エル様漫遊記  ~ヴェゼンディの闇編~


「よお。おはよう。」
その翌朝。
ガウリイとゼルがおきだしてくる。
「……ちっ……」
ゼルガディスが舌打ちするのとほぼ同時。
「あっれぇ?ゼロスじゃないかぁ。ひさしぶり~。」
そんなことをいっているガウリイの姿が。
『どえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?』
そんなガウリイの声に見事にアメリアとゼルの声がハモる。
そして。
「ガ…ガウリイさんが人の名前を覚えてた!?」
「し…しかも、間違えずに名前を呼ぶ…だと!?」
そんなことをいっていたりするこの二人。
ゼロスはゼロスで面白いことに、椅子からひっくり返っていたりする。
そして。
「いやぁ。驚きましたねぇ……」
そんなことをいいつつも、椅子を直し座りなおしているゼロス。
ゼルガディスはといえば、ゼロスに対する不快感よりも、
ガウリイの今の台詞に完全に気をとられ、不快感どころではなくなっていたりするのもまた事実。
そんな彼らの様子に。
「何だ?みんなして…オレが名前を覚えてちゃ変か?」
ぷすっとしてつぶやくガウリイに。
『変(です)(だな)(ですね)。』
ものの見事にその台詞を一致させているあたしとガウリイ以外の全員。
そんな彼ら三人の言葉に。
「…あ、あのなぁ…お前ら人を何だと……」
いいつつ、何やらいじけ始めているガウリイだし。
「ま、まあ、だんなのことはほっといて。
  それはそうと、ゼロス、あんたは何だってこんなところにいる?」
すっと目を細めてゼロスにと問いかけているゼル。
そんな彼の言葉に。
「それは秘密です♡」
にこやかに答えているゼロス。
いつもの、人差し指を一本たてたポーズで左右に振りつついっていたりする。
「私たちと一緒に旅をするんですって。……というよりは、リナさんと。」
そんなアメリアの説明に。
「「何ぃぃぃぃぃいい!?」」
横から入ったアメリアの言葉に、同時に声を上げているゼルとガウリイ。
そして。
「おいおい!?あんた正気か!?」
「いやぁ。それだけはやめたほうがいいとおもうなぁ。オレは。」
「ああ、忠告してやるギリはないが、いっといてやる。やめとけ。む
「そうそう、人生投げてどうすんだよ?」
などと、口々に交互にゼロスに対して語りかけていたりする。
「あ、あのねぇ♡あんたたち、これはちょっとお灸が必要かしら♡」
ピッシ。
なぜかにこやかなあたしの言葉に、
まともに凍り付いているガウリイとゼルの二人だけど。
そんな二人の言葉をうけつつも。
「いやぁ、そういわれましても。ともかく。理由はいえませんが、ついていきますので♡」
にこやかに答えているゼロスの姿。
どうやら意見を変えようとしないゼロスに気づき。
ガウリイもゼルガディスもしばらく後には、説得するのをあきらめてたり。
まあ、何をどういっても、『とにかくついてゆく。』の一点張りのゼロスだし。
やがて。
二人がゼロスの説得をあきらめたのをみて。
とりあえず、朝食の注文をし。
ゼロスをも含めて席にと再びつきなおす。

