コズミック・サブリナル   ~第7話~

「はぁ…新たな女王試験ですかぁ。でも、大丈夫ですかねぇ。
  まさか守護聖になって三度も女王試験に立ち会うなんて想像もしてませんでしたよ~。」
謁見室から出て、そんな台詞を言っているルヴァにと向かい。
「きゃははっ。相変わらず心配症だねぇ。大丈夫。大丈夫。でも、何か面白くなってきたじゃない。
  王立研究院でみつかった謎の球体。それが動物の姿にみえる、女王候補。
  陛下のお力にはかげりなんかまったくないこの状況で。どうして女王試験なのか?
  興味あるじゃない?それに、あの二人。かなり色違いで面白そうだしね♪」
にこやかに、そんな台詞をいっている、オリヴィエのその言葉に。
「あ゛~。オリイヴィエ。あなたは楽観的ですねぇ。
  私は心配なんですよ~。陛下のお力は確かにものすごいものがありますけど。
  何しろ、こちらの新宇宙にすべての宇宙を移動させ、
  ほんのひと時もたたないうちに、すべての銀河という銀河を安定させ。
  陛下はかなりお疲れなのでは、と思うんですよねぇ。
  あれから、数ヶ月しか経過してないんですし。」
心配そうにそういうルヴァのその言葉に。
「…ルヴァちゃん、そんなに心配してたら、はげるよ?」
「え゛ええ゛!?私、はげてますか!?」
「…いや、言葉のあやだけど、若いのにまる坊主になる、というのはいやでしょ?」
「あ~。はぁ…まぁ…」
そんな会話を繰り広げているルヴァとオリヴィエ。


「まったく、どういうことなのだ?陛下のお力には陰りは一切見えない。
  にもかかわらずに新たな女王候補の召還…など…」
いいつつ、つぶやくそんなジュリアスの言葉に。
「…ほぅ。貴様は陛下の行動を怪しむのか?」
ふっ。
かるく笑いつつ、そんなジュリアスに向けていっているクラヴィス。
「な゛!?誰もそんなことはいってはおらん!私は陛下のことは信頼申し上げている。
  今回の女王試験にも、必ず何か裏がある、ということもわかっている。」
「ならば。そうぼやくこともあるまい。幼い子供でもあるまいし。
  それより、聖地に不慣れな女王候補のために力をつくすのが、我ら守護聖の役目ではないのか?」
「貴様にいわれなくても、わかっているっ!!」
ふふっ。
まったく、こいつは、昔のまま、子供のときのままに、まっすぐに成長したものだよな。
この私とはえらい違いだ。
そんなことをおもいつつ、思わず笑みを浮かべるそんなクラヴィスに。
「何がおかしい?クラヴィス?」
「いや、別に。」
「いいたいことがあるならはっきりといえっ!」
などと、言い合いをしつつも、謁見室を後にしてゆくジュリアスとクラヴィス。
この二人、傍目には仲が悪いようには見えるのであるが。
これでも、二人は根本的なところから息があっていたりする。
まあ、腐れ縁、というか、何というか。
六歳のときからずっと一緒に、守護聖として共に行動していたというのは伊達ではない。



「どうおもう?水の守護聖の立場からして?」
言い合いをしつつ、歩いてゆくジュリアスとクラヴィスの後ろから、
そんな会話をしつつ歩いているオスカーとリュミエール。
「私は…何事においても、争いは嫌いです。あの女王候補たちが争うのかとおもうと…」
憂いをこめた表情でいう、そんなリュミエールの台詞に。
「ふっ。相変わらずおやさしいこって。
  陛下が何を考えておられるのか、まだわれらには正確なことは伝えられてはいない。
  まあ、数ヶ月前の宇宙移動に関しても、俺たちは知らされてなかったからな。
  陛下には陛下のお考えがある、というのもわかってるしな。
  それとも、何か、リュミエールは陛下のなされることに不満でも?」
畳み掛けるようにいうそんなオスカーの言葉に。
「そんな、滅相もない。ただ…私は、誰においても争いあうのはみたくはない…っと。」
「なぁに、心配はいらないよ。
  今の陛下と補佐官殿だって。ああして、親友として仲良くなってるんだからな。
  あの二人もそうなるさ。…それに、あのレイチェル、という活発な子も捨てがたいが、
  陛下と同じ名前のアンジェリーク、という、少し気の弱そうなあの少女も。
  まあ、俺の手にかかれば、さぞや素敵なレディーに…」
「オスカー!あなたという人は…また。女王候補たちにちょっかいをかける気ですか!?」
「おいおい、人聞きの悪いことをいうなよ。俺はただ。
  聖地に不慣れな女王候補達を少しでも聖地になじませようと思ってだな…」
気づけば。
すでに、ジュリアスとクラヴィスは。
それぞれに廊下の先を曲がり、彼らの目には映ってはいない。
そんなオスカーの言葉をさえぎるかのように。
「こほん。」
真後ろで咳払いする声がひとつ。
「オスカー、そんな心配は無用ですわ。
  女王候補達は、この女王補佐官であるロザリアがきちんと案内をいたしますから。
  あなたはあなたの執務をしっかりとこなしてくださいな。」
振り向けば、いつのまにやってきたものか、オスカーの真後ろにロザリアがたたずんでいたりする。
「うわっ!?ロザリア!?いつのまに!?」
驚きの声をあげるそんなオスカーのその言葉に。
「甘いですわ。オスカー。あなたの行動なんてお見通しですわ。さあさあ、執務がまってますよ。ね?」
にっこりとにこやかに微笑みかけつつそんなことをいっているロザリアの姿。
「…ぷくくっ。」
そんな姿をみて、思わず含み笑いをしているリュミエールの姿がそこにあったりするが。
「おい、リュミエール、何お前さんは笑ってるんだよ!」
「いや、さすがはロザリア。聖地の治安を常におもんばかっておられるのですね。」
「当然ですわ。」
「こらまて!どういう意味だ!?それは!」
聖殿の廊下に。
そんな彼ら三人の声が、しばし、こだましてゆく……



