スイート・メモリーズ     ~第58話~

ロザリアがアンジェリークにと看病を受けているそんな中。
「…陛下!?」
ふらり。
おもわずふらついた女王に思わず悲鳴が上がる。
「大丈夫よ。大丈夫…」
そういうその顔色は透き通るまでに青白い。
「…陛下、あまり無理をなされては……」
心配そうにそう問いかけるそんな傍らの女性のその言葉に。
「大丈夫よ。この命に代えても…この宇宙に生きるすべての命。絶対に守って見せるから…」
そういう、女王の声が少し苦しそうな声に聞こえるのは、伊達に長くともにいたわけではない。
「…何かありますのね?陛下?宇宙の崩壊、とは別に。」
今、自分が仕える……
そしてまた、唯一無二の親友である彼女は、この場所から動くことすら間々ならない。
すべての持てる力のすべてを。
すでに寿命を迎えた、この宇宙空間そのものの維持にと努めているがゆえに。
彼女の力があってこそ。
本来ならば、すでに、この宇宙は、完全にすべての命を道連れに滅びを迎えていたであろう。
それがわかっているからこそ。
少しでも、彼女の親友たる、『アンジェリーク』の力になりたい。
そう願うのは、女王補佐官であり、そしてまた、女王-アンジェリークの親友であるディアの望み。
「…ディア。悪いんだけど、守護聖たちを全員、あの地に……」
あの地。
そういいつつ、すっと手をかざしたその先に、映し出されるとある光景。
「な゛!?これ…は!?」
思わず目を見開くディアに。
「…宇宙に、壊疽が広がり…当然、それに伴い…負の鼓動もまた…
  それにともない…あの場所から…封印されているあの場所から。
  滅びと破壊と負の気配が…こうした形に…もう、今の私の力では…」
そういう、女王の額には汗がにじんでいる。
そもそもは。
それでなくても、今女王は。
この滅び行く宇宙の時間率を極力下げ、
そしてまた、崩壊しようとするすべての生命を受け止め、何とかこの宇宙が滅びないようにと支えている。
それと同時に。
新たな新天地である、あの惑星。
あの地を守護することにもまた力を注いでいる。
ゆえにこそ、女王の力の負担は、生半可なものではない。
その半分以上を神鳥が肩代わりしてくれている、という現状があるにしろ。

「陛下、あまり無理をなさらないでくださいませ。
  こちらは私のほうで何とかいたしますから、どうか…」
ディアとしては、【アンジェリーク】の体が心配でたまらない。
何しろ、ここ最近は、きちんと睡眠すらとってないようなのだからして。
少しでも気を抜けば、宇宙は確実に崩壊の道をたどってゆく。
そこまでに、もはやこの宇宙の代謝機能は完全に働いていない。
何事にも誕生があれば滅びもある。
だが、何としても、この地だけは、滅ぼすわけにはいかない。
それは、女王の地位を受け継いだときに、教わるでもなく、漠然と理解している。
この地のどこかにあるという、【約束の地】が消滅するとき、また、宇宙も消滅する。
それは、代々の女王のみがしっている伝説。
それが伝説ではない、ということは。
女王になったもののみがその意思を神鳥と同調シンクロさせていることによって理解ができる。
「ディア…でも…」
そう言いかけるそんな女王の言葉に。
「陛下、私は陛下といつも一心同体ですわ。」
そういいつつ、そっと女王の手を握り締める女王補佐官ディア。
そんなディアの言葉に。
「…ディア…」
感極まる声をだしている255代女王、アンジェリーク。
そんな姿が。
聖地の聖殿の中にて、見受けられてゆく。



「ディア?いったい?」
聖地から戻った女王補佐官であるディアがまず行ったのは、守護聖たちの臨時収集。
ディアが聖地に戻ったのは先日のこと。
だが、戻ってきたディアの顔色は心ならず優れない。
ここ、飛空都市にと建設されている、聖殿。
その中にある謁見の間。
そこにて呼び出された守護聖九名。
聖地から戻ってくるなりの臨時収集。
何かあったのでは、と思うのも無理はない。
時刻はまだ朝も早い。
そんな時間にたたき起こされた、という不満が少なからず見えているものもいるが。
そんな顔色の優れないディアにと聞き返しているのは。
やはりとしうか、守護聖の長でもある、光の守護聖たるジュリアス。
補佐官たるものが、何の用もなく、
こんな時間に守護聖全員をしかも、人を使ってまで招集するはずがない。
ということは、彼はよくわかっている。
わかっているからこそ、不安が募る。
「あ~、ディア、まさか陛下に何か…」
最悪の可能性が思い浮かび、問いかけるそんな地の守護聖たるルヴァのその言葉に。
「いえ、陛下は無事ですわ。ただ…実は、守護聖の皆様方。
  皆様の手を借りなければいけない自体が、あちらの宇宙にて発生いたしました。
  …ことは、急を要します。」
そう。
急を要するのだ。
顔色も悪く、それでも凛とした態度で、守護聖たちを見渡し、それでいて毅然と言い放つディア。
「…私たちの力?ディア?それって?」
その言葉に数名の守護聖たちの顔が曇る。
そもそも、彼ら、守護聖の力を直接にかなりければいなけい。
という自体は、普通に考えてもなま優しいことではない。
それが急を要する。といわれればなおさらに。
「――まずは、皆様、こちらを…」
いいつつ。
すっと、その手にしたロッドを空中にと突き出すディア。
それと同時に。
そのロッドの先に、問題の映像が映し出される。

ゴゥ。
あからさまに異常。ともいえる黒い渦。
いや、渦、というか球体、というか、何というか。
とにかく、とてつもなく、大きな、それでいて、黒い渦。
そういったほうがしっくりくるであろう。
それが。
まるで生きているかのごとくに、あたりにある惑星や、衛星、または小惑星群などを。
まるで秒単位よりも早くに吸い込む様子がそこには映し出され。
それだけならまだしも、それは。
ちょっとした大きさの星などを吸い込むと同時に、あからさまに、その渦が拡大しているのが見て取れる。

そんな映像が守護聖たちの目の前にと映し出される……


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