コズミック・サブリナル ~第3話~
ざわざわざわ。
「おや?お仲間かい?」
くすり。
何ともこの場にそぐわない人物に目をとめて、思わず声をかけている青い髪の青年。
その言葉に。
「どうやらその用だな。」
そういいつつその相手の顔をみつつもかるくお辞儀をする男性。
もう若い、という年齢ではないであろう。
服装から何となく軍人のイメージをうけるが。
その顔にある傷が、彼が何か危なく危険な仕事をしていたかを示すかのように物語っている。
「私はヴィクトールと申します。貴殿は?」
服装からして落ち着いているようにも見えるし、かといって派手でもなく、かといって地味でもなく。
まるですべてが計算されたかのような服装。
「これはご丁寧に。僕はセイラン。」
その言葉に目を丸くする。
「―…セイラン…って…あの?」
くすっ。
目をまるくするそんな男性の言葉に。
「そういう君こそどうやらあの、ヴィクトールのようだね。悲劇の将軍の。」
そういうその言葉に眉を潜めるその男性。
そんな彼らの元に。
「失礼いたしますわ。もう一人のお方がおつきになりました。」
そういいつつ。
扉の向こうより補佐官であるロザリアが顔をのぞけ。
「どうぞ。」
そういいつ、つその後ろにいるまだ幼さがどこか残る少年を、
そんな会話をしている二人のいる部屋の中にと案内してゆく。
「「おや、これは…」」
三人いる。
そう聞かされている。
入ってきたのはまだ若い少年といっても過言でない。
だがしかし。
その青い布が意味することは。
すでに先に部屋にといた二人にとっては、それが何を意味するかは理解している。
「これはこれは。まさかもう一人は王族ですか。」
くすくす笑うそんな青年のその言葉に。
「え、えっと何とお呼びすればいいのでしょうか?太子?」
さすがに軍人、というだけのことはあり、礼儀には余念がないもう一人の男性。
「はじめまして。えっと。とりあえず今回。試験の教官を受け持つことになりました。
ティムカといいます。お二人のうわさはかねがね。
宇宙に名高い芸術家のセイラン様。そして英雄、ヴィクトール様。」
そういいつつ丁寧にお辞儀をするその少年。
「そんなかたくるしい呼び方は嫌いだね。僕のことはセイラン、そう呼び捨てでいいよ。」
「俺も将軍。とは呼ばれたくはないな。すでに将軍の位は前から辞退しているからな。」
そのようなことをそんな少年の言葉をうけて交互にいっている二人の男性。
そんな三人の姿をみつめつつ。
「さて。それでは今回、皆さんに集まってもらったのは。
これより始まる女王試験の教官役、をしてもらうためです。
詳しくはこれよりあるかたより説明があります。まずは互いに互いを見知っておいてくださいね。」
そういいつつにっこりと微笑む女王補佐官ロザリア。
彼らにとってはまさに雲の上の存在にも近い。
普通に暮らしていれば絶対にお目にかかれない人物の一人。
まあ今入ってきた少年などはその国における行事などで。
運がよくてお目にかかることが今後あるかもしれないが。
覚えているのは。
彼が一歳になるその日に行われた儀式に。
高らかなる聖なる力、それの祭典にと守護聖の誰かが呼ばれたことをかろうじて覚えているのみ。
それが誰であったのかは当時の彼にはわかるはずもないが。
だが子供心にその人物から何かこう威圧感、というか、
とにかく近寄りがたい、神々しさを感じたのもまた事実。
そのときに。
何かその人物の周りに何かを見たような気もしなくもないが。
それはもはやはるかに過去のこと。
今はもうそんな物心つかない幼い子供ではないのだからして。
使者がやってきたときには驚いた。
何でもこれから始まる女王試験の教官になってほしいと。
精神、感性、そして品位。
女王として必要不可欠のそれらを候補たちに教えてほしいと。
「でもロザリア様?
まだ現女王が即位されてから、あんまり時間が経過してないと思われるんですけど?」
宇宙が新たな場所にと移動したのは。
確か数十年前くらいのことではなかったのか。
そのときに今の女王も即位した、そううわさでは聞き及んでいる。
くす。
そんな品位の教官として招いた少年、ティムカのその言葉に少し微笑みつつ。
「それにつきましては。これからあなた方に説明をいたしますわ。こちらにどうぞ。」
くすりと笑い、そんな三人を今いる部屋から違う部屋にと案内してゆくロザリアの姿。
「こちらですわ。」
案内されたのは聖殿の奥に位置するとある部屋。
こんこんこん。
扉をノックすると。
中より。
「どうぞ。」
声が彼らの耳にと届いてくる。
「失礼いたしますわ。」
かちゃり。
そういいつつロザリアがその扉をあけると。
広い部屋の中。
その中央付近にあるのは真っ白いテープルと、そしてそれらを取り囲むようなテーブルが。
そして。
すくっ。
そんなテーブルを取り囲んでいる、これまた白い細工も見事な椅子から一人の少女が立ち上がる。
少女が動くたびに回りの空気そのものが清められてゆくようなそんな感覚。
「ようこそ。いらっしゃい。はるばるようこそ。聖地へ。」
にっこりと笑って入ってきたヴィクトール、セイラン、ティムカの三人に向かって微笑みかける少女。
微笑みを向けられると、まるで心が和む。
肩よりも少し伸びている金色のふわふわの髪。
そして、透き通るような緑の瞳。
着ている服はピンクで統一されており。
「「?」」
三人が三人とも思わず顔を見渡すと。
「ロザリア、ご苦労様。無事に守護聖たちにみつからずに。ここまで彼らをつれてきてくれて。」
そういってロザリアにむかってにっこりと微笑みかける。
「陛下もおっしゃってましたしね。やっぱり今回のこれは驚かすこともひとつの目的だって。
そのあたりは抜かりはありませんわ。」
そういってにっこりと少女に微笑みかけ。
そして後ろにいる三人にむかって振り向きつつ。
つかつかと少女の横にあるいていき。
かつん。
その手にもっているロッドを床にとあて。
「紹介いたしますわ。現女王、アンジェリーク=リモージュ陛下です。」
『………はっ?!!!?』
くすくすくすくす。
三人が目を見開くのと同時に。
二人の少女のくすくすとしのび笑いをする声が、部屋の中にと響きゆく。
目の前にいるのはふわふわの金の髪を肩より少し伸ばしている一人の少女。
その緑の瞳が印象深い。
「「…いやあの?ロザリア様?」」
思わず三人が三人とも同時に紹介した女王補佐官であるロザリアにと問いかける。
いやまさか、でもそんな。
そんな思いが彼らの脳裏を掠めるが。
「ふふ。そう硬くならないで。ようこそ、ヴィクトール、セイラン、ティムカ。
どう?初めての聖地は?固くならないでゆっくりとくつろいでね。とりあえず座って。
ロザリアと私から今回、あなた方にしてもらいたいことの説明をするわ。」
そういってにっこりと三人にと微笑みかけているアンジェリーク。
いや、硬くなるな。
といわれても……
まず間違いはないのであろう。
何しろ女王を補佐する補佐官であるロザリアが『陛下』と、そう呼んでいるのだからして。
思いっきり硬くなるそんな彼らに。
「どうぞv」
にっこりと笑って席を勧めるアンジェリークの姿。
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