スイート・メモリーズ     ~第21話~

「あ、アンジェ!」
森に入るとふと呼び止められる。
見ればちょうどやってきたところなのか。
そこにはすでにもうやってきているマルセル、ゼフェル、ランディの姿が。
「あ、すいません。待ちました?」
そんな湖のほとりで花畑に行く前に話し合っていた彼らの目に映ったのは。
ばたばたとかけてくるアンジェリークの姿。
太陽の光にその金色の髪が反射し風にふわりとなびいている。
ちなみにここ、飛空都市の気候もまた、王立研究員と、
そして、女王の力で決定がされていたりする。
まあほとんどはこの地を管理するコンビューターが気象管理しているのだが。
少し頬を紅潮させていってくるそんなアンジェリークに。
「ううん。僕たちも今きたとこ。」
そういってにっこり笑うマルセル。
「けっ。うるさいおっさんに捕まりさえしなければもう少し早くつけたんだがな。」
などと鼻をかきつついっているゼフェルに。
「そもそもゼフィルがいけないんだぞ?目立つように廊下を走るから。」
そういうランディの言葉に。
「うるせえ!そもそもお前なんか壁を伝って降りようとしたりしてたじゃないか!」
などと何ともほほえましい言い合いをしているこの二人。
「えっと。あの二人はほうっておいて。でもアンジェは大丈夫なの?」
今から出かけたのであれば。
帰りはおそらく夜になるかもしくは明日。
そういってくるマルセルの言葉に。
「あ、それなら大丈夫ですよ。夜になる前に皆さんを、強制的にこっちに移動させますから。
  たとえどこで何をしていようとも。私から離れて遊んでいたとしてもね。」
にっこりとにこやかにそう微笑み言い切るアンジェリーク。
「つうか、何でおめえはそんな力があるの今まで黙ってたんだよ?」
そういってくるゼフェルに。
「あら、別に聞かれませんでしたし。それに試験には関係ないでしょ?」
あっさりとにこやかに返しているアンジェリーク。
「それはそうと、あまりここで長居してたら、ほかの人に気づかれますし。そろそろいきませんか?」
そういってにっこりと笑い三人を見渡し微笑む。
その言葉にマルセル、ゼフェル、ランディは顔を見合わせ。
「そういえば、どうやって移動するの?」
肝心のことを聞いてなかった。
そんなことを思いつつ用意していたバスケットを持ち直しているマルセル。
ちなみにこの中には彼が作ったクッキーが入っていたりするのだが。
ゼフィル用にスパイスの効いたものも入っているのだが。
「空間移動ってかなりの力を使うって以前聞いたことがあるけど?」
そういって首をかしげているランディ。
「ああ、それはまあ普通ならそうでしょうね。でも私たちには関係ないですから。」
というか主に自分には関係ない。
というべきか。
何しろこの地……否。
すべてのこの宇宙は彼女自身、というか彼女の意思によって運営されているのだから。
それはかつてこの世界がすべて無に戻ったときの約束事。
「それでは、マルセル様、ゼフェル様、ランディ様?準備はよろしいですか?」
そう微笑んで彼らを見上げるアンジェリークに。
「うん、僕はオッケーだよ。」
「オレはいつでもオッケーだぜ。」
「うん。俺もいいよ。アンジェ。」
どうじにアンジェリークにと返事が返る。
「それじゃ、いきますねv」
そういい、にっこりと微笑み。
すっと次の瞬間に両手を広げるアンジェリーク。
その刹那。
アンジェリークの周りに淡い虹色のような金色の光が満ち。
ふわりと、周りに虹色に輝く金色の羽が舞い落ちる。
ふと見ればアンジェリークの背中から不可思議でいてそれでいて、不思議な光沢を放つ虹色に光る…白い羽が出現し。
その二枚の羽がゆっくりとばさりと音もなく広げられ。
次の瞬間には。
幻の羽とそして光に飲み込まれ。
シャラ…ン…
次の瞬間には。
彼らの姿はその場より掻き消えてゆく。



次に気づいたときには。
ざわざわざわ。
あたりに満ちる活気の声。
「はい。到着。」
『え!?』
思わず目を瞑った彼らが次に目を見開いてみた景色は、先ほどとはまったく異なる光景。
自分たちが立っているその横には確かに湖はあるにはあるが。
なぜかその水面は銀色にと輝いており。
そしてその周りには様々な色合いをもつ透き通った不思議な花々が咲き乱れ。
その色もまた水面に反射し何ともいえない不思議な光景。
まだ聖地での時間では一年も守護聖たる時間を過ごしていないマルセルは仕方ないにしろ。
ゼフィルやランディですらそのような景色はいまだかつてみたこともない。
そして、道の脇にとそんな花々が続いており。
まるで誘導するかのようにその花の道は続いている。
見上げる木になっている果物であろう果実も。
やはり見たことはないような代物がなっており。
風が吹くたびにまるで鈴のような音を葉がすれて奏でている。
そして、あたりには人の気配はしないものの。
何というか独特の気配というか雰囲気というか。
――そう。
この場、いやこの地全体が、まるで聖地の神殿のような気配に包まれているその事実も、
彼らはその身に宿る力ですぐさまにと感じ取る。
「って!?もうついたのかよ!?」
あわててあたりを見渡して驚きの声を上げているゼフェルに。
「うわぁ!すっごい!これ、僕も見たことのない植物だよ?!」
などといいつつ目をきらきらさせてそこに生えている木々や草花をみているマルセル。
「この気配…陛下の気配に似てる?」
周りの雰囲気がどことなく女王陛下の力と似ていることを感じ取り。
そんなことをつぶやいているランディ。
似ているも何も。
もともとの基礎となったのが、ここを作った本人なのだから、似ていて当然なのだが。
「とりあえず、ここが私たち一族、クリスタル一族の隠れ里です。」
にっこりとそんなことを微笑んでいるアンジェリーク。
ふと見れば。
おそらくは鞄の中に入れていたのであろう。
薄いまるでレースのような布を取り出しそれを羽織っているアンジェリークの姿が。
それをまるでローブのようにして胸の前でブローチで止め。
簡単なマントのような形を成していたりする。
その色は薄い紫色。
「ここが?」
そういわれ思わず周りを見渡す。
確かに雰囲気が普通の場所とはかなり異なっている。
そして、目立つのは。
肉眼でもその地に存在する精霊、などといった種族が見えるということ。
そう、まるでアンジェリークの育成しているかの地、エリューシュオンのごとくに。
「はい。ここが私のふるさとです。一応ここも主星の中の一部なんですよ?」
そういいつつ道の横にみたとのない透明な様々な色彩をしている花々が咲き乱れる白い道にと進み。
「さ。こっちですよ?」
足取りもかるくそのまま道の先にと進んでゆく。
気配と雰囲気からしてここが主星の中にある場所だとはあまり信じがたいが。
どちらかといえばここの気配は何となく聖地に通じるところがある。
そんなことを思いつつも。
とりあえずアンジェリークが進む方向にと驚きつつ回りをみながら進んでゆく年少の守護聖三人組み。


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