スイート・メモリーズ     ~第76話~

すでに、話し合いは済んでいる。
そしてまた。
「―――陛下。時は満ちました。私たち、女王候補。」
「未熟ながら、お手伝いさせてくださいませ。」
『そちらの宇宙から、こちらの宇宙への生命の移動を。』
二人、顔を見合わせ、女王にと語りかける。
ロザリアは、リモージュより、詳しく聞きだし。そのことを知っている。
そしてまた。
「……陛下、レインボゥ・フラワーとそちらにあるはずの、ムーン・フラワーを同調させます。」
いいつつ、すっと。
その手元に、不思議な色彩を放つ、水晶のような花を取り出すリモージュ。
それは、リモージュの言葉に反応するがごとくに。
その虹色とも、何ともいえない光はあたりいったいにと広がってゆく。
そして、その光は。
女王のいる間にも、当然のごとくに広がり。
『力』が満ちるのを感じ取る。

「…これは…」
自分と同じ…
否。
それよりも、さらに強い、純粋なる、そしてまた、すべてを包み込むかのごとくのこの力は!?
思わず驚愕するが。
だがしかし。
今は、そんな場合ではない。
すでに。
中の島にと、二つの大陸の生命が足を踏み入れ。
あの地と、この地のつながりが、今が一番につながりが深くなっている。
今、この瞬間を逃せば、この宇宙に未来はない。
そのことがよくわかっているからこそ…
「だが、しかし、ロザリア?アンジェリーク?そなたたち…」
二つの大陸の民が同時にたどり着いた。
それは、紛れもない事実。
どちらに、女王の座を任せればいいのかは。
それは、理解はしているが、二人の意見を正確に聞いているわけではない。
……自分のように、女王の鶴の一声にて、決まるそんな運命は……
できれば、未来を担う女王候補たちには合わせたくはない。
そんな、女王、アンジェリークの問いかけに。
「…陛下。そのことなら、問題はありません。
  私が女王になります。今ここで、私が女王になることを選びます。」
その手に水晶のような花を浮かべつつ。
光の先にと向かって語りかけるリモージュに。
「…陛下。わたくしは、幼いころから女王になるために育てられ。そしてまた、教育をうけてきました。
  ですが、それは確かに大切なことなれど、わたくしは。
  自らの誇りと自身をもって、アンジェリークを時期女王と認めます。
  わたくしは、新女王の力になるべく、その力を補佐していきたいと存じます。」

それは。
大陸の民が、中の島にわたる。
そう、リモージュより聞かされた、昨晩。
二人が話し合って出した結論。
というか、さすがに。
神鳥と親しくしていたアンジェリークを女王にする、というのに、いったい何の抵抗があろうか。

「何もない、まっさらな新世界だからこそ。
  あなたのような人が女王のほうが何かと都合がいいのよ。」

それは、照れ屋なロザリアが話の中で切り出した結論。
その言葉に。

「……ごめんね。…ロザリア。そして…ありがとう。」

そんな会話がなされたのは、昨晩のこと。

そして今。

二人の女王候補は。
女王にと、その旨を伝えるべく、こうして、中の島にとやってきているのである。
新たな世界を築くために…

二人の女王候補の決断は。
いったい、どんな会話がなされたのかは、それは、彼女たち。
女王とその補佐官であるディアにはわからない。
わからないが…
「…わかった…では、そなたたちに託そう!この宇宙の未来を!!!」
そういいつつ。
その背にある、白い羽を大きく羽ばたかせる女王アンジェリーク。
広げたその手の先にあるものは。
この宇宙にまだ息づいている、星星、という名前の生命たち…


― 守護聖たちよ、女王候補のもとへ!!!!


刹那。
女王より、直接的に守護聖たちにと、直接心に通信が送られ。
すべての守護聖が、女王候補二人のいる、王立研究院にと呼び出されてゆく。


「フェリアーナ。そして、すべての命の鼓動よ!今、ここに!」
送られてくる力の波動。
それに伴い。
誰もおそらくは聞き取れない、古の言葉を発しているリモージュ。
それは、彼女がまだ、普通の人間であったときの言葉。
そしてまた、この宇宙空間創世時代にあった、言葉。



アンジェリーク=リモージュの言葉に従い。
リモージュが手にした、レインボゥ・フラワーと。
そして、女王アンジェリークの手にしている、ムーン・フラワーが。
同調するかのように、まばゆいばかりの輝きにと包まれ。


そして。


次元回廊、というか、中の島の大陸の上空にとつなげられている、次元の道より。
すべての力が、命が…そして世界が。
旧宇宙より、こちらの新宇宙にと移動がなされはじめ。
二つの宇宙は、まばゆいばかりの光にと包まれてゆく…


滅びゆく、宇宙にとどまるか、否か。
その決定は、各自の星星に、すでに女王の力をもってして、伝えられている。
望むならば、新世界への移動は同じくして、移動させる、といううことも。
いったいだれが、そのまま消滅する、という道を選ぶのであろう。
自らが住んでいる宇宙空間が滅ぶ。
そのことを知らされ、驚愕する命あるもの達にとって。
無償の、その申し出は…ありがたいもの、以外の何者でもない…

ゆえに。

ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

二つの宇宙空間に。
まるで、光の洪水がごとくに。
移動してゆく、星星と、そしてまた。
移動してきた星星を受け入れ、新たに定着するためのそんな光の洪水が。

しばらくの間。
神秘的なまでに、見受けられてゆくのであった…


それは、時期女王、決定の瞬間であり。
そしてまた。
新宇宙暦誕生の瞬間でもあるのであった…


                -第77話へー


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