スイート・メモリーズ ~第51話~
「心配ならばこの私がいくが?」
そんなジュリアスに対して、さらに追い討ちをかけるかのようなクラヴィスのその言葉に。
「いらぬ!」
ジュリアスが叫んだその直後。
「ああ!お薬ができましたぁ~!さ、これをもって、ジュリアス、お願いしますね。」
いいつつ、小さな小瓶をジュリアスにと手渡すルヴァ。
「?うげっ!?こんなものをロザリアはのまされるのかよ!?」
それをみて思わず引いているゼフィルに。
「ルヴァ様?これの材料って…いったい?」
そこには何ともいえないどす黒いような液体ともいえない何かが。
入っている小さな小瓶がひとつ。
それをみて質問しているランディの言葉に。
「それは秘密です。でもよく効くお薬なんですよぉ?」
にっこりと微笑むルヴァ。
「それじゃ、ジュリアス様、お願いします。」
にこやかに笑ってちょんと背伸びをしつつ、
ジュリアスの手の中の小瓶を触りつつ、微笑みかけるアンジェリークの動作に。
「うむ。わかった。それではいってくる。」
いいつつ、薬を手にしその場からロザリアの部屋に向かうためにと立ち去るジュリアス。
そんなジュリアスの後ろ姿をみつつ。
「心配だ…。あのジュリアス様にきちんとお見舞いが勤まるのだろうか?」
不安気な言葉をつぶやくオスカーのその言葉に。
「「うんうんうん。」」
同時にその場にいる全員がつぶやいていたりする。
「でも結局守護聖様がた全員にロザリアの具合が悪いのがしられちゃった…
私本当はルヴァ様にお薬もらおうと思ってたのに…」
つぶやくアンジェリークの言葉に。
「でもロザリアでも具合がわるくなるんだねぇ。」
「つぅか、女王陛下の加護下にある飛空都市での病気って。それっておかしくないか?」
――…ぎくっ。
そんな的をついたゼフィルの言葉に、一瞬硬直しているアンジェリーク。
そして、年長組みの守護聖たち。
「ふっ。何のために女王試験が行われていると思っている…」
自嘲気味にと笑うクラヴィスに。
「クラヴィス様!!」
今は。
今はまだ、言うべきではない。
その意味合いをこめて思わず悲鳴に近い声をだしているリュミエール。
「ま、それはそうと、俺絶対に病気にならないようにしよ。
あんなもののまされたらしゃれになんないからな…」
本気でそんなことをつぶやいているランディ。
「けっ。心配しなくてもてめぇはそんなものにはかからないさ。
何とかは病気にならない。というだろう?」
そんなランディにチャチャをいれているゼフェル。
「何ぃ!?どういう意味だ!?ゼフィル!?」
そしてそんなゼフェルの言葉につっかかっていっているランディ。
「それはそうと。皆さん、執務はいいんですか?」
きょとんとそんな彼らを見渡しつぶやくアンジェリークのことばに。
はた。
はたと正気に戻り。
「ああ!そうだった!」
「それもそうだな。」
「ロザリアが早く元気になれるように祈ってるね。」
それぞれ異なる言葉をいいつつも。
このままいつまでも話し込んでいるわけにもいかず。
そのままアンジェリークの言葉に促されるかのようにと各自の執務室にと戻ってゆく彼らたち。
そんな彼らを見送りつつ。
「さって、私も戻ろうっと。」
いいつつ、元着た道を引き返してゆくアンジェリーク。
今日はロザリアに一日、ついていてあげましょ。
そう思いつつ……
コンコンコン。
扉をノックする音がする。
「は~い。」
カチャリ。
いいつつ、ロザリアに代わり、部屋の扉をあけるロザリアのお世話をしているばあや。
先ほど、どうにかロザリアの頭に氷をのせ。
そして、洗面器なども用意して。
常に頭を冷やそうとしていたそんな矢先。
扉をノックする音。
カチャリと扉をあけたその先に。
「まあ!これはジュリアス様。」
「…え゛?」
そんなばあやの言葉をうけ。
思わず額においてある氷とタオルをのけつつ、起き上がろうとするロザリアではあるが。
だがしかし、体が思うように動かない。
それもそのはず。
ただいまロザリアはかなりの高熱で体が思うように動かないのだからして。
ちなみに、すでにロザリアの目は覚めてはいるが。
どこかその意識は朦朧としている状態。
そんな状態の中で、ばあやの言葉をきき。
思わず視線だけをそちら…つまりは出入り口にと向けてゆく。
そこには。
「まあ、これはジュリアス様。」
そんなばあやの言葉に。
「うむ。ロザリアが病気だ。聞いたものでな。邪魔するぞ?」
「まあ、どうぞ。」
いいつつ、扉の向こうにいたジュリアスを招き入れる。
そして、そんなジュリアスの姿を垣間見て。
「ロザリア、具合はどうだ?アンジェリークからロザリアが熱を出して倒れた。そう聞いてな。」
そういってロザリアが臥せっているベットの横にとたたずむジュリアス。
「あ…あの子ったらぁぁ!ジュリアス様に迷惑かけてぇぇぇ!」
思わず叫ぶが。
ぐらりっ。
叫ぶと同時に余計に頭が痛くなる。
「いや、アンジェリークに言われたからではない。おそらく疲れがたまっていたのであろう。
これはルヴァが調合した薬だ。これを飲んで今日はゆっくり休むがよかろう。
病人に必要なのは休息とそして睡眠だろうからな。
そなたのことだ、病気になるなど自己管理が足りなかった証拠。とそのあたりはわかっておろう。
おそらくは先の異変から身を粉にして育成していたがゆえに。
疲れがたまっていたのであろう。今日はゆっくりと休むがよい。」
そういいつつ、そっとロザリアの額に触れるジュリアス。
そんなジュリアスの言葉に思わず目を見開きつつ。
「…ジュリアス様…お優しい…」
あの、ジュリアスが。
そんな言葉をかけてくるなど……と、心底驚きつつも。
だがしかし、確かにジュリアスのいうことももっともだ。
とロザリアの中にと浸透してゆく。
もしこれが、ほかの守護聖とかの言葉ならば、ロザリアのこと。
多少の無理をしてでも、熱が下がったというか。
ある程度動ける状態になれば無理にでも動こうとするであろうが。
だが、そういってきているのが。
何しろ『あの』ジュリアスである。
何があってもとにかく仕事を熱心にする、そのあたりの責任感は人一倍であろう。
という光の守護聖・ジュリアスのその言葉に。
思わず目を丸くするものの、心のどこかで安心する。
「とにかく今日はゆっくりと休むがよかろう。そして明日からはいつものロザリアで頑張ればよい。
今日は休暇とおもえば気も楽であろう。」
「…はい。」
そういいつつ、ばあやに薬を手渡し、後でのますように指示しているジュリアスに。
そんなジュリアスの言葉をうけ、どこか安心して横たわっているロザリア。
そして、ジュリアスから受け取った薬を飲み干し。
あまりの苦さに思わず意識が遠のきそうになるものの。
何とか気力でそれを持ちこたえ。
「ジュリアス様。わざわざのお見舞い、ありがとうございます。」
いつもなら、なかなか素直にいえない言葉も、今ならいえる。
そんなことを思いつつ、熱を押してジュリアスにとお礼をいうロザリア。
少しはアンジェのこと、見直したかもしれないわね。
ジュリアス様がこんな言葉をかけてくれるお人だなんて、私思ってもなかったし。
などとそんなことを思いつつ。
ロザリアの意識は再び混沌とした意識の中にと沈んでゆく。
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