スイート・メモリーズ     ~第35話~

今まで豊かであればいい。
人々が豊かならば幸せ。
そう自分は簡単に思っていた。
だが。
そうではない。
豊かさになれた人々やそして存在たちは。
よりよい豊かさをもとめ……その結果……
ここではそれがいい例で、もはや宇宙のすべては混乱にと満ち溢れている。
豊かさと裕福とそして…堕落と欲望は隣り合わせ。
「…僕は……」
見上げる空にはあまり星はまたたいていない。
というか、実際のものはない。
見えているその光は。
すべてこの星に生活している存在の願いにより。
そう空に見えている、というように映っているのに他ならない。
すでに一番に力ある恒星、と呼ばれる太陽というか燃えている星星は。
まっさきにエネルギー確保のために消滅させられた。
その先に何が待つか、など誰も考えずに目先の欲に走ったその結果。
太陽がなければ命は、そして惑星は当然のことながら存続することはできはしない。
ならば。
人工的に作り出し、それを維持するために新たなエネルギー。
もはや世界は悪循環。
だがそれすらも今はもうほとんど起動していなく。
宇宙空間にははっきりいってまだらというかほとんど。
光っている星の姿は具間みれないのが今の現実。

…そして。
アンジェリークはそんな消滅してゆく星星から。
どうにかそこにすむ命あるものを助けようと、……一人でがんばっているのである。

誰も宇宙を一瞬で移動し、または別の何かを連れてくるなどそんな大きな力は持ちえない。
ある程度はもっていても。
それはアンジェリークの力には及ばない。
似ている力をもっているものたちはすべてアンジェリークの手伝いをしているものの。
だがしかし。
間に合わない。
どんどんと滅んでゆく命たち。
そして。
それでも戦争をやめない大人たち。

今この世界は。
間違いなく破滅にむかって一直線に進んでいるのである。

「…私たちの願いはただひとつ。すべてのものが平和であればいい。…ただそれだけなのに……」
裕福でなくてもかまわない。
ただ、平和に暮らせられれば……



チチ…チチチチ。
いつものように小鳥のさえずりで目が覚める。
「おはよう。チュピ。」
いったいもうどちらが現実なのかわからない。
わかっているのは間違いなくこちらが現実。
目がさめると自らの内部に満ちる力にと実感する。
「…豊かさが戦争をもたらす…」
今日みた夢。
そして聞いた内容。
それを頭の中で整理してゆうことするマルセルの脳裏に。
ふと。
エリューシュオンの姿が重なる。
「…あ゛。僕…僕は…」
でも。
「まさかそんなことはないよね。」
夢は夢。
そう思いつつ。
そのまま今日もまたがんばるためにと着替え始めてゆくマルセルの姿。



「……それでは、そのサクリアの過剰反応についての。エリューシュオンの反応は…」
報告をうけつつ書類を見ている金色の髪の男性が、報告書をみつつ目の前にいる男性にと問いかける。
「はっ。それなんですけど。どういうわけか確かに。
  研究院を閉じるときに何回調べても高かった数値が朝になると少なくなっている。
  ということがつづいているようです。」
直立不動でその問いかけに答えている赤い髪の男性。
ぱらり。
書類がめくれる音が部屋にと響く。
「…ふむ。最近エリューシュオンには女王候補からは、水のサクリアが注がれているようだな。
  それで暴動などはおきないのか。」
「は、はぁ。毎日ぎりぎりまでお嬢ちゃんもぎりぎりの時間に。
  かならず遊星盤にてエリューシュオンに降りてますので。
  視察をしてからの行動、だとは思われますが。」
そういいつつもハンカチで汗をぬぐう。
「ふむ。わかった。オスカー。この一件。早急に原因を突き止めねばな。
  まだあの地は成長過程。無意味な豊かさは人々に傲慢とそして堕落を与えない。」
「はっ。心得ております。そのことをもお嬢ちゃんはわかっているのか。
   ここ数日俺のところには育成のお願いにきていませんし。」
「ふむ……。アンジェリークは何か知っているのかもな。
   とにかく報告ご苦労。引き続き調査を頼む。とパスパに連絡しておいてくれ。オスカー。」
そういいつつ書類を机の上にと置くその男性。
「はっ。わかりました。ジュリアス様。」
そのような会話が。
光の守護聖の執務室で見受けられてゆく。



「アンジェ?あんた最近寝てないんじゃない?」
ぎくっ。
「や、やぁねぇ。ロザリア。何を根拠に…」
す、鋭い…
そんなことをおもいつつもにっこりと笑って問い返す。
「何となくだけどね。あんた最近疲れているように見えるから。」
「き、気のせいよ。そう、気のせい。ちょっと太ったかなぁ?と思ってたから…」
そういうアンジェリークのその言葉に。
「な!?あんたこんな試験の最中に何を考えてるのよ!?」
思わずあきれて大声をだしていたりするロザリア。
「えぇ?でも、やっぱり太るのはいやじゃない……」
女性ならば誰でもやせていたい、と思うのは当然の心理…なのかもしれないが。
「とにかく!無意味なダイエットなんてやめなさいよ!まったく。」
アンジェリークの言葉にダイエットをして。
それで疲れているように見えるのだと、そう信じ込んでいるロザリアであるが。
そのまま、すたすたと先にいくロザリアをみつつ。
「…ごめんね。ロザリア。でも本当のことはいえないから。」
エリューシュオンに注がれる多量の緑のサクリア。
それを今まさに滅びいこうとしている世界に注いでいるのは知られてはならないこと。
彼女がそんなことをできるなどとは、誰にも知られてはならないのだ。
人を巻き込むよりは自分の力でどうにかしたい。
それが彼女の真意。
だからこそ。
「…緑のサクリアを受け継しマルセル…お願い、気づいて……」
意味もなく、あのかつての…悲劇の夢をみせているわけではない。
彼とてサクリアをつかさどるものとしての自覚は必要なのだ。
いつまでも子供でいてもらっては困る。
――…これからのためにも。
そういいつつつぶやくアンジェリークの姿が。
ジュリアスたちが会話をしているちょうど同時刻。
見受けられているのであった。


                -第36話へー


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