スイート・メモリーズ ~第13話~
「ねね!アンジェ!どうやったら妖精さんたちとお友達になれるの!?」
いつも花々とその力によって話とはいかないまでも意思疎通はできていた。
だがアンジェリークのその『力』は。
目に見える形での物質的なもの。
目にみえない不安定な形のそれとは格段に違う。
試験も始まりはや数日以上が経過している。
見た目がまだ六歳前後の女の子であるせいか。
よく彼女は守護聖たちにいろいろと誘われていたりする。
まあ実際にどう見てもアンジェリークの姿は、七歳くらいの少女に他ならないのだが。
まあ見た目六歳か七歳。
…もう少し下に見えるかもしれないが。
そんなアンジェリークに話しかけているのは緑の守護聖マルセル。
「つ~かおめえよくあんな生き物……まっさきに誕生させれるよな……」
彼とてその存在を知らないわけではない。
ないが。
よもやまさか育成している大地に。
その命をまっさきに芽吹かせる女王候補など。
はっきりいって前代未聞。
というか育成によってそんな命が誕生するなど聞いたことすらもない。
当然ではあるが。
ぶっきらぼうにいっているのは鋼の守護聖ゼフェル。
「あら?ゼフェル様?人々が忘れているだけで常に妖精達……
つまり、すべてにおける命の形は常にそばにあるんですよ?」
そんなゼフィルににっこりと微笑んでいるアンジェリーク。
そう。
人々が自然と協調することを忘れたがために、
ほとんどの人々が、そこにあるはずの命を見落としているというその事実は、悲しい事実でもある。
「でもすごいよ。本当にアンジェ。あのジュリアス様のあの表情……」
「あ、それは俺も思った。あのおっさんがあんなに驚いているなんてなぁ。」
「ゼフェル、ジュリアス様をおっさん呼ばわりしたらだめだよ。」
そんな会話をしているのは風の守護聖ランディ。
ランディ、ゼフェル、マルセル。
この三人はよく一緒に行動している。
まあ守護聖の中で一番最年少組み…というものあるにしろ。
アンジェリークの育成している大陸に妖精が誕生した。
という報告は、光の守護聖たるジュリアスを驚かせるには十分過ぎるものであったらしく。
いまだにその一件でいろいろと研究院などと連絡を取り合いつつばたばたとしていたりするのだが。
「う~ん、基本的には私たちの一族。自然と共存しているというのもあるし。
それに普通だし。精霊とか妖精と共に生きることは。」
すべてにおいて命というものは存在する。
そう風のひとつにおいてもそれには意思が存在するのだ。
九つのサクリアにもそれらの力の元となる精霊がいるように。
そんなアンジェリークのその言葉に。
「いいなぁ。僕もいろいろと妖精さんたちとお話したいなぁ。」
そんなことをいっているマルセル。
「あら?マルセル様?じゃあ、これ植えてみます?
一族が大切に守っているこの花。この花の力でもそれは可能ですけど?」
そういって小さな小さな水晶のような透き通った小さな球のようなものを取り出すアンジェ。
「?アンジェ?これ何?」
手渡され確かにどちらかというと自らがつかさどる緑の力を感じる。
感じるが…見た目がどうみても水晶にしか他ならないそれ。
「ああ、それ
さらりといっているアンジェリーク。
『え……ええぇぇぇぇぇぇぇえ!?』
「何ぃぃぃぃぃ!?」
そんなアンジェリークの言葉に同時に叫んでいるマルセル、ランディ、そしてゼフィル。
水晶の花。ともいわれもしくは不死の象徴ともいわれ。
ほとんどのものがそれは伝説に過ぎない…とも呼ばれているという、
マルセルの前任者であった緑の守護聖カティスですら、昔一度見たことがあるだけ。
という代物。
しかもその花にいたっては、代々の緑の守護聖。
または知識の守護聖とも言い換えればいえる地の守護聖ですらも、
その全容はいまだにわかっていない。
いくらこの宇宙を支える力の持ち主だといっても、
彼らにはいまだに知らないことが山とあるいい例の一つに挙げられる。
ともかくいまだにそれに関しては研究段階というかほとんどわかっていない。
そんな花の種を…いともあっさりと取り出しているアンジェリーク。
「いいの!?いいの!?アンジェ!?本当にいいの!?」
目を輝かせているマルセル。
かつてカティスから聞いたときに自分も育ててみたいと思っていた花。
「これは個人所有のクリスタルとは違って自然の花だし。」
『??』
そんなアンジェリークの言葉に首をかしげる三人。
「あ、言い方がわかりにくかったかしら?
えっと、私たち一族はそれぞれに自分だけの花を持ってるんです。
それはその本人以外には使えない本人だけの力を宿す花なんだけど。
これはそれとは違って普通に野山に生える自然の花の種だし。」
さらっと彼らが知らないことをいっているアンジェリーク。
ちなみにアンジェリークが持っている花は……ほかのとは違う。
一番はっきりいって伝説というかすでに神話とも化しているらしい、
一族の長のみが扱えるという伝説の花。
――【レインボゥ・フラワー】。
それを見たものは…いまだにいないという、ほとんどただの神話に近い花。
だがそれは実在するのだ。
否、実在するというか…
…それはアンジェリーク=ユニバースの力の一部のようなもの。
という事実は…
…もうこの時代には覚えているものなどは…いない。
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