エル様漫遊記  ~ワンダホー偏~



「まったく……」
ふわっ。
手をかざすと、淡い光に包まれて、
なぜか気絶しているガウリイ、ゼロス、シルフィールが目を覚ます。
『う……ううん……』
身じろぎしつつ、起きてくる三人。
頭を少しかえて、少し振りながら起き上がりつつ。
「あ…あの?リナさん……今の呪文って……」
シルフィールがかすれた声で聞いてくるけど。
「あら。ちょっと、混沌の力を使っただけよ♡」
力ともいえないやつだけど。
『・・・・・・・・・・・・・・・。』
あたしの言葉に、額に冷や汗流してるシルフィール。
「あ…あの……とりあえず、宿に戻りませんかね?」
ゼロスが言ってくるけど。
そんなゼロスをみて。
「あ…あの?こちらの方は?」
ゼロスとは初対面なので首をかしげているシルフィール。
「ただの神官よ。中間管理職の使い走りの。それより、話しは、宿に戻ってからにしましょ♡」
「しくしく……どうせ僕なんか……」
あたしの言葉に少しいじけているゼロス。
ぽん。
「ゼロス、お前も大変だなぁ。」
そんなゼロスに同情しているガウリイ。
ど~いう意味かしらぁ?んっんっんっ?


今度は、シルフィールを伴って宿に戻ると、そこにはすでにアメリア達が戻っている。
「ん?シルフィールじゃないか。久しぶりだな。」
軽く手を上げて挨拶しているゼルに。
「お久しぶりです。ゼルガディスさん。」
ぺこりと頭を下げているシルフィール。
「全然話しが見えないのだが……。自己紹介でもしてもらえないか?」
首をかしげているダミアが、知り合い同士で話しを始めているのをみて口を挟む。
「あ、すいません。確かにそうですわね。」
「それじゃあ、そうしますか。」
シルフィールがそれに気付いて、にこにことゼロスが答えてるけど。
とりあえず、シルフィールの自己紹介とゼロスの自己紹介をすることに。
「謎の神官ゼロスといーます♡」
にこにこと言い放つゼロスに。
「……いや……謎って……」
思わず突っ込みを入れてるシルフィール。
アメリアが自己紹介を終えたところで。
「そうですか……グレイシア王女の妹さんで、アメリア王女……あなたがそうなんですか……」
シルフィールはなぜか顔色が悪いし♡
今だに、フィルのトラウマが残っているようなのよね♡
ふふ♡
「アメリアでいいですよ。シルフィールさん。」
「はい。分かりましたわ。アメリアさん。」
そういって、クスリと互いに顔を見合わせる二人。
一応、ナーガとフィルには面識があるけどアメリアには、あまりないシルフィール。
公式行事では出会ったことはあるにしろ。
外では、今回が初めてといっても過言でないし。
アメリアを少し信じられないような目でみつつ。
「……まさか、このアメリアさんがセイルーンの王女だったとは……」
ぶつぶつ唸っているダミア。
前回の自己紹介のときには、アメリア、それは言わなかったからねぇ。
「それで?シルフィール?どうしてサイラーグにいなかったんだ?」
最もな疑問を投げかけるゼルの言葉に。
「それがです。実は、お使いに町を出ていて戻ったら……
  サイラーグの町にはいれなくなっていたんですの。」
少し困ったように頬に手をあてて、説明するシルフィールの言葉に。
「……ちっ。姉さんの仕業か……」
舌打ちしていうダミア。
「まあまあ、今ならもう入れるし。とりあえず黒幕しばき倒しましょ♡」
「えええええ!?リナさん、どうしてそんなことがわかるんですか!?」
その言葉に驚愕の声を上げてるアメリア。
「あら♡コブランランドで一つの結界水晶を壊したからにきまってるでしょ?」
ちなみに詳しくいうなれば、サイラーグ、ヴィオラの研究室、コブリンランド。
そして、離れの小島。
この四つをつなげて、サイラーグにと入れなくしていたヴィオラ。

