エル様漫遊記  ~ガイリアの陽動編~


門をくぐってしばらく。
緑の芝生が広がり。
正面にまっすぐに伸びた白い石畳。
その道の行く先は、黒大理石で作られた飾りの乏しい重厚なデザインの王宮。
城壁に囲まれたちょっとした広い敷地に、所々離れや別館が点在している左手のほうでは、
整列した兵士達が何やら訓示を聞いていたり。
ま、どうでもいいけど。
「とりあえず、神殿のほうにご案内したしますの。」
そういうブランテッドに促され、あたし達は神殿のほうにと向かってゆく。

「へぇ。結構さっぱりしてますね。」
周りをみつつ言っているアメリア。
「まあ。セイルーンの神殿とまではいきませんがの。」
いいつつ。
「ささっ。どうぞ。」
いって、あたし達にと席を勧めてくる。
神殿のちょっと奥にとある、とある部屋。
「で?本日こられたのは何の用ですかの?」
いって、席に座りつつ、あたしに聞いてくるブランテッド。
くすっ。
「その前に、この町。ちょっとどうにかしたほうがよくありません?」
にこやかにいって、一口、出されている紅茶を口にと運ぶ。
そんなあたしの言葉に。
「??はて?何のことですかの?」
まったくわかってないこのブランテッド達。
「あら♡気づいてないんですか?これだけ町の中とかに魔族が潜んでてv
  しかも、中級・下級ともども、うろうろしてますし♡この城の中や町の中に♡」
にこやかにいうあたしの言葉に。
「あ。やっぱりか?どうもいっぱいいるなぁ。と思ってたが。町に入ったときから。」
などと、のんびりといっているガウリイ。
「あら♡ガウリイはいらないことはいわないの♡」
「……ハィ……」
にこやかに話しかけるあたしの言葉に、なぜか静かになるガウリイに。
そして。
「な゛!?何とそれはまことですか!?リナ殿!?」
なぜか本気で驚いているブランテッド。
「そうですよ!それは本当なんですか!?リナさん!?」
なぜか叫んできているブランテッドとアメリア。
と。
そこへ。
「失礼しますぞ。ブランテッド神官長殿。
  こちらにリナ=インバース殿が見えられている、と聞いたのですが……」
いいつつ、入ってくる一人の男性。
そちらを振り向きつつ。
「?ラーシャート将軍か、何か用かの?」
何やらいっているブランテッド。
「いえ。私共もリナ=インバース殿にお話がありまし…て……」
いいつつも、ラーシャート、と呼ばれた男の目が、面白いまでにラルタークにふととまり。
そして。
「ラ……ラルターク殿!?」
いきなり叫んでいるこのラーシャート。
「ば……馬鹿!ラーシャート!!」
そんな彼にむかってあわててとめているラルターク。
でも、時すでに遅し、というのはこういうこと♡
そんな彼の言葉に。
「はっ!今あなた!!ラーシャート将軍…とかいいましたよね。
  何でこのラルタークさんを知ってるんですか!?…もしかしてあなた…」
じと目でそんなラーシャートを見ていっているアメリア。
そんなアメリアの様子に首をかしげつつ。
「どうかしたのか?どうやらそこの老人と知り合いのようだが……一体?」
わかってないブランテッド。
「ま、そりゃそうでしょうね♡
  このラルタークはとあるヤツをおびき出すためにつれてる、ま、エサみたいなものだしね♡
  それに、このラルタークも一応は、高位魔族の一人でもあるしねぇ。
  おのずから、このラーシャートの正体もわかるでしょ♡」
紅茶をのみつつ、にこやかにいうあたしの言葉に。
『な゛!!??』
面白いまでに、その場にいた神官達が固まっていたりする。
カチャッ。
さってと。
紅茶を飲み終え、カップを置き。
「さってと。町の魔族一掃する代わりに、このラーシャート、あたしにもらえません?
  こんな魔族を将軍職につけてたって知れたら大事でしょうし♡」
にこやかにいうあたしの言葉に。
「ぐっ!お、おのれ!貴様!」
ラーシャートが一声吠えると同時に、
彼の手にかけた剣が面白いまでにイビツな形の剣にと姿をかえる。
そして、何を考えているのか、あたしにむかって襲い掛かってくる。
「よせ!ラーシャート!!」
ラルタークの静止の言葉をも聞かずに突っ込んでくる。
が。
ッキィン!
小さく思い音を立てて、ラーシャートの剣の切っ先がへし折れる。
それは見る間に解けていき、元の剣の形を取り戻し。
それもまた、どろり、と溶けて床の上に小さな銀色のよどみを残す。
「……な゛!?」
半ば呆然と小さく驚きの声を漏らし、右手の剣を引くラーシャート。
「やれやれ……ずいぶんとせっかちですねぇ♡」
のんびりとした声を上げているのは言うまでもなくゼロス。
「な、何だと!?」
「よせ!ゼロスにきおぬし一人では勝てん!」
いって、ラルタークはラーシャートの方に走っていきとめてるけど。
というか、こいつらが思ってるより以上に、
あたしが力をアップさせてるからかなうはずもないけどね♡
そんなラルタークの言葉に。
「なら、二人でなら勝てるのでは!?ラルターク殿?!」
周りをまったく気にせずに、そんなことをいってるし……このラーシャートは……
気づいてない。
というのが正解だけど……情けない……
そんな会話をしつつも、まだやる気のラーシャート。
「で?あれ♡もらってもいいです?」
そんなやり取りを無視し、半ば呆然としている神官長たちにと問いかける。
そんなあたしの言葉に。
――こくっ。
なぜか無言で全員の首が下にと降りる。
「よっし♡」
ふふっ♡
コロッッ。
いまだにもめているラルタークとラーシャートの足元に小さな光る球がころがりゆく。
獣神官ゼロスには単体では傷つけることもすらできん……って……何だ?」
ラルタークがそんなことをいいつつ、足元にと転がってきた球にと気づく。
くすっ。
「チェックメイト♡」
いいつつも、軽く指を小さく鳴らすと。
カッ!!
水晶から二人を包むようにして、光が発せられ。
そして……
光がなくなった後には、その場から二人の姿が掻き消えてたり。

