エル様漫遊記  ~白銀の魔獣編~


「……問題は。どう攻めるか…よね。」
クロツたちのアジトを前にして、茂みの前にて作戦会議。
辺りには見張りらしき姿もない。
「確かに今、クロツたちの戦力は激減しているはずだがな。
  しかし、だからこそ何かの罠があるかもしれん。
  見張りの一人もいない、というのも気になるな。」
などと低い声で、そんなことをいっているゼルガディス。
「けど、何にしろいくしかないんだろ?」
のほほんとそんなことをいっているガウリイ。
「ま、まあガウリイさん。そうなんですけど…それをいったら何のための作戦会議か……」
そんなガウリイに突っ込みをいれているアメリア。
「ま、それはそれとして。それじゃ。ゼロス。
  あんた、先にいって連中を引っ掻き回してらっしゃいな♡あ、方法は任せるわ♡」
そんなあたしの言葉に。
「…いいんですか?どんな方法をとっても?」
再度問い返してきているゼロス。
「あら、別にかまわないわよ♡ただし♡アレの処理はしないこと♡い~い?」
にっこり。
微笑みつつも一応ゼロスに釘を刺す。
なぜか。
ぴしっ。
その言葉に一瞬固まっているゼロスだけど。
やがて、一瞬のちにその硬直がとけ。
「……わ、わかりました…それでは、いってきます。」
などといいつつ、歩いてアジトのほうにと向かってゆくゼロスの姿が。
そんなゼロスの姿をみてとり。
「……ちょっ!?ちょっとリナさん?ゼロスさん一人でいかせていいんですか?」
何やら聞いてきているアメリア。
「あら♡大丈夫よ♡ゼロスにかなうやつなんてあいつらの中にはいないから♡」
しごくもっともなあたしの言葉に。
「……ゼロスのやつも大変なヤツと知り合いだったものだな……」
きっと、昔からこの調子だったんだろうな。
リナのやつは…ゼロスに対して…
そんなことを思っているゼルガディス。
「あら♡ゼルちゃん♡どういう意味かしら♡」
あたしの言葉に。
「い、いや、他意はないぞ。うん。」
何やらあわてて言いつくろってきていたりするゼルガディスだし。
そんな会話をしている最中。
ググォン!!
炸裂する火炎球ファイアーボール
それか飛んできた方向にと目を向けると。
赤いローブを着込んだ男が五人。
そのうち四人は獣人。
残る一人は……
「……お前たちの好きなようにさせるわけにはいかん。」
いいつつも、歩み寄ってくるとある男性。
そんな彼の姿を認め。
「ついに出ましたね!悪の副団長!」
そんな彼にと向かって朗々と言い放っているアメリア。
そんなアメリアの言葉に。
「人間に正義も悪もあるものか。あるのは強いか、弱いか。ただそれだけ……
  貴様ら俗物にはわからんだろうがな。」
そういうなり、そのまま走り出しているのは。
いうまでもなく、バルグモン。
目標はガウリイ。
ひしゅひしゅ……
銀色の光がほとばしる。
「おっと!」
声を上げて退いたのはガウリイ。
退くその一瞬の間に剣を抜き放っていたりするけど。
カンキンキン!
「ちっ!まさか、あの一瞬で抜き放つとはな!だが!」
などといいつつ、バルグモンは左右の手にもった二本の剣にてガウリイに切りかかってゆく。
そして、切りかかりつつ。
「デュクリスが失敗した、という報告はついさっき届いたよ。
  そして、お前が厄介な剣を持っている。ということもな!
  しかし、それも抜く隙を与えず切り倒してしまえばいい。と思ってたが。
  よもやあの一瞬で抜き放つとはさすがだな!だがしかし!そのままでは何もできまい!」
まあ、光の剣モードにするのには。
刃と柄を分けないといけないからねぇ。
…というか、ゴルンノヴァのやつにいえば、素直に従うのは必死だけど♡
「というか、ガウリイさんと同じくらいの力量ですか?あの人は?」
それをみて、そんなことをつぶやいているアメリア。
「あら♡そうでもないわよ♡よくみなさいよ♡
  バルグモンは汗をかきつつやってるけど。ガウリイは一つも汗かいてないでしょ♡」
あたしの言葉に。
「……さすが、だんなだな……」
まあ、ガウリイも相手の力量を見極めてから、それから行動に出るタイプだからねぇ。
そこそこ使える相手とかには。
カンキンキン!
やがて。
一時もしないうちに、
逆に自分が優位、と感じていたバルグモンに面白いまでにあせりが生まれ始めてゆく。
だんだんと、逆に自分がおされ気味になってきたことに気づき。
彼がガウリイの力量をようやく、見極かけたそんな時。
と。
ズグゥゥゥン!!!
爆発音が彼らのアジトの奥から響いてくる。
その音に、面白いまでにと目を見開き。
そして。
「…な゛!?ど…どういうことだ!?」
あわてて、ガウリイから離れているバルグモン。
そして。
ぐるりと、あたし達を見渡して。
「…あいつは!?あの坊主はどうした!?…くそっ!!そういうことだったか!」
などと言い捨て、そのまま、急ぎアジトのほうにとかけもどる。
そんな彼の姿をみて。
「「バ…バルグモン様!?」」
まさか、いきなり、あたし達をほっといて。
アジトに戻るなどとは思っていなかった他の存在ものたちがそんな声をかけてるけど。
「あら♡根性ないわねぇ♡」
そんな彼らをみてつぶやくあたしに。
「リナさん!?何をのんびりと!とにかくいきましょう!逃がすなんてもってのほかです!」
などといっているアメリアに。
「だな。ともかく行くぞ!」
などといっているゼルガディス。
「ま、それもそうね。それじゃ、いきますか♡」
そんな会話をしつつ。
ひとまず、彼らが入っていったそのアジトの中にと進入してゆくあたし達。


