スイート・メモリーズ ~第47話~
体がだるい。
けども、休むわけにはいかない。
大切なフェリシアのためにも。
そう、自分は女王候補なのだから。
そう自分に言い聞かせ。
「でも…おかしいわ?どうして…」
そう思うが思うように思考は回らない。
何か頭に霞がかかったかのように。
普通、起こるはずがないのである。
ここ、守護聖が集う飛空都市で、具合が悪くなることなど。
この地は、女王の加護下にあるがゆえに。
「そうよ。これはただ体が疲れてて、具合がわるいように感じているだけですわ。
今日はえっと、まずはマルセル様のところと、あとは…」
いいつつ、昨日のうちに立てておいた今日の予定を見直しているロザリア。
頭がいたいのを気力で押さえ。
ともかく、女王候補としての自分の役目を果たそうと。
そんなことをおもいつつ。
そんなテーブルに向かい予定表を眺めているロザリアの耳に。
「ロザリア~。」
聞きなれた明るい声が聞こえてくる。
ふと見れば。
いつものように元気な表情をしているアンジェリークが、
彼女にと与えられている部屋にと入ってきていたりする。
「あら、アンジェリーク。こんな朝早くから敵情視察かしら?」
いつものようにそんな声をアンジェリークに向かってかけるが。
「ロザリア?顔色わるいよ?それにばあやさんが心配してるよ?」
そんなアンジェリークの言葉に。
「まあ!ばあやったら!私は大丈夫だといってるのに!あなたにそんな相談をしたのね!
いいこと?アンジェリーク、私はだいじょ……」
ぐらり。
大丈夫。
といいかけ、思わず体がよろめく。
「きゃぁぁぁぁ!?ロザリア!?」
「お嬢様!?」
アンジェリークとばあやの叫びが同時にと重なるが。
二人の目の前で、よろめくロザリア。
そんなよろけたロザリアをしっかりと抱きかかえつつ。
といっても、その体格差は見た目、六歳と十七歳の違いもあり。
完全にはアンジェリークはロザリアの体を支えきれてはいないが。
ぴとり。
そして、倒れてきたロザリアの額に手をあてる。
熱い。
子供の体温というものは、普通の大人よりも少し高め。
それにもかかわらず、アンジェリークの手にすら熱く感じる。ということは…
「大変!ロザリア、熱あるじゃない!横になってないと!」
そういいつつ、あわてて、ロザリアをベットのある部屋にと運ぼうとするが…
「あ、ばあやさん、手伝ってください!」
その言葉に、はっとわれにと戻る。
「お嬢様、ここはアンジェリークさんのいうとおりに……」
そうなだめるが。
「だめよ。今日の育成が……」
高熱であるのにもかかわらずにそんなことをいっているロザリアに。
「何いってるのよ!こんな熱で。とにかく、今日はゆっくりと休まないと!」
いいつつ、二人してロザリアを寝室にと運んでゆくアンジェリーク達。
ゆっくりとベットにと横たえる。
「婆やさんはロザリアに何か性のつくものを。…ロザリア?大丈夫?」
今にも起き上がり、具合が悪いのに育成に赴こうとするロザリアに声をかけるアンジリェーク。
「こうしてはいられないのよ。私がいかないと、フェリシアが…」
いいつつ無理に起き上がろうとするロザリア。
熱を計るとその体温は九度八部をさしている。
普通立っていられる状態ではない。
「ああ!ほら、こんなに熱がある。とにかく今日はゆっくりと安静にしてないと。」
そういい、ベットにロザリアの体をうずめるアンジェリークに。
「でも、育成が……」
それでもまだ、自分に与えられている使命を果たそうとするロザリアに。
「ロザリア?今日一日、ゆっくり休んで、明日からがんばるのと。
それとも今日無理して幾日も育成できないのとどっちがいいの?」
きつい言い方かもしれないが、ロザリアにはこの言い方のほうが効果がある。
「で、でも!」
「とにかく、今は寝る!」
いいつつ。
ぴとり。
横になっているロザリアの額に人差し指を当てるアンジェリーク。
「アンジェ?何を…」
何をするの?
といいかけたロザリアの思考が、まるで闇にと落ちてゆく。
そのまま、なぜだかわからないが。
そのままロザリアの意識はそのまま深い眠りの中にといざなわれてゆく……
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