コズミック・サブリナル ~第8話~
虚無の空間。
それは、かつて、命にあふれた銀河の集団があった空間。
だが、その宇宙の代謝は限界を迎え。
そして、それは一度母なる宇宙にと無にと還りゆいた。
そしてそのとき。
アンジェリーク…否、
アンジェリーク=ユニバースの力添えもあり、その空間は新たな宇宙にと発展を遂げる兆しをみせ。
そして、その兆しを受け、聖地にの中にと王立研究院が設立されたのは。
それほど聖地の時間率では遠いことではない。
外界の時間率ではかなり時間がたっているにしろ……
「…いったい、この球体には何が……」
いいつつ、モニターと常ににらめっこ状態。
「エルンスト。あんまり根をつめたら体に毒だぞ?」
いいつつも、そんな彼の横からコーヒーを差し入れしてきている一人の青年。
彼-エルンストとは七つほど年齢が離れているにしろ。
若くして若干27歳という若さで、ここ聖地の王立研究院の主任を任された、
水色の髪の青年-エルンスト。
若干12歳という若さで主聖の王立研究院にと招かれた、いわゆる天才。
といわれているそんなエルンストの親友でもあるロキシー。
淡い金の髪を短くまとめているそんな彼はエルンストにとって、
かけがえのない友と言える存在である。
「ああ、ありがとう。ロキシー。」
そうお礼をいい、出されたコーヒーにと手をつける。
「しっかし、心配はしてたが、本当に不眠普及で調べ物ばかりしているとはな。
あのな、エルンスト、あまり無理をしたら体に毒なんだぞ?」
彼がここにいるのは、表向きには資料を運んできた、という名目ではあるが。
だがしかし、その本当の理由は、いくらいっても無理ばかりするエルンストを心配し。
こっそり、リモージュにと命じられたロザリアが研究院にと働きかけ。
エルンストに知られないように彼をここ、聖地に招いている、という理由があるのだが。
そんなロキシーの言葉に。
「わかっている、わかっているが…気になっていることは追求しないと気がすまない性分なものでね。」
こくん。
そういいつつ、ロキシーの持ってきてくれたコーヒーを飲み干すエルンスト。
「ん?ロキシー?…このコーヒーの中…何いれてます?」
味が少しばかり違う。
それに気づき、飲み干しつつ、問いかけるそんなエルンストの言葉に。
「ああ、お前はいってもきかないから。強制的に眠ってもらおうとおもってな♡
少しばかり遅効性の睡眠薬をちょぴっとなv」
にこやかに微笑むそんなロキシーの言葉に。
「な゛!?ロキシー!?」
おもわず椅子から立ち上がりかける。
――が。
ぐらっ。
そのままエルンストの体はロキシーの方にと倒れてゆく。
「よっ…っと。」
薬がきき、睡魔に襲われたエルンストを抱きかかえ。
「よっし。あとはこいつを部屋に連れて行くだけだな。
まったく、本気で三日ねてない、というのは伊達ではないようだしな。」
長い付き合いだからこそ、彼の性格はわかっている。
けりがつくまで睡眠すらも惜しんで熱心にと研究に励むのは。
何も悪いとはいわないが、エルンストの場合は度を過ぎているのである。
「こいつが起きたときには烈火のごとくにおこるのだろうがなぁ。ま、いつものことか。」
などといいつつ、完全に薬が聞いて眠ったエルンストをつれ。
とりあえず、エルンストにと与えられている屋敷へと彼を運んでゆくロキシーの姿が。
うららかな聖地の日差しの下、見受けられてゆく。
「「うわぁぁぁぁ!?」」
「へぇ。」
「ほぅ。」
目の前に広がる光景を見て、四人の声が同時にと発せられる。
「まさか聖地にこのような場所があるとは、驚きですな。」
などと関心しているのは、赤みがかった茶色い髪をしている一人の男性。
歳のころならば三十前後か。
実際は彼の年齢はただいま三十一歳なのであるが。
右目を斜めに額からほほにかけて横切るキズが印象深い。
「確かにこの聖なる地にこのような場所があるのは驚きだね。」
いいつつも、関心を示しているのは青い髪に水色の瞳をしている青年。
その髪を肩より少し上の辺りで短く切りそろえ。
歳のころならば二十歳程度であろうか。
彼の正式な年齢を知っているものは、この宇宙にそんなに数多くはいない。
彼の髪の色と瞳の色は独特で。
日の光の加減によっては水色のよう瞳の色はみえなくもないが。
正確にいうなれば、その髪の色も瞳の色も両方とも、青紫色。
見る人によってその色はいろいろと表現されていたりするのだが。
そんなことをいいつつ、そこにある花畑の中にあるオブジェにと目を留める。
「へぇ。かなりいいセンスしてるね。ここ作った人。」
などというそんな彼の言葉に。
「ここって女王陛下が聖地に住まう人々のために作った娯楽施設なんでしょ?本当にすごいですね。」
などとしみじみと本気で関心の声をあげているのは、青みがかった、ダークグレーの髪をしている一人の少年。
その瞳の色は少し暗めの青。
そんな彼の言葉に。
「そうか、ティムカはいずれ王国を治める立場だからな。
こういった民のための施設にも興味があるのだな。」
そんなことをいっているキズのある男性の言葉に。
「ええ。いずれは僕も父の跡を継ぎ王国を治める立場ですから。
こういったものを率先して作られた陛下をとても尊敬します。」
聖なる地に似つかわしくない。
と思われるかもしれないが。
だがしかし、それはどうして、ふたを開けてみればいざ知らず。
聖なる地に劣らないできばえとなっているこの施設。
「でもここ本当にすごいよ?
だって周りとか花畑とかに、本物の妖精さんとか、精霊さんたちがたくさんいるもの。」
などと関心した声をあげているのは、赤い髪をしている少年。
歳のころは十を少し過ぎたくらいであろうか。
特徴的なのは、人間ならば耳のあるところから出ているヒレ。
彼は火竜族のまだ幼生体。
何も共通点など見受けられないようなこの四人。
だがしかし、いずれも共通しているのは。
このたびの『女王試験』のために。
各自呼ばれた人々である、ということ。
-第9話へー
Home Top Back Next