少し前、別行動を取る前に、立ち寄ったソルタウンで。
ちょっとした面白いイベントにと参加して、その関りですでに小島の研究所は爆破しているし。
そ~いえば。
ナーガが、こともあろうに。
湖に捨てられていた、例の十人コピーたち、引き上げて一緒に行動してたりもしてたわねぇ。
面白いから、カタートに彼女達。送り込んでおいたけど♡
ま、それはそれ♡

「……そういえば、あの離れ小島の研究所にも。何かそれらしきものがあったな……
  とりあえず破壊しておいたが……」
ふと、思い出したように言っているゼル。
「そういうこと♡要のうちの二つも壊れて。
  すでに、もう、サイラーグに掛けてた、侵入を拒む結界は無と成り果ててるし。
  そうそう♡シルフィール、確かフラグーンの中のあの迷路道に詳しいっていってたわよね♡」
食事をしつつ、問いかけるあたしの言葉に。
「ええ。そうですけど…それが何か?」
首をかしげるシルフィール。
「ふふ。どうやら、気配からしてあの中に、
  彼女、研究所の入り口を作っているみたいなのよ♪
  まあ、直接に乗り込んでもいいけど、ちょっとね。」
普通の人間とか、多少の下級魔、神族程度ならはじかれる程度の結界あれを張ってるし。
……何であの程度ではじかれるのか……
まったく……
あたしは、そこまで弱く創ってないわよ!
ちなみに、自然の力をゆがめて、科学の力でそれを張っていたりするし。
ヴィオラは科学だと言い張ってるけど……
簡単にいったら、それも一種の精霊の力に他ならないんだけどね♡
まあ、そんな理由で。
普通の存在が、そこに入るのは、今はまず無理の状況にとなっていたりする。
ま、あたしが手を加えたら、簡単なんだけど。
それだと、面白くないしねぇ。
それゆえに、今まで、あんなに堂々と研究施設を作っているというのに。
今までヴィオラは誰にもとがめられていないのだから。
あたしやゼロスだとそんなのまったく関係ないんだけどねぇ。
ちみちみと、ヴィオラが仕掛けているあの罠を抜けて、フラグーンの道を進むのも…ねぇ。
ポン!
…そだ♪
いいこと思いついた♡
軽く手を打つあたしを何ごとかと見てくる皆。
「そうだ。ゼロス♡皆を連れて空間移動して、あいつの研究所までいきなさいな♡
  ゼロスだったら簡単でしょ♡」
ここに便利なアイテムがあったんだったわ♡
その方法もあったのよね。
手っ取り早いし。
別にあたしの手を掛けることもないし♡
「え゛!?ぼ…僕がですか!?」
その紫の目を見開いて、思わずつぶやいているゼロス。
「あら、簡単でしょ?それに、まさかこの程度のことでこのあたしの力を使わす気?」
にっこりと微笑むあたしに。
――ビシッ!
そのまま、完全に石化しているゼロス。
だから、どうしてそんなに怖がるのよ!
「ゼロス♡何石化しているかしら?出来ないことはないわよねぇ♡」
ぴとり。
ツゥゥ…
「は……はははははははい!分かりましたぁ!」
喉元に小さな黒い針が当たっているのに気付いて泣きながら、わめいて了解しているゼロス。
そんなゼロスの様子をみて、少し首をかしげ。
「あの?そちらのゼロスさんも、ルナさんと同じく。空間移動できるんですか?」
シルフィールが疑問を投げかけてくる。
首をかしげているシルフィールに。
『あっ。』
小さく声を漏らしているゼルとアメリア。
そういえば、シルフィールさん……ゼロスさんの正体…知らないんでしたよね……
……そういえば……シルフィールはゼロスのことを知らないんだよな……
同時に心でつぶやいているアメリアとゼル。
そして、互いに顔を見合わせ。
……魔族って言わないほうがいいですよね……
……だな。
視線で会話をしている二人。
そんな無言のやり取りをしているゼル達とほぼ同時。
「まあ、ゼロスは魔族だしなぁ。」
『ぶっ!!!!』
さらりと暴露しているガウリイの言葉に、噴出す全員。
「げほげほげほほほっ!」
完全にむせこんでいるダミアに、しばしその言葉に凍り付いているシルフィール。
「が……ガウリイさん……」
「……お前……何もここでいわなくても……」
口をぱくぱくさせているアメリアに、頭を抱えて唸っているゼル。
シルフィールとダミアはまるで機械仕掛けの壊れかけの人形のように。
ギギギギギィ……
音を立てるかのようにとあたしの方にと振り向いて。
