エル様漫遊記  ~ワンダホー偏~


「う~ん。よく寝た♡」
宿代も浮いたし♡
やっぱり寝るのって、結構気持ちがいいのよねぇ。
別に寝ないでも平気だけど…休息は必要だしね。
まあ、自身の精神の安定のためにもね♡
ってあたしにはそんなことまったく関係ない…といえばそれまでだけど♡
何ごとも、やっぱりやってみるのも悪くはないし…ね♡
「ああ、お連れさんなら、朝早く出発しましたよ?
  何か高笑いが街道の方から聞こえてきましたから…」
あたしをみて、少し顔を青ざめていっている店員の女性の言葉に。
「そうみたいね。あ、モーニングセットね♡」
泊まった海竜の鼻息亭にて朝食を頼み、そのまま食事をするあたしとガウリイ。
「そうそう。そういえば、昨日の件で。魔道士協会に来てくださいって連絡がありましたよ?」
食事を運んできつつあたしに伝言を伝えてくる。
あら♡
ヴィオラ、ついに動いたわね♡
ふふふふ♡
「…で?どうすんだ?リナ」
がつがつがつ。
ぱくぱくぱく。
勢いよく皿を空にしているガウリイが問いかけてくる。
「とりあえず、宿に戻ってゼルとアメリアに合流してから。それから、どっちに行くかを決めましょ。」
ま、といっても。
あの街道、今は通れないんだけどね♡
ふふふふ♡
ひとまず、軽く食事をしたのちに、宿にと戻りアメリアたちと合流することに♡

「私は、タイレルの博覧会が気になります……。巨大封印石公開と書いてありましたし……」
ぱくぱくと。
サンドイッチを口に運んでいるアメリアが言い。
「確かにな。しかし、コブリンランドというのも気になるがな・・・」
そういいつつ、紅茶を人口飲んでいるゼル。
「そうねぇ。ま、どっちにしろ、サイラーグにはいずれはいかないといけないし♡
  先にタイレルにでもいきますか♡」
ふふ♡
「?リナさん?それって、どういう意味ですか?」
「それは、秘密♡」
にっこり笑っていうあたしに。
…………何か絶対にあるような気がします……
……何かあるな……
なぜか、心で突っ込みを入れて汗を流しているアメリアとゼルの二人だし。
そんなあたし達に。
「あんた達、街道を抜けるのかい?」
宿のおかみが話しかけてくる。
「そうだが?」
ゼルが答えると。
「そうかい。今、あの街道は通れないよ。少し前に、がけ崩れが発生してねぇ……
  まあ、あと数日もすれば、タイレル方面は開通する見通しらしいけど。
  サイラーグ方面は、もう少しかかりそうだよ?」
食事のおかわりを運んできて、空になった皿を下げつつ情報を提供してくる。
「……それじゃ、仕方ないですね。」
アメリアが少し顔を曇らせると。
「じゃあそれまでに、今までの情報とかをもう一度俺は集めなおしておく。」
いって、かたんと席を立ち上がるゼル。
「あ!ゼルガディスさん!私も手伝います!」
そんなゼルを追いかけているアメリア。
「じゃあ、あたしは魔道士協会に用事があるから。そっちに行くわね。」
そういって、ちらりとガウリイをみて。
「ガウリイ♡あんたは、がけ崩れの街道の手伝いね♡」
「ええええええええええ!?……わ…わかった……」
少し驚きの声を上げて。
あたしが手にしている黒い小さなショートソードをみて、
なぜか、から笑いをあげつつ了解してくるガウリイ。
「じゃ、決まりね♡」
とりあえず。
アメリアとゼルガディスは、マレン街道を抜ける前に、もう一度情報の見直しと。
ガウリイは、がけ崩れの復興のお手伝い。
あたしは…っと♡
さあって♪
罠にはまった振りして楽しみますか♡
ふふふふふふふふふ♡

