スイート・メモリーズ ~第8話~
ここ、飛空都市。
惑星ε-α上空にと設置されたこの惑星は。
文字通り惑星の軌道上にと浮かぶひとつの都市。
ここには惑星を研究するためやそしてそれにかかわる人々など。
少数ではあるがそんな人々が住み着いている。
それらはすべて女王の命令によりここに滞在している人々や。
または自らこの飛空都市ができるときに志願してやってきたものたち。
などと、様々ではあるが。
この地には宇宙の均等を守るべく力をもった九人の守護聖達の私邸もまた、建造されている。
そしてまた、彼らが執務などを行う神殿も。
「ようこそ、皆さん。
今日は明日からの女王試験を控えた女王候補たちのために用意した私の個人的な食事会です。
みなさんくつろいでくださいね。」
そういってくるのは女王補佐官でもあるピンクの髪の落ち着いた微笑みを絶やさない一人の女性。
女王補佐官ディア。
俗にいう良妻賢母。
という言葉が何ともしっくりくる人物ではあるが。
テーブルに並べられた食事のすべてはすべて彼女の手作り。
「わぁぃ!これディア様がお作りになったんでしょう?おいしそう。」
などと一人はしゃいでいる金色の髪の少年、緑の守護聖マルセル。
そんな彼に。
「マルセル、熱いぞ?気をつけろよ?」
はしゃぐ彼に一応注意を促しているのは茶色い髪の少年、風の守護聖ランディ。
「けっ。その中には鳥肉もはいってんだぜ。」
などとマルセルをからかっているのは、
白い髪なのか鋼色というべきか、赤い瞳をしている少年、鋼の守護聖、ゼフェル。
「ウソだよゼフィルってば!」
「こんなところでやめろよ。ふたりとも。」
このマルセル、ランディ、ゼフェルは守護聖の中でも最年長。
一部ではお子様組みとか呼ばれていたりするのだが。
彼らがもつサクリアはゆっくりと彼らを纏い神々しさをかなでている。
その手にグラスをもちゆっくりと食事をしている水色の髪に水色の瞳の男性。
水の守護聖、リュミエール。
「おや、オリヴィエ、それしか食べないんですか?」
そういいつつその横にいる派手な服装をしている人物に話しかけているのは。
頭にターバンを巻いている男性、地の守護聖ルヴァ。
その言葉をうけ。
「私今、ダイエット中なのよねぇ。お茶だけいただくことにするわ。」
などといいつつ優雅に紅茶のカップをもっているのは、
頭の前の部分をピンクに染めている、金色の髪の男性。
お化粧もしっかりと決まっている夢の守護聖、オリヴィエ。
ゆっくりと周りを見渡しているリモージュにと気づきあるくウィンクしてくるが。
くす。
思わずある人を思い出して笑ってしまう。
そういえば彼のオリジナルでもある彼もまた彼に性格似てたわね。
などと思いつつ。
「オリヴィエ、気持ち悪いことするなよ。金の髪のお嬢ちゃんがおびえているじゃないか。」
思わず口に手をあてて笑っているのを気づかれないようにした行動が、
どうやらおびえているように捕らえたらしい。
赤い髪の男性、炎の守護聖オスカー。
「まったく失礼な男だね。
ま、発展途上というかお嬢ちゃんには私の美しさは、刺激強すぎたのかしらね。」
などとかるくいやみを言っているオリヴィエ。
まあ、本音からいがみ合っているわけではないが。
長い年月を過ごしている仲間だからこそ・・といえるであろう。
そんな二人の会話を気にしつつも。
「……クラヴィス、お味の方はいかがですか?お口に合いますかしら?」
話を横にいる長い黒い髪の男性に向けているディア。
その言葉をうけ。
「ああ…なかなかのものだ。」
そういってスープを一口口にと運んでいるのは闇の守護聖クラヴィス。
彼をみてふと罪悪感に近い感情にとらわれる。
確かに相思相愛であった彼らを引き裂いたのは。
決断を下したのが前女王であったとしても、そのように仕向けたのは他ならない自分なのだから。
それを思い少し顔を伏せるリモージュ。
そんな彼の前で食事をしているのは金色の髪に青い瞳の男性。
その澄んだまでの青い瞳はまるですべてを見通すかのごとくに。
突き刺さる印象を受けるが、彼が光の守護聖ジュリアス。
ジュリアスはまだ五歳。
クラヴィスは六歳。
