エル様漫遊記・ベゼルドの妖剣偏
「しかし……この辺り、昼間でも薄暗いですわね……」
いって、ミリーナがあたりを見渡しつつ言ってくる。
翌朝、食事をとり、
とりあえずシェーラの案内のもと、【剣】がある、
…というか、待機しているその場所にと向かってゆくあたし達。
ベゼルドの北にある廃坑……そこを拠点にシェーラは一応行動していたわけだし♡
「ま、使われなくなった鉱山への道なんてこんなもんじゃないですか?」
にこやかにそんなミリーナに言っているゼロス。
辺りの木々がなぎ倒されていたりするのは、
それは、この辺りにいた動物が下級の魔族に憑依され、
レッサーデーモン化したときの名残りだったりするけども。
「だけど…本当にあの黒尽くめ達…又くるのか?まったくしつこいやつらだぜ……」
などといいつつ、そして。
「――はぁ。話からして……っていうか、例の剣もまともでなさそうだし…
……何だってこんなことに巻き込まれてるんだ?俺たちは…」
などとつぶやくルークに対し。
「ルーク。文句をいってないで、とっとと歩いてください。
――それに、個々までかかわったら、最後まで、というのは。当然のことでしょう?」
冷ややかにそんなルークに言っているミリーナ。
「ま、それはそうだが。……でも何か、どんどんやっかいなコトに巻き込まれているような…」
「それはいわないでください。ルーク。私は考えないようにしてるんですから。」
何やらそんな会話をしているルークとミリーナだし。
「それはそうと、そろそろつきますよ?」
そんな二人の会話を聞きつつも、何やら低姿勢でいってくるシェーラ。
その言葉と同時に。
ふと、視界が開ける。
森の途切れたその先には、ほぼ岩肌がむき出しとなっている岩壁がそそり立ち、
どん、と行く手を阻むかのように立ちふさがっている。
その岩肌のあちこちにとあいているちょっとした数の鉱山の穴の跡。
そのうちのいくつかに潜んでいる男達の気配。
…もっとも、当人たちはあれでも気配を絶っているつもりだけど。
それをみて。
「……た、たしかに…廃坑…だな……」
ちょっとした256箇所の大小の穴をみて…
といっても、ルーク達の視界に入っている穴の数はたかが18個だけど。
何やら呆然とつぶやいているルークに、無言のままうなづいているミリーナ。
そして。
なるほど。
これほどの数だから、あの黒尽くめ達はシェーラさんに正確な一を聞く、
もしくは案内させるために付きまとっていたのですわね。
……人ではない、というのを知らず……
何やら坑道の穴をみて、そんなことを思っているミリーナ。
「なあ?リナ?何だって、あそこ、白い何かが木にひっかけてあるんだ?」
いいつつ、
数百メートル先のとある一点の穴の出入り口を見て、そんなことを聞いてくるガウリイ。
そんなガウリイの言葉に。
「――え!?何でわかるんですか!?」
面白いまでに驚いているシェーラ。
「ん?だって見えるだろ?何か布みたいだけど…
……どちっちかといったらゼロス達に近いような……」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」
そんなガウリイの言葉に面白いまでに無言になっているゼロスとシェーラ。
そして。
「?んなのどこにあるんだよ?」
じと目でガウリイに言っているルーク。
「いや、だからぁ。ほら。あそこだよ」
いって、ガウリイは、ある一点を指し示すけど。
ルーク達の目には遠めに黒くあいた穴がある。
というくらいしか堪忍できていない。
「…普通、こんな遠くからわかります!?あれが!?」
何やら叫ぶシェーラに。
ぽんっ。
そんなシェーラの肩に手をおき。
「まあ、リナさん達とご一緒されている人間ですからねぇ♡このガウリイさんは♡
多少のことで驚いてたら身が持ちませんよ♡シェーラさん♡」
にこやかにシェーラにと話しかけているゼロス。
そんなゼロスに。
「…これが『多少』なわけ?」
「そうです♡」
「……と、ともかく。確かにこの人間……というか、このガウリイさんの言うとおり……
ちょっとした枯れ枝を岸壁に突き刺して……
……そこに目印をつけてますけど…私の一部を布状にして……」
何やら驚きつつも説明しているシェーラだし。
「……目印?」
そんなシェーラの言葉に首をかしげるミリーナに対し。
「ええ。ここの坑道ってかなり入り組んでいるんですよ。
私にはそんなの関係ないんですけど……空間移動すればいいだけですし。
ですけど、欲に駆られた存在たちを剣のところに導くのに、
すんなりとたどり着けたら面白みがないじゃないですか?