「……ゼロスか……」
入り口をくぐったとたん。
ゼルガディスが何やら吐き捨てるようにつぶやいていたりする。
足元に転がっているのは一人の獣人の死体。
その首の上だけが綺麗に吹き飛んでいたりする。
「リナさん、ゼルガディスさん、あのゼロスさん、どんな技を使うんですか?」
アメリアがそれをみつつ、なぜか聞いてくる。
「知らん。俺も直接目にしてことはない。」
あっさりと答えるゼル。
そして、首を横にふる。
「リナ、あんたなら、知っているんじゃないのか?」
あたしに聞いてくるし。
「まっ、知ってるわよ。
  ゼロスの得意とするのは、精神世界面アストラル・サイドからの攻撃。他は…知りたい?
  知っているけど♡どうしても?後悔しない?絶対vv」
くすくす笑いながらいうと。
「…精神世界面アストラル・サイドって…いや、いい、聞かないほうがいいような気がする…」
「同感です。」
同時にいうゼルガディスとアメリア。
「あら♪根性ないわねぇ♡」
「そういう問題でもないと思うぞ?」
ガウリイがぽりぽりと顔をかきつついってくるが。
「とりあえず、奥に進みましょう!!悪を野放しにはしておけませんから!!」
アメリアがちゃっかりと話題を変えていたりするが。
「確かにな。」
そんなアメリアに同意しているゼルガディス。
とりあえず、そのままあたし達は、奥にと進んでゆく。

面白いことに、多少派手にやっているゼロス。
始終、アジトのあちらこちらから爆音が鳴り響く。
「――あいつ…何を考えてる!!?」
なぜか、ゼロスに対して、ロコツに舌打ちするゼル。
「あら♪陽動作戦でもしてるのよ♪
  あちこちらに攻撃呪文を叩き込んだら、あわてた連中が写本の回収に向かうでしょ?」
「それもそ~ですね。」
アメリアがそのあたしの言葉に納得する。
「…えらく危険な賭けだな……まかり間違えば、写本も灰になるじゃないか……」
ゼルガディスがにがにがしくいうが。
「あら♪そんなの、分かる場所においてあるはずないでしょ♪
  それに、あたし、あいつに、あれをゼルに見せるようにいってるのよ♪
  その言葉、無視したら、どうなるか…くすvv」
にっこりと笑うあたしに。
「……リナさん…怖いですぅ……」
アメリアが面白いことにゼルにしがみつく。
「…ま、あんたを怒らすようなまね…ゼロスがするかどうかだな。」
それですませるゼル。
なんか、異様にリナに対して、怯えてるし……
そんなことをおもっているようだが。
「ま、リナを怒らすようなまね…何しろ、魔王でもやっつけるリナだしなぁ。」
ぽつりというガウリイ。
そんなほのぼのとした会話をしていると。