「そういえば、昨日のよる、ちょっと外出したんだけどね。」
そんなあたしの言葉に。
「…また、盗賊いじめか?」
そういや、昨日はリナからもらったアレに夢中になってたからなぁ。
そんなことを思いつつ、あたしに言ってきているガウリイ。
「……面白いか?クズどもをいたぶるのは?」
じと目であたしに言ってきているゼル。
くすっ。
「すっごく面白いわよ♡」
にっこりと、きっぱりと言い切るあたしに、ゼルガディスは沈黙する。
事実、面白いしね♡
「まあ、成り行きで、アメリアと一緒に盗賊を倒して。
  で、その帰り道に面白いやつが出てきたのよ♡」
そんあたしの言葉に。
「?ゼロスのことか?」
などと聞いてくるガウリイ。
「まあ、ゼロスもいたけどね。出てきたのは、ズーマとセイグラムよ♡」
というか、二人は同化してたりするんだけど♡
まあ、嘘ではないしね。
「「何ぃぃぃぃぃ!?」」
そんなあたしの言葉に、またまた声をハモらせているガウリイとゼルの二人だし。
まあ、ゼルのほうも名前を聞いたことはあるからねぇ。
ズーマ、というのは一応は裏の世界では有名だったりするし。
「ズーマ…って、あのズーマか!?」
何やらいってくるガウリイだけど。
「そ♡そのズーマよ♡」
にっこりと微笑むあたしの言葉に。
「…聞くけど、両手は?」
などと聞いてくるし。
「あら♡セイグラムと同化してたからねぇ。ちゃんと二本あったわよ♡」
そんなあたしの言葉に。
「同化?…よくわからんが……そうかぁ。二本あったかぁ……」
などといいつつも、頭をかいているガウリイだし。
トドメさしとけばよかったな。
などと思いつつ。
「ま、それはそうとして。ゼロスが北から、ズーマは逃げ出したんだけど。
  そのとき、面白いことに捨て台詞を残してね♡
  『ヴェゼンディにこなければダレかが死ぬ』って♡
  で、どうする?ちょっとディルス王国より遠回りになるけどいってみる?それとも♡」
あたしのそんな言葉に。
ダッン!
「行くしかありません!」
力いっぱいこぶしを握り締め、叫んで椅子から勢いよく立ち上がるアメリア。
そして。
「たぶんアイツは、私たちがいかなければ、きっとヴェゼンディで人を殺します!!
  それも見せしめのためだけに!!」
「ちょっ!?ちょっと、アメリアさん!?そんな大きな声で…。他の人達が見てますよ!?」
そんなアメリアに突っ込みを入れているゼロス。
「…ゼロスに突っ込まれてどうする……」
そんなアメリアに頭をかかえ、うなるようにつぶやいているゼル。
まあ、この宿屋。
この村に一件しかない、というのと、
食堂をかねている、というのもあってほぼただ今は満席状態だし♡
そんなゼロスの声が耳に届くハズもなく。
かまわずに、話を続けるアメリア。
「そのことを知ってしまった以上!見過ごすわけにはいきません!!
  いかに世の中広しとも、彼を止めることができるのは私たちしかいないんですから!」
一人、自分の世界に酔いしれつつ、叫んでいるアメリアに対し。
「はいはい。」
軽く交わすあたしに対し。
「わ…わかった!いくから、落ち着け!な!アメリア!」
とうとう机にと立ち上がり、力説しているアメリアを、なだめているゼル。
「おいこら!リナ!ガウリイ!アメリアを止めてくれ!
  リナは、何を笑っているんだ!?ゼロスも!」
必死にアメリアを説得しているゼル。
ゼルとしては、完全に目立っているのでかなり恥ずかしがっているんだけど。
あたしは、結構面白いから別にいいけどね♡
…ほっ…エル様の機嫌…いいようなのでよかったです……
なぜか、ほっと肩をなでおろしてるゼロスの姿。
あまり騒ぎになるのを恐れていたゼロスがそんなことを思ってるけど。
どうやら、騒ぎになって、あたしの怒りに触れるのがいやらしいけど……
だから、どうしてそんなにあたしに対して畏れを抱くのかしらね♡
机の上にと足をのせ。
天井に指を突き刺し、力説しているアメリアを説得しつつ、
落ち着かせているゼルやガウリイ、そしてゼロスの姿が。
平和な食堂の一角で、みうけられていたりする。

そんなこんなで。
あたし達一行は。
ガウリイ、ゼルガディス、アメリア、ゼロス、そしてあたし。
この五人で、ヴェゼンディ・シティにと向かうことになってたり。


ヴェゼンディ・シティ。
カルマート公国にと位置し。
そのやや西よりにある、カルマートの中では、一応かなり大きな町の部類にと入る町。
ラルティーグ王国、ディルス王国にと続く街道の分岐点にあり、
町ができる前から、交易の場として栄えている。
町が出来てからは、交易の町として栄えているが。