坑道の中にはもっともそれらしく【罠】と思われるように様々な仕掛けを施してますし。
とりあえず、それらしい、『いかにも何かありました。』というのには。
ああいったちょっぴし何か赤いようなシミがついた布の切れ端がいいとおもいまして…
あそこから入れば道さえ左右間違えなければ剣の…
…【ドゥールゴーファ】のところにたどり着けるようにしてあります。」
多少未だにびくつきつつも、ミリーナに説明しているこのシェーラ。
「シェーラ♡いい加減にあたし達に慣れなさいね♡」
「す…すいません~~!!」
びくぅっ!
なぜかあたしの言葉にびくつき、謝ってくるシェーラだし……
「ま、シェーラさん♡そのうちに慣れますって♡」
「絶対に無理ぃぃ~~!!」
何やら言っているゼロスとシェーラはとりあえずほっといて……っと。
「とりあえず、行きましょ♡」
「まあ、ここでじっとしてても……な。」
「同じくですわ。」
「…りなぁ。移動するにしても瞬間移動だけはやめてくれよな?」
何やらあたしの言葉にいってくる、ルーク・ミリーナ、そしてガウリイ。
とりあえず、ガウリイが示し。
シェーラの案内をうけて、あたし達はその穴―――岩の中央付近より少し上。
その穴の前に枯れ枝に引っかかるようにしてそこにある白い布もどき。
ちょっぴしいくつか赤黒い染みがついているのがご愛嬌♡
そう。
ちょっぴしその木の枝で体のどこかをひっかけて、少し血が服が破けたときにつきました。
といわんばかりの染みの創り方♪
こういった細かい作業はこのシェーラ、好きだからねぇ。
「……しかし、あんたよくあんなところからこんなもんがみえたな……」
じと目でガウリイをみつつ、言っているルーク。
とりあえず、場所的に飛べない存在達は浮かないとどうにもならないので、
……といっても、このメンバーで飛べないのはガウリイだけだけど。
ふわり、と浮き上がり、
ついでにガウリイも浮かび上がらせて、その場所にとたどり着いているあたし達。
とある廃鉱の小さな入り口に当たる小さな穴。
その入り口にとたどり着き、
岩に申し訳程度に残っている枯れ木に引っかかったような布をみて言っているルーク。
「いやぁ。はっはっはっ。普通見えるだろ?」
「いや、見えないって。」
そなんな会話をしているガウリイとルーク。
一方で、あたし達の行動を本人たちからしてみれば、
隠れて様子を伺っているつもりのガルファやザイン達もまた。
あたし達が穴の中にと入っていったのを確認し、ゆっくりとその入り口にと入ってくる。
右に左に。
「とりあえず……こちらです。本当っに、見られるだけなんですか??」
何やら涙声で歩きつつも言ってくるシェーラ。
進む坑道はオリハルコンを掘り出そうとした人間達が、
でたらめに掘り返しまくった穴が際立ち目立っている。
ゆえに、面白いことにちょっとした楽しい迷路になってたり♡
「ここは…確か……」
「はい。彼らが……」
魔力の波動を感じた数箇所にそれぞれ、数人づつ配置していたこのガルファ。
あたし達が穴の奥に引っ込んだのを見て取り、
後から、本人たちからすれば、気づかれていないつもりらしいけど。
ガウリイとあたしやユニット。
それにゼロスやシェーラには丸わかる。
あたし達の中でわかってないのルークとミリーナだけだし
とりあえず、うねうねと曲がりくねった道を行くことしばし。
とりあえず、坑道の中は少し昏いので、
あたし達の上空に移動式のちょっとした明りを生み出して進んでいたりするけど。
それはそれ。
しばらく進んでゆくと…
……ずっ…ズズズッン!!!