ごうん!
近くで聞こえる爆発音。
「あっちか!」
「あっちですね!!」
音を頼りに同時に走り出しているゼルとアメリア。
そんなあたし達の目の前を横切る人影が一つ。
視るまでもなくそれはバルグモンだし。
ちらりと、彼はこちらに視線を向けてくるが、
「ちぃ!」
一つ舌打ちしただけで、かまわずに走ってゆく。
「追いかけるぞ!」
いって、ゼルガディスはそのまま、バルグモンの後を追いかけ始める。
やがて、彼の向かう先に一枚の扉が。
そのまま、バルグモンの姿は、その扉の向こうにと消えてゆく。
それをみて、あわてて駆け寄っているゼルガディス。
扉を押すものの、びくともしない。
まあ、当然だけど。
「……ダメだ。鍵をかけられている。」
などとつぶやいているゼルガディスだし。
「そこ、どいてください!!!」
アメリアが、ゼルガディスにと向かっていい。
そして。
振動弾ダム・ブラス!!」
ゴバァ!!
アメリアの術が、扉の鍵の部分を打ち砕く。
まあアメリアが、かなりアレンジして威力を一部分に集中させている結果だけど。
「…お、お前なぁ…んなことしなくても、術で開ける、という方法もあるだろうが……」
何やらそんなアメリアに対してつぶやいているゼルガディス。
「いいんです!悪を懲らしめる前には何事も正当化されます!それより早くバルグモンを!」
そんなゼルガディスの言葉に対し、そんなことをいってるアメリア。
ギィ……
そのまま、アメリアの術に伴い。
扉がゆっくりと開いてゆく。
扉の奥にあるのは、小さな祭壇。
それと、まったく全然実物にも似ても似てつかないSのやつの像。
そして、向かいにもう一枚の扉。
バルグモンはその扉に手をかけ、扉のノブに手を回す。
と。
その扉が開いたその先に。
扉の前にと開いたその先にたたずんでいる黒い姿が。
「――きさま!?」
その姿をみて、バルグモンが何やら言いかけてたりするけども。
だが、彼が行動するよりも早く。
ポン♪
コミカルな音をたて、そのまま、バルグモンの頭が横に吹き飛んでゆく。
血しぶきが、一応魔王の像を紅く染めあげる。
残ったからだのほうは、その場にずるり、と崩れ落ち。
ゆっくりと、そんな崩れ落ちるバルグモンの後ろから。
というか、彼からすれば前からなんだけど。
ともかく、扉の向こうより姿を現してくるゼロス。
その手には一枚の紙切れが握られていたりするけど。
「……ふむ……」
しげしげと自分の手にしたそれを眺め。
そして、満足そうにうなづきつつ。
「間違いなく、写本ですね。まんまと僕の陽動にかかってくれて助かりましたよ♡」
にこやかにそんなことをいっているゼロスの姿が。
くすっ。
「はい♡ご苦労様♡ゼロス。それじゃ、それちょっとゼルに見せてあげてね♡
  ゼル、見終わったらすぐに一応あたしに戻すようにね♡」
にこやかにゼロスとゼルガディスに微笑みながら話しかけるそんなあたしの言葉に。
「……ううっ。エ…とと、リナさぁん。本当に見せるだけですよ?本当に……」
などといいつつ、あたしに多少震えつつもそれを手渡してくるゼロス。
「はい♡ゼル、読んだら戻してね♡」
いいつつ、ゼロスから手渡されたそれをゼルガディスにと手渡すあたし。
「あ…ああ。」
まさか、こんなに早くに写本にお目にかかれるとは……
そんなことを思いつつ。
写本を受け取っているゼルガディス。
そして、しばらく目を通し…
まあ、言葉もちょっとした昔の言葉でかかれてるからか、
なぜかすんなりと他の存在とかはこれ読めなかったりするけども。
まったく……
この言葉は、昔、この世界で共通語になってた言葉でしょうに……
そして。
しばらくそれを解読しつつ、目を通し。
「……ふぅ……」
ため息一つ。
まあ、この写本、といっても、たかが紙切れ一枚だけだしね。
そして。
「約束だからな。」
そういって、あたしにと解読がおわったそれを手渡してくるゼルガディスだけど。
「あら♡もういいのね。それじゃ、はい♡ゼロス、お仕事しなさいね♡」
にっこりいいつつ、
ゼルガディスから手渡されたそれをゼロスにと再び私にこやかに言うあたしの言葉に。
「は。はい!それはもう!…とりあえず、やれやれ…ですかね?」
なぜか、一瞬硬直し。
そして。
再び、その紙切れを確認し。