昨日までは、工事中と掲げられていた看板が取り除かれ。
この村に建設中となっている魔道士協会にと足を運ぶ。
協会の中に入ると。
「リナ=インバースさんですね?」
そこに一人の女性。
「昨日の一件、すでに噂になってますよ?」
度が少し入ったぐるぐるめがねを掛け、長い髪をみつあみにし一つに短くまとめた金色の髪。
白衣の下には、黒い半そでのシャツを着込んでいたり。
くす。
あたしが知らないと思って、いきなりそういってくるし♡
だから、楽しいんだけどね♡
「あら♡」
「あんな大切なこと!どうしてすぐに報告しないんですか!
  場合によっては、礼金も取り消しですよ!」
ダン!と机を叩いていってくるのは、ここの魔道士協会評議長のふりをしている女性。
「まあ、いいでしょう。
  私はここの魔道士協会の評議長を任されました。ヴィオラといいます。そうですね…
  今回の情報が遅れたことは、実験に付き合ってもらうことで手を打ちましょう。」
眼鏡をくいっと持ち上げて、高らかに言い放つ。
でも、ここまで精神支配を受けてるのに気づいてないんだから、本当にこの人間面白いわ♡
ふふ♪
「実験ですか?」
くすくすどうにかこみ上げてくる笑いをこらえて問いかけてみる。
やはり、ここはお約束。
何も分かってない振りして、相手の作戦に乗るのが定番よねぇ♡
ふふふふふふふ♪
「別にそんなたいした実験ではないですわ。こちらについてきてください。」
そういうなり、地下にと向かって歩き出すヴィオラ。

地下に進むと、
そこには、ちょっとしたパイプが張り巡らされている場所でもあるちょっとした地下室が。
「こちらです。」
ヴィオラがいうままに進んでゆくと。
ブシュッ…
お約束ながら、催眠スプレーが噴出されてゆく。
ま、あたしには効かないんだけどねぇ♡
「ふふ。貴女には、実験体として研究に付き合ってもらいますわ。」
そういいつつ、あたしを捕らえられると確信もってるヴィオラ。
「お~ほっほっほっほっほっほっ!」
そこに、高笑いとともにナーガが出てくるし。
そ~いえば。
ナーガ、ちょっとした依頼を受けて。
コブリンの収集家にコブリンの髭を依頼されて捜してたんだけど。
この辺り、コブリン、このヴィオラが作ったコブリンランドに、全て持っていかれているから。
野生のコブリンが極端に少なくなってるのよねぇ。
それゆえに、魔道士協会なら、それがあるかと思って忍び込んできたようだけど♡
「あら♡火炎球ファイアー・ボール♡」
ドガン!
プスプスプス……
隠れているナーガに直撃するちょっとした炎。
「ほ…ほほほほっ!ごふ!よく私がここにいたことに気付いたわね!
  リナ=インバース!お~ほっほっほっ!けふけふけふ……」
直撃受けたのに、少しむせこんでいるだけのナーガに向かい。
「あら♡ナーガ、すでに出発したんじゃなかったの?」
くすくす笑って問いかけるあたしの言葉に。
「ふっ。出発したわよ。私がここにいるのは依頼のためよ。
  依頼でちょっとした品物が必用になって。
  手に入らないから、魔道士協会で分けてもらおうと思ってね。お~ほっほっほっ!」
催眠ガスが吹き付けている中で、まったく眠りもしないあたしとナーガ。
「あら、そちらもどうやら魔道士のようね。ちょうどよかったわ。」
いいつつも、なぜかその額に一筋の汗を流しているヴィオラ。
……どうして、この二人はこの催眠ガスで眠らないのよ……
などとそう心でつぶやきつつ、さらに催眠ガスの濃度を高めて噴出してゆく。
「依頼の品くらい自分で見つけなさいよね♡しかもコブリンの髭くらい♡」
あたしの言葉に。
「あら?私、依頼の品をいったかしら?まあいいわ。そうはいうけど、リナ。
  最近、この辺りには、コブリンまったくいないのよ?集団脱走でもしたのかしら?」
のんびりと会話をしているあたしとナーガ。
「おほほほ。これでもくらいなさいな。」
ブシュッ!
ヴィオラの言葉とともに、さらに濃縮された睡眠ガスが部屋の中にと充満してゆく。
「お~ほっほっほっ!この白蛇のナーガ様に、そんなものが通用…………ぐう……」
思いっきり通用してるし♡
「あ……あれ?」
ふらり。
ナーガが眠ったのを確認して、あたしも眠らされるふりをする。
だって、そうでなくちゃ面白くないからね♡