ちょっと奥のほうから聞こえてくる、地鳴りと、振動。
「あっちか!!」
ルークとミリーナはその音にて、互いに顔を見合わせ、そちらのほうにと駆け出してゆく。
そしてまた。
「あら♡あれくらいで驚いて呪文をぶっ放しているようね♡彼ら♡」
くすくす♡
「……そりゃ、ブラスデーモンとかには驚くだろ…普通……」
気配でこの先に何がいるのかわかっているガウリイが、あたしの言葉に何やら言ってくるけど。
「ま、とにかくいきましょ♡」
走り出したルークとミリーナに続いて、あたし達も音のしたほうにと向かってゆく。
やがて、坑道の先が落盤でふさがっている様子と、
なぜか息を切らしてぜいぜいいっている黒尽くめの男達の姿が見えてくる。
「てめえら!?」
そんなルークのこけた声にようやくこちらに気づき。
「な゛!?」
何やら驚いてるし……
「まったく。たかが14体のブラスデーモンごときに驚いてどうするのよ♡あんたたち♡」
こいつらって。
この先にいた、ブラスデーモンに驚いて、効くはずもないのに、精霊魔法を放ったのよねぇ。
あと一体ほど剣とは別に実体化していた、
人とは到底思えない、【ドゥールゴーファ】の人もどきバージョン♡
それをみて驚いてたようだし。
「くっ!
とにかく、邪魔ものは消せ。
そう指示を受けているこの黒尽くめの男達。
ゆえに、驚きはしたものの、あたし達に向かって術を解き放ってくる。
――だがしかし。
―バッキィィン…
それらは途中ですんだ音色と共に霧散する。
「まったく、この御方たちの攻撃なんて♡下手にことはしないでくださいね♡」
いいつつも、すっと目を細く見開いて、そこにいる男性三人を見つめるゼロス。
ぞくっ!!
何だ!?この男は!?
それと同時に情けないことに、本能的に震え上がり、その場に硬直している男達。
未だルーク達は前にいるので、ゼロスの表情は見えてはいない。
それゆえに、なぜか立ち尽くした男達をみて。
チャンスとばかりに。
「
唱えていた術を解き放つルーク。
それは、迷うことななく、三人の黒尽くめの男達にと向かっていき、
そして未だに立ちすくんでいる男達に迷うことなく直撃する。
ぐわっ!!
ルークの火球が炸裂し、
渦巻く炎が三人の男達を包み込み、そしてさらには坑道沿いにと延びてくる。
が。
「
静かに放ったミリーナの言葉に、炎はあたし達…
…というか、ミリーナたちの少し前にて、ピタリ。と止まる。
精霊の力を借りて発動させる、耐火呪文。
一応、この辺りでは高位の術とされている術の一つ。
火の精霊の力を借りて発動させる術の一つ。
別に火を生み出すだけが【力】でないし。
なぜか、人間達とかって、多少呪文詠唱に手間取り、実践には不向き、とされていたりする。
【力ある言葉】だけで発動できる
渦巻く炎は掻き消えるように収まり。
何もしないままではそこに転がっている三つの黒い物体となるのであるが。
……事実、そこに黒い物体が三つ、何やら転がっていたりするけど。
何か炭と化してるし。
何かゼロスに気圧され、固まったまま動くことすらできずに炎にまかれたのよね…こいつら…
情けない……
「リナ?生き返らせる?どうする?」
あたしにと何やら聞いてくるユニット。
「そね♡生き返らせてカタート付近にでも飛ばしておきましょ♡」
いって。
軽くパチン♪
と指を鳴らすと同時に、炭と化していた三人の肉体が見る間にと再生し元通りになり。
そして、元の形になると同時に。
シュッ!!
瞬時のうちにその場から掻き消える。
「な゛!?」
「…リナさん…今、一体何を……」
何やらそれをみて絶句しているルークに。
震える声であたしに聞いてきているミリーナ。
「ああ。ただ体というか肉体を再生させて根性を入れなおすためにカタート山脈に送ったのよ♡」
至極当然なあたしの説明に。
「「……いや、『再生』って……」」
何やら同時につぶやいていルークとミリーナだし。
「それはそうと?シェーラ?この奥でしょ?」
あたしの言葉に。
「あ、はい!」
いって、シェーラが、すっと崩れた土の山に手を触れると、
瞬く間にそれは掻き消え元の坑道の道並を取り戻す。
「こちらです。」
シェーラに言われ、その先にとそのまま進んでいくと。
やがて、ちょっとした広い空間にと突き当たる。
この辺りからオリハルコンが採掘されたがために、
人間達が四方八方に穴を広げていったが為にできたこの空間。
そんな空間の中央に、いかにも、これみよがしに台地に刺さっている格好を取っている。
見た目、漆黒の色をした飾り気のない、シンプルな一振りの剣。
「…何つうか、異様な雰囲気が……アレが例の剣なのか?」
何やらそれをみてつぶやくように言っているルークに。
「あ。はい。あれがドゥールゴーファ。私のための武器でもあり、そして部下でもある存在です。」
そういい、一歩足を踏み出したシェーラにと。
「
ちゅっん!!
