スイート・メモリーズ ~第29話~
ぷらぶらぶら。
思わず足をぱたつかせる。
金色の髪がさらりと揺れる。
「何かすごいよね。」
いつもこのように自分たちの力がどのように影響しているのか。
目の当たりにすることはほとんど皆無。
いつも聖地より、女王の意思をうけ、力を注ぐ。
そして宇宙の安定を保つ。
それが自分たち、守護聖の役目。
はじめは本当に何もない惑星であった。
いまだに何の命も誕生してない、原始の惑星。
まあ自分たちが来たときにはすでにどうにか大陸は不安定ながらに、形を作っていたものの。
それでも。
ちょっと前までを思うと今は見違えるほどにその惑星は発展している。
惑星の大きさはそれほど大きくはないゆえに。
自転率がこの惑星は早い。
そして、それにもまして、今自分たちのいる場所とそして眼下にある惑星の時間率は。
通常時の聖地とそして外界の時間の流れ。
それにすらも等しいほど。
彼…マルセルが見ているその先には。
水面にと浮かび上がっているここ、飛空都市の下に位置する惑星の映像。
「マルセル様。今日は育成ですか?」
そんなことをいいつつ、部屋に入ってくるここの研究員の責任者でもあるパスハ。
水竜族の出身。
ここにははっきりいって駆け落ち同然でやってきているのであるが。
その能力を高く評価されてこの地の責任者とそして占い師。
それを今の女王より彼らは任されている。
パスハが部屋に入ってくるのをみて。
すとん。
台座からすとんと勢いよく飛び降り。
「ううん。育成地の様子をみてたの。アンジェリークもロザリアもがんばってるよね。」
そういってにっこり微笑むマルセルに。
「守護聖様に気にかけていただけるとはうれしいですね。
ご自分で視察されるまでに気にかけていただいて。
ここの研究員を預かるものとしてお礼を申し上げます。」
そういいつつ、軽く会釈をしてくるパスパに。
「あ、そんなことしなくてもいいよ。パスパ。僕ね何だかうれしいんだ。
こうして僕たちの力がどのように影響しているのか。僕たち直にはみる機会ないからね。」
彼ら守護聖はいつも聖地にこもりそして宇宙の安定のために働いている。
そしてときには様々な星にと派遣などもあったりするが。
だがそれは特例といえば特例中の特例。
試験が始まる少し前に珍しく守護聖全員の休暇がもらえたことがあったりもしたが。
まだ守護聖になって間がない緑の守護聖マルセルだからこそ。
ともいえよう。
自分の力がどのように影響を与えているのか。
興味を引く、というのは。まだ若い証拠ともいえるのかもしれない。
まだその目で実際にリアルイムで自分の力がどのように影響を与えているのか、
彼はまだ見たこともないし、又知らないのだ。
そんなマルセルの言葉に目を細めつつ。
「気にかけていただけるのは大変ありがたいのですが。マルセル様。
あまり遅くなられたら暗くなりますよ?」
すでに日は傾きかけている。
「あ、うん、わかった。それじゃ、またね。パスハ!」
そういいつつにっこりと微笑みそのまま研究院より外にと出てゆくマルセル。
そんな姿をみつつ。
ふっと微笑み。
「守護聖様。といってもわれわれと変わりませんね。」
ただその持っている力が尋常ではない。ということを除けば、ほとんど普通の人々と変わりがない。
ましてやマルセルはまだ14歳。
子供でいえば遊びたい盛りの年頃。
かけてゆくマルセルをみつつめったに見せない微笑みを浮かべ。
「おっと。それより今日のまとめをしなければ。」
惑星の成長と発展は待ってはくれない。
きちんとした正確なデータ。
これをもたらすのも彼の仕事。
「さて。今のエリューシュオンとフェリシアの望みと、そして……」
ピピピピピ。
研究院にコンビューターの音がしばらくの間鳴り響く。
そよそよそよ。
「う~ん、風が気持ちいい。」
こうして今ここに自分がいるのが信じられないけども。
だけども今こうして確実に初めてともいえる大きな役目。
何しろ次代の女王を決める女王試験。
その守護聖の一人として自分は今、ここにいる。
そんなことをおもいつつ大きく空に向けて背伸びをしていたりするマルセル。
手を大きくあげおもいっきり伸びれば気持ちがいい。
全身にここの空気を感じられるから。
「あら、マルセル様。」
「あれ?マルセル様。今から戻られるんですか?」
背筋をしっかりと伸ばし、そしてそのまま道をこの都市にと与えられた、
仮の私邸にと向かうさなか、そんなマルセルに声をかけてくる少女が二人。
ふと見れば。
そこには青と金の一対。
といってもかなりの身長差はあるが。
一人は年頃の17歳程度とわかるほどの紫色の髪の女性に。
こちらはこちらで本来ならば同じく17歳なのにどうみても六歳程度、またはそれ以下。
にしか見えない金色の髪の少女。
ちょうど互いにすれ違う形で道のとおりですれ違う。
「あ、アンジェ、ロザリア。今、育成の帰り?」
今マルセルの目の前にいる少女こそ今女王試験を受けている女王候補の二人そのもの。
そういいつつ並んで歩いている二人ににっこりと微笑みかける。
「はい。私たちちょうどリュミエール様のところで一緒になりまして。」
そういってにっこり微笑んでくるアンジェリークに。
「私たちは今から寮にと戻るところですわ。
マルセル様は今日は早くに戻られた、とランディ様がおっしゃってましたけど。」
リュミエールの前にランディの所によっていたロザリアが問いかける。
その言葉に。
「あ、うん。今まで僕王立研究院にいたんだよ。
エリューシュオンもフェリシアも順調に発展してるよね。その状況を見に。」
そういってにっこりと微笑むマルセルに。
すっとスカートの端をつかみ軽くお辞儀をし。
「まあ、守護聖様に気にかけていただきまして光栄ですわ。」
そういって軽くお辞儀をする動作をしてにっこりと微笑むロザリアに。
「マルセル様もいろいろと大変でしょうに。あまり無理しないでくださいね?」
そういってにこっと微笑むアンジェリーク。
そんな会話をしつつ。
「それではマルセル様、私たちはあまり遅くなりますと暗くなりますから。」
すでに空はもう夕焼けは終わりすでに夜の帳が下りてきかけている。
「あ、マルセル様もおきをつけて。それでは。失礼します!」
元気のいいアンジェリークの声が響きゆく。
そのままマルセルにと挨拶し寮にと向かってゆく二人の女王候補の姿をみつつ。
「さ、僕もかえろ。」
そういいつつ、
そのままこの飛空都市に与えられている私邸というか別荘にと向かってゆくマルセルであった。
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