スイート・メモリーズ     ~第10話~

女王候補寮。
それはここ飛空都市に設けられた惑星ε-α。
新たな女王になるための少女たちのために設置された寮の名称。
そしてここには女王候補の面倒をみるために、数名のメイドなどが勤めている。
「あ、お目覚めですか?」
タンタンと階段を下りてゆくと、
そこにいるのは彼女たち、女王候補たちを補佐するべく、この寮にて勤めているシャルロッテ。
「ええ。シャルロッテはこんな早くから?」
まだ時間は確か朝の五時近く。
そんな時間にもう仕事をしているシャルロッテに話しかけている七歳程度の金色の髪の女の子。
「ええ。今日より女王試験が開始ですので。
  すこしでも女王候補のお二人に、快適に過ごしていただこうとおもいまして。」
彼女たち…いや、新たな女王となるべく少女の世話をでるきことは、これにもない誉である。
少しでも自分の力が女王候補たちの力になれば。
というのでこんな朝早くから作業しているのである。
「そっかぁ。今日から…なのよね。」
そういいつつ外を眺める。
外はすがすがしいまでに青空が広がっているが。
だがこの地は惑星上に浮かぶ浮遊大陸に過ぎない。
そしてまた。
この地は特殊な防壁によって守られており、重力、そのほか。
その他においても快適に過ごせるようにとなっている。
「ええ。がんばってくださいね。アンジェリークさん。
   そういえばロザリアさんも先ほど起きられて外に出られていきましたよ?」
そういって窓の外を視線で示すシャルロッテ。
「ロザリアも少し緊張しているのかしらね?とりあえず私も外にでるわ。」
そういう少女…アンジェリークのその言葉に。
「ええ。おきをつけて。朝食はもうしばらくしたらできますからね。」
そういってにっこりと微笑む黒髪の女性、シャルロッテ。
彼女たち、アンジェリーク、ロザリア、二人の世話をする役目を帯びたメイドである。
「は~い。ありがと。それじゃ、ちょっと外にでてくるね。」
「はい。おきをつけて。アンジェリークさん。」
女王候補が七歳くらいの女の子…というのには驚いたが。
まあ実際はどうやらロザリアと同い年であるらしい。
というのは挨拶のときに聞いている。
そう挨拶をして外にでてゆくアンジェリークを見送りつつ。
「さて、じゃあ私もお仕事を……」
そういいつつ仕事に戻ってゆくシャルロッテ。

「う~ん、朝霧が気持ちいいわね。」
霧が立ち込める外にでると、まだ朝もやが立ち昇っている。
この地はある特殊な力により安定が保たれているものの、
それでもやはり気持ちがいいことには変わりがない。
この地を作り出すことですら彼女…『アンジェリーク』の力をそいでいるのはよくわかっている。
それでも……
「……この地を作り出したのは……」
この地に気づいてくれたのはそれはやはりフェリアーナの導きに他ならない。
すでにあの地は滅びと共に再生の道のりを始めている。
いや、だがそれは。
一度すべてが無に戻りそしてまた虚無より新たな道が開けるというもの。
それはこの世界の理。
だがしかし、すべてが無に返すとき…それはまた、この宇宙ともいえるすべてが虚無に還りゆく。
それが約束。
だからこそ、あの地があるあの場所が滅びを迎えるそのときに。
そのたびにそれを移動する地を作り出してきた。
そう……昔から。
そして。
ここからは見えないがこの浮遊大陸の下には鍵となる惑星が一つ存在している。
「……とりあえずまだ早いけど、……王立研究院にいってみますか。」
あそこはほとんど不眠体制でチームを組み。
眼下の惑星の研究にと明け暮れている。
そういいつついまだに朝霧の立ち込めるそんな中。
道を歩き始めるアンジェリーク。


王立研究院。
そこは女王の意思のもとに様々な惑星、そしてまた宇宙の状態などを調査、報告。
そしてまたまとめてゆくのが役目である研究院。
「……やっぱり人がいる…か。」
後で正式にこの場所に来ることはそれはもう決まっている。
でも……その前に。
こんな朝早くにここにある移動方法を使う・・というのは少し困る。
少しそのまま考えて。
次の瞬間には。

シャラン……

その場に淡い金色に輝く白い羽が舞い落ちる。
その残像にも近い羽だけを残し。
そこには…いるはずのアンジェリークの姿はどこにも見当たらない。

ゆっくりと目を開ける。
眼下にあるのは一つの惑星。
まだマグマの活動などが活発で大地と海と陸とが分かれていない。
唯一あるのは…その惑星の中心にある一つの惑星。
それのみが唯一この惑星上で存在している状態。
今からこの地を、二人の力。
アンジェリークとロザリアの力で育成してゆくことになる。
それが試験。
……本当はそれだけが目的ではないのだが。
その真実は…あまり知られていないであろう。
ロザリアに真実を打ち明けるにしても、それは……
……かなり過酷な事実を突きつけることに他ならない。
だからこそ。
真実を言わないまでもこの地で。
すべてを抱擁できるべく、その基礎を……ゼロから育成しはぐくまなければならないのである。


「……我が意思のもと…新たな希望。そしてまた。
  新たなこの世界の中心となるべく、力を貸して……
  この空間の宇宙にいきるすべてのものたちよ……」
ゆっくりと上空にと漂ったまま、瞳を開く。
本来ならば緑の瞳であるはずのその瞳は、金色にと光っていたりする。
それが彼女の本来の姿でもあるのだが。
そのことを知っているのはあまりいない。
その言葉をうけ。
アンジェリークの脳裏に響くすべての声が。

――御意思のままに…われらがあるのは…すべては…―

すべてはかつての出来事から今がある。
もし彼女があのとき。
その意思を…彼女にと示さなければ…今はない。
この地は…いや、この宇宙のすべては虚無と化し、完全にと消滅していたであろう。
その言葉をうけゆっくりと瞳を閉じそして開く。
と。
そこにはやはり、緑の瞳の少女の姿が見受けられていたりするのだが。

「あ、そろそろ戻らないと。」
それだけいい、再び瞳を閉じたその姿を淡く輝く白い羽が包み込んでゆき。
後にのこるは……いまだに成長をしている惑星上にとその羽は降り注いでゆく。


   -第11話へー

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