スイート・メモリーズ ~第68話~
「いったい?アンジェリーク?そのほう?」
どこか落ち着き払っているアンジェリークの様子に。
いつもは冷静なまでのジュリアスが一瞬、戸惑いの表情を浮かべる。
それはそうであろう。
何しろ、女王の補佐、というか、その力の要として存在している自分たち…
そう。
守護聖である、自分たちよりも。
この女王候補のほうが、どこか悟ったような感じで、落ち着いているのだからして。
そんなジュリアスの言葉に、少し憂いを込めた笑いを浮かべ。
「お忘れになってませんか?ジュリアス様?私はこれでも、クリスタル一族の者なんですよ?
かの一族は、
各自の力の具合において、それはごく自然のことなんです。」
もっとも。
彼女、リモージュに関しては、一族の長であるのと同時に。
ここの空間の、すべてなる世界の源である存在であるがゆえに、わかるのは当然なのだが。
そう。
あのときに、願ったのは、他ならない自分。
あのまま、消滅するはずだった空間を。
頼んで存続させてもらったのは…宇宙の姫の慈悲の
そんなリモージュの言葉に、思わず全員が顔を見合わせる。
「あ~。たしかに、かの一族ならありえるんでしょえねぇ…」
そんなリモージュの言葉をうけ。
のんびりといっているルヴァ。
この女王試験が始まるのとほぼ同時。
アンジェリーク=リモージュより、滅んだ、と思われている、伝説の一族について。
いろいろと研究&調べていた、地の守護聖・ルヴァ。
わかったことは。
かの一族の先祖が、確かに。
初代女王…『
そして。
そんな会話をききつつ。
おもわず、ふっと笑みを浮かべているのは、闇の守護聖であるクラヴィス。
彼は知っている。
彼女が、何をか隠そう、その当人、である。ということを。
彼の持っている水晶は、すべてを見通す。
何しろその水晶は、『
…当人はそれを知らなかったが。
そんな会話をしている彼らにむかって。
「だぁぁ!今はそれどころじゃねえだろうが!?」
などと叫んでいるゼフェル。
「確か、ランディが聖地に戻っていたはずだよね?」
まさか、こんな事態がおこるなど想像などしていなく。
少しばかり体を震わせながらいっているマルセルのそんな言葉に。
「確か、そうだったわよねぇ。ランディやディアが向こうにいるんだし。きっと何とかなるよ。」
「おめえ、そんな楽観的なことを…」
ひらひらと手をふりつつ、いっているオリヴィエの言葉に。
思わず突っ込みをいれているゼフェル。
ふふ。
そんな彼らのやり取りをほほえましくもみつつ。
「そうでもないですわよ?ゼフィル様?ほら。」
いいつつ、いまだに少しばかり体が震えているロザリアの肩にと手をおき。
ロザリア当人はそんなに体が震えている、などとは思っていないのだが、
ゆっくりと、時空回廊の扉を指差すリモージュ。
リモージュが指をさすのとほぼ同時。
かぁぁぁぁぁぁ!
閉ざされた扉から、淡い金色の光が辺り一面にと広がってゆく。
ゆっくりと、ゆっくりと。
閉ざされていた扉がひらき、そこから出てくる二つの影。
『ディア(様)』
『ランディ!?』
その姿をみて。
女性の名前を呼ぶ者と、男性の名前を呼ぶものと。
そして、何もいわないもの…アンジェリーク、ロザリア、クラヴィス。
このメンバーにと分けられる光景がそこに見受けられ。
光に包まれた扉から出てきたのは。
あきらかに。
聖地に戻っていたはずの風の守護聖ランディと、女王補佐官ディア、その当人たち。
「皆さん、ご心配をおかけいたしましたが。もう大丈夫です。」
ゆっくりと、全員を見渡し、それでいて落ち着いた様子で、語りかけるディアのその言葉に。
「ディア?いったい…まさか…」
まさか。
女王陛下の身に何かおこったのでは?
不安が広がるのを内心抑え、表の表情には表さずに問いかけるジュリアスのその言葉に。
「それについては。皆さん。こちらに…ちょうど全員があつまっていることですし。」
ぐるりと見渡し、関係者が集まっていることをみてとり。
ゆっくりと口を開くディア。
「ランディ、よかった!無事だったんだね!」
いいつつ、ランディに抱きつくマルセルのその行動に。
「あ、ああ……」
どこか顔色もわるく答えているランディ。
それもそのはず。
彼は知らなかったのだ。
自分たちの住んでいる宇宙が、消滅にむかって歩んでいるなどとは。
守護聖である、というのにもかかわらず。
そのすべてを滅び行く宇宙を支えるためにそのすべての力を注いで支えていた女王。
その心痛はいかばかりか。
頼ってほしい、とはおもう。自分たちは女王の力を支える九つの柱なのだから。
「?ディア?いったい?」
問いかけるオリヴィエの言葉に。
「これより、第255代女王陛下がご光臨されます。」
カツン。
いいつつ、その手にもっている杖をゆっくりと床にと下ろすディアの姿が。
そこに見受けられてゆく。
-第69話へー
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