エル様漫遊記・ソラリアの謀略偏
夜の静けさが当たりを支配している。
といってもこの裏通りには酒場があるので、
そのざわめきが多少はあたし達のいる広場にまで届いてくる。
といっても、最近は兵士達の警備が待ちの人の誰にでもわかるほどに厳重になっているがゆえに、
あまり人々はハメをはずせないようだけど。
もっぱら騒いでいるのは、
ロード代行が雇っている、ごろつきや傭兵…そして、昼間の勤務を終えた兵士達。
ちなみに、すでに。
『ソラリア領主代行の動きがおかしい。』
というのは、この国の首都カルマートにも届いているので、
多少の間者や諜報員がすでにこの町には入っていたり♡
まあ、そんな人々に関しては、バレたらあの人間は実験体に回してるけど。
その辺りも考えがないのよねぇ…あの人間は……
普通、ちょっと様子を見に行かせたものが、こどことく行方不明になったら思いっきり、
『何かよからぬことをやってます。』といっているようなモノだというのに。
そんな簡単なことにすら気づいてないし。
「なぁ?リナ?何だってんなとこに?」
周りを見渡してあたしに聞いてくるガウリイ。
「あら♡ここだからいいのよ♡」
あたしの言葉と同時。
「…逃げられると思っているのか?」
いって。
ふいっ、と出現してくる影一つ。
「あら♡その言葉、そっくりお返しするわ♡」
あたしのそんな言葉をうけ。
何やら面白いまでに、カチン、となり。
そして無言のまま懐に手をいれてナイフを投げてきているのは、いうまでもなくザインだったり♡
「……ワンパターン……」
ぽつりとユニットがつぶやくと同時。
パシュ!
「「……なっ!?」」
あ、それをみて面白いまでにザインたちが何やら短く叫んでるし。
ナイフは空中にて一瞬のうちにと燃え上がり、そして溶けてそのまま塵と化してゆく。
「くっ!ファイア……!」
「ばか者!」
ひとりが面白いことに呪文を唱えようとし……というか、ザインが唱えてるんだけど♡
他の別の一人がそれを止める。
だがしかし。
「ボール!」
どぐわっ!
ザインがそんな静止を聞くはずもなく、呪文をそのまま解き放つ。
「ばか者!騒ぎを起こしてどうする!」
ザインより少し格上の一人が何やら言ってるけど。
「しかし!クリフト様!」
「…おひ……」
相変わらず何も考えてないし…このザインは……
「…騒々しいな…夜の夜中に……」
ザインとクリフトと呼ばれた男達が何やらそんな会話をしていると、
ゆっくりと路地裏より出てくる一つの影。
一応、布を巻きつけて顔を隠してるけど。
「何だ!?きさま!?」
その人物をみて声を上げているザイン。
ブラウン色の髪をうしろで一つに束ね。
首には赤いスカーフ。
動きやすい体にフィットした服装。
そんなザインの言葉をうけ。
「夜中に騒ぐな。迷惑だ。といっておるのだが?」
のんきにそんなことをいってくるそんな男性に対し。
「貴様もそいつらの仲間か!?」
何やらそんなことをいってるし。
そして、その人物はちらり、とあたし達をみて…
…といっても、暗いのでこっちの顔は相手に見えてないけど。
「そういうわけでもないのだが…な。」
「なら余計なことに首をつっこむな!我々は施設に忍び込んだ曲者を捕らえようとしているだけだ!」
面白いまでにこの人物の登場にあせりの色を隠すことなく言っているザイン。
ふっ。
そんなザインの言葉に軽く失笑し。
「曲者?私の目にはお前たちのほうがよっぽど曲者にみえるがな?
…まあ、私も他人のことを言えた義理ではないが。
少なくとも……お前たちの姿が賊を捕らえる役人に見えないことは確かだな。」
いって、背後より近づく黒尽くめの一人をみて少し楽しそうな口調でいってるし。
しばし、ザイン達は顔を見合わせ沈黙し。
ザインがナイフをその人物に向かって投げ放つ。
が、それをあっさりと受け止め。
「――なるほど。これがお前たちの答えか。やはり曲者はそちらのようだな。
となればこれを見過ごすわけにもいかんか。
――それに先ほどの爆発音で兵士達もやってきているようだし――な。」
「何!?」
……気づいてなかったみたいだし……このザインは本気で……
先ほどザインの放った術の音に対して、
何ごとか!