かさり。
「やりましたね。先生。」
部屋の奥から出てくる男性二人。
「ふ。天才はこの私だけで十分なのよ。さ、この実験材料二つを、研究施設に運ぶわよ。」
「フランク、運ぶ。」
淡々と短く言って、ひょいとナーガを抱える緑色の体をしている男性。
ちなみに彼は、ヴィオラの手によって改造されている人間だけど。
俗にいう改造人間なのよね♡
眠ったふりをしているあたしと爆睡中のナーガを抱えて。
そのまま、隠し通路を通ってその場を後にしてゆく、ヴィオラ達。
さぁて♡
少し楽しみますかね♡


かちゃかちゃかちゃ……
「……リナのやつ、戻ってこないな?」
魔道士協会にいったというあたしが戻ってこないので。
夕方、戻ってきたゼル達は、魔道士協会にと足を運んだものの、そこはやはり建設中。
ガウリイが、その鍵を断ち切って協会の中にと入ったものの。
そこにはすでに誰もいなく。
そのままあたしのいないままに、夕飯を食べている、アメリア、ゼル、ガウリイのこの三人。
「……リナさん、一体どこに……」
アメリアが心配そうにそういいつつ。
「……ま、リナのことだからなぁ……」
かちゃかちゃかちゃ。
運ばれてきた食事を、きちんとねナイフとフォークを使いこなして、食べ始めるガウリイに。
『えええええええええええええええええ!!!!!!!!!?
  あのガウリイ(さん)がテーブルマナーを知って(ますぅぅ)(るとはっ)!!!!!?』
「……あのな……」
アメリアとゼルガディスの驚愕の声が響き渡る。
渚の海竜亭で、テーブルマナーを知っていたガウリイに驚愕の声を上げているアメリア達。
あら♡
そういえば、アメリアたちってそのこと知らなかったっけ♡
あたしは聞かなくても知ってたけど、でもこの驚いてる表情…面白いわね♡
ふふふふ♡


シムグーン・シティの少し北にある。
標高が高く、万年雪に覆われているその山は、別名死霊山とも呼ばれている。
といっても、別に頂上だけに雪が降っているのではなく。
その麓から、万年雪が降り積もっているので、そういうように呼び方が付いているのだけど。
大抵なさけないことに、この山に来る人間が一ヶ月に一人かそこらの割合で凍死して、
あたしの元にと戻りかけるケースも少なくない。
ヴィオラの研究所は、そんな死霊山の中ほどにあったりするけど。