まだ二人とも幼いうちに守護聖として聖地にと召し上げられた人物でもある。
それゆえに二人の絆は深いようでいてそれでいてどこか反発しあっている。
というか一方的にジュリアスがかまっている…というのが正しいのかもしれないが。
そんな会話をしていると。
かちゃりと手をとめ。
「ロザリア、アンジェリーク、明日から女王試験が始まるが。事前の準備はできているか?」
そういいつつ二人に向かって問いかけてくるジュリアス。
やはり目の前にいるまだ七歳程度の少女の姿には多少戸惑うが。
それでも自分もまた五歳て守護聖になったのだから…という思いもあり。
その内心の動揺を押し殺して二人にと話しかけているジュリアス。
その言葉をうけ。
「はい。ジュリアス様。」
自信をもってうなづいているロザリア。
「そなたたちがどのように大陸を導いてゆくつもりか聞いておきたいが。」
そういって二人をみてくるジュリアス。
この試験においては単なる女王交代だけではなく宇宙の運命がかかっているのだ。
生半可な気持ちでは勤まらない。
それを口には出さずとも言葉の裏にそれを含み問いかけているジュリアス。
「ジュリアス、今は……」
そんなジュリアスにとまどいつつ声をかけているディア。
その言葉をうけてすくっと立ち上がり。
「私は王立研究員で今まで育成された惑星の様子を調べてみました。
大陸のバランスが悪くては民の気持ちも安定しません。
方向性のないまま育成しても民は暴走してしまいます。
まず環境を整備し民の心をまとめなければなりません。
その上で望みを調整し美しく完璧な成長へち導きます。」
凛とした態度で自分の考えを述べているロザリア。
確かに一部はロザリアのいうことは正論ではある。
だが、そのとおりにいかないのが命というものであるというのは、リモージュはよくわかっている。
ロザリアとてそれはわかっているであろうが、今のロザリアは。
理論上の真理と、そして自らの信念。
それでもって行動しているからそれに気づいていないに他ならない。
かつて二人してこの地を…
…いや、この宇宙そのものを復興させたときの、ロザリアであるならばそのことに気づいていたが。
今のロザリアはあくまでも当時の記憶・・・前世の記憶は持ち合わせていない。
そんなロザリアの言葉をうけ。
「まずまずの答えだ。」
そういいつつ少し顔をほころばせているジュリアス。
その言葉にかるくスカートのすそをつかみ挨拶し、かたんと再び椅子にと座るロザリア。
「アンジェリーク。そなたはどうおもう?」
そのことに気づいていないロザリアに、
指摘するかどうか少し悩みつつロザリアを見ているアンジェリークに。
「アンジェリーク。」
さらに名前が呼ばれ。
「はいっ!」
あわてて椅子から立ち上がる。
「アンジェリーク、そなたの意見が聞きたい。」
凛とした声でアンジェリークをしっかりと見据えてくるジュリアスに。
その視線を動じることなく受け止めるリモージュ。
その姿勢に思わず。
『ほう』
『へぇ』
などといった声がほかの人々から漏れているが。
大概ジュリアスに見つめられたら普通は怖気づくもの。
だがこの少女…アンジェリークはそれがない。
まだ見た目七歳くらいの少女だというのに。
その視線をまっすぐにうけ、彼の目をしっかりと見つめているのである。
「私は…私の意見はすべての命が互いに支えあい、
お互いを高めあいつつ、向上し、平和に豊かに明るく暮らせるのが理想です。
すべての命と心を通わせ互いに互いに足りないものを補ってゆく。
それがすべての命あるものにとってもっとも大切なことだと思っていますから。」
そういいつつ軽く胸の前で手をくむリモージュ。
どこかいやに説得力のあるその言葉に思わずその場にいた全員が息を呑む。
ロザリアですら目を見開いてリモージュを眺める。
胸の前で手を組んで少し一瞬ではあるが目を閉じたアンジェリークの背中に。
確かにその場にいた全員が。
淡く金色に輝く白い羽を一瞬、具間みたような気がしたのは気のせいではない。
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