とばかりに、少し先の酒場で羽を伸ばしていた兵士達や、
町の実周りをしていた警備隊員たちがこちらに向かってやってきている。
というその事実に、まったく気づいてなかったようねぇ。
くすっ♡
「きゃ~♡だれかぁ~♡人攫いぃぃ~♡」
『……おい……』
瞬時に服を今までの魔道士の格好でなく普通の旅人の服にかえ、
少しばかりよく響き渡る声を発すると。
「きゃ~♡殺されるぅ~♡」
ユニットも又、同じく何やらいってるし。
「女の子の声がしたぞ!?」
バタバタバタ!!
夜の夜中に女性の・・・しかも、かわいらしい声が助けを求める声。
人間の男ってそういうのってほっとかないのよね。
面白いことに♡
「…だっ!?なっ!?貴様ら!?」
「きゃ~♡きゃ~♡きゃ~♡」
二人で手を取り合い遊びで騒ぐあたしとユニットに何やら言ってくるザインに。
「……楽しんでるだろ?二人とも……」
なぜかじと目でいってくるガウリイ。
「何やつだ!?」
「あやしいやつ!捕らえろ!!」
やってきた兵士の一人が明りを打ち出し、広場を赤々と照らし出す。
あたしとユニットは見た目には少し怯えているように手をとりあい、
ガウリイの後ろで『きゃ~♡きゃ~♡』いっていたりする。
傍目には、ガウリイがあたし達二人を守って立ちふさがっているがごとくに見えるけど。
「――うん?……あ゛……」
あたし達の姿を明りのもとで確認して、何やら小さくつぶやく先ほどでてきた男性。
出てきた男性、というかあたしとユニットの知り合いだけど♡
そして。
そのままぴょん、と飛んで塀の外にと姿を隠す。
兵士達の目はあからさまに怪しいザイン達のほうに視線を向けているがゆえに、
それゆえに彼には気づいていないようだけど。
「きさまら!怪しいやつ!」
そんな兵士達の言葉に。
「…ちっ!ひくぞ!」
兵士達が一斉に構えると同時。
何やら悔しがっているザインをクリフトが無理やりにとつれ。
そのまま、その場から掻き消えてゆく。
『――な!?消えた!?』
それをみて何やら驚いている兵士達。
やがて、しばらくざわざわとしつつも。
あたし達のほうにと歩み寄ってきて。
そして。
「お怪我はありませんでしたか?旅の方々?この町にあのようなモノが入り込むなど……」
いって、あたし達にと話しかけてくる、
『カルアス』という名前の一応警備副隊長の任をまかされている人物。
「ええ。おかげ様で♡」
「最近物騒ねぇ~♡」
そんな会話をするあたしとユニットを交互に眺め、そして、ガウリイにと視線をむけ。
「賊の手からか弱き女性や子供を守っていただきありがとうございました。
最近この辺りでは誘拐事件や失踪事件があいついでいまして。
――お二人はあなたのお連れさんですか?」
いって、ガウリイにと手を差し出してくるカルアス。
「は…はぁ…まぁ……」
何と答えたらいいものか。
と思いつつもガウリイがその手を握り返しつつ答えると。
ぴっと敬礼し。
「我らが責任をもってあなた方を宿にと送り届けます。
――他のものは先ほどの賊のことを上に報告。それと町の中を徹底して警備しろ!」
『――はっ!!!』
カルアスの言葉をうけて、四方に散ってゆくほかの兵士達。
「……というか、……で?どうすんだ?」
後ろを振り向きつつ何やら聞いてくるガウリイに。
「あら?せっかくだし。お言葉に甘えましょ♡」
にっこりというそんなあたしの言葉に。
「申し遅れました。私はこの町の西を担当しております。
警備副隊長を務めておりますカルアスと申します。
このわたしがお三方を責任持ちまして、宿まで警護いたします!」
いって、ぴしっと敬礼してくるカルアスの姿。
とりあえず、カルアスの警護…というか、必要ないけど。
表向きはカルアスの案内に従いつつ、あたし達は宿にと戻ってゆく―――
「しかし、あんたたち、大変だったねぇ。」
いいつつ、朝食を運んでくる宿のおかみ。
あたし達が夜外出していたときに怪しい人物に襲われかけていた。
というのは、カルアスから話が通っている。
それにより、面白いことにサービスで朝食に数品つけてきてくれてたりするんだけど♡