「あまり気がすすまんな。」
ヴェゼンディを前にして、いきなり言い出しているゼルガディス。
「あら♡どうしたのかしら♡今になって。」
そんなあたしの言葉に。
今、あたし達はといえば、町にと続く街道を進んでいる途中。
すでに丘の向こうにヴェゼンディの町並みが見えている。
といっても、ここまで一気に移動したんだけど♡
この辺りにおいては、一応、交易の盛んな地域でもあることから、
一応は街道もきちんと整備されており。
人間や馬車などがひっきりなしりと行き来している。
フードとマフラーでその顔を隠したまま。
「いつかもいったが、……昔、いろいろとやってるんでね。
  こういった大きな町にはあまり入りたくはない。」
などといっているゼル。
くすっ。
「あら、なるほどね♡でも、お金を出せばとめてくれる宿屋なんていくらでもあるわよ♡
  その宿代の数倍程度でもつかませれば、どこにでも止まれるしね♡
  気にしない、気にしない♪」
そんなあたしの言葉に。
「そうですよ。ゼルガディスさん。ここまで来てそれはないんじゃないですか?
  ゼルガディスさん?あなたが昔、何をしていたのか、僕は存じ上げませんが。
  世の中は、お金さえ出せば止まられてくれる宿屋というのは、いくらでも存在しますよ?
  それがたとえ、大悪党でも、魔王でも、竜神でもね?」
ちなみに。
ゼロスが魔王という言葉に様をつけてないのは。
ここのSのやつを示す言葉にしていないからだからなのだが。
そんなゼルの言葉に。
「……ゼルガディスさぁぁぁぁん……
  ゼルガディスさんがいなかったら…仲良四人組みじゃなくなっちゃいますぅ……」
瞳を潤ませてゼルに懇願しているアメリア。
「……だから、アメリア…その呼び方は止めてくれ……
  ……まあ、ゼロスやリナのいうことも道理だな。―――分かった、町に入る……」
あまり、町に本当にいかない。と言い出すと。
本気でアメリアが泣きそうになっているので、観念して町にと入ることを覚悟を決めるゼル。
「ゼルガディスさん!ありがとうございますぅ!わかってくれてうれしいです!!」
だきっ!
「だ・・だぁ!くっつくな!抱きつくな!///」
「おやおや、ゼルガディスさん?顔が赤いですよ♡」
「……ほっとけ!」
ゼルが町にと入ると心を入れ替えたので、アメリアが喜んで、
そんなゼルにと抱きついていたりする。
そのアメリアの行動に顔を赤くしているゼル。
そんなゼルをからかって遊んでいるゼロス。
とりあえず。
そんなやり取りをあとにして。
あたし達は町にと足を踏み入れてゆく。


ざわり。
道ゆく人達があたし達の姿をみて一瞬ざわめく。
あたし達がヴェゼンディの町にと入ってすぐのこと。
「?何か目立ってませんか?私たち?」
などといっているアメリア。
小声でそんなことをつぶやいてるけど。
「ああ……確かにな。」
そんなアメリアの声に、こちらもまたつぶやいているゼル。
いいつつも、警戒を解いてはいない。
とりあえず、そのまましばらく進んでいると。
やがて。
「…なあ?」
あたし達にと声をかけてくる、男の子が一人。
年齢は、十二歳。
ちょこっとただ今生意気盛り♡の男の子。
「あら?何か用かしら♡」
そんな彼の言葉にとりあえず、足を止めるあたしたち。
やがて、しばし、あたし達をじっと眺めた後に。
「……ねーちゃん、ひょっとして、リナ=インバースとかって名前か?」
「リナ=インバースさん。でしょv年上の人を呼び捨てにしないようにね♡」
ちょっぴし、声に気を含ませていうと、何やら怯えている男の子だし。
ざわざわざわ。
その言葉に、またもや周りの人間達がざわめいてゆく。
「ま、それはそうと、リナ=インバースはあたしの名前だけど、それが何か?」
まあ、理由はわかってるけど。
そんなあたしの言葉に。
どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
あたしが答えたその瞬間。
面白いまでにロコツなどよめきがあたりにと満ちてゆく。
「…な、何ですか?」
それをみて、とまどっているアメリア達。
「やっぱりそうだ!人数が一人多いから、違うかなぁ?なんて思ったんだけど……」
何やら多少顔を青ざめつつも、そんなことをいってくるこの子供。
「ところで、ね…いや、リナお姉さんたちに頼みが……」
そういいかけると。
「ちょっと待ちな。ぼうや。」
少年の言葉も終わらぬそのうちに、人ごみの中からずいっと一歩前にとむ踏み出している、
見た目、どうみてもごろつき風としか見えない男性。
…実際にこの町のゴロツキの一人なんだけど。
そして。
彼にむかって。
「いいか?この姉ちゃんたちを見つけたのは、おじさんのほうが先なんだ。」
「何いってるのよ!?」
次にと声を上げるのは。
結構太めの、しかも原色ぱりばりのドピンクのフリルのついた服を着ている、五十代の女性。
「そんなことをいうなら、この私の方が先だよ!」
いって、前にと出てくるし。
その言葉をかわきりに。
「いいや!それなら、俺が先だ!」
「い~え!あたしが!」
「俺が!」
一斉に周りから上がってゆくいくつもの声。
「ちょ!?・・ちょっと!?一体どういうことなんですか!?」
その様子に思わず声を上げているアメリア。
そんなアメリアの声も届いてないらしく。
今だに。
「いいや!あたしだ!」
「俺だ!」
「俺が先だ!」
「この一つの前の通りから、こいつらを……」
「私なんか、町の入り口から……」
……ああもう♡
五月蝿いわねぇぇ♡
鬱陶しいし♡
「いい加減にしなさい♡爆煙舞バースト・ロンド♡」