そして。
手の中でそれをくしゃっと丸めてつぶし。
そして。
ボッ!!
瞬間、それはゼロスの手の中で燃え上がってゆく。
一瞬のうちに、それは灰と化し、そのまま空気中にと散ってゆく。
「これで、僕のお仕事はおしまい…っと♡」
「「な゛!?」」
それをみて、声を上げているアメリアとゼルガディス。
「燃やす…だと!?」
何やらそんなことをいってるゼルガディスだし。
「あら♡あんな中途半端な品物残してても仕方ないじゃないのよ♡
  あんな中途半端なのがあっても意味ないわよ♡」
あたしの言葉に。
「「……そういう問題じゃぁ……」」
何やらつぶやいてきているアメリアとゼルガディスの二人だけど。
そんな会話をしているあたし達にと。
「……あ、あのぉ?リナさん?僕のお仕事は終わったので……あとは高みの見物…
  ……というわけにはいきませんか?」
何やらそんなことを言ってきているゼロスだし。
と。
そんな会話をしていると。扉の外に影が三つほど出現する。
クロツと、そして、その取り巻きの獣人が二人。
彼らの視線は足元に横たわっている死体にと注がれていたりする。
「……バ……」
それをみてとり、よろめくと。
そのまま、その場にて膝をおり。
「バルグモン!!!」
まあ、彼ら程度でも、たとえ頭がなくても、きているものと、体格で、
誰か、くらいのことは確認できる。
というか、見たらすぐにわかるでしょうに♡
そして。
きっと顔を上げた彼の目には明らかに憎悪の色が浮んでいたりするけども。
「貴様たちだな!?きさまたちがバルグモンを!」
そんなことをいってくるこのクロツ。
まったく。
「やったのはゼロスだぞ?」
のほほんと、正直に答えているガウリイ。
そんなガウリイに対して。
「……あ、あのぉ?ガウリイさん?そう正直に何もいわなくても……」
手をぱたぱたと振りつつもいっているゼロス。
そんな彼らの言葉に。
「…いいだろう。」
低くつぶやき。
そして。
「ヴァイレウス!ルーディア!」
傍らにたたずむ獣人たちにと声をかけているクロツ。
「はっ!!」
声をハモらせ、ずいっと一歩前に出てくる彼ら達。
そして、そんな彼らにと向かって。
「クロウヅを目覚めさせろ!!」
そう言い放っているクロツ。
その言葉に。
ピッキッ。
一瞬ヴァイレウスとルーディアの二人が硬直する。
「……い、いけません!クロツ様!」
「あれは、もうクロウヅなどではありません!下手をすると!」
そんな抗議の声をクロツにむかってあげていたりするし。
くすっ。
「あら♡これがつまりもう一つあった、ということかしら♡」
にこやかに。
虚空から、デュクリスからもらった不完全版ザナッファーを取り出して彼らにと話しかけるあたしの言葉に。
「……いや、リナ、今それどこから出した?」
何やら聞いてくるゼルガディスに対し。
「虚空からv」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
あたしの当たり前の言葉に、
なぜか無言になっているアメリア・ゼルガディス・ガウリイのこの三人。
一方で。
「…な゛!?なぜお前らがそれをもっている!?」
面白いまでにロコツにわめいているクロツ。
う~ん。面白い♡
何やら口をばくばくさせて、しかも顔を紅潮させてるし♡
くすっ。
「もう一体ある、というみたいだから♡そっちに移動したほうがいいみたいね♡
  いきましょ♡ゼロス・ガウリイ・アメリア・ゼル♡」
にこやかに微笑み。
いまだに無言なにっている彼らにと話しかけ。
そのまま、今だになぜか驚いて硬直しているクロツをそのままに。
通路の奥にと進んでゆく。


                                     -続くー


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あとがき:
薫:次回で白銀の魔獣編は完了ですv
  …やっぱりアップしてるやつと同じ長さになりましたね(笑
  ではでは、何はともあれ、次回にてv

2005年2月2日某日


  
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