「ま……魔族?本当…ですか?」
汗を流し、かすれた声で問いかけてくるシルフィール。
別にシルフィールは部下Sの一つである、レゾ=シャブラニグドゥ。
あれにあってるのにねぇ。
まあ、あたしもあいつがこの世界の魔王だなんていってないけど♡
ダミアは、額に大量の脂汗を浮かべていたりする。
「あらあら。しょうがないわねぇ。ガウリイは。別に今ここで言わなくてもいいことを言ってv」
くすくすくす。
本当にガウリイって、楽しいわよね。
「まあいいわ。シルフィール、ダミア。こいつの紹介しとくわね。」
そういって、今だに机に突っ伏しているゼロスをみていうあたし。
いきなりのガウリイの発言で。
おもいっきり、ゼロスも動揺しているのよね♡
面白いのなんのって♡
「本名は、もちろんゼロス。
  獣王グレータービーストゼラス=メタリオムに仕えている直属の部下の獣神官プリーストよ。これは。」
「……な゛!?」
あたしの説明に絶句しているダミアに。
「こ……高位…ま……魔族!?」
声を震わせているシルフィール。
「いやぁ。はっはっはっはっ♡」
無意味に笑っているゼロス。
「ま、心配はいらないわよ。こいつは、あくまでもお役所仕事だから。余計なことは一切しないし。
  もうちょっと、融通を利かせてもいいと思うところもあるのよねぇ♡」
ちらりとあたしがゼロスを見ると。
ダクダクダク……
笑いながら、大量の汗を具現化させて流しているゼロス。
実際に精神体の本体の方も、かなり畏怖してるみたいだけど。
「……で?何だって、そんな魔族が一緒にいるんだ?」
別に、獣神官とかいわれても、あまりピンとはこないダミア。
まあ、魔族は……姉があれを実験しているのを見ているから、動じないけど。
などとダミアは思ってるけど。
そんなダミアの言葉に。
「……ふっ。リナに逆らったり、怒りを買ったりしたら。怖いからだろう。
  実際、魔王シャブラニグドゥですら、リナに倒されたからな。
  ……まあ、リナによると、あれ7/1のそうだが。」
思い出してうなづきつつ言っているゼル。
「そうですね。冥王フィブリゾも、リナさんに、ちょっかいかけて。
  何かどこかに封印されたとか言ってましたもんね。おかげで今は結界が弱まってますけど。」
うなづきつついうアメリア。
というか、ゼルもアメリアも、フィブには会っているのにねぇ♡
ま、あたしもあいつがこの世界の冥王だって教えなかったんだけどね。
「いやぁ……。はっはっはっ。
  僕としても、上司…つまりは、『上』からの命令は絶対ですからねぇ。
  まあ、しがないお役所仕事の悲しい定めです。上からの命令には逆らえませんし。
  僕達の存在意義にかかってきますからね……」
にこやかに答えるゼロス。
そんな会話をききつつ。
「……リナさん……あなたって……やっぱり……一体!?」
一体、リナさんの正体・・・何者なんですか!?
心で叫びつつあたしを見てくるシルフィール。
「それよりも。さっさと、ヴィオラのいるアジトにいきましょ♡ゼロス、いいわね♡」
シルフィールの質問をさらりとかわしておくあたし。
あたしは、自分であそこにいくとして、他の人達をゼロスに運ばせるとしますかね♡
「わ……わかりました……仕方ありません……」
逆らえませんし……何より、僕は滅びたくありません!
本気で心で叫んでるゼロスなんだけど……
だから、どうしてそんなに怯える必用があるのよ!
にこにこと、細めにしていた目をすっと少し開き、紫の瞳が瞼から覗かし。
「みなさん、用意はいいですか?ではいきます。」
ゼロスの言葉が終わると同時に。
ふいっと。
その手にもっている錫杖を一振りするゼロス。
次の瞬間。
空間がゆらりと揺らぐ。
ガラガラガッシャァァン!
あら♡
何か、ガウリイ達の姿が、いきなり、席から掻き消えたのをみて。
他にいた客の数名が、それをみて、なぜか、椅子か転げ落ちてるけど。
ま、とりあえず。
「あ、勘定、おねがいね♡」
あたしともあろうものが、食い逃げなどしたとあっては情けないものね♡
唖然としている店員にと勘定を支払い。
さって、じゃ、あたしもいきますか♡
ふいっ。
ドンガラガッシャァァァァン!!!
目の前で溶け消えたあたしを目撃して。
なぜか、数名がテーブルごとこけてるし。
……楽しい♡