「まあ、何事もなくて何よりだよ。あんたも男なんだから二人を守ったんだろうねぇ~。
まったく、領主様がご病気になって、ラーヴァス代行になってからというもの、
この町も何だか治安が悪くなって……最近では旅人もめっきり減ってねぇ……」
しみじみと何やらいってくる。
そして。
「それでなくても、ここ最近。
ベゼルドのほうで正体不明の怪物が出ただの、デーモンが大量発生してるだの……
…などという、噂が聞こえてきてたのに…世の中どうなっているのかねぇ……」
そんなことをいいつつも話しかけてくる。
「…ま、人がよすぎたのが原因でしょうねぇ……」
いいつつも、ぱくり、とイチゴサラダのイチゴを口にとほうばる。
「まあ、典型的な『恩を仇で返す』って人間のことわざ、そのままよね♡」
そんなあたしの言葉に、ミックスジュースを飲みつつ言ってくるユニット。
「そうね。そもそも自業自得で国を追われた彼を気の毒におもって招き入れて保護したら、
それ幸い、とばかりにここを拠点にしてるしねぇ。あいつは。」
そんなあたしとユニットの会話に首をかしげるこの宿のおかみ。
ちなみに、名前をエメルダ。
「それはそうと?リナ?ユニットちゃん?何かお客さんみたいだぞ……」
いいつつも、フォークでパクリ、とハムを口に運びつつ、店の入り口を持て言っているガウリイ。
ギィ。
カラン。
扉の上についてる鈴が静かに鳴り、そこより入ってくる警備兵の男性二人。
彼らは手にしている特徴が枯れている紙をざっとみて――そしてあたしたちのほうにと歩いてくる。
「おや?ご苦労様です。昨夜の一件の件ですか?」
そんな警備兵にと話しかけているエメルダ。
「いえ。――失礼ですが、リナ=インバース殿であらせられますか?」
いってくるその声になぜか震えが入ってるけど。
そんな兵士の言葉に。
「そういや、お嬢さん、あの【リナ=インバース】と同じ名前だったねぇ。」
ふと宿帳にと記入された名前を思い出し、つぶやいているエメルダ。
何でかこの名前、いろんな尾びれと共に広まってたりするからねぇ。
面白いからほっぽってるけど♡
「そのリナだけど?む
食事を食べる手を少し止め、答えてから再び食事にと専念する。
そんなあたしの言葉をうけ。
「やはりそうでしたか!我々はこの町の領主ラングマイヤー配下の警備のものであります!」
いって、ぴしっと直立不動の姿勢で敬礼し。
「ロード代行からのご要望で、ご高名なリナ=インバース殿とぜひとも一度話しがしたい…と。
よければぜひ一度と食事にご招待したい、ということなのですが。」
『あら♡』
「……は?」
あたしとユニットの声と。
というか面白いことになりそうだし♡
そんな楽しんだ声を上げているあたし達と。
兵士達の言葉をきいて、面白いまでに間の抜けた声を出しているガウリイ。
「――別にいいけど♡でも今は食事中だから♡」
「あ、エメルダさん。このモーニングスペシャルAコース追加お願いします♡」
あたしの言葉と同時に、何か追加注文しているユニット。
「?私名前いったかしら?でもよく食べるねぇ。子供はしっかり食べて大きくならないとね。」
少し首をかしげつつも、追加オーダーのためにと奥にと引っ込んでゆくエメルダの姿が。
―――しばし、なぜか兵士達が唖然としつつ、あたしたちの食事風景を見ていたりするけど。
とりあえず、その申し出を受ける旨を伝えておいて、
あたし達は朝食の次にデザート注文にと入ってゆく―――
-続くー
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あとがき:
薫:キリがわるいので短いけどここで区切りますv
次回でベルギスこと、ラーヴァス登場です(笑
エル様達すべてをしってる・・ということ彼しりませんからねぇ・・・
・・・以前の出来事でこりてればいいのに・・・
何はともあれ、それではまた、次回にてv
2005年2月22日某日
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