エル様漫遊記  ~ガイリアの陽動編~


――伝説の眠る町、ガイリア・シティ。
ざわめきが、午後の通りに満ちている。
行きかう人々。
立ち並ぶ露天。
そんな行きかう人々の中に兵士の姿が目立っている。
ディルス王国首都、ガイリア・シティ。
「リナさん?
  町中でラルタークさんをこんなふうにつないでおくのはどうか……と思うのですが……」
ゼロスがぽつり、といってくる。
ラルタークはただ今、魔力を込めた紐でゼロスにつながれている状態。
「でも!こんなところで野放しにでもしたら、それこそ正義の名が泣きます!」
そんなゼロスの言葉に、お約束なまでに言っているアメリア。
「だが確かに。このままってわけにもいかんだろうが…」
そんなアメリアの言葉にゼルガディスがぼつり、とつぶやく。
「……あら、紐が見えなければ問題ないんじゃない?」
パッン♪
いって、軽く手を叩く。
と。
「……何……したんだ?リナ?」
なぜかゼルが驚きながらも聞いてくる。
「あら。つないでいる紐をこの物質世界面から移動させただけよ♡別の場所にね♡」
嘘は言ってないし♡
「だから、この物質世界においては、紐が見えなくなっただけ。
  つまりは、精神世界面アストラル・サイドに紐を移動したから、見えなくなっただけ♡」
にこやかに説明するあたしの言葉に。
「……そ、そんなことが可能なんですか?リナさん?」
などとアメリアが聞いてくる。
「あら♡できるからやったのよ♡」
「……リナさんって、私たちの知らない術でもいとも簡単にできるんですね。
  これもリナさんのお姉さんであるルナさんの影響?」
首をかしげているアメリアに。
「ま、そんなとこね♡」
軽く答えていると。
「で?町についたが、どうするんだ?リナ?」
ガウリイがあたしにと聞いてくる。
「ああ。とりあえず、王宮にいくつもりよ♡
  ルナの知り合いがいるから♡あたしも会ったことがあるしね♡」
そんなあたしの言葉に。
ちなみに、あたし達は町の門をくぐり、通りを歩きながら話していたりする。
「リナさんって顔が広いんですね。
  私でも私の顔を知っている人はこの王宮にはいないと思います。
  ――父さんや姉さんの顔を知っている人くらいはいると思いますけど。
  この国、それほどセイルーンは付き合ってませんし。」
何やらそんなことをいっているアメリア。
ま、アメリアはセイルーンの王族だからねぇ。
一応♡
「でもいいのか?こんな魔族を一緒につれていっても?」
などと首をかしげ、ラルタークを見て言ってきているガウリイ。
と、彼がいったそのとたん。
『うおおおおおおおおおおおおおお(ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ)!!??』
ゼルガディス・アメリア・ゼロスの三人がまったく同時に驚愕の声を上げる。
「ガウリイさん!まともな意見がいえたんですね!私初めてしりました!!」
「いやぁ、驚きましたねぇ♡」
「まったくだ。多少脳みそが復活したか。たいしたもんだ。その状態が続けばいいが……」
ガウリイに対して褒めちぎりまくる彼ら達。
ガウリイはというと、そんな彼らの言葉に、コメカミを引きつらせ。
「あ…あのなぁ…お前ら……」
何やら言ってるし。
「まあ。そんなどうでもいいことはほっといて。とっとと王宮にいくわよ♡みんな♡」
「ど…どうでもいいことって……」
何やらいいつつもいじけているガウリイ。
「それもそうですね。」
それで納得しているアメリア。
「ま、とにかくいきましょ♡」
あたしの言葉をうけ。
とりあえず、あたし達は王宮に向かって進み始めてゆく。