しばらくその酒場は。
なぜか、どよめきで満たされてゆくけども。
ま、そんなことしてる場合じゃないんだけどねv
どよめく最中。
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!』
外から悲鳴が店の中にと届いてゆく。
町には。
ヴィオラが放った、ゾンビやデーモン達の群れが襲ってきてたりするのよね♡
ま、頑張って倒しなさいね♡

シュン。
「……え…えええええ!?」
きょろきょろと、アメリアがあたりを見回す。
そこは、すでに山の中。
「あれが、アジトか?」
のほほんといって、指を指すガウリイのその指の示す先に立っている一つの塔。
「あれが姉上が創った搭。姉上曰く、ヴィオラの秘密防衛基地……と命名しているがな……」
そういって、軽く溜息をついているダミア。
……ここでは、常識は当てはまらないのだろう。
そう思うことで、どうやら気が楽になってるようだし。
ま、何事も気の持ちようよね。
「さて!ゼロスさん!きりきりと白状してもらいますよ!
  一体、今回の事件は何だっていうんですか!」
ずいっ!
メガホン片手にゼロスに迫るアメリアに。
「それは……秘密です♡」
にっこりと、いつものお約束のポーズを決めるゼロス。
「というか、何であの姉ちゃんの中にいる、あの魔族。
  何でゼロス達と同じところに身をおいてないんだ?」
ぽりぽりと、頬をかいて、にこにことポーズを決めているゼロスに問いかけてるガウリイ。
「え……ええええええ!?ガウリイさん!?見ただけで分かるんですか!?
  あれが精神世界にその身を置いてないということまで!?
  というか、ど~してヴィオラさんの中に魔族がいるのがわかるんですかぁ!?」
本気で驚きの声を上げてるゼロス。
「え?普通、見ただけでわかるだろ?」
「……わかりませんって…絶対に……」
い……一体……ガウリイさん……どこまでこの野生の勘……働くのでしょうか?
ガウリイに対して、少し本気で驚きを隠せなくなってるゼロス。
「まあ確かに、ガウリイのいうとおり。ここの、精神世界に属してはないわね。あれは。
  ヴィオラの能力を利用して、力の向上を図ってるようだし。」
ゼロスに生の賛歌を歌っているアメリアに、にっこりと説明するあたし。
「うう……まあ、リナさんがそういわれるのでしたら……。まあ、説明いたしますけど。
  ま……まあ、別に話したから、聞いたからって。どうでもないことなんですけどね。」
あたしがさらりと暴露したのをうけて、少しいじけモードに入りかけてるゼロス。
まあ、このあたしに気付かれないように、今まで、かなり必死にやってたみたいだからねぇ♡
あたしも面白いから、別に気づいているという気配みせなかっただけだし♡
というか、このあたしに隠し事なんて無理だっていうのにね♡
ふふふふふふ♡
「まあ、アメリアさん達には、この説明で意味が分かるかどうか不明ですが。
  今回、僕が受けた仕事は、ヴィオラさんの監視。
  ヴィオラさんは、ちょっと変った能力を持ってらっしゃいまして。
  ま、簡単に言えば、『任意の対象物の魔力』をあげることが出来るんです。」
にこやかに説明するゼロスの言葉に。
「……姉さんが?」
魔力を欠片ももってないとコンプレックスを抱いて、
科学者になった姉がそんな能力を持っているなどとは。
などと思いつつ、ダミアは少し驚いているけど。
まあダミアは、欠片も魔力の欠片もってないからねぇ。
というのも、その能力が姉同様に特殊なもので、
人にその魔力の波動が感じられないというだけのことなんだけど。
驚くダミアをそのままに。
「……任意の魔力を挙げられるって……どんなものでもですか?」
シルフィールの問いかけに。
「ええ。そうです。それが、たとえ、竜だろうが、神族だろうが、魔族だろうが。
  そして精霊だろうが、魔法道具だろうが関係ありません。
  その能力を使えばそこいらに転がっている木の棒も。
  れっきとした魔力のこもった武器になります。」
にこやかにあっさりと答えるゼロス。
つまりは。
この世界に存在する物質は少なからず、何らかの魔力を秘めているので、
その魔力をヴィオラは上げることが可能なのである。
以前。
あたしが遊び半分で創ったある品物を、彼女が赤ん坊のときに飲み込んじゃったのよねぇ。
ま、どうでもいいんだけど、それは♡
搭を目の前にして説明しているゼロス。
その説明を聞き入っている、ゼル、アメリア、シルフィール、ダミア達。
ガウリイは、のほほんとしてるけど。
「で、これは確か…少し…十何年と少し前。まあ、どうでもいいことなので忘れましたけど。
  とある下級魔族があろうことか、とある御方にはむかっていったんですよ。
  何かんがえてるんだかわかりませんけどね。はっはっはっ。
  当然のことながら、下級魔族が高位魔族にかなうわけがなく、
  精神世界アストラル・サイド……
