるロザリアに。
「いえ、ちょっとしたことがありまして。」
それだけいって再び無言になっているのは。
ここ、聖地にと設置されている王立研究院主任、エルンスト。
目が覚めたら朝だったとは…不覚。
そんなことをエルンストは思っているのだが。
結局、ロキシーに一服もられ、そのまま彼にと与えられている家にと運ばれ。
目がさめたときにはすでに次の日の朝。
しかも置手紙だけを残し、
さっさとロキシーはといえば再び聖地から出て、彼の仕事にと戻っていっていたりするのだ。
不機嫌にもなろう、というものである。
エルンストが計画を立てていた昨日のうちにと完結させるはずの調べ物なども。
一応、いったわけではないのにロキシーが調べて、きちんと書類などにとまとめてはあったものの。
だがしかし、研究員というもの、自分で何事も調べたいのが根本的なる本音。
ゆえに、目覚めたらすべてができていた。
というのは…研究者としては面白くない、切実に。
まあ、そうした理由が自分の体を心配しているがゆえの行動だと、わかっているがゆえに。
余計に不機嫌にもなろう、というものである。
ここ、王立研究院のそんな一室で。
女王補佐官であるロザリアと、
ここの責任者でもある主任のエルンストの会話がしばし繰り広げられていたりするが。
「?よくわかりませんけど、それで?今の球体の現状は?」
いいつつも、あたりを警戒するのに余念がないロザリア。
…まあ、気持ちはわからなくもないが。
何しろ、自分が、
『女王候補たちに球体の説明をしに王立研究院にいく。』
と女王であるアンジェリーク=リモージュにといったところ。
『私もいく!』
とこうである。
女王たるものがふらふらと出歩くものではないと諭し、
いつも以上の数倍の執務を押し付け…もとい、提出し。
目を通してもらうべく、そのことでその行動を防がんとしているロザリアなのだが。
だがしかし、リモージュは本気になったらその作業がかなり早い。
ということも彼女が即位した直後の執務の様子などからも把握しているロザリア。
ゆえに、自分がそばにいないのをいいことに、
またまた聖殿を抜け出しているのでは、と。
ロザリアは気が気でないのである。
まあ、リモージュが聖殿を抜け出るのは今に始まったことではないが…
先だっての『リモージュの妹の結婚式』がいい例でる。
そんなことをおもいつつ、エルンストにと問いかけるロザリアの声に。
「あ、はい。報告いたします。謎の球体は…」
いまだにあれが何なのか、王立研究院のそう動力挙げても理解不能。
しかも、特質すべきは、あの球体は、ここ、聖地からしか球体として見受けられない。
という事実もまた然り。
ここ、聖地は科学では一般での常識では考えられないようなことが起こりえる。
と改めて感じ入っているエルンスト。
そんなことをおもいつつ、かつて、自分たちのいた宇宙のあった場所。
今では虚無の空間となっているはずのそこにて発見された、謎の高エネルギーを宿した球体。
そして、今回、呼ばれた女王候補二人には。
その球体に守護聖たちの力を注いでゆくとかいかないとか。
「いったいあの球体は何なんですか?ロザリア様?」
数値はかなり高いものを示している。
ふつうの宇宙空間にあるはずもないような高数値を。
そう質問してくるエルンストに。
「ふふ。いずれわかりますわ。そろそろ女王候補たちがやってくるころですね。」
いいつつ、時間をみつつ、そうつぶやくロザリアの姿がみうけられていたりする。


                                -第11話へー


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