しばらくいくと。
ドンッ!
ガウリイにぶつかる一人の男の子。
「ごめんよ!」
「ちょっとまて!」
いいつつ、走り去ろうとするその襟首をガウリイが後ろからふんづかまえる。
「な……何だよ……」
こちらを振り向いた少年の見た目は、見たところ歳のころならば十一、二歳。
軽くウェイプのかかったつややかな黒い髪。
一瞬、見た目女の子に見える、見た目は人でいうところの美少年。
まあ、姿形なんてものはどうとでもなるけど。
くすっ。
「やっときたわね♡」
小さくアメリアたちに聞こえないようにつぶやく。
どうも、どういう風にあたし達に接触しようか迷ってこんな方法をとったらしいが……
まったく……
「返してもらうぞ?今オレからとった財布。」
いって、ガウリイは、つかんだ子供の手をつかむ。
その手には間違いなく、ガウリイの財布が握られてたり♡
「ど…泥棒!?こんなかわいい子が!?」
などとソレを見てアメリアが何か言ってるけど。
「子供でも泥棒だ。警備の戦闘要員にでも突き出すか。」
などと淡々といっているゼルガディス。
「わ、わかった!返す!返すから突き出さないでくれよ!
  あんなおかしな連中に突き出されるくらいなら、ぶん殴られるほうがましだよ!」
「おかしな連中?」
彼の言葉に、アメリアは眉をひそめる。
「そうさ!この町の警備兵の連中、近頃変なんだ!」
などといってるし。
「リナさん?ちょっと詳しく話しをきいてみたほうがよくないですか?」
「同感だ。」
そんな彼の言葉にアメリアとゼルガディスが何やらあたしに言ってくるけど。
くすっ。
「突き出すのは勘弁してやる。その代わり、もう少し詳しく聞かせろ。」
まあ、聞かなくてもわかるんだけどねぇ♡
淡々というゼルの言葉に。
「とりあえず、こいつも連れて先に王宮にいきましょ♡その方が話しも早いし♡
  ほらっ。ととっとと歩いく!さっさと行くわよ!」
あたしの言葉に。
「……ぼ…僕も?」
何やら震える声で言ってくるし。
「あら♡当たり前でしょ♡いくわよ♡フィブ……」
あたしが名前を言いかけると、あわてて。
「だ…だったら。僕もお姉さんたちと一緒に旅をさせて!
  僕、迷子なんだ。家のある『滅びの砂漠』方向にある村に帰りたいんだよ。」
などといいつつ、あたしの言葉をさえぎってくる。
あら♡考えたわねぇ。
フィブリゾ♡
「??何でそんな遠くからこんなところに?」
そこにいる少年の格好をしている……つまりは、フィブリゾにと話しかけているアメリア。
「わかんない。馬車の中で寝てたら、何かここにいたの。僕。
  で、帰るお金がほしくて、お兄さんのお財布とろうとしたの…ごめんなさい……」
いいつつも、シュンとうなだれる格好をしてるし。
まあこの辺り、こいつは全部計算づくでやってるからねぇ。
そんな彼の言葉に。
「って、お前、かなりの距離があるぞ?ずっと寝てたのか?」
などと聞いているゼルガディス。
「たぶん。…馬車の中においしそうな青い実があって、おいしかったから…
  一気に何十粒食べたら…いきなり眠くなって…気づいたらここにいたの。」
まあ、嘘はいってないわねぇ。
この町の近くで馬車の中に入り込んだのは事実だし。
アレを食べた、というのもまた事実だし。
眠くなったうんぬん、というのは、言い換えれば、恐縮した、という意味だし♡
「??その実って?」
アメリアが聞くと。
「あ。これ。」
ごそごそやって、ポケットから実を取り出す。
そして。
「まだ、残りをちょっと持ってたから。」
言いつつ、アメリアにそれを手渡していたりする。
それを手渡され。
「……こ、これって!?」
「……ブルーリーの実だな……」
アメリアがそれをみて驚きの声をあげ。
アメリアに変わって答えるように言っているゼルガディス。
そして。
「これを何十粒も食べたのか?」
驚きつつも聞いてるゼルガディスだし。
「うん。ちょっと苦味があったけど、おいしかったし。その実、何かあるの?」
きょん。
とした顔で聞き返す。
「…お前……知らずに食べたのか?」
「だから何??」
「これ……ブルーリーの実だぞ?…一粒で像でも10日は眠る。といわれてる。
  ――お前、そなもの食べてよく無事だったな……」
何やらつぶやきつつも、
ぽんっ。
フィブリゾの頭に手をのせているゼルガディス。
というか、こいつ、これでも魔族だし♡
何を食べても問題あるわけないじゃない♡
「そ……そうだったの??と、ところで僕も一緒にいっていい?」
泣きそうな顔をして、というかそのように表情をつくり、
上目遣いでアメリアたちにといっているフィプリゾ。
そんな彼の言葉に。
「もちろんです!このアメリア!あなたを無事に家に送り届けてあげるわ!!」
力説しているアメリア。
……信じてるし。
まあ、確かに事実ではあるけど。
今、こいつが拠点にしてるのは滅びの砂漠だしねぇ♡
「本当!?わぁぃ!ありがとう!お姉さん!」
いって、アメリアにしがみついてるし。
……こいつもよくやるわよねぇ♡
「とにかく、とっとといくわよ!」
「「は~い!!」」
アメリアとフィブリゾの声がダブリ。
それにきづいて互いに顔を見合わせて、笑っている二人だし。
ガウリイはガウリイで。
ふぅん。
魔族でも迷子になるんだぁ。
などとそんなことを思ってたりするけど。