  つまり、僕達が本来その身を置いている場所の世界より追放されましてね。
  力も大半もがれたんです。ま、ここまではよかったんですけど。」
にこやかに説明するゼロスの言葉に。
……どこがよかったんだ?
などと思いつつ、冷ややかな反応をしているゼル達メンバー。
「まあ、そのままだったら、そのまま消滅するのが本来なんですけど。
  まあやはり、精神世界から追放されて、長く存在し続けられる魔族はいませんからねぇ。   それが、たまたま。
  追放されて逃げてきたこちらの物質世界でヴィオラさんを見つけたらしくて。
  で、当時、まだ子供だったヴィオラさんの体の中に、入っちゃったんですよ。
  いやはや、往生際の悪いことで♡はっはっはっ♡」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
……もしかして……あのとき……か?
あの時から、姉が極端に、魔力にこだわっていたのをダミアは知っている。
様子が変ってきたのは、ダミアが三歳のころから。
「まあ、別に人間もどきの精神を支配したところでどうにもなるものでもなかったんですけどねぇ。
  ここで問題なのが、ヴィオラさんの特殊能力です。
  つまりは、それを利用してご自身の力をあげようとしたみたいなんですよ。あれは。
  ま、別に害になるわけでもなし。たかが、人間一人くらいどうにでもなるというので。
  今までほうっておいたんですけど……」
そこまでいって、しばらく固まるゼロス。
あたしの視線に気付いたらしいけど。
「……まったく。本当に何やってるのかしら……Sのやつ……
  それに、カタートのレイ=マグナスのやつは……
  ガーヴといい……フィブリゾといい……おまけに……今回……」
つぶやくあたしの声を捕らえて固まってるゼロス。
まあ、あれは。
自分こそ最強なんだと勝手に思いこんで、フィブにと戦いを挑んだ面白いやつだしね。
「で……ですが。今回、どうやら、そろそろ行動に出る様子なので。
  その前に、自らの始末は自らの手で。というので僕に仕事が回ってきたんですよ……
  あれをほうっておいてもいい……といったのは冥王様だというのに……」
ぶつぶつ文句を言っているゼロス。
「……ヘル……マスター?」
ピクッ。
いきなり伝説級と一般にはされている冥王の名前を出されて、すこし眉を動かしているダミア。
「まあ、とりあえず。そんな理由で僕が選ばれたんですよ……
  まさか、そんな雑魚もどきに腹心の方々が出られるのも馬鹿らしいですし。
  かといって放っておくと、後で何をいわれ……もとい、注意を受けるか。
  そんな理由から、とりあえず。
  腹心の方々の次に実力のある、僕に今回のお仕事が使命されたんです……」
腰掛鞄の中から、ハンカチを取り出して、汗をぬぐう格好をしているゼロス。
細かいところまで人間の動作をするのが好きよねぇ。
このゼロスって♡
そんなゼロスの言葉に。
「な!?ゼロスさんって!?そんなに高位なんですか!?」
顔色を真っ青にして叫んでいるシルフィール。
そんなに驚くことでもないでしょうに♡
「はあまあ。まあ、とりあえず、そのヴィオラさんなんですけどね?
  これがまた、面白いことにその特殊の能力ゆえか。
  精神世界と物質世界のつながりを見つけ出しましてねぇ。
  そこに、壁を作ることによって、この世界。
  つまりは、物質世界にですね、精神世界の干渉を無くそうとなさってるんですよ。」
にこやかに説明を淡々と丁寧にしてゆくゼロス。
「そ~いうこと。まあ、馬鹿な考えよねぇ♡精神世界と物質世界を区切ろうとするなんて♡
  二つは、いわゆる裏表。どちらかが無くなれば、両方なくなる。そんな理由もしらなくて♡
  ま、人間とか神族とか魔族でも、その封鎖は無理ね。
  惑星一つ分くらいなら、人間とかの赤ん坊でもできるでしょうけど♡」
「……いや、それは無理だと思うぞ……」
唖然として聞いていたゼルがぽつりと突っ込んでくる。
「なあ?リナ?何か楽しんでないか?」
くすくすと笑っているあたしに問いかけてくるガウリイ。
「まあね♡だって、本当に人間って…無理なことをするから。面白くてね♡」
その行動が、どんな結末になるか考えずに突き進み、そのまま惑星と命を共にしたりなど。
そういう星も数多とあるのをあたしは知っている。
「でも、本当。ここの魔族の躾もなってないわよねぇ~。
  まあ、Dなんかは…あいつごと暴れていたりするけどね……」
つぶやくあたしの言葉を聞いていたのはダミアのみ。
「????」
首をかしげて聞いているダミアは意味がわかってないようだけど。
わざわざ説明する必要もないし♡
「ま、とりあえず、説明も終わったことだし?ヴィオラの元にと行きますか♡」
「そうです!悪を許して何の正義でしょう!」
あたしの言葉に張り切るアメリア。
「まあ…今ので大体分かった……やはり、今回の一件も…魔族絡みか……」
少し苦笑しているゼル。