こぽこぽこぽ……
ヴィオラたちがいなくなったのを見計らい。
あたしが中にと入れられていたケースを壊さないままにするっと外に抜け出る。
少し離れた場所には、同じくガラスケースに閉じ込められているナーガと、そして一人の男性。
くすっ。
少し笑って、そんな二人の入ったカプセルにと手を伸ばすと。
ユラリ……
バシャァァン……
そのまま、ガラスが無にと還りゆき。
ガラスの中に入っていた液体が、そのガラスの形のままに崩れ、
そのまま一気にと床にとこぼれだす。
「いい加減に起きなさいね♡炸弾陣ディルブランド♡」
ドゴガァン!
今だに寝ているナーガを、とりあえずポピュラーな呪文でたたき起こす。
何て親切なのかしら、あたしって♡
「う……ううん……。はっ!?リナ!?ここは一体どこ!?
  はっ!この天才ナーガ様を攫うとは侮れないわね。
  まあ、それだけ見る目があったということかしら!お~ほっほっほっほっ!」
目覚めて、ざっと周りを見渡して、自分が攫われているということを自覚しているナーガ。
ナーガにしては、珍しいわねぇ♡
「う……ううん……」
ナーガと同じく、同じく捕らえられていた男性も目を開く。
なぜかこちらは、全身がちょっぴしこげているけど。
「……はっ!?あなた方は一体!?」
閉じ込められていた男性がふと気付いてあたし達をみて声を出してくるけども。
「お~ほっほっほっ!私は……」
高笑いをして、いいかけるナーガに。
「金魚のうんちのナーガよ。あたしは、リナ=インバース。」
「リナちゃん……ひどひ……白蛇サーペントのナーガよ……」
少し涙目になって、抗議してくるナーガ。
「ま、とりあえず。ナーガ。このジャイルズをつれて、ガウリイ達の所に戻ってくれない?
  もちろん、この男性の護衛料を含めて♡金貨四枚でどう?」
「乗った!」
即座に承知してくるナーガに。
「あ…あの?僕…名乗りましたっけ?」
首をかしげているこの男性―ジャイルスの言葉に。
「岬に住んでるジャイルズでしょう?」
あっさりいうあたしの言葉に、なぜか黙り込む捕らわれていた黒い髪の男性。
ちなみに、彼は二人の子持ち。
彼の妻は他界して、今は子供達と共に海の岬にある家で暮らしていたところを。
ヴィオラの研究に手を貸して、疑問を感じて抗議したところ、
自らも実験体として捕らえられていたという身分上。
「じゃ、交渉成立ね♡」
ジャラッ。
とりあえず、今取り出した金貨の入った袋をナーガに手渡す。
まあ、お金もかなりたまってたからねぇ。
次元式の袋にいつも入れているから、あまり重さとかは関係ないけど。
ナーガに金貨を上げるなど、無駄なことこのうえないけど、
素直にナーガを動かすのには一番効果的だし。
「けどリナ?あなたはどうするの?」
ナーガの問いかけに。
「ああ。あたしは、まだちょっとやることがあるから♡ってことで♡」
パチン♪
『うわっ!?』
あたしが指を鳴らすと。
あたしの前から、ナーガとジャイルズの姿が、空間にと飲み込まれるようにと掻き消えてゆく。
「ちょっとぉぉお!リナ、いきなり空間移動をしかけてこないでよぉぉぉ!」
「うどわぁぁ!?」
なぜか、わめくナーガに悲鳴を上げているジャイルズ。
あたしは、二人を空間移動で、この場所から別の場所にと飛ばしてゆく。

ちなみに飛ばした場所は、アメリア達が泊まっている部屋の中♡
ナーガに手渡したのは、一通の手紙。
さて、手紙がガウリイ達の手に渡るまでの間、少しばかりからかいます♡


ドスン!!
「うわきゃ!?」
「うわっ!?」
ムギュ!
作戦会議というか話し合いをしている最中に天井の何もない空間から、人間が二人。
その部屋の中にと落ちてくる。
「お……おもい……」
ひくひくと、二人の下で手をひくひくさせて伸びているゼルガディス。
「……あれ!?姉さん!?」
「いたた…まったくリナったら……って。あら、アメリアじゃないのよ。」
お尻を押さえつつ、横にいるアメリアに気付いて話しかけているナーガ。
「姉さんも今回の事件を調べに国を出てたんですか?」
「ま、そんなことろね!お~ほっほっほっほっ!」
実際は少し違うけど。
少し城下に買い物に出かけにでて、そのまま道に迷ってここまで来ているのよね♡
ナーガは♡
「さすが、姉さんです!」
二人、にこやかに姉妹の会話をしていると。
「た……頼むからのいてくれ……」
ナーガの下敷きになっているゼルが、かすれた声でつぶやいてるし。
楽しそうね♡