とりあえず、加わったフィブリゾを伴って、ディルス王城にとあたし達は向かってゆく。
というか、ラルタークのやつ……フィブリゾにまったく気づいてないし…
ガウリイですら気づいてるのに、これはじっくりとお仕置きは決定ね♡


ディルス王国。
王城の前の正門。
「あの。ちょっとすいません。ブランテッド神官長はご在宅でしょうか?
  取り次いでもらいたいんですけど?」
とりあえず、そこに突っ立っている門番にと話しかける。
そんなあたしの言葉に、不審がりつつ。
「??なぜ神官長様の名前を知っている?お前は誰だ!?」
などといってくるし。
「ああ!?この人間、何て口調を!?」
何やら横でそんなことをいいつつ、頭を抱えているゼロス。
「あら♡
  『ルナ=インバースの妹のルナかきた。』といっていただければわかると思いますけど?」
あたしのにこやかなまでの言葉に。
なぜか、不審がりつつも顔を見合わせ。
そして。
「わかった。ちょっと待ってろ。」
いって奥にと入ってゆく。
そんな兵士の姿をみつつ。
「??リナさん?神官長と知り合いなんですか?」
アメリアが首をかしげつつ聞いてくる。
あたし達はとりあえず、門のところでそのまま待機。
「以前、ルナと来たことがあるのよ。で、その時にね♡」
にっこりいいつつ、軽くウィンクするあたしに。
「……ルナ?」
何やら後にいるゼロスの横で首をかしげているラルターク。
そんなラルタークのほうにと振り向き。
にこやかに。
「いやですねぇ♡ラルタークさん♡
  赤の竜神騎士スィーフィード・ナイトのルナ=インバースさんのことですよ♡」
にこやかに、そんなラルタークに向かっていっているゼロス。
……楽しんでるわねv
こいつ、ラルタークの戸惑いと負の感情を。
「ス……赤の竜神騎士スィーフィード・ナイト!??」
言って絶句しているラルタークだし。
あら♡
それくらいで驚いてどうするのよ♡
ルナってスィーフィード本人なのにね♡


待つこと数十分。
バタバタバタバタバタバタバタバタ!!!!
正門の奥のほうから走ってくる人影が数名。
そして。
「おお!!リナ=インバース殿か!?大きくなったものじゃのぉ!ルナ殿はお元気かな?」
その中で、一番歳をとっている男性があたしにと話しかけてくる。
そして。
「お久しぶりです。ブランテッド神官長。相変わらず元気そうで何よりです。」
あたしの言葉に。
「ところで……後ろの人達は?」
いって、あたしの後ろにいる、ガウリイ達を含むアメリア達五人。
…というか六人を見て聞いてくる。
「あ。そうですね。一応紹介しときます。こちらが、聖王国セイルーンの第一皇子、
  フィリオネル=エル=ディ=セイルーンの第二皇女で。
  アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。で、こっちがガウリイ=ガブリエフ。
  で、赤法師レゾの身内のゼルガディス=グレイワーズ。で、こっちが……」
「ゼロスといいます♡」
あたしの視線をうけて、にこにこ顔で答えるゼロス。
そんなあたしの説明や、ゼロスの言葉をうけ。
「何やら大物ばかりのようだのぉ。
  ……さすがはリナ殿。ところで、アメリア様…とおっしゃったかな?
  なるほほど。グレイシア様の方によく似ておられるのぉ。」
アメリアのほうを見て、そんなことを言っているこのブランデット。
「あ?あの?リナさん?こちらの方は??」
意味がわからずに、あたしに聞いてきているアメリア。
「おお。そうじゃったの。こちらの紹介がまだじゃったの。わしはブランテッド=グリューン。
  このディルス王国の総神官長を勤めているものじゃ。
  このものたちはわしの直属の部下じゃ。」
いって、他の数名を指し示し、説明してくるブランテット。
そして。
「こんなところでの話しも何じゃから。ささっ。入りなされ。お供の方たちもみんなでな。」
そういって、あたし達を王宮の内部にと招きいれるブランテッド。

とりあえず、彼とともに。
あたし達は門をくぐり、王宮の中にと入ってゆく。


                                     -続くー


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あとがき:
薫:次回でラーシャート登場ですvミルさん登場まで・・・まだまだ十数ページ後です・・(汗
  ではでは、とりあえず、また次回にてvv
  2005年2月8日某日


  
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