エル様漫遊記・ベゼルドの妖剣偏


「で?それはそうとして…さっきのは?…一体??」
「ってゆうか、お前ら、何で俺たちの名前を知ってたんだ?」
村に一件しかない宿屋兼食堂で、
他にあいている席があるのに、あたし達と同席してきているルークとミリーナ。
ガウリイはガウリイで、ただひたすらに野菜炒めのビーマンをより分けてるけど、
ひとまず無視。
「え?ああ。さっきのユニットのやったこと?」
「まだそんな細かいことを気にしてるの?ミリーナさんたち♡」
あたしに続けて言っているユニット。
「……いや、細かくないとおもうんですけど……」
何やらつぶやいているミリーナ。
―――と。
コトン。
「ああ。あんたたち。
  ――おや?ひょっとして、この人達もシェーラちゃんのところに用事があるのい?」
注文していた海老の甘煮とローストビーフセットをテーブルに運んできている宿屋の主人。
ルークとミリーナに声をかけ……そして、あたし達のほうを見てるけど。
そして。
「はい。お嬢ちゃんにはサービスだよ。」
「ありがとうございます♡」
何やらユニットにイチゴパフェをサービスしてるし……
それに対してお礼を言っているユニット。
ちなみに、なぜかユニットをみて、多少の人間が惚けていたり。
…ま、すぐに我に戻ってるけど。
ユニットにイチゴパフェを差し出しながら。
「しっかし…シェーラちゃん…何か厄介なコトに巻き込まれているんじゃあないのかい?
  最近怪しい黒尽くめの人物をシェーラちゃんの家の周りでよく見かけるらしくてねぇ~。
  私としては一人暮らしのシェーラちゃんが、心配で心配でならないんだが……」
そういいつつも顔を曇らせる。
そんな彼の言葉に。
「?一人暮らしなのか?」
首をかしげて、ピーマンの選別作業を終えたガウリイが聞いていたりするけども。
というか、最近は魔族も家をもって住むんだなぁ~……
などと、そんなことを思ってるし…このガウリイは……
そんなガウリイの言葉に。
「いや、気づいたら住んでいた。というか。あの家は元々グレンって奴が住んでてね。
  グレンはこの村の産まれで元々はお袋さんと二人で暮らしてたんだが。
  どうにも落ち着かないやつでね。お袋さんが泣いてたよ。」
何やらガウリイの言葉をうけ、しみじみと世間話を始めてるし。
そんなこの宿の主人に対し。
「…うわっ…まただよ……」
露骨に顔をひそめているルーク。
ミリーナはミリーナで、さすがにこの数日、
彼からどうでもいいような話を聞かされていることもあり動じることもなく、
もくもくと、コーンスープを口にと運んでいたりする。
ルークの露骨な嫌そうな顔にも負けず。
「好きな言葉は【濡れてに泡】。三度の飯より【飲む、打つ】が大好きで。
  近くの町においしい話があれば、行って一山当てようと延々と家をあける。
  …そんな奴でさ。」
何やら一人で話し始めている彼に対し。
「……いるんですよねぇ~……こういう世間話をやたらと他人にしたがる人って……」
ため息混じりにいいつつ、お茶を飲んでいるゼロス。
そんなゼロスの言葉も何のその。
「それで、結局。お袋さんの死に目にも会えずじまいさ。
  村のみんなにもあまり好かれちゃいなかったね。
  それが…二、三年前かな?ひょっこりあの子つれて村に戻ってきてよ。
  グレンもシェーラちゃんもどっちも何も言わなかったけど。
  村じゃあきっと、ありゃあグレンの隠し子だろうって噂になってよ。
  それからしばらくして、グレンの奴がよっぱらって川に落ちて死んじまってよ。
  それからあの子は一人きりであそこで暮らしていた、というわけよ。」
そういいつつも、まったく話を途切れさせることもなく。
「…ま、そういうことで、あの子もこの村に住み始めたわけだ。
  自分はよそ者だって引け目もあったんだろうな。かわいそうに。
  ちょっと人付き合いの悪いところもあったけど、
  村のみんなには受けはよくてねぇ。シェーラちゃんは。
  ……まあ、受けのよさは半分くらいは同情だろうけどな。
  何しろ親父が親父だ。きっといろいろと苦労もしてるんだろう……ってな。
  そんなシェーラちゃんが何かに巻き込まれている、としたら…
  やっぱし前に死んだグレンがらみだろうしなぁ。
  何しろグレンの奴の女癖の悪さ等といったら…それに金の使い方もなってなかったしな。
  明日の生活費でもあったらその火のうちに酒や女で使ってしまおう。
  ってやつだったからなぁ~。
  しかも、家財道具もほとんど売っぱらってまで。
  いや、本当にシェーラちゃんが気の毒だよ。
  ……もしかして、あんたら、グレンの借金取立てじゃないよな?」
そういいつつも、あたし達を見てくるけど。
「いえ、違うわよ♡」
そんなあたしの言葉に。
「そうかい。ならシェーラちゃんの母親のほうの知り合いかね?いや、実はここだけの話。
  グレンのヤツ二十年近く前にベゼルドにオリハルコンを掘りにいったことがあってね。
  まあ、ベゼルドで当事見つかったのは、
  オリハルコンはほんのひとかけらだけだったらしいけど。
  それを聞いてグレンのやつも、のこのことベゼルドにいってねぇ。
  で、当然、オリハルコンなんかあるはずもなく。
  手ぶらで戻ってきたやっこさんをからかうと。
  『岩を掘っていると変な洞窟に抜けちまって、
    奥にいったら岩に突っ立った妙な剣があって、何か不気味だから帰って来た。』
  ときたもんだ。まったく、あのときの酒の荒れよう…
  …きっとグレンのやつ、ベゼルドで何かやらかしたんだぜ?――で……だ。
  あのシェーラちゃんは、おそらくグレンのヤツが、
  そのときにベゼルドでこしらえた子供だろうって話なんだ。
  村の人達もそう思ってるしな。時間も大体合うし。
  グレンのヤツとここに来た、ということはシェーラちゃんの母親も苦労したんだろうなぁ。
  って話を村人たちもしてるんだよ。
