スイート・メモリーズ ~第62話~
「すいません!おそくなりましたぁ~!!!」
「だぁぁぁあ!おそくなっちまったじゃね~か!まったく!」
「しかたないだろ!?風が向かい風であんなに吹き出したんだから!」
そんな彼ら…すでに、彼ら以外は全員がそろっている。
そんな彼らの耳にと元気な三人の声が飛び込んでくる。
「遅いぞ!マルセル!ゼフェル!ランディ!」
びしゃりとしたジュリアスの声が研究院の中にと響き渡るが。
「ジュリアス。これで全員がそろいましたね。――それでは次元回廊を開きます。」
残された三人も到着したのをみてとり。
女王補佐官ディアがかるくその手にもったロッドを前にと振る。
それが合図。
――カッ!
この新たな銀河宇宙とそしてあちらの銀河集団宇宙。
二つの宇宙空間が今ここに、次元回廊を通じて結ばれてゆく。
これが唯一、というか彼らが互いの宇宙を移動するための手段。
この回廊は、女王の許可がない限り開くことは不可能。
そのまま、回廊の扉をくぐり。
ディアは聖地の、女王のいる聖殿へ。
そして、守護聖たちは。
問題のモノが発生している場所にと。
それぞれ直接にと移動してゆく。
宇宙空間。
それは神秘で、それでいていまだになぞに包まれている空間。
そして、そこに。
普通に考えればまず生きてはいないであろうに。
宇宙空間にたたずむ人影、およそ九人。
彼らの周りにはきらきらとした何かの気体のようなものがとりましており。
それが、彼らを真空の状態から保護しているのがわかるものがみれば見て取れる。
ゴウッ。
そんな彼らの目の前に存在するのは。
はっきりいって、しゃれにならないほどの大きさをもっている深い深淵の空間。
そこに、周りの形あるものすべてが吸い込まれていっている。
「…これは…また。」
思わずつぶやく。
それもまた道理、としかいいようがない。
彼らの目の前にあるのは、はっきりいってちょっとした小さな太陽系よりも大きな大きな黒い闇。
彼ら、というか自分たち、守護聖全員の力が必要。
といわれたわけは、これをみてすぐに理解はできる。
できるが。
思わずつぶやかずにはいられない。
その圧倒的なまでの見たこともない大きさの【ブラックホール】に対して。
そんな炎の守護聖たるオスカーのつぶやきとほぼ同時。
「……何でこんなに大きなブラックホールなんてものが……出来てるんだよ?」
ゼフェルが同じようなつぶやきを発するのもまた無理はないこと。
そんな二人のつぶやきに。
聞いてはいたが、やはり実際に目にするのとではその内情は異なる。
だがしかし、内心の驚きなどは微塵も表にはだすことはなく。
「今はそう言っている場合ではない。これをほうっておくことは、すなわち甚大な被害をもたらす。
…それゆえに、陛下は我ら守護聖全ての力で。
このホールを無効化するようにと、ディアを通じて指示がたった。」
自分以外の八人をぐるりと見渡しながら凛として言い放つ、光の守護聖たるジュリアス。
「………さすがに、この大きさでは…一つの星どころか、太陽系なども飲み込みかねませんからね。」
いいつつ、ため息をつきつつも、ここまで影響がでるものなのですね。
それほどまでに陛下のお力は…
などと内心おもいつつ、憂いた声をだしている水の守護聖リュミエール。
「まあ、いいじゃない。早く修正しましょうよ。ここでぐずぐずしてても、被害は拡大するばかりだし?」
今はこんな会話をしているよりも、これを早くどうにかするのが先決。
わかってはいるが、だがしかし、この【ブラックホール】を見て圧倒されている数名、
そんな彼らの緊張をほぐすために、
あえてかるい口調でそんなことをいっているのは、夢の守護聖オリヴィエ。
「…ま、今回ばかりは、オリヴィエのいうとおりだな。とっととやろうぜ?」
確かに、これをほうっておくわけにはいかない。
そんなオリヴィエの言葉に同意を示すゼフィル。
そんな会話をしつつ、やがて彼ら九人の守護聖たちは。
目の前にある【コレ】をどうにかするために、それぞれに行動にと移ってゆく。
「では、それぞれの役割は…覚えたな?」
最終的な確認。
それぞれの守護聖にそれぞれの役割を確認させ。
そして、全員を見渡し、返事を待つジュリアス。
そんなジュリアスの言葉に。
「はい!ジュリアス様!」
元気に答えているマルセル。
「では…いくぞ!我ら守護聖一同、その力をもってして。 発生した歪みを訂正す!」
ジュリアスの掛け声とともに。
彼ら、九人の守護聖達の力-つまりは【サクリア】が。
目の前にある【ブラックホール】を消滅させるためにと注がれてゆく。
ぶわっ!
目には見えない、力の何か。
同時に九人の体がまばゆいばかりに輝き、その姿は威厳というか神々しさ。
そういったものをたたえている存在にとはや代わりする。
彼らが力を解放している証拠。
ゆるやかで、それでいて力強い力の波が、彼らの体からほとばしるようにと発生し。
その力は、【ブラックホール】を消滅、もしくは閉じるためにと注がれてゆく。
「な゛!?女王陛下の力がたりない!?」
「何!?力が!?」
彼らの力は、女王の力と比例する。
彼ら自身が完全にその力を扱えるか-それは否。
それほどまでに彼らのもつサクリアは強力であるがゆえに。
彼らは、その力を女王のサクリアとうまくとりあわせ、その力を有効にと発揮させてゆく。
それなのに。
肝心なる女王の力がまるで切れ掛かった糸のように細い。
誰ともなくそんな叫びがあがるが。
それとほぼ同時。
フワッ…
彼ら九人の周りを白い、真っ白いまでのそれでいて金色にと輝く羽が無数にと舞いおち。
それはいったいどこからきたのかなんてわからない。
だがしかし。
『力が!!!!』
それと同時に彼らの力もまた満ち溢れ。
そのまま、巨大なブラックホールは、守護聖たちの力におされ。
そのままその場より消滅してゆく……
-第63話へー
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