スイート・メモリーズ     ~第18話~

「あ、アンジェ!」
外にでると今日はいい天気。
ここ、飛空都市にてはその天候すらも管理されている。
とはいえその天気を決めているのは一台のコンビューター。
自然と科学の共存。
そういっても過言ではないであろう。
科学の力で作られた機械ばかりではなく。
常識から見地しただけではわからないような品物もあったりする。
定期審査のために研究院にと向かうアンジェーリークの姿に気づき。
元気に声をかけてくる金色の髪の少年。
まだ幼さが少し残るその姿。
「あら、おはようございます、マルセル様。」
にっこりと微笑み挨拶を返す。
「うん。おはよう!アンジェ!今から定期審査?」
「はい。」
「そっかぁ。あ、アンジェ、終わったらどこかにいかない?」
目を輝かせていってくるマルセルのその言葉に。
「すいません。マルセル様。今日はゼフェル様と明日の予定を…とと。」
おもわず口を滑らせそうになり、あわてて口を押さえるアンジェ。
「?明日の予定?明日ゼフィルとどこかにいくの?」
目をまん丸に見開き。アンジェの視線に落として聞いてくるマルセルのその言葉に。
「はい。まだどこにいくとかは決定してないんですけど。とりあえずは主星……」
またまたいいかけ、はたととめる。
「え?」
その言葉に驚きの目を見開くマルセルに。
「あ、何でもありません。それでは、マルセル様。私は失礼しますね!」
そうぺこりと言いつくろいぱたぱたと走り、王立研究院にと向かってゆくアンジェ。
「…怪しい。そうだ。ランディにも協力してもらって。聞きだしてみよう!」
それにゼフェルと一緒というのも気になるし。
もし万が一、アンジェが危険な目にあうようなところにゼフィルが連れて行っても困るしね。
そう自分に言い聞かせ。
アンジェを見送りそのままこの地で与えられている私邸にと戻ってゆく。


「とりあえず育成は互いに順調。だが…アンジェリーク?」
「はい。」
報告書を片手に凛とした姿勢で鋭いまなざしで問いかけてくるのは、長い金色の髪をした青年。
光の守護聖、ジュリアス。
「少しばかりロザリアの方が発展している。
  それにその方の大陸の民。…まあ様々な生物と共存するのは悪くはない…が。」
いったいどういえばいいものやら。
想像していた進化と異なる進化し発展を遂げていっているエリューシュオン。
育成初期から妖精、精霊、といった本来の人間では近年見えなくなっていた存在。
それらとともに成長していっているあの大陸。
それゆえか、アンジェリークの育成する大陸の人々はそんな彼らと共存しつつ生活を過ごしている。
そして。
当然のことながら、人とそんな彼らの混血も出てくるわけで。
「あ゛~。アンジェリーク?あのですねぇ。あなたの大陸。一部というか抱翼種が存在してますよねぇ。」
翼をもった人間。
それがアンジェリークの育成する大陸で一部出現しているのは事実。
「はい。でも彼らは自然と共存するのを自分たちの戒めにしてますから。問題はないかと。」
空を飛べるのであれば先にあの地。
中の大陸にたどり着ける可能性ははっきりいって高い。
が、しかし。
「それにあの中の島は。この星が発展し互いの大陸が成長しないかぎり。
  この惑星に住む人々には、立ち入ることすらできないのですから、問題はないのではないですか?」
にっこりと微笑むアンジェリークに。
「え!?ちょっと!?アンジェリーク!?それ本当!?」
目を見開いているロザリア。
「…まあ!アンジェリーク、あなた、それに気づいたのですの!?」
そんな彼女の言葉に目を見開いて本気で驚いているのは女王補佐官でもあるディア。
「そうなのか?ディア?」
問いかけるジュリアスの言葉が、
少なくとも気のせいなのか震えているような気がするのは、気のせいであろうか。
「ええ。万が一、漂流とかであの地に入り込めないように。
  聖なる陛下の力があの地には働いて下ります。
  そもそもあの地は陛下…
  ……すなわちあちらの宇宙とこちらの宇宙をつなぐ道。なのですから。非常用の措置ですわ。」
まさか説明もしてないのにそのことに気づかれているなどとは、夢にも思いませんでしたけど。
そういいつつ目の前にいる金色の髪の少女を見つめる。
確かにクリスタル一族はその身を自然と共存させ、すべての心の声、命の声を聞くことができるという。
――そう、まるで宇宙を収める女王陛下と同じ能力。
その先祖は初代女王であったとすらも言われている。
真実はどうだかいまだに霧に包まれているが。
「それに、様々な命が誕生するのは、それこそ女王陛下の御意思なんじゃありませんか?」
にっこりと。
ジュリアスが言わんとすることを察知して微笑むアンジェリーク。
ジュリアスとしては様々な命や種族が共存する世界は確かに望ましい。
が。
その結果、滅んだ星星も長い守護聖の時間の中で目の当たりにしている。
種族が違うからなのか起こる考えなどの壁。
それはやがて小さなひずみから大きなひずみとなり。
星全体を巻き込む争いになり滅んだ星星が今までいくつあったものか。
聖地は基本的にはそんな各星などの実情にまでは手を入れない。
というのが基本だとしても。
それでも陛下の意思より彼らが出向いたことも数知れず。
ジュリアスが心配しているものそこなのである。
もし、万が一。
今のようにすべてが共存し平和に進化を遂げてゆくならばいい。
いいが。
もし、この地で争いなどが起これば。
…滅び行く自分たちの宇宙を救うすべは…もはやない。
「そうですわ。ジョリアス様。
  それにその程度のことでこのわたくし。アンジェリークに負けるとはおもいませんし。
  それにいろんな種族をみることにより、
  わたくしたちも少なからずいろいろと勉強させてもらいますし。
  まあ争いとかになるとすればそれはアンジェリークの技量のなさでしょうけどね。おほほほほほほ。」
そういって笑うロザリアに。
「ああ!いってくれるじゃない!ロザリア!」
そういいつつもアンジェリークの目は笑っている。
「あ゛~。ジュリアス。確かにいろんな命が共存することは、いいことだとおもいますよぉ?
  争いとかにならないように我々も気をつける。それでいいんじゃないですかぁ?」
のんびりとそんな危惧を抱くジュリアスに言っているのは地の守護聖でもあるルヴァ。
「確かに。そのとおりだな。では本日の定期審査はこれまで。
  二人ともこれからも育成に心がけるように。」
『はい!』
ジュリアスの言葉に元気よく答えるアンジェリークとロザリアの姿がみうけられてゆく。


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