「…はぁ。」
思わずため息がでる。
「…まさか、こんな雲の上の存在ばかりのところに自分がいるなんて…」
どうしても信じられない。
それは、ある日、空から降りてきた、ひとつの生物。
すべてはそれから始まった。
誰にも確かにあれは、見えることはなかった。
空から降りてきた、というかふってきたそれは、怖いとも、何ともおもわなかった。
――ただ、愛しい。
そう…感じた。
「とにかく。意味がわからないばかりだけど。とにかく、ガンバろ!」
気合をいれて、思いっきり自分の頬を両手でたたく。
と。
コンコン。
「あ、は~い。どうぞ。」
自分にあてがわれた、女王候補が住まう寮。
その中の自分の私室。
その扉をノックする音が。
カチャリ。
返事とともに、コレットの部屋にと入ってきたのは。
「アンジェリーク、いる?暇してるかとおもってきてあげたよ~。
  どう、少しは荷物の整理…って、まだあんた、荷物の整理してなかったの!?」
みれば。
いまだに、整理されてない荷物の山が、部屋の隅にと存在し。
「あ、うん、ちょっと考え事を……」
「ああもう、かして!私が片付けてあげる!」
「え?あの?レイチェル?」
コレットが疑問の声を上げるよりも早く。
てきぱきと。
行動に出ているレイチェルの姿が、
ここ、女王候補寮のアンジェリーク=コレットの私室にて、しばし見受けられてゆく。





「――もうすぐね。ねvアルフォーティス。」
にっこりと、目の前にある光の球体にと話しかけているリモージュ。
その姿は、金色の光に包まれてはいれども。
『-すべては、【全ての世界を創りし存在コスモスメイト】の御心のままに…』
まだ、自分は誕生したばかり。
自分の核ともいえる、内部は。
彼女がかつて、この場所が無にと還りゆくときに、残してくれた、とある物質。
いや、物質、というか、力の結晶体。
それゆえに。
こうして、自分は新たな生命として今ここに誕生している。
「あら、そんなことはまだいうのは早いわよv二人の女王候補から、あなたの名前がつけられるわ。
  …あなたの女王はどちらかもう決まってはいるけど…それは内緒ね♡」
くす。
そんなリモージュの言葉に、精神生命体であるそれもまた。
思わず、笑みがこぼれる。
『――仰せのままに…われらが母よ…』
「あらvすべてなる母は私じゃないわよ?それは間違えないでね?」
『は…はぁ…』
そんな会話を二人が施している最中。


「陛下、どこにいらっしゃいますの!?へいかぁぁ~~!!!!!!!」
ふと、何もない、真っ黒い空間に、ロザリアがリモージュを呼んでいる姿がふいに映し出される。
とりあえず、何かあったらすぐに対応できるように、視えるようにしていたのは……
ほかならぬリモージュ自身。
「あ、それじゃ、私は戻るわね。……銀河を数多に含む宇宙空間に早く成長することを、祈ってるわ♡」
『すべては、わが女王の御心のままに…』
「そうね。」
いいつつ。
シャラン…
何かが、まるで鈴が転がるような音を残し。
リモージュの姿は、そのただ、周りは虚無しかない空間。
そこにぽっかりと存在する光る球体。
その目の前から、一瞬にて掻き消えてゆく。

新たな時代は、今…ここから……


                                -第8話へー


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