コズミック・サブリナル   ~第11話~

「は~い、みてらっしゃい、よってらっしゃい。いろんな品物があるよぉ~。」
土曜日の公園。
聖地の中にと位置する公園。
そこに露店が出るなど、今までになかったこと。
いや、少し前にはよくあったが。
…無農薬の野菜を露店を開いて配っていた前緑の守護聖カティスの姿が。
そして、今もまた。
「しっかし、さすがだな。」
いいつつ、その横にと店というかシートを敷き詰め。
野菜を並べている金色の髪の青年。
「いやぁ、そういうカティス様もなかなかですわ。
  カティス様の野菜目当てに、お客さんたちの食いつきは上々ですしな。」
いいつつ、にこやかにと笑っているその男性。
そして、そんな彼らの横では。
「ほ~んと。ここってこういうしゃれたものを扱っている店がないからねぇ。
  あ、今度こんなもの店にと置いてくれない?」
いいつつ、店にと並べられている品物を物色しているのは。
「相変わらずだな。オリヴィエ。お前さんは。」
そんな彼をみつつ苦笑している野菜を売っている金色の髪の青年。
「そういうカティスもね。
  でもついこの前のような気がするのに。外界ではかなり時間がたってるんだよねぇ。
  まあ、ここを出て行ったときのままの姿なのはうれしいけどさ。」
そんな青年にひらひらと手をふりつつも答えているのは、夢の守護聖であるオリヴィエ。
夢とそして美しさ。
それらをつかさどる彼は新しいものには目がない、というか。
こういった新しいものを取り扱う店には目がなかったりする。
かといって、彼はとある守護聖二人と違い、聖地を勝手に抜け出すことなどはしないがゆえに。
ほとんど様々な品物などにおいては、聖地にいながら取り寄せる…と相成っていたのだが。
「でも自分の目で選べるってのはいいよね~。やっぱり。」
いいつつ、露店に並べられている様々なアクセサリーなどをみて、
そんなことをいっているオリヴィエの言葉に。
「そうよねぇ。」
…ん??
その場にいる、男性三人が聞き覚えのあるような声をきき、思わず顔を見合わせる。
「あ、これなんかかわいい。」
ひょいと並べられている品物を手にとっているのは。
年のころならば六歳程度の…金色の髪に緑の瞳の女の子。
「な゛な゛な゛な゛な゛!?」
思わず目を見開いているオリヴィエに。
「…陛下……またお忍びで聖殿を出られているのですか?ロザリアが怒りますよ?」
思わずため息をついているカティス。
そんなカティスの言葉ににっこりと微笑み。
「大丈夫よ。今はロザリア王立研究院にいってるのよ。女王候補たちに、説明にいってるし。」
にっこりと何でもないように微笑むのは。
間違えようもない、現女王、アンジェリーク=リモージュ。その当人。
「う~ん、その姿懐かしいわねぇ。」
しばし目を丸くしていたオリヴィエではあるが。
やがていつもの口調にと戻り、そんなことをいっていたりする。
それは、確かについこの前までのことなのに。
もはや過去のような時の流れ。
実際にはここ聖地では、あの試験が終わってからは一年も経過してはいない。
「…つ~か。女王陛下がおいそれと出歩いてもいいんですか?」
声を潜めてそこにいる少女にと問いかけるそんな露店を開いているそんな彼の言葉に。
「大丈夫よvこの姿だと誰も私が女王なんて思わないから。
  あ、それと外で私をみても間違っても『陛下』なんて呼ばないでね♡」
にっこりと微笑みそこにいる三人にと向かっていっているリモージュ。
その言葉に。
「まあ、長らしいといえば長らしいですけどねぇ。」
などと苦笑しつつ。
「あ、そうだ。どうせだったら。
  彼の店に私の育てた花とかを置く。というのはどうですかね?プレゼントとして。」
ふとそんなリモージュの行動に苦笑しつつ、
思いついたことをリモージュにと提案しているカティスのその言葉に。
「あら、それいいわね♡どう?チャールズ?」
そうチャーリーにと問いかけるそんなリモージュのその言葉に。
「そらもう!カティスさまの草花をおまけにつけたら、というか。
  売り物にしてもそれは問題なしですわ!」
もみ手をしつつ、商売人らしくそんなことをいっていたりするチャールズ。
そして、リモージュが商人の名前を呼んだのをうけ。
少し考え。
「へぇ。商人の…あんたの名前そういうんだ。あれ?確かその名前って……」
さすがに流行などを取り入れるのがいち早い夢の守護聖であるがゆえか。
その名前にと心当たりがあったりするオリヴィエ。
「あ゛あ゛!あきませんって。オリヴィエ様。俺の名前はごくごく企業秘密でっせ。」
彼もまた、夢の守護聖の依頼…とは表向きにはいわれてはいないが。
聖地づけで、『オリヴィエ。』というその名前で幾度も昔から、否。
彼の会社でもあるウォン財閥の創立時から。
その名前はよく見ているがゆえに、彼が守護聖である、と知ったときには驚きもしたが。
だがその驚きはさすがに女王陛下自ら、つまりはリモージュ自らが商品発注などをしてきた。
その驚きよりはランクは下。
似たりよったり、といえるのかもしれないが…
そんなチャールズ、と呼ばれた露店の商人のその言葉に。
「おっ~。んでもチャールズって呼び方、ちょっと何だねぇ。」
そうつぶやくオリヴィエに。
「あら?オリヴィエ?彼の呼び名はチャーリーよ?あだ名でもあるのよv」
にっこりとそんなオリヴィエの言葉に追加説明をしているリモージュ。
「それはそうと、そろそろ戻らないと補佐官殿が戻るころでは?」
くすくすと笑いつつ、リモージュにと語りかける
「ああ!本当!それじゃ、あ、さっきの件は二人で相談でもして決めてね!それじゃ!」
いいつつ、ばたぱたと。
…しかもしっかりと、品物を三つばかり購入して走り去ってゆくリモージュをみつつ。
「…なんか陛下…即位しても今までどおりなんだよねぇ~……」
「…ま、長だしな…」
しみじみとそんなことをつぶやいていたりするオリヴィエとカティス。
「…なんつ~か、どうもあの子供の姿だとこう和んでしまうところがありますなぁ。」
女王としての年齢相応の姿から比べれば。
人間というものはそんなものなのかもしれないが。
どうしても見た目で多少判断してしまうところがある。
ゆえにか。
子供の姿をしているだけで、
受ける雰囲気というか感覚が違ってくるのは、仕方がないのかもしれない。
ゆえにか、緊張する、というか。
どちらかといえば、子供の姿のリモージュがそばにきても緊張する、というよりは逆に和む。
というのが一番表現するのに値する。
ばたばたと走り去ってゆくリモージュの後姿を見送りつつ。
そんな彼らの様子が、聖地の中にと設けられている公園で。
しばし見受けられてゆく。


                            -第12話へー


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