シェーラの行く手が、後ろから飛んできた氷の矢にて阻まれる。
「な゛!?てめえら!?」
「なるほど。……つけてましたわね。」
術が飛んできたほうを振り向いたルークとミリーナが、
そこにいる二人の姿を認め何やらいってるけど。
「あら?気づいてなかったの?」
「つうか、オレはてっきりあんたらも気づいているもんだと……」
「あら♡いらっしゃい♡ザインさん、ガルファさん♡ご苦労様♡」
口々にいっている、あたしやガウリイ。
そしてにこやかにそんな二人……いうまでもなくザインとガルファに話しかけているユニット。
「…この先の前のほうにあった黒い焦げ目…アレは貴様らか……」
何やら怒りながらいってくるガルファに。
「ガルファ様!ありました!あれが例の!」
いいつつあたし達の後ろの部屋、
というか、この空洞になっているその場所の中央に刺さっているように見えるソレをみて、
ガルファにといっているザイン。
…というか、まぁぁぁた名前…呼んでるしv
「……もういい、貴様にはいっても無駄だな。お前はこいつらを足止めしろ!後はないと思え!」
強い口調でザインに命令しているガルファ。
いるのよねぇ。
いくら注意しても、意味がわからずに、まったく直そうとしない存在って……
その言葉に何やらあせりつつ。
「はっ!お前たちの相手はこのオレだ!
小娘!服を変えたからといって我らの目をごまかせるとでもおもったか!?」
などといいつつも、懐に手をいれ、ナイフを十数本、あたし達にとむかって投げてくるザイン。
…芸がワンパターンだし……
が。
それらはあたし達に届く間もなく、ムキを買え、ザインのほうにと戻ってゆく。
すっと錫杖を突き出しつつ。
「まったく……。困りますねぇ♡そんなモノ、危ないですよ♡」
にっこりと微笑みながらいうゼロスの言葉に。
「「セカンド!!」」
カカッ!!
いきなり向きを変えて自分に向かってきたナイフに驚き立ちすくんでいたザインの背後より、
別の二名の声がしたかと思うと。
ザインに突き刺さろうとしていたナイフをことごとくはじき返す。
そして。
あたし達をみて。
「他にも仲間は後ろからやってきています!コマンド!
今のうちに!!このもの達の我らにお任せを!」
いって、あたし達にと向き直ってくる。
「任せたぞ!」
だっ!
それをうけ、ガルファが駆け出し、
「あっ!てめえ!」
ルークが追いかけようとするが。
「貴様の相手はこのオレだ!」
いってルークに切りかかっているコードネームをフロック。
キィン!
剣と剣とがぶつかり合う音と。
「…リナぁ…他にもあと五名ほど何かきたぞ?……ど~すんだ?」
いいつつも、出入り口のほうにと続いている道のほうをみて何やら言ってくるガウリイ。
「ふっん。これで八対七。だがしかし、そこの小娘や子供は戦力になるまい。
我らの邪魔をした罪。その命で償ってもらおう!」
勝ち誇りつつも、何やら言っているザインだし……
ざっ。
そうこうしているうちにとやってきたほかの彼らの仲間五名もこの場にたどり着き、
あたし達を取り囲むようにと陣取ってくる。
「ちっ!やるしかねぇか!」
何やらそれをみて言っているルークだけど。
「あら♡その必要はないわよ♡」
くすっ。
すでに走って言ったガルファは、ドゥールゴーファの元にたどり着いてるし。
そして……
「なるほど。確かに何らかの魔力を感じるな。これで……」
いいつつも、そのドゥールゴーファが形どっている剣の姿の柄部分にと手をかける。
「……あ。」
それをみて、小さくシェーラがつぶやくのとまったく同時。
「ぐ・・・がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
洞窟内部、といわず、この廃鉱全体にと面白いまでにガルファの叫びが響き渡ってゆく。
-続くー
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あとがき:
薫:世の中、知らない、というほど怖いものはありませんね・・・
・・・というか、ご愁傷様・・・ともいえないな・・・自業自得だし・・
気の毒、といえば気の毒ですけどね・・
考えのない上司をもった、このガルファたち・・
何はともあれ、次回で・・・ガルファが?をお送りします。
それではv
2005年2月14日某日
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