先陣を切って、進んでゆくアメリア達にと続いて。
あたし達もまた、搭にと向けて足を運んでゆく。

「す……すいません……お手を煩わさずに僕達というか魔王様達、上層部だけで解決しよう。
  そういうことだったんです……今回の一件は……」
あるきつつ、あたしに謝ってくるゼロス。
必死に謝るその根性は認めるけどね。

そんなこんなで。
あたし達は、搭の中にと足を踏み入れる。

まあ、とりあえず。
そんなこんなで、途中で掴まっていた魔道士や研究員達を助け出し。
ヴィオラの張った罠などにもお約束ながら付き合いつつ。
あたし達は、今。
搭の最上階にとたどり着いていたりする。
「つきましたね。」
いいつつ、ゼロスがその部屋の一点を見つめる。
シルフィールとダミアは今だに気絶しているまま。
ゼロスが魔族だと聞いたのに半信半疑のまま。
目の前で、ゼロスがその力を使うところをみて、情けないことに気を失ったんだけど……
シルフィールたちの目の前で、黄金竜などといった存在たちを一撃のうちに。
というか錫杖の一振りで瞬く間に倒したゼロスをみて気絶してるのよね……
どうやら、少しでもあたしの怒りを逃れるために、全て自分で片付けてたんだけど……
……ゼロスのやつは。
ま、別にあたしはそんなに怒ってないのにねぇ?
ふふふふふふふふふ♡
ガウリイやゼル、アメリアに関しては、出番もなくて、ただ突っ立っていたけど。