とりあえず。
ナーガたちとあたしが捕らえられていた場所は異なるので。
そのまま、ヴィオラたちが戻ってくる前に、元のカプセルの中にと戻るあたし。

あたしがね寝ているふりをしていると。
あたしの入った水晶のカプセルを、ヴィオラが開発した装置にとセットする。
かちっ。
「ふふ。ついにこの装置の本領発揮のときよ!」
高らかに笑いつつ、スイッチを入れてるし。
この装置、中に入っている存在の魔力を吸い上げて。
その上のカプセルにと入っているとある石に魔力をためて、
そして、またその存在に戻してゆくといった装置。
そして、吸い上げるのを繰り返してゆくと、
通常の魔力よりも、ニ三倍以上の魔力が石にと溜まる仕組み。
カプセルに入っているあたしをみつつ。
「さて、じゃあ、行くわよ。」
「はい!先生!」
「スイッチオン!」
ゴウン!!!!
音を立てて、魔封石に、あたしの力が入ってゆく。
――が。
「……おかしいわ?いくらなんでも…もう、魔力が尽きてもいいころなのに……」
吸い上げても吸い上げても、当たり前のことながら、
あたしの魔力というか力は、はっきりいって無限だし♡
面白いまでに呆然としているヴィオラ。
そして、しばらくするとすぐに。
ビィー!ビィー!ビィー!!
装置より警報が鳴り響く。
「だ……駄目です!先生!!吸い切れませんっ!!もう…これ以上っはっ!う……うわぁぁぁぁ!」
ガンドックの叫びと同時に。

カッ!!

あたしの入っているカプセルが金色にと光る。
それと同時に、あたしの頭の頭上にと設置されていた石も砕け散る。
そのまま、研究所のその天井に向かって光の筋が空にと延びて。
そのままある程度の高さまでゆくと、四方八方にその光は分散されて、散らばりながら飛んでゆく。

さらり……
ふわりと、金色にと変化させた髪がたなびく。
そのまま何でもないように、
カプセルから何も障害など始めからないようにと歩いて外にと出てゆく。
「そ……そんな……」
呆然としているヴィオラを尻目に、あたしはゆっくりと、彼女達の目の前にとカプセルから降り立ってゆく。
「……中からは・・決して出れないはずなのに……」
水色の髪と肌をしているワールフの少年、ガンドックが呆然とつぶやいてるけど。
重さを感じさせずに、床にと足を降ろす。
首を少し振ると長い金色にと変った髪がふわりとなびく。
そして、あたしはゆっくりと目を見開く。
『……ヴィオラ、そなたは、自身が何をしようとしているのか、理解しているのか?
  精神世界とこの物質世界の間に結界を張るということは、それ即ち。
  この物質世界そのものを死に絶えらせるということに。』
静かにいうあたしの言葉に。
「な゛!魔法が使えなくなるのと、魔族がこの世界に出現できなくなるだけです!」
あたしに威圧されて、冷や汗流しつつ、言い返してくるヴィオラ。
あたしは今はいつものリナ=インバースとしての雰囲気ではない。
一応本来の存在感を少し出しているだけで、辺りの空気ごとが振動し、震え、畏怖し怯えている。
いるのよねぇ。
こういう勘違いしている存在って……
『この世界は、精神世界と表裏一体。
  風火水土、空気も大気も全て、精神世界と直結し、それに伴い存在している。
  そなたの研究が成功したとして、それはこの星を。
  そなたたちのいう世界を死滅させるのにほかならない。
  ――まあ、滅びを目指す魔族などには喜ばれるであろうがな……』
ふっ。
少し苦笑する。
ゆっくりと瞳を開けるあたしの目に、見つめられて動けなくなっているヴィオラたち三人。
……何?何なの?この……圧倒的な……存在感は?
側にいるだけで、圧倒的な力を感じる。
逆らうのが間違っていると、本能が告げているのを感じ取るが。
それでも。
人の意識でそれを振り払うヴィオラ。
『汝の研究の果てにまつものは……。全ての命が存在できない世界を創るのに他ならない。
  虚無と無限に満ちた世界。完全に滅びの道を辿るであろう。』
まあ、そう簡単に、つながりを遮断することなどはできないけど。
あたしは簡単にできるけど♡
金色に光る瞳でひたと見つめ、言い放つあたしの言葉に。
「――な!?」
「……せ…先生!そんなたわごとは無視してください!今はそれよりも早く脱出しないと!」
すでに、装置の力の逆流でこの研究所は、小刻みに爆発を繰り返している。
な……何だ?この女は??!
まったく、雰囲気からも何もかもが変化してるぞ!?
…………これに逆らったら…命がない。
そう本能が告げているのが分かる。
そう心で思いつつ。
内心かなり汗を流して、ヴィオラに退避を促すガンドック。
「そ・・・・そうね・・・。装置が逆流を始めた以上・・・。ここも、時間の問題ね。いらっしゃい!ダミア!」
言葉が終わると同時に奥から女の子が一人歩いてきて。
あたしとヴィオラの前にと立つ。
しばし、その子をみつめ。
ふっ。
小さく苦笑する。
この子はもう、理解している。
だから。
『ダミア、そなたはもうわかっているようだな?
  姉であるそのもののやっている物事が。必ず失敗するということを。
  そなた自身の例もあることであるしな。』
あたしの言葉にすこしうつむいて。
「確かに……な。姉上!もう、こんなことは止めてください!終わりにしてください!」
そういいつつ、向きを変えて叫ぶピンクの髪の少女。
そのダミアの言葉に。
「そ……な……。ダミアちゃんがこの私を裏切るなんて……」
呆然といっているヴィオラ。
「先生!早く!」
ドウン!
小刻みに爆発が起こる音。
逃げ場を確保したガンドックたちが、ヴィオラを先導する。
「くっ……覚えいなさいよ!」
捨て台詞を残して立ち去るダミアたち。