「な゛!?あのものたちはどこへ!?」
何やら叫んでいる人間達に。
「何だ!?これは!?出せぇぇ!!」
わめく小さな声が聞こえてくる。
くすっ。
「ムダよ。中からはどうにもできないし♡」
転がっている水晶をひろいつつも、話しかける。
水晶の中には、わめいているラーシャートとラルタークの姿が見受けられていたりする。
いってみれば、あの一瞬で、水晶の中にと閉じ込められているこの二人。
「どうも協力ありがとね♡さってと♡」
にっこり微笑み。
崩魔陣フロウブレイク♡」
かっ!!!
あたしの言葉とともに、ガイリア・シティ全体が光にと包まれる。
と。

『ぐわがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!??』
そんな声がそこら中から聞こえ始め。

そして。
光が収まると。
バタバタバタバタバタバタバタバタ!!!
「た・・・大変です!神官長様!!○○がいきなり、異形に成り果て消え去りました!!」
「大変です!○○が!!」
「神官長!!」
バタバタバタ。
バタバタと、面白いまでに、
次から次へと兵士や将軍といった人間達がこの部屋にと入ってくる。

「誰が消えた…だと!?いや、アレは人ではない!?一体何が!?」
面白いまでに、光が消えた後には、城の中は大騒動と化してたり♡

「い……一体何が??」
呆然と報告をうけつつもしている神官長・ブランテッド。
くすっ。
「中級魔族や下級魔族を町な城の中から追い出したのよ♡」
あたしの説明に。
「し…しかし、いきなりはちょっと……僕、多少驚いちゃったんですが……」
何やら言ってきているゼロス。
「あら♡あんたは大丈夫でしょうが♡」
あたしの言葉に。
「そ…それはそうですが……」
いいつつも、フィブリゾと顔を見合わせているゼロスだし。
「リ…リナ殿…今の言葉はおそらく真実なのでしょうな……た、大変感謝いたしますぞ…。
  しかし…そういいたいのは山々なんじゃが……すまぬ。
  あなた方を接待しているヒマがなくなってしまったようじゃ……」
報告をうけつつ、呆然としながらもあたしに言ってくるブランテッド。
そんな彼の言葉に。
「あ、何でしたら、私たちお手伝いしましょうか?」
などと話しかけているアメリア。
そんなアメリアの言葉に。
「なぬ!?本当ですかな!?いや、それはありがたい!!」
などといって、本気で感謝しているブランテッド達。
「ま……ほっとくわけにもいかないな……」
「だな。」
何やらいっているゼルガディスとガウリイ。
「ま、どっちでもいいんじゃない♡手伝っても♡」
「困っている人はほっとくわけにはいきません!」
何やら力説しているアメリアだし。
とりあえず。
あたし達はこのまま、少しばかり彼らの手伝いをするためにこの場にと逗留することに。
というか、ゴタゴタしている城の手伝い、といっても過言でないけど。



「なあ?神官長殿?…かつて、ここにも例の写本があった…と聞いてたが……」
ゼルガディスの一言に、神官長であるブランテッドの手が止まる。
「そ……そなた、あのことを知っておるのか?」
何やら声を震わせつつ、ゼルガディスの方を見つめ。
やがて。
「……知らぬほうがよい……知らぬほうが……。
  我らとて、真実を知らぬほうがよかった。と何ども後悔しておる。
  それゆえに、口頭で伝えるのも追いそれると気軽にできなくなった…
  ……知らぬほうがよい……」
いいつつも、静かに手にした本を書棚にと戻してゆく。
そんな彼の言葉に。
「…それって、金色の魔王ロードオブナイトメアのことか?」
パサパサパサッ!!
ゼルガディスの素朴な問いかけに、手にしている本をすべて落としているブランテッド。
「そ…その御名を…ど…どこで……」
思いっきり動揺してるし。
「リナから聞いた。」
淡々と語るゼルガディスの言葉に。
「そ。そうか……リナ殿からか…。ならば何もいうことはあるまい。
  リナ殿のほうが我らより【あの存在】については詳しいのでな……」
いいながら、落とした本を片付けるブランテッド。