目の前にあるのは、この搭の最上階のその中心の部屋。
そこにあるのはカプセルが三つのみ。
そして、その前には。
「ふっ。よくここまできたわね。リナ=インバース。
  でも無駄よ、もうすぐ私の研究は完成するのよ!」
高らかに言い放つヴィオラ。
「もうやめるんだ!姉さん!姉さんの実験は今まで一度も成功したことがないじゃないか!」
『――え?』
ついと前にでたダミアの台詞に。
小さく声を漏らしているアメリアとゼル。
「まず、私の耳を少し大きくしようとして、その結果、エルフのような尖ったみみになり。
  虚弱体質だった私に体力を付けさせようと、作った薬は。この私に無意味な力をつけて。
  さらには、胸が大きくなるクスリをつくって。
  この私で人体実験をして、十一のときから胸はぱったりと成長を止め。
  あとは、身長を伸ばすクスリ……」
等、エトセトラ。
つまり、今のダミアのこの容姿。
つまりは、このピンクの髪も。
尖った耳も。
紅い目も。
伸びない身長も。
それら全て、ヴィオラの薬と人体実験に付き合わされた結果、こういう容姿になってるのよね♡
「……ダミアさん……苦労してたんですね……」
「……とゆ~か、よくそこまでされて逃げなかったな……」
同情の視線を送るアメリアに最もなことを言っているゼル。

「え……ええと……では。」
そんな会話をしている姉妹をみつつ、ゼロスがちらりとあたしの方を振り向いてくる。
「滅してもいいわよ♡別に。あたしが用があるのは、この人間だし♡」
あたしの言葉に安堵の息を落として、ゆっくりうなづくゼロス。
「本来ならばもう少し様子をみて、ご自身の愚かさを感じてもらう予定だったんですけどねぇ。
  トリガルウさん?でも、この御方にチョッカイをかけたとなると…話は違ってきますからね♡」
そういいつつ、その紫の目を完全にと開き。
カプセルの中に入っているそれを見つめるゼロス。
そこには、かつて追放されたトリガルウが。
ちなみに、トリガルウというのが、ヴィオラの精神を操っている魔族の名前。
ヴィオラの成長とともに、具現化するまでの力は回復し。
たかが下級魔族であったトリガルウなのに、
力的には中級魔族程度の力を吸収していたりする。
まあ、器がそれに耐えられるわけもなく。
このまま、少し置いといたら暴走するのは間違いないんだけど。
ドススススッ!!!
ゼロスの言葉と同時に。
その三つあるカプセル全てに四方八方から、三角錐の黒い錐がカプセルにと突き刺さる。
『ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
断末魔をあげつつ。
そのまま。
……サラ……
あっけなく風に溶け消え消えてゆく。

(……な……で……)
物質化できなくなり、滅び行く間際につぶやいてるトリガルウ。
――知りたい?
そんなトリガルウに視線を合わす。
――安心なさいね♡まがりなりにも、このあたしを利用しようとしたんだし♡
完全に消滅することもしばらくお預けだから♡
(…………何をたかが人間風情が……)
まだ分かってないトリガルウ。
くすっ。
――誰が?たかが人間風情だって?この我が人だとは一言もいってないが?ふふ……
(…………え?……ぎ……ぎやぁぁぁぁ!)
あらあら。
何か悲鳴が聞こえたけど、気のせいよね♡
まさか、大鎌で突き刺した程度で滅びるわけはないわよねぇ。
しばらく、どこかの掃除でもやらしてこき使いますか♡