そして。
そのまま、裏口から隠し通路を通り、この研究所から脱出してゆく。
ちなみに、その脱出装置はヴィオラの趣味で、
この研究所の裏手から、麓まで一気にすべり降りるという滑り台。
ヴィオラが捨て台詞を残して立ち去るのを見ていると。
「あ…あの?リナ=インバースさんですよね?」
ダミアがあたしの方に改めて振り向き話しかけてくる。
その刹那。
シュン。
フワ。
あたしは、この身に少しまとっていた金色の光を消し去り。
髪の色、そして目の色も金から栗色に、金から紅にと『リナ』としての姿に戻してゆく。
それとほぼ同時。
「リナさ~ん!」
「リナ!無事か!?」
「おおい。リナぁ。」
交互に叫びつつ。
アメリア、ゼルガディス、ガウリイが、あたしとダミアのいる部屋にと入ってくる。
う~ん♡ナイスタイミング♡
「リナ!」
「リナさん……って……無事のようですね……」
「やっぱり無事だったか。リナ。」
叫ぶガウリイに。
あたしの姿をみて、あきれたような声を出すアメリアに。
小さく嘲笑していっているゼル。
アメリアが、何か物足りなそうにしているけど。
「さて。つれもきたことだし♡ここから出ましょ♡ここ、あと少しで爆発するし♡」
さらりと言い放つあたしの台詞に。
「ば……爆発ぅぅぅ!?そんな!じゃあ、早くここから放れないと!!」
「……う~ん。あと、数分ってところだなぁ。」
のほほ~んと言ってるガウリイ。
「おい!ガウリイ!のほほんといってないで!急いでここから離れるぞ!」
ばたばたと。
あたしの言葉をかわきりに。
そのまま、研究所の外にと駆け出すアメリア達三人に。
走りつつ。
「あ……あの?声とか、雰囲気とか、髪の色が…先ほどとまったく異なるのは?」
脱出するべく走るあたしにと問いかけてくるダミア。
「ま、細かいことは気にしない♡ でも、あの三人にはいわないことね♡」
にっこりと、笑顔を向けると。
ビシリ。
その笑顔から何か感じ取り、そのまま、しばし固まるダミアだけど。
別にそんなに怯える必用はないとおもうけどねぇ?
ふふふふふ♡
ちなみに。
さきほどの姿は、よく部下達の前でとっている姿に近いもの。
別に気配とかは開放してない。
ただ、少しばかり、髪の色を金色にと変えただけのこと。
それだけで、空気は振動するし、畏れるし。
別にそんなに怖れる必用もないでしょうに。
全ては、あたしの一部に過ぎないのだからして。


とりあえず。
大爆発をする直前に。
全員で、その研究所をあたし達は後にしてゆく―。


                                             -続くー

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ふふふふvようやくコプリンランドv
その前に・・・タイレルシティv
んではではvv

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