  大きくなったシェーラちゃんをのこのこきたグレンに押し付けたか……
  それとも、母親が死んで家のコトをダレもしてくれなくなったから、身寄りの……
  …つまりは、母親が亡くなった、シェーラちゃんを引き取ったか…とかね。
  まあ、後者だろうねぇ。グレンのヤツは女を不幸にするのも有名で………」
いまだに話を続けようとしてるけど。
と。
「あんた!!いつまで話し込んでるんだい!?他のお客さんがまってるよ!?」
カウンタのほうからしてくる、この宿のおかみさん。
つまりは、この男性の伴侶。
「おっと!いけねぇ!それじゃあ、あんたたち、くれぐれもシェーラちゃんによろしくな!」
その言葉に、あわてて、あたし達の前から立ち去ってゆく。
彼が立ち去るのとほぼ同時。
「――なあ?リナ?」
やがて、宿の主人が立ち去った、その刹那。
首をかしげて何やら聞いてくるガウリイ。
「何?」
あたしの言葉に。
「あのシェーラって娘、人との間に産まれたのか?
  でもそんな気配はないぞ?気配はゼロスと同じだぞ??」
ドガシャン!!
あ、面白い♡
ゼロスがガウリイの言葉に椅子から転げ落ちてる♡
くすっ。
「だからぁ。今の人間の話はただの噂よ♡う・わ・さ♡」
あたしの言葉に、
ぽんっ!
何やら軽く手をうち。
「なんだ。そっかぁ。どうりで人間の気配がまったくしないわけだよな。うん。」
などと納得しているガウリイに。
「ガガガガガガウリイさん!?」
そんなガウリイに対して口をパクパクさせているゼロス。
「……いやあの……今、『人間の気配がまったくしない』…とかいってませんでした?」
何やら、
カチャリ。
と食べ終わったお皿にフォークとナイフを置きつつ、ガウリイに聞いているミリーナ。
「ん?だってあの娘、ゼロスと同じく魔族だろ?」
――ぶっ!!?
あ、面白い♡
ルークが噴出してる♡
「…え?あの…何を…魔族って……」
何やらいいつつも冷や汗を流しているミリーナ。
「……ガウリイさぁん……。いきなりそ~いうコトはいわないでくださいよぉ~……」
そんなガウリイに情けない声を出しているゼロス。
「でも魔族だろ?あの子も?」
きょん、と何でもないように、さらっと言っているガウリイ。
「まあまあ、ゼロスさん♡ガウリイさんですし♡いきなり言うのはいつものことですよ♡」
にこやかに、そんなゼロスに言っているユニット。
「……い、いや…冗談にしてもタチが悪いぜ?
  第一、そこのヤツもあのシェーラちゃんと同じ人間じゃないか。どうみても。」
何やら声を震わせつつ、言ってきているルーク。
「あら♡元々ここの魔族は精神生命体なんだから。姿形なんてどうとでもなるわよ♡
  一応面白いから男女の区別をつけている……もとい、区別がついてるけど。」
にっこりというあたしの言葉に、なぜかユニットのほうを向いて。
「…あ?あの?……本当なんですか?…この人が…その……」
何やら冷や汗を流しつつ、ユニットに聞いているミリーナ。
「まあ、これでも、一応、このゼロスさん。
  獣王ゼラス=メタリオムに仕えている、獣神官、という立場だし。
  『赤の竜神騎士スィーフィードナイトさんの妹でもあるリナについておくように。』
  という上からの命令でこうして一緒についてきているだけだし♡」
言外に、『今は』という言葉を含ませて言っているユニット。
『スィー!!??』
その言葉に面白いまでに反応しているルークとミリーナ。
「まあ、確かに。今は一応あたしの姉、ということになってるわね。ルナは。
  ま、ゼロスが魔族でも問題ないしね。一応、結構使いっぱしり役としては便利だし♡」
そんなあたしの言葉に。
「……おい……まさか、本当なのか?冗談…とかではなくて?」
何やらカタカタと、多少震えているルークに。
「……リナさんって…あの『赤の竜神騎士スィーフィードナイト』の妹さんなんですか……
  なら、魔族が一緒にいたりしても不思議ではないのかも知れませんが…
  …でも魔族と一緒に行動してて…問題ないんですか?」
何やらカタカタと手にしたコップを震わせつつも、あたしに聞いてきているミリーナだし。
「あら♡別にただ少し役立つアイテムがついてきているだけだし♡何も問題ないじゃない♡」
にっこりと微笑むあたしに続き。
「ゼロスさん。ついでにきちんとした紹介をこの人達にしておきません?
  これからのこともありますし♡」
びくぅっ!!
なぜかユニットに、にっこりと言われ。
何やら、ビクリ、と震えているゼロス。
「……まあ、ガウリイさんがばらしちゃいましたけど…いいんですか?説明しても?」
何やら器用にも汗を流しつつ、あたしに聞いてきているゼロス。
ちなみに他にもいた客などは、
なぜかガウリイの『魔族』という言葉はたわごと、と捉えていたりするけども。
あと、ユニットの、『赤の竜神騎士スィーフィードナイト』という言葉に対しては、
『触らぬ神に祟りなし。』とばかりに、この場を立ち退いていたりする。
まったく…根性がなってないったら♡
「いっといたほうがいいでしょ♡」
これからのコトもあるしね♡
そんなあたしの言葉に何やらコクリとうなづき。
「え…ええと…リナさんが話してもいい。とおっしゃったので…それでは、一応改めまして。
  獣王ゼラス=メタリオムに直接仕えていますゼロスといいます♡
  肩書きは獣神官じゅうしんかんとなってまして♡
  一応、神官をやらしていただいております♡」
いってそのまま笑みを浮かべたままで。
「とりあえず、今リナさん達がおっしゃったように。
  今のところは『リナさんと一緒に行動すること。』が上司命令になってまして♡
  といっても、定期的にゼラス様には定期連絡に戻ってますが。
  このたびも報告に戻っている間に何やら関わりになっておられましてねぇ~…
  …リナさん達は……」
などといいつつ、なぜか多少固まっているルークとミリーナに説明をしていたりするけども。
と。
そんなゼロスが説明しているそんな中。