この世界から、完全にトリガルウいなくなったのを受けて。
トリガルウの精神支配を逃れたヴィオラの体から黒い瘴気が立ち上り。
その瘴気は空気にと掻き消えてゆく。
「う……ううん……あら?ここは?」
「先生!」
「ドクター気付いた、よかった。」
トリガルウが倒されるのと同時に、気を失ったヴィオラを心配していたガンドックとフランク。
「あ……あなたたちは誰なんですか!?」
「先生?」
「ドクター、俺達のこと忘れた、悲しい。」
起き上がったヴィオラを見つめるガンドックたち。
「……どういうことなんですか?」
ヴィオラが何も覚えてないのを不思議がるアメリア。
「ああ、それはですね。トリガルウさんの精神支配を受け続けていましたから。
  まあ、自我が残っているだけですごいことだとおもいますけどねぇ。
  どうやら、支配を受けていた間のことは一切記憶失っているようですねぇ……」
そういいつつ、そんなヴィオラの様子を苦笑交じりにみているゼロス。

とりあえず。
記憶喪失になっているヴィオラに対しては。
一応今までのお礼とばかりに少しお仕置きをしておいてっ…と♪

「では、僕は、一度報告に戻ってまいります。」
溶け消えるようにとすぐさま報告にと戻るゼロス。

しばらくの雑談と、状況説明が終わったのちに。

「ダミア♡この住所にヴィオラ連れていってごらん♡」
ぴらり。
ルナのあるゼフィール・シティまでの地図と手紙を手渡す。
ルナの育て方だと、間違った知識で暴走する人間には育たないしね♡
まあ、折角なんだから、もう少し面白いことを発表してくれるかもしれないし♡

結局のところ。
今回の一件は、一匹の魔族がとある人物を操って。
その魔族を消滅させて解決した。と、世間には通達されてゆくのだが。


「それで?リナさん達はこれからどうそするんですか?私はサイラーグに戻りますけど?」
シルフィールが全て終わった後に気がついて、問いかけてくる。
「そうねぇ。アメリア、例の件、どうなってる?」
アメリアに話しをふる。
「もうほぼ、施設団というか平和使節団はいつでも出発出来るんです。
  ただ、今回の一件でちよっと予定が狂っただけで……」
アメリアが、今更のように思い出してはっとしていってくるけど。
「ということは、ついに結界の外の世界にいくということか。」
ゼルがふっと顔を横にむけて、小さく笑う。
「じゃ、決まりね。セイルーンにいって、その船団にくっついてあたし達も外の大陸にいくわよ♡」
あたしの答えに。
「ゼロスはどうするだ?リナ?」
ガウリイがゼロスがまだ戻ってきてないのに気づいて聞いてくる。
「セイルーンに向かっていれば、嫌でもそのうちに戻ってくるわよ。」
そんな会話をしつつも、ひとまずシルフィールをサイラーグまで送り届けるあたし達。
そして……

「ふふふ!これで仲良し四人組みがそろいました!
  さあ、セイルーンの道すがら、正義を広めましょう!」
ひとり、やる気になってるアメリアに溜息を落としているゼル。



そんなこんなでとある森のなか。
いつものように、アメリア達と盗賊退治をしていると、そこにいたのは、ナーガ本人。
「姉さん!またこんな所で道に迷って!」
すぐさま射当てているアメリアもさすがだけどね♡
「あ…あら、アメリアじゃないの。」
アメリアの声に、少しばつが悪そうなナーガ。
「もう!姉さんもいつ所にセイルーンにと戻りましょう!
  魔力消失事件も片が付いて、今度は、外交とかの仕事も回ってきますよ!」
「ちょっ!?アメリア…まっ!」
ズルルズル…
ナーガをひこじるようにしてあたし達と一緒にセイルーンにと向かうアメリア。
ま、とりあえずは。
今回の責任は、ヤッパリ、北のSとシャブラニグドゥにあるわけだし♡
今晩にでも、今までの数十倍のお仕置きで済ませてあげておきますか♡


                               -続くー

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あとがきもどき:
え?古城の十人ナーガとか、クレアゲイブルのガウ&ゼルの女装!がない!
という意見?まあ、あれは、そのままなので。
とりあえずはイベントはやってますvエル様達はvv
ゼロスの登場は、最後のダンジョンの、あのムービー。
「後はお任せします」あれが結構ゼロスらしくて好きです(爆!)
しかも、最後の最後までお役所仕事だし(笑)
んではではvvv

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