キュドドドドゴゴコゴゴオオオオォォオオンンンン・・・!!!
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
シィィィィィン……

ふう、静かになった♡
あたしが放った一撃に、辺りに静けさが満ちてゆく。
かなり、力を手加減しまくって、
はっきりいって、赤ん坊が唱える程度の威力にしかしていない。
一応、見た目は派手だけど、威力が少ないこの術。
まあ、それは、術者の魔力の容量の差によるけど。
いきなり、言葉なしで、吹き飛ばしてもよかったんだけど。
それだとねぇ♡
やっぱり、人の振りしているからには、それなりの動作というものが必要よねv
口々にと騒いでいた人間達が。
なぜか黒こげにとなって、その辺りでびくびくと痙攣していたりもするけど。
関係ないし♪
「さってと。静かになったところで?それで?」
にっこりと。
微笑みつつ、両手を前で組んでぐるりと町の人々を見渡してゆく。
ズザザザザ!
面白いまでに一気に集まっている人々が大きく後ろにと退がってゆく。
「一体何の用かしら?どうしてもめてるわけ?」
くすくすくす。
本当はあたしには分かっているけどね。
こ…これは……
町の人々全員から…負の感情が……、う~ん、結構おいしいですね♡
と、ちゃっかり食事をしているゼロス。
……シィィィン……
ビクビクビク……
町の人々はなぜかびくびくしつつ黙りこくってるし。
まったく。
この程度でそんなに驚いてどうするのよ♡
根性がなってないわよ!

しばし、町の人達は黙りこくること、しばらく。

「あ・・あのさあ・・・・。」
どうにか最初に声を出したのは、始めに声をかけてきた男の子。
なぜか、その瞳に恐怖と畏怖という名前の恐れを抱きつつ、
やや遠巻きにとあたしを見ながら。
「じ……じつは、ラドックさんが……
  リナ=インバースを見つけてつれてきたやつには……金貨をやるっていうから……」
言いながら。
ズボンのポケットから一枚の紙切れを取り出して、恐る恐るとあたしに手渡してくる。

そこには、
『リナ=インバースとその一行を屋敷に連れてきたものには。賞金を与える』
と書いてあったりする。
賞金額は、たかだか、金貨百枚程度。
ま、この程度で、普通の人間にとっては、おいしい金額らしく。
それで、今のこの騒ぎ。というわけである。

その下に、あたしとガウリイ、アメリア、ゼル。
この四人のざっとした説明がなされ、特徴が文章で記されている。
まあ、かなり大雑把な説明だけど。
例を挙げると、たとえばゼル。
― 白い服をきた背の高い男。
としか描かれてないし。
正式に二日前にあたし達の旅にと加わったゼロスのことなどには、
まったくといっていいほどに触れてはいない。
報告がなってないわねぇ……、ガーヴの配下って……

「それで?案内してくれるわよね?そのラドックのところにv」
あたしの言葉に、ぎこちない動作でこくりとうなづく少年。
だから、何あの程度で怯える必要があるのよ♡
別に、あたしの力の中の精霊魔術を使っただけじゃないのよ!
しかも力ともいえないものなのに。
あたし本来とも言うべき混沌の力を使ったわけでもないのにねぇ♡
「とりあえず、いくわよv」
あたしが振り向くと。
「あ……あの、皆さん……あちらに……(汗)」
あたしの横で、通りの影を指差すゼロス。
あたしが術を放ったその瞬間から。
ゼロスを除く他の三人は、あたしの側から少し離れ、
通りの影からこそこそとこちらに様子を伺っていたりする。
「……どうやら、皆さん……その…他人のふりをしているつもりのようで……」
そういうゼロスの声も多少震えている。
「ふぅぅぅぅぅん♡そ~いうことをするんだ?」
にぃぃぃぃぃこりv

ドガァァァァァァァン!!!

再び。
些細な爆発音が鳴り響く。

「「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!?」」
「んきゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
何かガウリイ達の悲鳴みたいなのが聞こえているみたいだけど。
ま、気のせいよね♡

「さ、案内してもらえるかしら♡」
あたしの言葉に。
なぜか、顔を真っ青にしつつ、こくこくとうなづいている少年の姿が。
なぜか、他の町の人達はその場にて固まって動かないし。
まったく、本当に根性がなってないわ♡
とりあえず、案内をうけつつも、あたし達はそのラドックの家にと向かってゆく。


                                     -続くー


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あとがき:
薫:内容的には、ほぼ同じ。台詞がちらほらと違う程度で。
  まあ、とっととこの回も終わらせます。はい・・・
  んではでは・・・・
  2005年2月3日某日


  
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