ドォンッ!!
ゴウッ!!!

とある場所より、爆発音と火の手が上がっていたりする。

「いやあの……冗談……だろ?じゅう…しんかん?」
ルークが何やらつぶやくのと同時。

カンカンカン!!

村にと設置されている鐘の音が村中にと鳴り響く。
そして――
「「火事だぁぁぁぁぁぁぁ~~!!!村はずれの家が燃えてるぞぉ~~!!!」」
あわただしい、村人たちの声が外よりあたし達の耳にと届いてくる。

「どこが燃えてるんだ!?」
「シェーラちゃん家だ!!」

などと、何やら外が騒がしくなってるし。

そして……
「え・・・えっと…とにかく、これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいきませんので……」

鳴り響く火事を知らせる村の警鐘。
わらわらといえから出てかけてゆく村人たち
そしてまた。
村はずれの方向から立ち上っている煙を見つつ、
シェーラがペコリ、と横にいるこの村の村長にと頭を下げていたりする。
なぜかあたし達が直した家に住むのは畏れ多いですし……
そんなことを思いつつ、
あたし達が家から出てすぐに、この村を出てゆくことに決めているシェーラ。
そして、村から出てゆくので挨拶を…、と空き家になる家を有効利用してください。
と彼女が村長に話していたそんな中。
シェーラがいない、というのにまったく気づくこともなく、火でシェーラをいぶりだそう、と。
【目立つ行動はするな。】
といわれているのにもかかわらず、戻ってきたシェーラの家にと火を放っているザイン。

まったく、考えがない、というのはこういうやつのことをいうのよね♡


                            -続くー


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あとがき:
薫:ザインさん、まったく何も考えてませんな(汗
  何はともあれ、次回、エル様・・・もとい、リナさんたちは?(汗
  ではでは、また次回にてv
  2005年2月6日某日


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