一方。
いまだに水晶の中にてわめいている二人。
「やれやれ……竜神官ラルタークさん。竜将軍ラーシャートさん。
  ムダなあがきはしないほうが……力の無駄になりますよ♡」
水晶を手にもっているゼロスがそんな二人ににこやかに話しかけていたりする。
「ゼロス?その二人の様子は?」
いって、ゼロスのいる書物庫に入ってきているフィブリゾ。
その部屋にいるのは、ゼロスと、そして水晶の中にと入っている二人だけ。
そんな見た目少年にうやうやしくお辞儀をしているゼロス。
そして。
「いまだにわめいてますよ。冥王ヘルマスターフィブリゾ様。」
「な゛!!??」
「何ぃぃ~!!??」
封じ込められている二人が何やらその言葉にわめいてるし。
…というか、ラルターク…
こいつ、今の今まで本気で気づいてなかったようね…情けない……
そんな二人の叫びをまったく無視し。
「だけど、何だって、あの御方…こんなことをしたんだろう?」
何やら首をかしげているフィブリゾだし。
「あら♡知りたいの?フィプリゾ♡」
ピッシッ。
あ、面白い♡
あたしの言葉に面白いまでに、凍り付いてるし♡
まあ、面白いからやり取りを視てたんだけど。
ゆっくりと、その部屋の中にと入ってゆく。
「~~!!!!」
なぜか、あわててひざまづいているゼロスとフィプリゾ。
アメリア達気づいてなかったけど、この子、冥王ヘルマスターフィブリゾだったりするのよね♡
ガウリイはこいつが魔族だって気づいてたけど♡
一応、この世界の世間一般の常識として、赤眼の魔王・シャブラニグドゥの五人の腹心の中で一番強い、といわれている、
これでも一応、れっきとした高位魔族。
一応、人の死や輪廻転生を視る能力を持っており、ゆえに、死を操るものヘルマスターと呼ばれていたりする。
精神世界面なども結構自由に操れたりするし。
というか、誰でもできるでしょうしねぇ。
そんな細かいことくらい♡
「ふふ♡二人を水晶の中に入れたのは、ガーヴをおびき出すためよ♡
  そういや、フィブリゾ♡あんたもあたしを利用して何かしようとしてたんですってねぇ♡
  一体どういうことかしら♡ん?」
にっこり。
にこやかに、フィブリゾにと話しかけるあたしの言葉に。
だくだくだく。
なぜか、あたしの言葉に、だくだくと汗を流しているフィブリゾの姿。
そして。
「ま……まさか、お母様とは…知らなかったんですぅぅ!!本当です!!
  ゼロスの報告を受けたゼラスが教えてくれるまで!本当に!!」
何やら泣き叫びつつ、謝り倒してくるフィブリゾだし。
まったく。
「ま、いいわ。今はまだ、他の連れの人間達の目もあるしね。
  あんたへのお仕置き♡はあとできちんと行うからね♡
  その前に、ガーヴに対してお仕置きしとかないとね♡」
にっこりいって。
そのまま、なぜか泣き叫んでいるフィブリゾをそのままに。
背を向けて、ゼロス達がいる部屋を後にする。
そんなあたしの姿をみつつ。
「…やっぱし、エル様……かなり怒られてるよぉ……」
などと泣き言をいっているフィブリゾの姿。
そんなフィブリゾの姿や、あたしの後姿をしばし見送りつつ。
そして。
「……今の会話の内容……何か聞いてはいけない御名や言葉が……」
何やら震える声で水晶の中でつぶやいているラルターク。
そんな彼の言葉に。
「僕らごときにはもったいない過ぎた御名ですからねぇ♡」
そんな彼らにむかってにこやかにいっているゼロス。
そんなゼロスの言葉になぜか水晶の中で無言になっているラルタークとラーシャート。

結局。
いろいろと作業などが終わったのは。
あたし達が王宮にと入ってから三日後のこと。
ま、あの一瞬で主だった指揮官や、将軍、果ては大臣クラスまで、一瞬のうちにいなくなり。
それらがすべてが【魔族】であったという事実がわかり、
面白いまでに王宮内部は大騒動となってたり♡
ガーヴのやつ、ここを拠点にカタートに攻め込むつもりだったりしたのよね♡


                                     -続くー


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あとがき:
薫:ラルターク・・・というか、一緒にフィブリゾと行動してるんだったら気づきましょうよ・・・
   ・・・エル様はムリだとしてさ(汗
   何はともあれ、ではでは、また次回にてv
   2005年2月8日某日


  
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