スイート・メモリーズ ~第15話~
「アンジェっていつも何かを気にしてるよね?」
そんなことをいいつついつものように。
なぜかつるんでいるこの三人。
「まあな。つうかルヴァなんかアンジェに質問攻めだしなぁ。毎日のように。」
「まあ、アンジェが珍しい一族だからルヴァ様もいろいろと知りたいことがあるんだろうけどね。」
そんな会話をしつつうららかな日差しが上る湖のほとり。
さんな会話をして休憩しているこの三人。
マルセル、ゼフェル、ランディ。
試験開始からすでに約一ヶ月が過ぎようとしている。
何もなかった育成地はすでに生命あふれる大陸にと進化し。
もう少しで人たる種族をあの地に誕生させることになるらしい。
だがしかし、そんな育成試験の最中にもアンジェリークが何かを気にしている様子は。
注意深く彼女をみていればいやでもわかる。
それは。
聖地にて宇宙をささえているアンジェリークの様子と。
そしてまた、収縮率の確認をしているからに他ならないのだが。
だがそれは彼女一人の秘密。
「でも僕今度アンジェリークの大陸に下りてみたいな。」
「あ、それオレも思った。」
そんな会話をしているマルセルとゼフェルのその言葉に。
「だめだよ。二人とも。そんなこと。」
そんな二人を止めているランディ。
「そういうけど。ランディもあの大陸に行ってみたいとおもってるんでしょ?」
「まあ確かにあの大陸はまるで絵本そのものだし。
よくまああんな育成ができるもんだと俺は関心してるけど。だけどそれとこれとは話は別だよ。」
マルセルの言葉に同意を示すもののそれでも。
「育成地への干渉は女王候補の意思によって俺たちは力を貸す。それが俺たちの役目なんだから。」
守護聖の役目を諭すランディに。
「けっ。まったく、そんなの関係ないさ。後でばれたら視察とかでもいってごまかせばいいじゃないかよ。」
そんなランディの言葉を一言で終わらせているゼフェル。
「大陸に下りるためのもう乗り物できてるんだしな。」
ゼフェルとてまさかその目で妖精などといった存在を直に見たことはない。
彼が生まれた惑星は工業惑星。
大気汚染と機械に埋め尽くされた。
だからかもしれないが、
自然豊かな聖地にいきなりつれてこられたときに反発心をもってしまったのは。
まあ理由はそれだけではないが。
「ええ!?そうなの!?ゼフェル!僕もいく!」
「いいぜ。でもとりあえずうるせいおっさんには内緒な。」
「マルセル!ゼフェル!だめだってば!」
ランディの制止もむなしく、勝手に話はまとまってゆく。
「ロザリア、アンジェリーク。そなたたちの大陸に人たる種族の命を陛下から賜った。
これより後もよりよい発展を期待している。」
『はい!』
ランディ達が湖にてとある相談をしている最中。
正式な決定が下され女王候補の二人が呼ばれ。
それぞれにその意思が伝えられ。
彼女たちが育成している大陸に人にいたる種族の魂を与えられる。
時間がない。
そのこともあり本来ならばゆっくりと進化を遂げてゆくのであるが。
今回はそのまま元いた人の魂をこの地にと迎え入れることにより。
少しでも時間短縮を。
というのが現女王の意思。
王立研究院。
育成の間。
そこより二つの大陸に新たな生命の魂が与えられてゆく。
育成地とこの地の時間はかなり異なる。
そしてまた、こちらの飛空都市と聖地の時間率は常に同じ。
女王の力により今現在は聖地と外界の時間も一定を保っている。
それは試験中だから…という理由ではなく。
もはや時間までを保つ余裕がなくなっているから…
…という理由は補佐官であるディア以外、知るはずもない。
唯一の例外を除いては……
そよそよそよ。
風が頬をなでてゆく。
「う~ん、やっぱりすごいよね。」
「というかとにかくこの大陸の進化を妨げないように。行動しないといけないしね。」
「文句いいつつ結局テメエもついてきたんじゃないかよ。」
「二人だけで行かせるなんてできるわけないだろう!?」
なだらかな丘の上。
そんな会話をしている三人の少年たち。
彼らの時間率は基本軸が、飛空都市と同じになっているがために。
ここの大陸の存在たちからみればそれはそれで年をとらない。
というようにしか映らない。
もっと簡単にいえばいくらこの大陸で数日過ごそうが、あちらでは一日も経過していない。
という得点もある。
こんな遊ぶのにうってつけのところを見逃すなどゼフェルにできるはずもなく。
そしてまた。
「うわぁ!みてみて!この大陸すべての木が話せるよ!植物さんたちも!」
完全に舞い上がり喜んでいるマルセル。
彼は緑の守護聖という立場から植物などと心を通わせることはできる。
できるが。
やはり実際にこうして話ができるのと感じることができ、意識的に会話が可能なのとでは雲泥の差がある。
「お兄ちゃんたち?どこからきたの?」
そんな騒いでいる三人に気づき、近くの村の子供が話しかけてくる。
人たる種族が誕生してもうこの地ではかなり時間は経過している。
それゆえに今は簡単な村などにまとまり文明を築き始めている。
そして。
特徴的なのは。
「??お兄ちゃんたち?何か気配が違うよね?というかみんなが喜んでるし?」
そういいつつ回りにいる風の精霊の姿をみてそんなことをいっている黒い髪の男の子。
「あ゛あ゛!どうするんだよ!ゼフェル!地元民に見つかっちゃったじゃないか!」
そういって突っかかるランディに。
「ええい、ぐだぐだいうな!別にいいだろうが!」
「そういう問題か!?」
そんなことをいっている男の子の目の前で言い争いをはじめているゼフィルとランディ。
「えっと、二人は気にしないで。僕はマルセル。であっちがゼフェルにランディ。
ちょっとね。ここをみにきたんだよ。」
まさか育成結果を見る名目で降りてきたなどとはいえるはずもない。
そういうマルセルのその言葉に。
「ふぅん。まるでアンジェみたいなことをいうんだね?」
-ずべしっ!
さらっというその男の子のその言葉に。
思わずその場にこける三人の姿。
まさか!?
言葉にださなくても、全員が思うことは…皆、同じ……
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